106 / 562
第二章 愛する人
11.重なる想い
しおりを挟む
リリィのベッドで寝ていることに恥ずかしさを覚えて起き上がれば、何故だか知らないが服を着ていない。
不思議に思いつつもベッドから降りようと足を下ろすと柔らかい物にぶつかり慌てて引っ込めた。
その感触に嫌な予感が背中を駆け抜ける。
恐る恐る覗き込めば全裸の女性、力無く横たわる身体は無惨にも痛々しいアザで埋め尽くされていた。
「ユリ姉!?大丈夫か?ユリ姉っ!!!!」
慌てて抱き起こし、頬を叩くも返事がない。焦る頭ではどうしていいのか分からず、揺すってみるもののまるで死んだ人のように反応が無い。
「嘘だろ?ユリ姉っ!ユリ姉ぇ!!!!」
咄嗟の機転、耳を胸へと押し付ければ トクンットクンッ と静かに脈打つ生命の鼓動。
倒れそうな勢いで一安心すると自分達がどんな格好をしているのかにようやく気が付き、今更ながらに顔が熱くなるのを感じた。
そのまま床に転がして置くわけにもいかず、なるべく見ないように心掛けながら抱き上げると、俺の寝ていたベッドに移動させてシーツをかけてあげる。
薄い布越しに現れる凹凸、自分の意思とは関係なく想像が膨らむが、綺麗な顔にもある引っ掻いたような痣が否応なしに目に入ってしまう。
(!!!!)
頭を巡る夢での事情、今しがたとは違う意味で胸が高鳴り、それと共に呼吸が荒く、短くなっていく。胸を握り潰される錯覚に苦しくなりながらも、頭の中には一番考えたくない思考があぐらを掻いて居座る。
二人が裸である事、ユリ姉が傷だらけだという事実。この二つだけでも十分な状況証拠、否定する余地は無い。
『俺がユリ姉に酷いことをした』
覚えていようがいまいが、そこに自らの意思があったかどうかですら関係はない。
俺が……俺がヤッた。この俺がユリ姉を傷つけた!!!!
ユリ姉の横たわるベッドに肘を突き、俯く俺の頬を脂汗が流れて行く。鼓動は更に高鳴り、荒い息だけが吐き出さる。
どうしよう、どうしたらいい?ユリ姉が目覚めたらなんて言えばいいんだっ!俺は、ユリ姉と顔を合わせる権利なんてあるのか?
──俺は……なんて事をしているんだ!!!!
いっそ、怒りに燃えるユリ姉が俺を殺してくれたら……そんな考えに至った時、頬を包み込むような柔らかな感触がした。
「!!!!」
「よかったぁ、気が付いたのねぇ。心配かけさせてぇ、駄目な子ねぇ」
弾かれるように顔を上げれば、差し込む朝日の中でニッコリと微笑む天使のような顔。
その口から力無く漏れ出た声は、俺を軽蔑するでも、非難するでもなく、ただ俺を心配する優しい言葉だった。
安堵、後悔、謝罪、自己嫌悪、様々な感情が入り乱れ視界がボヤける中、何はともあれ慌ててユリ姉の手を取る。
「ユリ姉っごめん!俺、俺ユリ姉に酷いことを!!ごめんっ……本当にごめん……」
謝って済む事ではないと知りつつも謝る事しか思いつかなかった。握り締めた手へと懇願するように擦り付ける額。
しかし、泣きながら謝る俺の顔を柔らかい物が包み込み、子供をあやすようなゆっくりとしたペースで後頭部が撫でられる。
「レイの所為じゃないわぁ、貴方はなんにも悪くない。私が望んだ事だものぉ、気にすることなんてぇ何一つないのよぉ?私は大丈夫だからぁ、ほらぁ、泣かないで。貴方が傍に居てくれればぁどんな事だって平気よぉ?」
「でも!俺がっ……ユリ姉を……」
唇に当てられた人差し指が言葉を遮るとベッドに引きずり込まれた。
何が起こったのか理解できないでいると、息のかかる程の至近距離から琥珀色の瞳が覗き込んでくる。優しい光を宿した宝石には俺の顔だけが写っていた。
「私ぃ、レイの事が好きなの、ずっとずっと好きだったぁ。理由なんて分かんない、分かんないけどぉギルドで初めて見たときに ビビビッ と来たんだぁ。
覚えてるぅ?森で蜘蛛に捕まった貴方を助けたらぁ、私の胸に顔を埋めて グリグリ したのよぉ?いきなりでビックリしちゃったけどぉ全然嫌じゃなかったわぁ。 不思議よねぇ、ろくに喋った事もなかった人にそんな事されたらぁ絶対にぶっ飛ばすわ。でもぉ貴方は何かが違った。
チェラーノで一緒にいる間もぉ貴方のことが気になって仕方なかったわぁ。そのとき気が付いたの、私、レイのことが好きなんだって。
その後が大変だった。師匠の家で同じ屋根の下で一緒に暮らせていたのにぃ、ちっとも私に興味を示さないんだもん。ティナちゃんとわぁずっとベタベタしてるしぃ、エレナとだってイチャイチャしっぱなしぃ、私が入る余地なんて少しも無かったわぁ。
私じゃダメなのかなぁって思ったけどぉ、貴方ちっとも誰かに絞らないじゃない?もしかしたらぁ女の子に興味無いんじゃないかぁって真剣に考えたのよぉ?フフフッ、そんなこともなかったみたいだけどねぇ?
昨日のレイは、おばさま達の悲惨な死とぉ怒りとでぇ心が耐えられなかったみたい。意識が自分の殻に閉じこもってしまってぇ、廃人になりかけてたわぁ。だからぁ私のナイスバディで目覚めさせてあげたって訳なのよぉ?
最初はものすっごく怖かったわぁ。だってぇ初めてだったんだもの。怖くて怖くてたまらなかった、あんなに震えたのは生まれて初めてかも知れない。
それでも平気だったぁ。だってぇ大好きなレイに抱かれるんですもの、怖いからなんて言ってられないわぁ。そんなこと言ってたらぁ、いつまで経っても貴方が私に振り向いてくれる事なんてなさそうだったんだものぉ。 私ってぇズルい女よねぇ……振り向いてくれないからってぇ身体で興味を惹かせたのよぉ?軽蔑するかしら?
だからねぇ、私が私の欲望の為に望んでレイに抱かれたのよぉ、貴方が気にする事なんて何一つないわぁ」
ユリ姉はずっと前から俺の事を思ってくれてた。俺はユリ姉の事を綺麗で可愛い人だとは思ってたけど……好きだったのかな?よく分からない。俺、そういうの疎いな。
「でも……それでも俺がしでかした事には変わりないよ、ごめん……謝って済むことじゃ、取り返しの付く事じゃないのは分かってる。けど、それでもユリ姉に償いがしたい。償いなんて偉そうな事言っても何も出来ないだろうけど、何か……何か俺の出来る事をしてあげたいんだ。
なんでもいいっ、何でも言ってくれよ!たとえ死ねと言われれば俺はそれを受け……」
言葉を遮るように重ねられた唇、柔らかな舌が口の中へと入り込み俺の舌へと絡みつく。鼻から溢れる甘い声と熱い息、頭の奥が心地良く痺れて何も考えられない……否、何も考えたくない。混じり合う唾液は二人が一つになったような錯覚をさせる。
最初はあった戸惑いもすぐに鳴りを潜ませ、求めに応じていただけのつもりがいつの間にか俺の方がユリ姉の内へと攻め入り、本能の赴くままに口内を貪っていた。
名残惜しそうに離れたユリ姉は、今まで見たことの無かったうっとりとする艶っぽい表情。崩れ落ちるように俺の胸へと顔を押し付けると、身体を丸めて動かなくなる。
「レイってぇ変なところで真面目よねぇ?それはそれでぇ良いところでもあるけどぉ……私の話ぃ聞いてたぁ?レイを正気に戻す為にしたのにぃ死ねなんて言うわけないじゃない。
でもぉ……そんなレイが好きなのよ。真面目でぇ、真っ直ぐでぇ、何に対しても一生懸命……それでもレイが気に病むのならぁ償いの機会をあげるわぁ。
何でも良いのよねぇ?何でもしてくれるのよねぇえ?」
「勿論だよ、何でも言ってくれ。俺は何したらいい?どうしたらいい?」
俺の視線から逃れるように少しだけズリ退がったユリ姉は、顔は離さぬまま向きを変えて視線を向けてくる。
耳まで染め上げた真っ赤な顔に上目遣い、琥珀色の瞳には涙を潤ませていた。
小刻みに震えながら力無く腕を掴む様子は、姉弟子として俺達を引っ張ってくれていた面影など微塵もない。そこにいるのはか弱き乙女、五年もの間一緒に過ごした中で一番可愛く見えた瞬間だった。
思い返せばギルドの酒場、ユリ姉を初めて見た時はこんなにも綺麗な人がいるんだとその姿が頭から離れなかった。
二人きりの馬車旅、あんなに心躍る出来事はかつてない。膝枕を誘われた時なんて心臓が爆発するんじゃないかというほど物凄くドキドキし、ユリ姉の匂い感じる柔らかな太腿の上では時が止まれば良いとさえ思った。
頼もしく在りながらお茶目で、他に並ぶ者が無いほどに綺麗なくせに可愛いユリ姉。思い返せばいつも俺の視線はユリ姉を追っていた気がする。
そうか……俺は、ユリ姉のことが好きだったんだ。
いつも一緒に居て、それが当たり前に思えて、鈍感な俺は自分の気持ちに気が付かなかった。
ティナの気持ちにも『身分が違う』と言い訳をし、エレナの思いも『コイツはこういう奴』と見て見ぬフリをしてきた。
それは俺の中がユリ姉で一杯だったからなんだな。
『ユリ姉のことが愛おしい』
気が付いてしまえば堰を切ったように溢れ出てくる感情、狂おしい思いが俺の中で暴れまわる。
「私を抱いて? 今度はちゃんと優しくしてねぇ……愛してるわ、レイシュア」
「俺も愛してるよ、ユリアーネ」
再び重なり合う唇。
俺達は朝日の煌めくベッドの上、互いの気持ちを知らしめようと絡み合い一つに溶けて行った。
不思議に思いつつもベッドから降りようと足を下ろすと柔らかい物にぶつかり慌てて引っ込めた。
その感触に嫌な予感が背中を駆け抜ける。
恐る恐る覗き込めば全裸の女性、力無く横たわる身体は無惨にも痛々しいアザで埋め尽くされていた。
「ユリ姉!?大丈夫か?ユリ姉っ!!!!」
慌てて抱き起こし、頬を叩くも返事がない。焦る頭ではどうしていいのか分からず、揺すってみるもののまるで死んだ人のように反応が無い。
「嘘だろ?ユリ姉っ!ユリ姉ぇ!!!!」
咄嗟の機転、耳を胸へと押し付ければ トクンットクンッ と静かに脈打つ生命の鼓動。
倒れそうな勢いで一安心すると自分達がどんな格好をしているのかにようやく気が付き、今更ながらに顔が熱くなるのを感じた。
そのまま床に転がして置くわけにもいかず、なるべく見ないように心掛けながら抱き上げると、俺の寝ていたベッドに移動させてシーツをかけてあげる。
薄い布越しに現れる凹凸、自分の意思とは関係なく想像が膨らむが、綺麗な顔にもある引っ掻いたような痣が否応なしに目に入ってしまう。
(!!!!)
頭を巡る夢での事情、今しがたとは違う意味で胸が高鳴り、それと共に呼吸が荒く、短くなっていく。胸を握り潰される錯覚に苦しくなりながらも、頭の中には一番考えたくない思考があぐらを掻いて居座る。
二人が裸である事、ユリ姉が傷だらけだという事実。この二つだけでも十分な状況証拠、否定する余地は無い。
『俺がユリ姉に酷いことをした』
覚えていようがいまいが、そこに自らの意思があったかどうかですら関係はない。
俺が……俺がヤッた。この俺がユリ姉を傷つけた!!!!
ユリ姉の横たわるベッドに肘を突き、俯く俺の頬を脂汗が流れて行く。鼓動は更に高鳴り、荒い息だけが吐き出さる。
どうしよう、どうしたらいい?ユリ姉が目覚めたらなんて言えばいいんだっ!俺は、ユリ姉と顔を合わせる権利なんてあるのか?
──俺は……なんて事をしているんだ!!!!
いっそ、怒りに燃えるユリ姉が俺を殺してくれたら……そんな考えに至った時、頬を包み込むような柔らかな感触がした。
「!!!!」
「よかったぁ、気が付いたのねぇ。心配かけさせてぇ、駄目な子ねぇ」
弾かれるように顔を上げれば、差し込む朝日の中でニッコリと微笑む天使のような顔。
その口から力無く漏れ出た声は、俺を軽蔑するでも、非難するでもなく、ただ俺を心配する優しい言葉だった。
安堵、後悔、謝罪、自己嫌悪、様々な感情が入り乱れ視界がボヤける中、何はともあれ慌ててユリ姉の手を取る。
「ユリ姉っごめん!俺、俺ユリ姉に酷いことを!!ごめんっ……本当にごめん……」
謝って済む事ではないと知りつつも謝る事しか思いつかなかった。握り締めた手へと懇願するように擦り付ける額。
しかし、泣きながら謝る俺の顔を柔らかい物が包み込み、子供をあやすようなゆっくりとしたペースで後頭部が撫でられる。
「レイの所為じゃないわぁ、貴方はなんにも悪くない。私が望んだ事だものぉ、気にすることなんてぇ何一つないのよぉ?私は大丈夫だからぁ、ほらぁ、泣かないで。貴方が傍に居てくれればぁどんな事だって平気よぉ?」
「でも!俺がっ……ユリ姉を……」
唇に当てられた人差し指が言葉を遮るとベッドに引きずり込まれた。
何が起こったのか理解できないでいると、息のかかる程の至近距離から琥珀色の瞳が覗き込んでくる。優しい光を宿した宝石には俺の顔だけが写っていた。
「私ぃ、レイの事が好きなの、ずっとずっと好きだったぁ。理由なんて分かんない、分かんないけどぉギルドで初めて見たときに ビビビッ と来たんだぁ。
覚えてるぅ?森で蜘蛛に捕まった貴方を助けたらぁ、私の胸に顔を埋めて グリグリ したのよぉ?いきなりでビックリしちゃったけどぉ全然嫌じゃなかったわぁ。 不思議よねぇ、ろくに喋った事もなかった人にそんな事されたらぁ絶対にぶっ飛ばすわ。でもぉ貴方は何かが違った。
チェラーノで一緒にいる間もぉ貴方のことが気になって仕方なかったわぁ。そのとき気が付いたの、私、レイのことが好きなんだって。
その後が大変だった。師匠の家で同じ屋根の下で一緒に暮らせていたのにぃ、ちっとも私に興味を示さないんだもん。ティナちゃんとわぁずっとベタベタしてるしぃ、エレナとだってイチャイチャしっぱなしぃ、私が入る余地なんて少しも無かったわぁ。
私じゃダメなのかなぁって思ったけどぉ、貴方ちっとも誰かに絞らないじゃない?もしかしたらぁ女の子に興味無いんじゃないかぁって真剣に考えたのよぉ?フフフッ、そんなこともなかったみたいだけどねぇ?
昨日のレイは、おばさま達の悲惨な死とぉ怒りとでぇ心が耐えられなかったみたい。意識が自分の殻に閉じこもってしまってぇ、廃人になりかけてたわぁ。だからぁ私のナイスバディで目覚めさせてあげたって訳なのよぉ?
最初はものすっごく怖かったわぁ。だってぇ初めてだったんだもの。怖くて怖くてたまらなかった、あんなに震えたのは生まれて初めてかも知れない。
それでも平気だったぁ。だってぇ大好きなレイに抱かれるんですもの、怖いからなんて言ってられないわぁ。そんなこと言ってたらぁ、いつまで経っても貴方が私に振り向いてくれる事なんてなさそうだったんだものぉ。 私ってぇズルい女よねぇ……振り向いてくれないからってぇ身体で興味を惹かせたのよぉ?軽蔑するかしら?
だからねぇ、私が私の欲望の為に望んでレイに抱かれたのよぉ、貴方が気にする事なんて何一つないわぁ」
ユリ姉はずっと前から俺の事を思ってくれてた。俺はユリ姉の事を綺麗で可愛い人だとは思ってたけど……好きだったのかな?よく分からない。俺、そういうの疎いな。
「でも……それでも俺がしでかした事には変わりないよ、ごめん……謝って済むことじゃ、取り返しの付く事じゃないのは分かってる。けど、それでもユリ姉に償いがしたい。償いなんて偉そうな事言っても何も出来ないだろうけど、何か……何か俺の出来る事をしてあげたいんだ。
なんでもいいっ、何でも言ってくれよ!たとえ死ねと言われれば俺はそれを受け……」
言葉を遮るように重ねられた唇、柔らかな舌が口の中へと入り込み俺の舌へと絡みつく。鼻から溢れる甘い声と熱い息、頭の奥が心地良く痺れて何も考えられない……否、何も考えたくない。混じり合う唾液は二人が一つになったような錯覚をさせる。
最初はあった戸惑いもすぐに鳴りを潜ませ、求めに応じていただけのつもりがいつの間にか俺の方がユリ姉の内へと攻め入り、本能の赴くままに口内を貪っていた。
名残惜しそうに離れたユリ姉は、今まで見たことの無かったうっとりとする艶っぽい表情。崩れ落ちるように俺の胸へと顔を押し付けると、身体を丸めて動かなくなる。
「レイってぇ変なところで真面目よねぇ?それはそれでぇ良いところでもあるけどぉ……私の話ぃ聞いてたぁ?レイを正気に戻す為にしたのにぃ死ねなんて言うわけないじゃない。
でもぉ……そんなレイが好きなのよ。真面目でぇ、真っ直ぐでぇ、何に対しても一生懸命……それでもレイが気に病むのならぁ償いの機会をあげるわぁ。
何でも良いのよねぇ?何でもしてくれるのよねぇえ?」
「勿論だよ、何でも言ってくれ。俺は何したらいい?どうしたらいい?」
俺の視線から逃れるように少しだけズリ退がったユリ姉は、顔は離さぬまま向きを変えて視線を向けてくる。
耳まで染め上げた真っ赤な顔に上目遣い、琥珀色の瞳には涙を潤ませていた。
小刻みに震えながら力無く腕を掴む様子は、姉弟子として俺達を引っ張ってくれていた面影など微塵もない。そこにいるのはか弱き乙女、五年もの間一緒に過ごした中で一番可愛く見えた瞬間だった。
思い返せばギルドの酒場、ユリ姉を初めて見た時はこんなにも綺麗な人がいるんだとその姿が頭から離れなかった。
二人きりの馬車旅、あんなに心躍る出来事はかつてない。膝枕を誘われた時なんて心臓が爆発するんじゃないかというほど物凄くドキドキし、ユリ姉の匂い感じる柔らかな太腿の上では時が止まれば良いとさえ思った。
頼もしく在りながらお茶目で、他に並ぶ者が無いほどに綺麗なくせに可愛いユリ姉。思い返せばいつも俺の視線はユリ姉を追っていた気がする。
そうか……俺は、ユリ姉のことが好きだったんだ。
いつも一緒に居て、それが当たり前に思えて、鈍感な俺は自分の気持ちに気が付かなかった。
ティナの気持ちにも『身分が違う』と言い訳をし、エレナの思いも『コイツはこういう奴』と見て見ぬフリをしてきた。
それは俺の中がユリ姉で一杯だったからなんだな。
『ユリ姉のことが愛おしい』
気が付いてしまえば堰を切ったように溢れ出てくる感情、狂おしい思いが俺の中で暴れまわる。
「私を抱いて? 今度はちゃんと優しくしてねぇ……愛してるわ、レイシュア」
「俺も愛してるよ、ユリアーネ」
再び重なり合う唇。
俺達は朝日の煌めくベッドの上、互いの気持ちを知らしめようと絡み合い一つに溶けて行った。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
ドラゴン=八角=アーム~無限修羅~
AKISIRO
ファンタジー
ロイは戦場の果てに両腕を損傷してしまう。
絶対絶命の中、沢山の友が死に、国が滅び。
1人の兵士として戦い続け、最後の1人までになってしまい。
それはやってきた。
空よりドラゴンが落下してくる。ドラゴンの力を得たロイの両腕はドラゴンアームとなり果ててしまう。
ドラゴンの娘デルと共に、100人以上の仲間を集める為、捨てた故郷に舞い戻るのだが、
無数の異世界、無数の神の世界、地球、ありとあらゆる世界が交差していく。
ロイと100人以上の仲間達は旅の果てに世界の真実を知ってしまう。
全ての生命の数だけ〇〇があるという事を!
※別サイト様にても掲載しています。
“絶対悪”の暗黒龍
alunam
ファンタジー
暗黒龍に転生した俺、今日も女勇者とキャッキャウフフ(?)した帰りにオークにからまれた幼女と出会う。
幼女と最強ドラゴンの異世界交流に趣味全開の要素をプラスして書いていきます。
似たような主人公の似たような短編書きました
こちらもよろしくお願いします
オールカンストキャラシート作ったら、そのキャラが現実の俺になりました!~ダイスの女神と俺のデタラメTRPG~
http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/402051674/
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
リエラの素材回収所
霧ちゃん→霧聖羅
ファンタジー
リエラ、12歳。孤児院出身。
学校での適正職診断の結果は「錬金術師」。
なんだか沢山稼げそうなお仕事に適性があるなんて…!
沢山稼いで、孤児院に仕送り出来るように、リエラはなる♪
そんなこんなで、弟子入りした先は『迷宮都市』として有名な町で……
秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話
嵐華子
ファンタジー
【旧題】秘密の多い魔力0令嬢の自由ライフ。
【あらすじ】
イケメン魔術師一家の超虚弱体質養女は史上3人目の魔力0人間。
しかし本人はもちろん、通称、魔王と悪魔兄弟(義理家族達)は気にしない。
ついでに魔王と悪魔兄弟は王子達への雷撃も、国王と宰相の頭を燃やしても、凍らせても気にしない。
そんな一家はむしろ互いに愛情過多。
あてられた周りだけ食傷気味。
「でも魔力0だから魔法が使えないって誰が決めたの?」
なんて養女は言う。
今の所、魔法を使った事ないんですけどね。
ただし時々白い獣になって何かしらやらかしている模様。
僕呼びも含めて養女には色々秘密があるけど、令嬢の成長と共に少しずつ明らかになっていく。
一家の望みは表舞台に出る事なく家族でスローライフ……無理じゃないだろうか。
生活にも困らず、むしろ養女はやりたい事をやりたいように、自由に生きているだけで懐が潤いまくり、慰謝料も魔王達がガッポリ回収しては手渡すからか、懐は潤っている。
でもスローなライフは無理っぽい。
__そんなお話。
※お気に入り登録、コメント、その他色々ありがとうございます。
※他サイトでも掲載中。
※1話1600〜2000文字くらいの、下スクロールでサクサク読めるように句読点改行しています。
※主人公は溺愛されまくりですが、一部を除いて恋愛要素は今のところ無い模様。
※サブも含めてタイトルのセンスは壊滅的にありません(自分的にしっくりくるまでちょくちょく変更すると思います)。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる