黒の皇子と七人の嫁

野良ねこ

文字の大きさ
上 下
40 / 562
序章 旅の始まりは波乱と共に

38.対価と報酬

しおりを挟む
 やはり情報があるのか?それともカマかけか?どっちにしろ何か俺から提供しなくては話が先に進みそうにない。たぶん金は求めてないんだろうな。だとしたら俺が渡せるものなんて何があるんだ?
 俺か悩んでいるのをじっと見つめる老婆だったが、なぜか突然クツクツと奇妙な笑いが漏れ出てくる。

「金と言い出さなかったのは褒めてあげるよ。だが何も持たないお前さんに情報はやれない。それともお前さん自身が対価となるかい?」

 ギョッとする婆ちゃんの提案。そ、それは……俺、売られるの?それとも食べられる!?
 でもそれじゃあ情報貰っても意味が無い……事はないのか。ユリアーネさんとリリィがいるのなら……いやいやいや、まてまてっ!!俺、まだ死にたくないし!でも情報は欲しいしっ!

「面白い子だね、気に入ったから少しだけチャンスをあげようじゃないか。黄色を三個持って来な、それ以上は負けられないね」
「待って!貴方の持つ情報は私達の欲しいものなのかしらぁ?」

 俺の両肩に手を置き抱きつく勢いで身を乗り出すユリアーネさん。狭いから仕方がないとはいえ大きなお胸様が当たってますけど!?ヤバイ、顔がにやけそう……今は我慢我慢我慢っ!!

「さぁてどうだろうねぇ。それを決めるのはお前さん達だろう?見たところずいぶんと困ってるようだけど、どうするんだい?払うのかい?払わないのかい?」

 俺の顔のすぐ隣、真剣な眼差しで老婆を見つめるユリアーネさん。この体勢いいなぁ、背中のおっぱいが……ムフフッ、ユリアーネさんの良い匂いがする。

「時間をくれない?」

 俺もこのままでいられる時間がもっと欲しいです!

「情報はね、鮮度が命だよ。明日の昼までは待つ、それ以上は無理さね」

「わかったわ」と言い俺から離れるおっぱい、あぁ……名残惜しい。回れ右をするとリリィを押してそのまま入り口へと向かうユリアーネさん、待っておっぱいさんっ!

「若いっていいことだねぇ」

 最後に聞こえた老婆の声はしみじみとしたものだった。俺の思考、詠まれたのかっ!?恥ずかしい……。

「黄色三個って何?」

 素朴な疑問をユリアーネさんにぶつけてみた。

「魔石は知ってるよねぇ?黄色は中級モンスターから獲れるんだけどぉ、一般の冒険者ではそれを狩るのは結構大変でねぇ。もちろんそれなりの値段がするものなのぉ。それが三個とかぁ、ふっかけ過ぎも良いところだわっ!」

 プリプリするユリアーネさんは初めて見たが、握り拳で明後日の空に怒る姿はとても可愛い。それにしても中級モンスターかぁ。まだモンスターって会ったことないけど、今の俺じゃ、まだ勝てないのかな。

 その後は街中に戻り、黄色の魔石を探して雑貨屋巡りをした。聞けば高価過ぎて需要が無いから普通は置いてないそうだ。そういうのはたとえ買い取っても金持ちの商人や貴族の所に流れるのだという。
 青、黄、赤と大きく分けて三段階に分かれる魔石の中で黄色の魔石は黄緑色から黄色を経てオレンジまでと最も種類が多く、値段に関しても一つで金貨三十~百枚を超える物まであるらしい。街中を巡りやっと見つけた一粒の黄色魔石は金貨四十五枚もしたので即決するわけにはいかず保留にした……高いよ。




「ぷふぁ~~っ、レイ君、おかわりぃっ!」

 宿の食堂でキューっと勢い良くエールを飲み干すヤケ酒気味のユリアーネさん。それを見つつリリィと三人でご飯を摘んでるとミカ兄達も帰ってきた。

「ソイツどうした?」

 壊れかけてるユリアーネさんに呆れながらも手に持つエールを煽りながらギンジさんが平然と聞いてくる。しかたなしに俺が今日の出来事を話せばミカ兄とギンジさんは大笑いし始めた。

「お前等、もっとうまく交渉できねぇのかよ。俺なら石一つまで負けさせるな!まぁ情報屋までたどり着いたのは褒めてやんよっ、飲め飲め!で?黄色三個だっけか?」

 ユリアーネさんの肩に手を回し ニマニマ とする嫌らしい笑顔を近づけると、反対の手で鞄を漁り握り拳を机の上へと乗せる。
 眉間に皺を寄せ、あからさまに不機嫌そうにミカ兄を見るユリアーネさんだったが、ミカ兄の手が開き ガラガラ と音がすると、それだけで何か分かったかのように ハッ として机に目をやる。

 そこにあるのは角の丸まった小石。色とりどりの魔石が二十個近く、照明の灯りを受けて綺麗な光を放っていた。

「なにこれっ!綺麗ねぇ~、ミカ兄一つ頂戴!」

 いやいやリリィさん、昼間値段聞いたよね?黄色魔石が二十個だとしたら最低でも……金貨六百枚!?ユリアーネさんも目を丸くして驚いている。
 しかもなんか赤いやつが一つ混ざってるぞ?それを見つけたリリィがすかさず手にとって眺めだす。

「ミカ兄っ!私これが良いっ、これ頂戴!」
「今夜俺の部屋に泊まるなら考えてやってもいいぞ?どうする?」
「じゃあいらない……」

 高価な魔石を石ころのように ポイッ と投げ捨てると プクッ とかわいく膨れて頬杖を突いてそっぽを向く。
 赤色魔石がいくらするか知らないけど黄色の魔石で金貨百枚まで行くんだ、それ以上すると思って間違いないだろう。一晩でそれだけ稼げるチャンスがあるって……女って凄いな!

「赤色なんてどぉしたのよ?私だって初めて見たわぁ」

「あぁ、前にギンジと二人で殺ったんだよ。あれは強かったな!なぁ、ギンジ」

「ああ、楽しかったね。またやりたいけど、なかなか会えないしね。それよりミカル、こんなとこで店を広げるのは良くないよ。周りの迷惑だ」

 確かにコレは金貨より遥かに高価なものだ、人目につくところで見せびらかす物ではないな。さすがギンジさん、常識人。ミカ兄とはこうしてバランス取ってるんだなぁ。

「わーったよ、しまうよ。ギルドじゃねぇんだからちょっとぐれぇいいじゃねぇかよ。んで、黄色三つは明日持って行け。どんな情報かは気になるが、お前達に任せるわ」

 これで対価は用意できた。明日また、あの陰気臭いところに乗り込まなくてはならないかと思うと少し憂鬱だが、良い情報だと願うとしよう。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

“絶対悪”の暗黒龍

alunam
ファンタジー
暗黒龍に転生した俺、今日も女勇者とキャッキャウフフ(?)した帰りにオークにからまれた幼女と出会う。  幼女と最強ドラゴンの異世界交流に趣味全開の要素をプラスして書いていきます。  似たような主人公の似たような短編書きました こちらもよろしくお願いします  オールカンストキャラシート作ったら、そのキャラが現実の俺になりました!~ダイスの女神と俺のデタラメTRPG~  http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/402051674/

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

強くてニューサーガ

阿部正行
ファンタジー
人族と魔族が争い続ける世界で魔王が大侵攻と言われる総攻撃を仕掛けてきた。 滅びかける人族が最後の賭けとも言うべき反撃をする。 激闘の末、ほとんど相撃ちで魔王を倒した人族の魔法剣士カイル。 自らの命も消えかけ、後悔のなか死を迎えようとしている時ふと目に入ったのは赤い宝石。 次に気づいたときは滅んだはずの故郷の自分の部屋。 そして死んだはずの人たちとの再会…… イベント戦闘で全て負け、選択肢を全て間違え最終決戦で仲間全員が死に限りなくバッドエンドに近いエンディングを迎えてしまった主人公がもう一度やり直す時、一体どんな結末を迎えるのか? 強くてニューゲームファンタジー!

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

リエラの素材回収所

霧ちゃん→霧聖羅
ファンタジー
リエラ、12歳。孤児院出身。 学校での適正職診断の結果は「錬金術師」。 なんだか沢山稼げそうなお仕事に適性があるなんて…! 沢山稼いで、孤児院に仕送り出来るように、リエラはなる♪ そんなこんなで、弟子入りした先は『迷宮都市』として有名な町で……

秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子
ファンタジー
【旧題】秘密の多い魔力0令嬢の自由ライフ。 【あらすじ】 イケメン魔術師一家の超虚弱体質養女は史上3人目の魔力0人間。 しかし本人はもちろん、通称、魔王と悪魔兄弟(義理家族達)は気にしない。 ついでに魔王と悪魔兄弟は王子達への雷撃も、国王と宰相の頭を燃やしても、凍らせても気にしない。 そんな一家はむしろ互いに愛情過多。 あてられた周りだけ食傷気味。 「でも魔力0だから魔法が使えないって誰が決めたの?」 なんて養女は言う。 今の所、魔法を使った事ないんですけどね。 ただし時々白い獣になって何かしらやらかしている模様。 僕呼びも含めて養女には色々秘密があるけど、令嬢の成長と共に少しずつ明らかになっていく。 一家の望みは表舞台に出る事なく家族でスローライフ……無理じゃないだろうか。 生活にも困らず、むしろ養女はやりたい事をやりたいように、自由に生きているだけで懐が潤いまくり、慰謝料も魔王達がガッポリ回収しては手渡すからか、懐は潤っている。 でもスローなライフは無理っぽい。 __そんなお話。 ※お気に入り登録、コメント、その他色々ありがとうございます。 ※他サイトでも掲載中。 ※1話1600〜2000文字くらいの、下スクロールでサクサク読めるように句読点改行しています。 ※主人公は溺愛されまくりですが、一部を除いて恋愛要素は今のところ無い模様。 ※サブも含めてタイトルのセンスは壊滅的にありません(自分的にしっくりくるまでちょくちょく変更すると思います)。

処理中です...