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第二章 愛する人
14.救いとなるヤツ
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コンコンッ
「居るのか?入るぞ」
返事も待たずに扉を開ければ、ベッドの上で腕を枕にうつ伏せになっていた……恐らく泣いていたのだろう。
アルのように取り乱すでもなく、うつむき、悲しみに身を震わせていたリリィ。
心配で来てみたもののどうしていいか、何て声をかけて良いのかさえ分からずにベッドの前の椅子に腰掛けた。
「リリィ、大丈夫か?」
何か答えるでも無く、ただベッドに伏せて微動だにしない。
もしかして、泣き疲れて眠ってしまったのだろうか?それならそれで構わないが、痛みの吐き出しどころがなくて溜め込んでしまうのは良くないだろう。アルのように殴りかかってでもくれれば幼馴染としてそれぐらいは受け入れてやる覚悟はしてきた。
背中を覆う金の髪はリリィに掛けられた布団のように広がり、窓から入り込む太陽を吸い込んで光り輝いているように見える。
目を見張るほどの美しさに触ってみたい衝動が沸き起こり、ベッドの端に腰を掛けると出来うる限り優しく撫でてみた。絹のように柔らかくツルツルとした手触り、頭の上から下へと滑るように何度も触れる。思った通り気持ちいい。
頭に手を置いたときに ピクッ と驚いたような反応があったが、もしかしたら本当に寝てしまっていたのかもしれない。悪いことしたかな?
しばらく撫でているとその頭が微かに動く。
「みんな……死んでしまった、残ったのは私達……だけ……なのよね。お母さんも……レイのおばさんも、アルのおじさんも、おばさんも……みんな居なくなってしまったのよね……。
どうしてなの?どうして居なくなってしまったの?みんなが何をしたって言うの!?ねぇっ!どおしてよ!!お母さんを……みんなを返してよ!!!」
手を突いて身を起こし、真っ赤に染まった目で睨んでくる。
止めどなく湧き出る涙、頬を伝う雫は次から次へと流れ落ちてベッドを濡らしていく。
細い肩を抱き寄せればされるがままに崩れ落ちる。 かける言葉など見つからず、俺の腿に突っ伏した頭を優しく撫でてやることしか出来なかった。
足を叩く力ない拳、勝ち気なリリィからは想像も出来ないほどの弱さを見せ、嗚咽を漏らし続けている。 そんな彼女に何もしてやれない歯痒さ、無力な俺はリリィの気がすむまで待つことしか出来ずに、ただひたすらに頭を撫で続けた。
どれだけそうしてただろう。陽が傾き、部屋の中を闇が支配し始めた頃、再び動かなくなったリリィは落ち着きを取り戻したかのように思えた。
「ねぇ……私を……抱いてくれない?今だけでもいいから、辛いことを忘れたいの……何もかも忘れらるようにメチャクチャにして欲しい。
レイの好きなようにしていいから……何をしてもいいから……ねぇ?」
微かに震えるリリィはとんでもないことを言い出す。
確かにその時は忘れられるかもしれない。だがそんな事のためにする行為ではないだろう。やはりリリィを襲った衝撃は、それ相応にリリィの心を抉ってしまったんだろうな。
「それは出来ないよ。そういうのはリリィの愛する男に言うべきだ。それに、それでは何の解決にもならないよ。
傍にいる事ぐらいしか俺には出来ないけど、辛いならずっと傍にいてやる。だからそんな、自分を傷つけるようなことは言わないでくれ」
涙に濡れた俺のズボンを再び熱いものが濡らしている感じがする。
「ユリ姉は良くても私は駄目なのね、そんなのズルいわ。どうせエレナもそうやって断ってきたんでしょ?酷い人ね……」
「ユリアーネはユリアーネだろ、リリィとは関係ないよ。とにかく俺はそんな事はしたくないし、出来ないよ」
「フンッ、あんたに期待した私が馬鹿だったわ。お腹すいた!顔洗ったら行くから先に行ってて」
膝から転がり降りるとそっぽを向いて布団を被る。語気は戻ったかのように思えるが……もう大丈夫、なのかな?
「分かったよ、リビングで待ってる。ゆっくりでいいからちゃんと来いよ」
部屋を出るとその足でアルの部屋を覗いてみたのだが、真っ暗で誰もいなかった。何処に行ったのかは分からないが……心配だな。
リビングに戻れば長い耳を揺らすご機嫌なエレナ。可愛いお尻を振りつつ鼻歌混じりの夕食の準備、微笑む師匠とルミアはそれを肴にワインを口にしていた。
「るんるんるんっ、お料理って楽しいですね。色気に靡かないレイさんは胃袋を掴んでやるのですっ!がんばれ私っ!まぁ、もともと色気なんて無かったってだけの話ですけどねぇ、あははっ、あはっ、あはっ…………はぁ。
けどっ、私は負けませんよ!見てなさい!いつかきっとレイさんの愛を手に入れてみせますっ。ほーーーっほほはほっ。あ、ちょっと焦げてる!……ん~、まぁいっか。ちょいちょいちょいっと隠しとけばバレないわね、てへへっ」
た、楽しそうでなによりだよ……。焦げはバレるから!隠しても味はわかるから!
コイツの切り替えの早さには恐れ入る、まぁそこが良いところか。コイツにも早く俺なんかより良い人が見つかると良いな。
「おいっ!エレナ、聞こえたぞ。焦げたのはお前が食えよっ」
「げっ!レイさんいつのまに……こ、焦げてなんかないですよ。ふーふーふーっ」
「吹けない口笛吹いて誤魔化そうとすんなっ!あほちんが」
「ぁ痛っ!ちょっとぉ、またすぐ乱暴するぅ。それが愛ですか?それがレイさんの愛情表現なんですかぁ? もっと優しいのを希望しますぅ~。はい、練習してみましょうね。はいはいブチュッと優しくぅ、どうぞ?」
「うっせっ、馬鹿兎!」
「痛ぁっ!デコピン禁止っ!!」
エレナのおかげで俺達は明るくなれる。感謝してるんだぜ?これからもよろしくな、馬鹿兎。
「居るのか?入るぞ」
返事も待たずに扉を開ければ、ベッドの上で腕を枕にうつ伏せになっていた……恐らく泣いていたのだろう。
アルのように取り乱すでもなく、うつむき、悲しみに身を震わせていたリリィ。
心配で来てみたもののどうしていいか、何て声をかけて良いのかさえ分からずにベッドの前の椅子に腰掛けた。
「リリィ、大丈夫か?」
何か答えるでも無く、ただベッドに伏せて微動だにしない。
もしかして、泣き疲れて眠ってしまったのだろうか?それならそれで構わないが、痛みの吐き出しどころがなくて溜め込んでしまうのは良くないだろう。アルのように殴りかかってでもくれれば幼馴染としてそれぐらいは受け入れてやる覚悟はしてきた。
背中を覆う金の髪はリリィに掛けられた布団のように広がり、窓から入り込む太陽を吸い込んで光り輝いているように見える。
目を見張るほどの美しさに触ってみたい衝動が沸き起こり、ベッドの端に腰を掛けると出来うる限り優しく撫でてみた。絹のように柔らかくツルツルとした手触り、頭の上から下へと滑るように何度も触れる。思った通り気持ちいい。
頭に手を置いたときに ピクッ と驚いたような反応があったが、もしかしたら本当に寝てしまっていたのかもしれない。悪いことしたかな?
しばらく撫でているとその頭が微かに動く。
「みんな……死んでしまった、残ったのは私達……だけ……なのよね。お母さんも……レイのおばさんも、アルのおじさんも、おばさんも……みんな居なくなってしまったのよね……。
どうしてなの?どうして居なくなってしまったの?みんなが何をしたって言うの!?ねぇっ!どおしてよ!!お母さんを……みんなを返してよ!!!」
手を突いて身を起こし、真っ赤に染まった目で睨んでくる。
止めどなく湧き出る涙、頬を伝う雫は次から次へと流れ落ちてベッドを濡らしていく。
細い肩を抱き寄せればされるがままに崩れ落ちる。 かける言葉など見つからず、俺の腿に突っ伏した頭を優しく撫でてやることしか出来なかった。
足を叩く力ない拳、勝ち気なリリィからは想像も出来ないほどの弱さを見せ、嗚咽を漏らし続けている。 そんな彼女に何もしてやれない歯痒さ、無力な俺はリリィの気がすむまで待つことしか出来ずに、ただひたすらに頭を撫で続けた。
どれだけそうしてただろう。陽が傾き、部屋の中を闇が支配し始めた頃、再び動かなくなったリリィは落ち着きを取り戻したかのように思えた。
「ねぇ……私を……抱いてくれない?今だけでもいいから、辛いことを忘れたいの……何もかも忘れらるようにメチャクチャにして欲しい。
レイの好きなようにしていいから……何をしてもいいから……ねぇ?」
微かに震えるリリィはとんでもないことを言い出す。
確かにその時は忘れられるかもしれない。だがそんな事のためにする行為ではないだろう。やはりリリィを襲った衝撃は、それ相応にリリィの心を抉ってしまったんだろうな。
「それは出来ないよ。そういうのはリリィの愛する男に言うべきだ。それに、それでは何の解決にもならないよ。
傍にいる事ぐらいしか俺には出来ないけど、辛いならずっと傍にいてやる。だからそんな、自分を傷つけるようなことは言わないでくれ」
涙に濡れた俺のズボンを再び熱いものが濡らしている感じがする。
「ユリ姉は良くても私は駄目なのね、そんなのズルいわ。どうせエレナもそうやって断ってきたんでしょ?酷い人ね……」
「ユリアーネはユリアーネだろ、リリィとは関係ないよ。とにかく俺はそんな事はしたくないし、出来ないよ」
「フンッ、あんたに期待した私が馬鹿だったわ。お腹すいた!顔洗ったら行くから先に行ってて」
膝から転がり降りるとそっぽを向いて布団を被る。語気は戻ったかのように思えるが……もう大丈夫、なのかな?
「分かったよ、リビングで待ってる。ゆっくりでいいからちゃんと来いよ」
部屋を出るとその足でアルの部屋を覗いてみたのだが、真っ暗で誰もいなかった。何処に行ったのかは分からないが……心配だな。
リビングに戻れば長い耳を揺らすご機嫌なエレナ。可愛いお尻を振りつつ鼻歌混じりの夕食の準備、微笑む師匠とルミアはそれを肴にワインを口にしていた。
「るんるんるんっ、お料理って楽しいですね。色気に靡かないレイさんは胃袋を掴んでやるのですっ!がんばれ私っ!まぁ、もともと色気なんて無かったってだけの話ですけどねぇ、あははっ、あはっ、あはっ…………はぁ。
けどっ、私は負けませんよ!見てなさい!いつかきっとレイさんの愛を手に入れてみせますっ。ほーーーっほほはほっ。あ、ちょっと焦げてる!……ん~、まぁいっか。ちょいちょいちょいっと隠しとけばバレないわね、てへへっ」
た、楽しそうでなによりだよ……。焦げはバレるから!隠しても味はわかるから!
コイツの切り替えの早さには恐れ入る、まぁそこが良いところか。コイツにも早く俺なんかより良い人が見つかると良いな。
「おいっ!エレナ、聞こえたぞ。焦げたのはお前が食えよっ」
「げっ!レイさんいつのまに……こ、焦げてなんかないですよ。ふーふーふーっ」
「吹けない口笛吹いて誤魔化そうとすんなっ!あほちんが」
「ぁ痛っ!ちょっとぉ、またすぐ乱暴するぅ。それが愛ですか?それがレイさんの愛情表現なんですかぁ? もっと優しいのを希望しますぅ~。はい、練習してみましょうね。はいはいブチュッと優しくぅ、どうぞ?」
「うっせっ、馬鹿兎!」
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