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序章 旅の始まりは波乱と共に
23.変わらない街並み
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程よく膨れたお腹をさすりながらブラついていると町の中心から少し外れたところに綺麗な公園があった。広々とした遊歩道の脇には大きめの木がいくつも植えられており所々にベンチが設置してある。公園内には散歩してる人やベンチに座りご飯を食べてる人がけっこう居て、町の人の憩いの場所としてなかなかに賑わっている。
長閑な公園の中は日陰も多く、木漏れ日の中で昼寝するのもいいかもしれない。
「ティナは街で攫われたんだよな?結構頻繁にブラついているの?」
「習い事の合間に屋敷を抜け出してプラプラとしているのです。お一人で行かれるものですから皆が心配するのです。困ったものなのです」
頬を掻き、苦笑いで誤魔化そうとするティナ。しかし元々少し上瞼の下りる眠たげな目をしたクロエさんが目を細め、冷ややかなジト目でここぞとばかりに苦情を入れてくる。そんなに頻繁なのか、そりゃメイドさん達は大変だろうな。町の人達に可愛がられているとはいえ貴族の娘なんだから、ちゃんとお供を付けないと危ないだろうに。また攫われました、なんて事になったら洒落にならないぞ。
「ほ、ほら、湖に行ってみない?天気もいいし気持ちが良いわよっ!」
少々強引な話題転換に付き合い向かったのは、北の外れにある半分が木に囲まれた静かな場所。そこは綺麗な水を蓄えた広い湖で、水際には小さな丸い石が絨毯のように敷き詰められていた。
木陰にブーツを脱ぎ捨て素足で入ってみる。ひんやりと冷たく気持ちがいい。水の透明度が高くて少し深場で泳いでいる魚までよく見え、時折吹く暖かな風が起こした湖面の揺らぎで見えたり隠れたりしている。
水に足を浸してボーッと魚を眺めていたら、ティナとリリィも真似して素足になり ジャブジャブ と音を立ててやってくる。
「冷たくて気持ちいいねっ、もう少し暑くなったら泳いでもいいわね」
「ここは流れもないので、暑い時期になると泳ぎに来る人が結構います。頑張れば魚も獲れるので、みんなでバーベキューなんかすると楽しいんですよっ」
この貴族令嬢は庶民と何をしてるんだ?それだけこの町が平和だってことかな?
ティナって本当に気取らないな。貴族ってもっと上から見下すイメージだったけど違うような気がしてきた。ティナが特別なだけ?
振り返ればすぐそこの小さな丘の上、一本だけ生える木の木陰に座りアルとクロエさんが楽しそうに話していた。
「それっ!」
不意に飛んでくる水、超冷たいぞ!まだそういう事するには早いだろっ!
「馬鹿リリィ!風邪ひくわっ!」
「えいっ!」
ティナまで真似をし始める。何してんのっ!んがーっ!やられたらやり返す、覚悟しろっ!?
「とりゃとりゃとりゃーーっ!」
「きゃーーーーっ!」
「ちょ、レイ!やり過ぎっ!」
「お黙りなさいっ!倍返しじゃっ」
「むむむっ!負けてなるものかっ、行くよティナ!」
「了解っ、リリィ隊長!」
不毛な争いの末、三人まとめてべったんこ。楽しかったけどな……これどうすんの?ちょっと寝てれば乾くかな?
波打ち際、小石の浜に足の先だけ水に浸けて横になれば背中に小石がほどよく当たってちょっと気持ちが良い。水が チャプチャプ と小気味好い音を立てて打ち寄せなんだか眠くなって来た。
気が付くと陽が少し傾きつつある、いつのまにか寝てたらしい。
背中が少し痛いと感じながら起き上がってみれば両隣に転がる女の子。二人とも スピスピ と小さな寝息を立ててお昼寝の最中だが、可愛い寝顔を見てると悪戯心が顔を出す。
ティナのほっぺを指で突ついてみれば プニプニ で柔らかく気持ちがいい。
「んん……」
リリィのほっぺも ツンツン してみるとティナと同じで柔らかい──と、思ったら ペシッ と手を叩かれた!俺の手は虫じゃないぞっ。
二人を交互に ツンツン して遊んでいたらさすがに目を覚ました。
「おはよ、二人共よく寝てたね。まだ服乾いてないけど、どうしよう?」
「クロエ~っ、服を乾かしてもらえます?」
ティナが声をかけると溜息を吐くクロエさん。俺達の所にくると紅い瞳の覗く眠たげな目で、呆れたような冷ややかな視線を俺達に向ける。
「お嬢様、はしゃぎ過ぎなのです。三人共目をつぶってくださいなのです」
三人の足元から巻き起こる柔らかな暖かい風。クロエさんは風魔法に火魔法を混ぜて温風を出してくれている、複合魔法ってやつだな。二つの魔法を掛け合わせて違う効果を出す魔法の使い方なんだけど、かなり難易度が高いらしい。聞くところによれば二割くらいの人しか出来ないらしく、複合魔法が使える人は良い仕事に就けると言われるくらい需要があるみたい。
服を乾かすのも、ただの風より温風の方が早いし、お風呂の用意も水を入れて温めるよりお湯が出せた方が早いもんな。
服が乾くとギルドに行ってみた。ギルドはどこでも同じ造りらしく、入り口から見て左手に受付カウンター、正面にはクエストの掲示板、右手側は食堂となっているようだ。
ランクCになったので受けられるクエストが変わっている事を思い出し、ちょっと覗いてみたかったのだ。
親切な事に依頼書には、対象となる魔物がどんな奴なのかも書いてあるので初心者の俺達にとっては非常に助かる。
蛇、蛙、猪、鹿、犬、鳥、鼠、狸、熊、鰐、害獣に指定されている獣の種類は多いらしく、たくさんの討伐依頼が並んでいた。鰐とか熊とか強そうだが、それはCⅠって書いてあるからCⅢの俺達は実績を積まないと受けられない依頼だ。
俺達でも狩れそうな魔物がいたので明日にでも受けてみるかな?しばらくこの町に留まる事になったし、いくら何もしなくても良いと言われたとて暇を持て余して遊び呆けていては、何のために冒険者になったのか分からない。
依頼期日を確認すると七日程あるもので、街道でも襲って来たハングリードッグの討伐依頼の受付だけを済ませてその日は屋敷に戻った。
夕食の席でその事を話せば、ティナが魔物の討伐に付いて来たいと言い出したので困ってしまう。
「お前はもう少し自分の立場を理解しなさい。町の中ならまだしも魔物の討伐など付いて行くだけにしても許可できるわけないだろう?家で大人しくしていなさい。本当は町の散策も禁止したいのだがな」
ランドーアさんに駄目出しされて凹んでるティナだが付いてくるのは危ないので俺も賛成できない。
「クロエ、レイ君達の世話を頼む。この土地に不慣れだろう、道案内やフォローをしてやってくれ。
なに、クロエは腕も立つから心配は要らんよ」
いやいや、心配無いって言ってもクロエさんってメイドさんでしょう?大丈夫なの?
長閑な公園の中は日陰も多く、木漏れ日の中で昼寝するのもいいかもしれない。
「ティナは街で攫われたんだよな?結構頻繁にブラついているの?」
「習い事の合間に屋敷を抜け出してプラプラとしているのです。お一人で行かれるものですから皆が心配するのです。困ったものなのです」
頬を掻き、苦笑いで誤魔化そうとするティナ。しかし元々少し上瞼の下りる眠たげな目をしたクロエさんが目を細め、冷ややかなジト目でここぞとばかりに苦情を入れてくる。そんなに頻繁なのか、そりゃメイドさん達は大変だろうな。町の人達に可愛がられているとはいえ貴族の娘なんだから、ちゃんとお供を付けないと危ないだろうに。また攫われました、なんて事になったら洒落にならないぞ。
「ほ、ほら、湖に行ってみない?天気もいいし気持ちが良いわよっ!」
少々強引な話題転換に付き合い向かったのは、北の外れにある半分が木に囲まれた静かな場所。そこは綺麗な水を蓄えた広い湖で、水際には小さな丸い石が絨毯のように敷き詰められていた。
木陰にブーツを脱ぎ捨て素足で入ってみる。ひんやりと冷たく気持ちがいい。水の透明度が高くて少し深場で泳いでいる魚までよく見え、時折吹く暖かな風が起こした湖面の揺らぎで見えたり隠れたりしている。
水に足を浸してボーッと魚を眺めていたら、ティナとリリィも真似して素足になり ジャブジャブ と音を立ててやってくる。
「冷たくて気持ちいいねっ、もう少し暑くなったら泳いでもいいわね」
「ここは流れもないので、暑い時期になると泳ぎに来る人が結構います。頑張れば魚も獲れるので、みんなでバーベキューなんかすると楽しいんですよっ」
この貴族令嬢は庶民と何をしてるんだ?それだけこの町が平和だってことかな?
ティナって本当に気取らないな。貴族ってもっと上から見下すイメージだったけど違うような気がしてきた。ティナが特別なだけ?
振り返ればすぐそこの小さな丘の上、一本だけ生える木の木陰に座りアルとクロエさんが楽しそうに話していた。
「それっ!」
不意に飛んでくる水、超冷たいぞ!まだそういう事するには早いだろっ!
「馬鹿リリィ!風邪ひくわっ!」
「えいっ!」
ティナまで真似をし始める。何してんのっ!んがーっ!やられたらやり返す、覚悟しろっ!?
「とりゃとりゃとりゃーーっ!」
「きゃーーーーっ!」
「ちょ、レイ!やり過ぎっ!」
「お黙りなさいっ!倍返しじゃっ」
「むむむっ!負けてなるものかっ、行くよティナ!」
「了解っ、リリィ隊長!」
不毛な争いの末、三人まとめてべったんこ。楽しかったけどな……これどうすんの?ちょっと寝てれば乾くかな?
波打ち際、小石の浜に足の先だけ水に浸けて横になれば背中に小石がほどよく当たってちょっと気持ちが良い。水が チャプチャプ と小気味好い音を立てて打ち寄せなんだか眠くなって来た。
気が付くと陽が少し傾きつつある、いつのまにか寝てたらしい。
背中が少し痛いと感じながら起き上がってみれば両隣に転がる女の子。二人とも スピスピ と小さな寝息を立ててお昼寝の最中だが、可愛い寝顔を見てると悪戯心が顔を出す。
ティナのほっぺを指で突ついてみれば プニプニ で柔らかく気持ちがいい。
「んん……」
リリィのほっぺも ツンツン してみるとティナと同じで柔らかい──と、思ったら ペシッ と手を叩かれた!俺の手は虫じゃないぞっ。
二人を交互に ツンツン して遊んでいたらさすがに目を覚ました。
「おはよ、二人共よく寝てたね。まだ服乾いてないけど、どうしよう?」
「クロエ~っ、服を乾かしてもらえます?」
ティナが声をかけると溜息を吐くクロエさん。俺達の所にくると紅い瞳の覗く眠たげな目で、呆れたような冷ややかな視線を俺達に向ける。
「お嬢様、はしゃぎ過ぎなのです。三人共目をつぶってくださいなのです」
三人の足元から巻き起こる柔らかな暖かい風。クロエさんは風魔法に火魔法を混ぜて温風を出してくれている、複合魔法ってやつだな。二つの魔法を掛け合わせて違う効果を出す魔法の使い方なんだけど、かなり難易度が高いらしい。聞くところによれば二割くらいの人しか出来ないらしく、複合魔法が使える人は良い仕事に就けると言われるくらい需要があるみたい。
服を乾かすのも、ただの風より温風の方が早いし、お風呂の用意も水を入れて温めるよりお湯が出せた方が早いもんな。
服が乾くとギルドに行ってみた。ギルドはどこでも同じ造りらしく、入り口から見て左手に受付カウンター、正面にはクエストの掲示板、右手側は食堂となっているようだ。
ランクCになったので受けられるクエストが変わっている事を思い出し、ちょっと覗いてみたかったのだ。
親切な事に依頼書には、対象となる魔物がどんな奴なのかも書いてあるので初心者の俺達にとっては非常に助かる。
蛇、蛙、猪、鹿、犬、鳥、鼠、狸、熊、鰐、害獣に指定されている獣の種類は多いらしく、たくさんの討伐依頼が並んでいた。鰐とか熊とか強そうだが、それはCⅠって書いてあるからCⅢの俺達は実績を積まないと受けられない依頼だ。
俺達でも狩れそうな魔物がいたので明日にでも受けてみるかな?しばらくこの町に留まる事になったし、いくら何もしなくても良いと言われたとて暇を持て余して遊び呆けていては、何のために冒険者になったのか分からない。
依頼期日を確認すると七日程あるもので、街道でも襲って来たハングリードッグの討伐依頼の受付だけを済ませてその日は屋敷に戻った。
夕食の席でその事を話せば、ティナが魔物の討伐に付いて来たいと言い出したので困ってしまう。
「お前はもう少し自分の立場を理解しなさい。町の中ならまだしも魔物の討伐など付いて行くだけにしても許可できるわけないだろう?家で大人しくしていなさい。本当は町の散策も禁止したいのだがな」
ランドーアさんに駄目出しされて凹んでるティナだが付いてくるのは危ないので俺も賛成できない。
「クロエ、レイ君達の世話を頼む。この土地に不慣れだろう、道案内やフォローをしてやってくれ。
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