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Chapter_3:機械工の性
Note_65
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【トレザーコロニー】の一般道の途中、道中の景色は白い電灯が散見し、寂れたスラムを駆け抜ける。異様に静かな分、神秘的な風景に惹かれる。
レオとサドは移動用機体を乗りこなす。レオが席から操縦し、サドが後ろで取っ手を掴んで立つ。目標は【タイタン号】。盗んだ機体で走り抜ける。
裏路地から、アジトを後にした人造人間が機体に乗り込み、2人の後を追う。彼の本性が口から露わになる。
『絶対に消す。』
怒りの感情をそのままに、急加速させて奴らに突っ込んでいく。
そのまた後ろから、【アルデバラン】のギャングが武器を持って追う。
「待てやクソガキがッ!」
エンジン音が閑静な一般道に響き渡る。サドは後方を確認して、レオに報告する。
「追手が来るよ!」
「武器とか使って倒しておけ!」
「うん!……ってうわっ!」
車線を変えた瞬間に、突然機体が傾く。サドは驚愕して、体勢を崩してしまった。取っ手を握りしめ、滑らせた足を元に戻す。腰にあるビームソードを構えた。
レオは妥協せず、猛スピードで駆け抜ける。巧みな操縦で障害物を回避していく。しかし、敵も同様に彼らを追いかける。速度を落とせばすぐに追いつかれる、油断ならない状況だ。
レオは正面を向いたままサドに話す。
「サド!生きてるか!?」
「大丈夫!レオ!前!」
「分かってる!」
レオは前方から煽る敵機を間一髪のところで回避する。追いかけてきたところに、サドが光剣を刺して敵機を破壊する。
電気を帯び、後方へと転倒していく。それは更なる敵を排除していく。
「うわああああっ!!」
後方は爆発を起こした。ある程度の敵を排除しただろう。
…それでもなお、敵は追ってくる。特にアンドロイドは抜群の超反応で乗り切る。サドはレオに話しかける。
「後ろまだやってくる!」
前方からも増援が入る。一般道は白い街灯が、どんどん色味を帯びていく。鮮やかな道のりにある戦慄と爽快感が、若きレオの心を踊らせた。
決心と、自信が彼女の本領を発揮させる。
「……上等だ。全速力で行くぞ!」
レオは機体を急加速させる。前方にいる敵を追い上げるほどに、一本のハンドルを前に押し込む。
ギアは最大の“6”に上げている。高速運転に用いられ、使う分には咎められないが、左右の操縦が効かなくなりやすい。
「壁でも舐めてろ!」
敵も無論、“6”ギアで対抗してくる。追いついてくるところに、敵が機体を横に寄せてくる。衝突に合わせて、サドが光剣で斬った。
敵機は脚部を切断され、転倒して爆散した。レオ達も壁に擦りつける。軋轢音に見舞われるも、意識を保って機体を中央へと戻す。
レオは集中してハンドルを握る。サドは後方から光線銃を撃ち込むが、一部の敵が完璧に見切って近づいてくる。横に追いつかれてしまう。
「サド!捕まってろ!」
サドは即座に両手で取っ手を掴む。レオは反対方向に機体を寄せ始める。敵機は同じ方向に詰める。
『………!』
「食らってろ!」
レオは思い切り敵機体に衝突させた。敵機体の片腕が外れる。追い討ちをかけるように、再び機体ごとぶち込む。敵機は横にバウンドし、パイロットのアンドロイドごと撃破した。
快感に浸り、レオは歓喜する。
「……ッシャア!」
「レオ!前!」
「ん?」
前方から砲弾が飛んできた。着弾後、すぐに爆発を引き起こし、機体ごと吹き飛ばされた。
レオはハンドルを握りしめ、機体を着地させる。サドは手放してしまう。
「うわっ!」
「サド!」
下の取っ手を即座に掴んだ。猛スピードのまま、足が完全に浮いてしまっていた。両手で必死に握りしめて、浮きながらなんとか耐える。
「うわああああああああっ!!!」
「サド!」
サドは風に吹き流されかけている。レオは正面を確認する。そこには姉弟を襲っただろう、大砲を担ぐ15m級の機体が正面で待ち構えていた。
レオは回避するために脇道へと曲がる。
「右に行くぞ!」
「ああああっっ!!」
サドは機体に振り回される。人ならば振り払われていただろう。脇道で体勢を戻して、サドは取っ手にしがみついた。
彼は壮絶な状況を通して、息を切らしていた。
「はぁ、はぁ……」
「………。」
サドが息を整えている内に、3機もの敵機が後ろから追いついてきた。レオはドリフトを活かして、幾重にも渡るコーナーを難なく突破する。
振り回されつつも立て直して、サドは後ろに光線を撃ち込む。2機を破壊させたが、もう1機が追い上げてくる。横から拳銃を構える。
『私の前から……消え失せろ!』
レオは即座に屈み、ハンドルを後ろに引く。発砲されるが、早い判断が功を奏した。
「ウラァッ!」
少し下がったところで、ハンドルを横に少し倒す。敵の後方部に触れ、そのままスピンさせた。敵機はスピードを失いそのまま壁に衝突し、爆散する。
マークⅢが案内する。
『元の一般道に戻れば、10km先に駐機場への通路があります!そこへ行きましょう!』
「サンキュ!」
レオは曲がり角を抜けて、元の一般道に戻る。しかし、進む先はギャング達が機体に乗って封鎖していた。
移動用機体で簡単に受け止められるような、15m級の中型機体であった。
(正面は無理だな……なら!)
「ぶ ち ま け ろ ! コロニー外の ガ ラ ク タ 共 がァッ!!!」
敵が1機だけ、こちらに正面からぶつかりに行く。馬鹿正直に向かってくる敵は、長い金属棒をレオに向けてぶち込みにいった。
サドが正面から光線を撃ち込み、敵機が制御を失った。
横転する敵機を避け、その勢いのまま機体を横に飛ぶ。片腕をクッションに、ビルの壁を足場にして、敵の包囲網を横から通り過ぎていく。
華麗に着地させて、レオ達は先を急ぐ。移動用機体と車の最大の違いは、この機動性にある。経路の選択肢が広がることが強みの1つである。
レオ達はギャング達の包囲網を見事に突破した…かと思えた。
『レオさん!サド君!この先にまだ敵機がいます!一本道ではありますが、人もいないため、敵も本腰を入れてきます!』
「まだいるの!?」
「安心しろ。丁度、燃えてきたところだ!」
レオは機体を高速で飛ばす。多彩な街並みから、白い街灯へと変わっていく。スラムとは違いこちらは整備され、綺麗に整列されていた。
直進が続く。本来、来賓を迎えるために手入れを施した道である。その為に用意された景色は、道路を含めて綺麗に仕上がっている。
自分達だけの空間を堪能していた。それも束の間、敵が後ろからすぐに追いかけてきた。
「サド!」
「懲りない人達だ!」
サドはすぐに光線銃で対処する。見事撃ち抜き、敵を一掃する。
煙の中から、何かが飛び出す。黒い影に身を包み、コロニーの空に紛れ込む。その存在に気づいて直ちに伝える。
「レオ!上から来る!追手の機体だ!」
「前からも来た!」
敵は挟み撃ちを仕掛ける。道幅も狭く、衝突を覚悟して突き進む。サドはP-botに変化し、光剣を構えた。
電気を帯びた棒を双方から叩き込むつもりだろう。
…サドは剣を横に一回転して、斬り払った。P-botの強化による広範囲の光を、前後の敵に浴びせて爆破させた。レオは爆風を突っ切り、先を急ぐ。サドの体に戻した。
道の先にいる手先を見つけ、レオは気を引き締めた。
「まだまだ!」
レオは急加速させると、サドは取っ手を掴んで前を向いた。どんどん敵に近づいていく。そのまま追い越そうとした。
その時、背後から強烈な爆風が襲いかかった。機体は宙を舞い、ガードレールから道を外れていく。
「うおおおおおっっっ!!!」
「わあああああっっっ!!!」
(なんとかなれ!)
「サド!捕まってろ!」
サドは取っ手にしがみつく。レオは機体の足にレールを噛み合わせて、一般道に復帰する。
レオはサドに呼びかけた。
「サド!生きてるか!?」
「ここまでする……なんて……」
「生きてるか!!?」
「生きてる!」
サドは無事のようだ。根性で立ち上がり、再び光剣を構える。
後ろを振り向くと、最初にレオ達を襲った大砲持ちの機体が見えた。
「レオ!後ろから大砲持ちが追っている!」
「分かった!このまま飛ばす!」
レオは速度を下げなかった。直線通路を駆け抜ける。距離さえ離せば、大砲の射程からは外れる。
だからと言って、ギャング達もこのまま逃がすつもりはない。後方から機体を加速させて、計4機が2人を囲むように詰める。
銃口をサドに向けて、蜂の巣にしていく。しかし、頑丈なアンドロイドの肉体を貫くことは無かった。
「無傷……チィッ、舐め腐りやがって!」
「そっちは機械だ!運転手を狙え!」
「「へい!」」
前方の敵が速度を落として、レオ達の機体と衝突させる。一気に減速された。
容赦無く撃ち込まれる砲弾が、レオ達に迫る。サドは光線で相殺させ、危機を乗り切る。爆風が彼らを後押ししてくれた。勢いをそのままにして、ギャングに追いつく。
銃弾が前方から撃ち込まれる。レオはハンドルを前に倒しつつ、そのまま隠れる。前を見ることもままならない。
レオはサドに指示する。
「サド!コパイ頼む!」
「りょ!……50、6L8、&、5R4、open、long、widen。200。」
レオは50m先より、6速でハンドルを左に約23度傾け、即座に5速で右に45度傾ける。長い右カーブをドリフトで駆け抜けた。
カーブを超えて、道幅が広くなったところで、レオは顔を上げて機体を思い切り加速させる。
機体を左右に移動させ、弾幕を潜り抜けた。敵との距離が狭まり、サドも光剣を構えた。
背後に、大胆にカットしてきた中型機がレオ達を追う。性懲りもなく追跡を続けるようだ。
「レオ!前からロケラン!」
「はぁ?……ってうおぁ!」
即座に車線を変え、避けきるものの追撃にもう一発撃ち込んできた。
一瞬にして、爆煙が姉弟を飲み込む。敵は後ろを見て歓喜していた。
…黒煙の中から、1機がガードを足場に、道の中央へと飛び込む。一気に距離を縮め、レオは自分の光線銃で撃ち、敵を2人仕留める。
敵機は後方へ横転し、中型機に衝突し、爆発に巻き込まれる。ダメージを受け、胸部に黒い痕が見られた。
レオは敵機の間に入る。
「旅立ちの祝砲……」
2人は光線銃を片手に、
「歓迎の代わりに……」
それぞれの機体に撃ち込む。
「「打ち上げてろッ!!!」」
2機同時に撃ち抜く。ハンドルの根本が溶け出し、制御が効かなくなった。そのまま機体が横転して、後ろの機体を巻き込む。
断続的な爆発音が響き渡り、白い光が上に打ち上げられる。まるでレオ達の旅立ちを祝うように、綺麗な光で彼らを見送った。
これ以上、敵はいない。後を追う者達も爆炎に飲まれて一掃された。駐機場に敵もいない。姉弟は一息ついていた。
「サド、生きてるか?」
「……おかげさまで。すごく上達してる。」
「ん、そうか?」
「キャンプで腕上げたんだね。」
「とにかく……帰るぞ。」
「……ありがと。」
サドはレオの巧みな操縦を褒めた。レオは最後まで集中する。
_____
猛スピードのまま、駐機場にたどり着く。【タイタン号】前にブレーキをかけて、機体を乗り捨てた。
周囲にコンテナは無く、誰かによって片付けられたようだ。サドはすぐに連絡を取る。
「……ライラさん、荷物片付けたんですか?」
『早速、使ってみたけど……【オートマ】の機体って、やっぱり便利ね。軽々と運べたもの。』
「そうですか。」
『あと、ロボットの女の子もいたけど……それは司令室でいいの?』
「司令室ですね。分かりました。そのままでお願いします……では。」
サドは通信を終え、一緒にタイタン号に乗り込む。盗み聞きしていたレオが話しかける。
「何だ?機械の少女なんか買ってよ。」
「必要経費。色々使うつもりさ。」
「色々って……」
「普通に戦闘に使えるし、デコイにも使えるし、監視用ロボとしても使えるし……」
「分かった、分かったから。早く上に行け。」
タイタン号が動き出す。ライトを頼りに、出口…逆方向の道を進む。長く静かな一本道が、レオ達の心を癒やしてくれる。
レオは自分自身の若い心に、別れを告げる。
(元気でな。)
都会の色に見初められ、幼馴染と再会したこともあり、彼女の童心を燻らせてくれた。
レオの心境は複雑ではなかった。
「このまま突っ切る。」
目の前のシャッターは開いていた。審査官が慌てふためき、タイタン号を止めようとした。急ぎシャッター閉ざす。
『止まれ!止まれって!』
落ちてくるシャッターを無理やりこじ開け、“今”の自分を解き放つ。
『オルァッ!!』
『馬鹿野郎オォォォォォォッッッ!!!!!』
例の審問官に耳もくれず、レオは先へと向かう。一気に出口に行こうとした。
1人残された審問官に通話がかかる。苛立ちながら端末を取る。
「どちら様!」
『随分と、不機嫌のようだな。』
「……っ!?」
_____
審問官の通話相手は、ソトス本人であった。
「どうやら、今動いてるデケェ機体の人間に助けられてな。見逃してくれねぇか?」
『はぁ?あの女に?』
「その様だ。」
『誰がクソオスに従うか!どんな身分にしたって、卑劣な人間に……』
「まずは修理費に1万。」
『……えっ?///』
唐突な金額に言葉を失ったようだ。ソトスは更に話を進める。
「そして、依頼金として3万。」
『えっ、えっ、えっ?///』
「更に迷惑料として1万……計5万で手を打とう。」
『……そ、そんな手を使っても……私は屈しないから!///でも……』
「気が向いたらでいいよ。やってくれなくとも、2万を出すよ。」
『そんな事、言ったって……』
「根回しは万全さ。だからやってくれたら言い値そのまま出す。じゃ!」
『えっと……///』
ソトスは通話を切る。他の人に通話を掛け直す。例の男に通話をする。
「アメリアちゃんの件で話がある……【パーバ】。」
『……アルデバランのボスが、どうして俺に電話をかけるんだ?』
「先にかけてきたのはお前だろ……
……アメリアの友達について話がついた。」
『レオさんの脱出……よくアポ取れたな。』
ソトスは余裕の表情で、イスに腰を掛ける。
「金に正直な奴なんざ、俺の敵じゃねぇ。そういう連れとは何度も相手にしてる。伊達に裏を統べてるわけじゃないんでね。」
『……ありがとう。』
パーバから礼を言われた。しかし、ソトスはこのままでは終わらない。
「代わりに、アメリアちゃんは【アルデバラン】の一員になる。ソフィは降格させた。彼女の働きに期待している。」
『俺は反対だって……』
「ま、心配するな。彼女には【ミア】だっているんだろ?ちゃんと仕事できるはずさ。
……いつか、お前に救いが来る日も近いだろうよ……また明日。」
ソトスは通話を切った。本部も復旧し、副長のクーデターも片付き、アメリア達への謝礼や根回しも完全に尽くした。
…しかし、一度自分の命が狙われた以上、他の部下からも刺客がやってくるだろう。副長という立場から、ソフィのネットワークも広い。
(さてと……これからが大変だ。それが片付くまでは、世代交代はお預けか。あの娘にはまだ荷が重過ぎる。他人のツケを払うべきじゃない。
……折角、外で隠居できると思ったけどなあ!)
渋い顔をして、自分の運命を悔やんだ。コーヒーを手に取ろうとした時に、自分の拳銃が手に触れてしまう。
自然と手に持ち、銃を構えて、自分の過去を思い出す。煌めく時代を懐かしむ。
「俺も衰えたもんだな。ここで終わるわけにはいかねぇってのに。」
ソトスは全盛期の自分になりきれなかった。実力の劣化を気にせずにはいかない。
あの時を思い出すたびに、今日出会った4人の者達も同時に喚び起こす。彼らが自分を守ってくれたようなものだ。
若い自分の写真をひと目見て、机に伏せておいた。
「……少年少女よ……未来は良いぞ。過去をより楽しめる、エッセンスだからな。
……大いに暴れるがいい。昔の俺のようにな。」
ソトスもまた余韻にひたり、新たな仕事を始めようとしていた。
_____
タイタン号はコロニーの出口に向かって走っている。一直線に出ていこうとした。
コクピット内ではレオが操縦している。そして、内線に繋げる。
「なあ、1つ聞いていいか?」
『レオ……まさか……』
そのまさかである。
「出口どこだ?」
『やっぱり、後先考えてなかった!』
「そこまで言うことじゃねぇだろ!?」
『ねえ!どうするの!?』
『ナノマシンの回復力に任せて、ビームを撃つのは?』
「知らねえからな!」
レオは言動とは裏腹にノリノリだった。そのまま片手を前に出そうとした。
次の瞬間に扉が開いてしまう。拍子抜けではあるが、有無を言わずにレオはまっすぐ突き進む。
…もうしばらく、過去は振り返らなくても十分だ。目の前にある未来に向かって、駆け抜けていく。
まばゆい光に襲われる。
いつもの砂漠へと戻る。コロニーの前後が分からず、レオは更新されたマップを確認する。
「サド、こっちの方向で合ってるか?」
『バッチリ!以前通った場所とは逆から出たね。』
レオは引き続き、タイタン号を乗りこなす。彼女は振り返らない。ひたすら前を目指す。
やり切った気持ちをそのままに、この青い空の世界に彼らは挑む。やり残したことを成し遂げるため、守りたいものを守るために、彼らは舞い戻った。
レオとサドは移動用機体を乗りこなす。レオが席から操縦し、サドが後ろで取っ手を掴んで立つ。目標は【タイタン号】。盗んだ機体で走り抜ける。
裏路地から、アジトを後にした人造人間が機体に乗り込み、2人の後を追う。彼の本性が口から露わになる。
『絶対に消す。』
怒りの感情をそのままに、急加速させて奴らに突っ込んでいく。
そのまた後ろから、【アルデバラン】のギャングが武器を持って追う。
「待てやクソガキがッ!」
エンジン音が閑静な一般道に響き渡る。サドは後方を確認して、レオに報告する。
「追手が来るよ!」
「武器とか使って倒しておけ!」
「うん!……ってうわっ!」
車線を変えた瞬間に、突然機体が傾く。サドは驚愕して、体勢を崩してしまった。取っ手を握りしめ、滑らせた足を元に戻す。腰にあるビームソードを構えた。
レオは妥協せず、猛スピードで駆け抜ける。巧みな操縦で障害物を回避していく。しかし、敵も同様に彼らを追いかける。速度を落とせばすぐに追いつかれる、油断ならない状況だ。
レオは正面を向いたままサドに話す。
「サド!生きてるか!?」
「大丈夫!レオ!前!」
「分かってる!」
レオは前方から煽る敵機を間一髪のところで回避する。追いかけてきたところに、サドが光剣を刺して敵機を破壊する。
電気を帯び、後方へと転倒していく。それは更なる敵を排除していく。
「うわああああっ!!」
後方は爆発を起こした。ある程度の敵を排除しただろう。
…それでもなお、敵は追ってくる。特にアンドロイドは抜群の超反応で乗り切る。サドはレオに話しかける。
「後ろまだやってくる!」
前方からも増援が入る。一般道は白い街灯が、どんどん色味を帯びていく。鮮やかな道のりにある戦慄と爽快感が、若きレオの心を踊らせた。
決心と、自信が彼女の本領を発揮させる。
「……上等だ。全速力で行くぞ!」
レオは機体を急加速させる。前方にいる敵を追い上げるほどに、一本のハンドルを前に押し込む。
ギアは最大の“6”に上げている。高速運転に用いられ、使う分には咎められないが、左右の操縦が効かなくなりやすい。
「壁でも舐めてろ!」
敵も無論、“6”ギアで対抗してくる。追いついてくるところに、敵が機体を横に寄せてくる。衝突に合わせて、サドが光剣で斬った。
敵機は脚部を切断され、転倒して爆散した。レオ達も壁に擦りつける。軋轢音に見舞われるも、意識を保って機体を中央へと戻す。
レオは集中してハンドルを握る。サドは後方から光線銃を撃ち込むが、一部の敵が完璧に見切って近づいてくる。横に追いつかれてしまう。
「サド!捕まってろ!」
サドは即座に両手で取っ手を掴む。レオは反対方向に機体を寄せ始める。敵機は同じ方向に詰める。
『………!』
「食らってろ!」
レオは思い切り敵機体に衝突させた。敵機体の片腕が外れる。追い討ちをかけるように、再び機体ごとぶち込む。敵機は横にバウンドし、パイロットのアンドロイドごと撃破した。
快感に浸り、レオは歓喜する。
「……ッシャア!」
「レオ!前!」
「ん?」
前方から砲弾が飛んできた。着弾後、すぐに爆発を引き起こし、機体ごと吹き飛ばされた。
レオはハンドルを握りしめ、機体を着地させる。サドは手放してしまう。
「うわっ!」
「サド!」
下の取っ手を即座に掴んだ。猛スピードのまま、足が完全に浮いてしまっていた。両手で必死に握りしめて、浮きながらなんとか耐える。
「うわああああああああっ!!!」
「サド!」
サドは風に吹き流されかけている。レオは正面を確認する。そこには姉弟を襲っただろう、大砲を担ぐ15m級の機体が正面で待ち構えていた。
レオは回避するために脇道へと曲がる。
「右に行くぞ!」
「ああああっっ!!」
サドは機体に振り回される。人ならば振り払われていただろう。脇道で体勢を戻して、サドは取っ手にしがみついた。
彼は壮絶な状況を通して、息を切らしていた。
「はぁ、はぁ……」
「………。」
サドが息を整えている内に、3機もの敵機が後ろから追いついてきた。レオはドリフトを活かして、幾重にも渡るコーナーを難なく突破する。
振り回されつつも立て直して、サドは後ろに光線を撃ち込む。2機を破壊させたが、もう1機が追い上げてくる。横から拳銃を構える。
『私の前から……消え失せろ!』
レオは即座に屈み、ハンドルを後ろに引く。発砲されるが、早い判断が功を奏した。
「ウラァッ!」
少し下がったところで、ハンドルを横に少し倒す。敵の後方部に触れ、そのままスピンさせた。敵機はスピードを失いそのまま壁に衝突し、爆散する。
マークⅢが案内する。
『元の一般道に戻れば、10km先に駐機場への通路があります!そこへ行きましょう!』
「サンキュ!」
レオは曲がり角を抜けて、元の一般道に戻る。しかし、進む先はギャング達が機体に乗って封鎖していた。
移動用機体で簡単に受け止められるような、15m級の中型機体であった。
(正面は無理だな……なら!)
「ぶ ち ま け ろ ! コロニー外の ガ ラ ク タ 共 がァッ!!!」
敵が1機だけ、こちらに正面からぶつかりに行く。馬鹿正直に向かってくる敵は、長い金属棒をレオに向けてぶち込みにいった。
サドが正面から光線を撃ち込み、敵機が制御を失った。
横転する敵機を避け、その勢いのまま機体を横に飛ぶ。片腕をクッションに、ビルの壁を足場にして、敵の包囲網を横から通り過ぎていく。
華麗に着地させて、レオ達は先を急ぐ。移動用機体と車の最大の違いは、この機動性にある。経路の選択肢が広がることが強みの1つである。
レオ達はギャング達の包囲網を見事に突破した…かと思えた。
『レオさん!サド君!この先にまだ敵機がいます!一本道ではありますが、人もいないため、敵も本腰を入れてきます!』
「まだいるの!?」
「安心しろ。丁度、燃えてきたところだ!」
レオは機体を高速で飛ばす。多彩な街並みから、白い街灯へと変わっていく。スラムとは違いこちらは整備され、綺麗に整列されていた。
直進が続く。本来、来賓を迎えるために手入れを施した道である。その為に用意された景色は、道路を含めて綺麗に仕上がっている。
自分達だけの空間を堪能していた。それも束の間、敵が後ろからすぐに追いかけてきた。
「サド!」
「懲りない人達だ!」
サドはすぐに光線銃で対処する。見事撃ち抜き、敵を一掃する。
煙の中から、何かが飛び出す。黒い影に身を包み、コロニーの空に紛れ込む。その存在に気づいて直ちに伝える。
「レオ!上から来る!追手の機体だ!」
「前からも来た!」
敵は挟み撃ちを仕掛ける。道幅も狭く、衝突を覚悟して突き進む。サドはP-botに変化し、光剣を構えた。
電気を帯びた棒を双方から叩き込むつもりだろう。
…サドは剣を横に一回転して、斬り払った。P-botの強化による広範囲の光を、前後の敵に浴びせて爆破させた。レオは爆風を突っ切り、先を急ぐ。サドの体に戻した。
道の先にいる手先を見つけ、レオは気を引き締めた。
「まだまだ!」
レオは急加速させると、サドは取っ手を掴んで前を向いた。どんどん敵に近づいていく。そのまま追い越そうとした。
その時、背後から強烈な爆風が襲いかかった。機体は宙を舞い、ガードレールから道を外れていく。
「うおおおおおっっっ!!!」
「わあああああっっっ!!!」
(なんとかなれ!)
「サド!捕まってろ!」
サドは取っ手にしがみつく。レオは機体の足にレールを噛み合わせて、一般道に復帰する。
レオはサドに呼びかけた。
「サド!生きてるか!?」
「ここまでする……なんて……」
「生きてるか!!?」
「生きてる!」
サドは無事のようだ。根性で立ち上がり、再び光剣を構える。
後ろを振り向くと、最初にレオ達を襲った大砲持ちの機体が見えた。
「レオ!後ろから大砲持ちが追っている!」
「分かった!このまま飛ばす!」
レオは速度を下げなかった。直線通路を駆け抜ける。距離さえ離せば、大砲の射程からは外れる。
だからと言って、ギャング達もこのまま逃がすつもりはない。後方から機体を加速させて、計4機が2人を囲むように詰める。
銃口をサドに向けて、蜂の巣にしていく。しかし、頑丈なアンドロイドの肉体を貫くことは無かった。
「無傷……チィッ、舐め腐りやがって!」
「そっちは機械だ!運転手を狙え!」
「「へい!」」
前方の敵が速度を落として、レオ達の機体と衝突させる。一気に減速された。
容赦無く撃ち込まれる砲弾が、レオ達に迫る。サドは光線で相殺させ、危機を乗り切る。爆風が彼らを後押ししてくれた。勢いをそのままにして、ギャングに追いつく。
銃弾が前方から撃ち込まれる。レオはハンドルを前に倒しつつ、そのまま隠れる。前を見ることもままならない。
レオはサドに指示する。
「サド!コパイ頼む!」
「りょ!……50、6L8、&、5R4、open、long、widen。200。」
レオは50m先より、6速でハンドルを左に約23度傾け、即座に5速で右に45度傾ける。長い右カーブをドリフトで駆け抜けた。
カーブを超えて、道幅が広くなったところで、レオは顔を上げて機体を思い切り加速させる。
機体を左右に移動させ、弾幕を潜り抜けた。敵との距離が狭まり、サドも光剣を構えた。
背後に、大胆にカットしてきた中型機がレオ達を追う。性懲りもなく追跡を続けるようだ。
「レオ!前からロケラン!」
「はぁ?……ってうおぁ!」
即座に車線を変え、避けきるものの追撃にもう一発撃ち込んできた。
一瞬にして、爆煙が姉弟を飲み込む。敵は後ろを見て歓喜していた。
…黒煙の中から、1機がガードを足場に、道の中央へと飛び込む。一気に距離を縮め、レオは自分の光線銃で撃ち、敵を2人仕留める。
敵機は後方へ横転し、中型機に衝突し、爆発に巻き込まれる。ダメージを受け、胸部に黒い痕が見られた。
レオは敵機の間に入る。
「旅立ちの祝砲……」
2人は光線銃を片手に、
「歓迎の代わりに……」
それぞれの機体に撃ち込む。
「「打ち上げてろッ!!!」」
2機同時に撃ち抜く。ハンドルの根本が溶け出し、制御が効かなくなった。そのまま機体が横転して、後ろの機体を巻き込む。
断続的な爆発音が響き渡り、白い光が上に打ち上げられる。まるでレオ達の旅立ちを祝うように、綺麗な光で彼らを見送った。
これ以上、敵はいない。後を追う者達も爆炎に飲まれて一掃された。駐機場に敵もいない。姉弟は一息ついていた。
「サド、生きてるか?」
「……おかげさまで。すごく上達してる。」
「ん、そうか?」
「キャンプで腕上げたんだね。」
「とにかく……帰るぞ。」
「……ありがと。」
サドはレオの巧みな操縦を褒めた。レオは最後まで集中する。
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猛スピードのまま、駐機場にたどり着く。【タイタン号】前にブレーキをかけて、機体を乗り捨てた。
周囲にコンテナは無く、誰かによって片付けられたようだ。サドはすぐに連絡を取る。
「……ライラさん、荷物片付けたんですか?」
『早速、使ってみたけど……【オートマ】の機体って、やっぱり便利ね。軽々と運べたもの。』
「そうですか。」
『あと、ロボットの女の子もいたけど……それは司令室でいいの?』
「司令室ですね。分かりました。そのままでお願いします……では。」
サドは通信を終え、一緒にタイタン号に乗り込む。盗み聞きしていたレオが話しかける。
「何だ?機械の少女なんか買ってよ。」
「必要経費。色々使うつもりさ。」
「色々って……」
「普通に戦闘に使えるし、デコイにも使えるし、監視用ロボとしても使えるし……」
「分かった、分かったから。早く上に行け。」
タイタン号が動き出す。ライトを頼りに、出口…逆方向の道を進む。長く静かな一本道が、レオ達の心を癒やしてくれる。
レオは自分自身の若い心に、別れを告げる。
(元気でな。)
都会の色に見初められ、幼馴染と再会したこともあり、彼女の童心を燻らせてくれた。
レオの心境は複雑ではなかった。
「このまま突っ切る。」
目の前のシャッターは開いていた。審査官が慌てふためき、タイタン号を止めようとした。急ぎシャッター閉ざす。
『止まれ!止まれって!』
落ちてくるシャッターを無理やりこじ開け、“今”の自分を解き放つ。
『オルァッ!!』
『馬鹿野郎オォォォォォォッッッ!!!!!』
例の審問官に耳もくれず、レオは先へと向かう。一気に出口に行こうとした。
1人残された審問官に通話がかかる。苛立ちながら端末を取る。
「どちら様!」
『随分と、不機嫌のようだな。』
「……っ!?」
_____
審問官の通話相手は、ソトス本人であった。
「どうやら、今動いてるデケェ機体の人間に助けられてな。見逃してくれねぇか?」
『はぁ?あの女に?』
「その様だ。」
『誰がクソオスに従うか!どんな身分にしたって、卑劣な人間に……』
「まずは修理費に1万。」
『……えっ?///』
唐突な金額に言葉を失ったようだ。ソトスは更に話を進める。
「そして、依頼金として3万。」
『えっ、えっ、えっ?///』
「更に迷惑料として1万……計5万で手を打とう。」
『……そ、そんな手を使っても……私は屈しないから!///でも……』
「気が向いたらでいいよ。やってくれなくとも、2万を出すよ。」
『そんな事、言ったって……』
「根回しは万全さ。だからやってくれたら言い値そのまま出す。じゃ!」
『えっと……///』
ソトスは通話を切る。他の人に通話を掛け直す。例の男に通話をする。
「アメリアちゃんの件で話がある……【パーバ】。」
『……アルデバランのボスが、どうして俺に電話をかけるんだ?』
「先にかけてきたのはお前だろ……
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『レオさんの脱出……よくアポ取れたな。』
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『……ありがとう。』
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『俺は反対だって……』
「ま、心配するな。彼女には【ミア】だっているんだろ?ちゃんと仕事できるはずさ。
……いつか、お前に救いが来る日も近いだろうよ……また明日。」
ソトスは通話を切った。本部も復旧し、副長のクーデターも片付き、アメリア達への謝礼や根回しも完全に尽くした。
…しかし、一度自分の命が狙われた以上、他の部下からも刺客がやってくるだろう。副長という立場から、ソフィのネットワークも広い。
(さてと……これからが大変だ。それが片付くまでは、世代交代はお預けか。あの娘にはまだ荷が重過ぎる。他人のツケを払うべきじゃない。
……折角、外で隠居できると思ったけどなあ!)
渋い顔をして、自分の運命を悔やんだ。コーヒーを手に取ろうとした時に、自分の拳銃が手に触れてしまう。
自然と手に持ち、銃を構えて、自分の過去を思い出す。煌めく時代を懐かしむ。
「俺も衰えたもんだな。ここで終わるわけにはいかねぇってのに。」
ソトスは全盛期の自分になりきれなかった。実力の劣化を気にせずにはいかない。
あの時を思い出すたびに、今日出会った4人の者達も同時に喚び起こす。彼らが自分を守ってくれたようなものだ。
若い自分の写真をひと目見て、机に伏せておいた。
「……少年少女よ……未来は良いぞ。過去をより楽しめる、エッセンスだからな。
……大いに暴れるがいい。昔の俺のようにな。」
ソトスもまた余韻にひたり、新たな仕事を始めようとしていた。
_____
タイタン号はコロニーの出口に向かって走っている。一直線に出ていこうとした。
コクピット内ではレオが操縦している。そして、内線に繋げる。
「なあ、1つ聞いていいか?」
『レオ……まさか……』
そのまさかである。
「出口どこだ?」
『やっぱり、後先考えてなかった!』
「そこまで言うことじゃねぇだろ!?」
『ねえ!どうするの!?』
『ナノマシンの回復力に任せて、ビームを撃つのは?』
「知らねえからな!」
レオは言動とは裏腹にノリノリだった。そのまま片手を前に出そうとした。
次の瞬間に扉が開いてしまう。拍子抜けではあるが、有無を言わずにレオはまっすぐ突き進む。
…もうしばらく、過去は振り返らなくても十分だ。目の前にある未来に向かって、駆け抜けていく。
まばゆい光に襲われる。
いつもの砂漠へと戻る。コロニーの前後が分からず、レオは更新されたマップを確認する。
「サド、こっちの方向で合ってるか?」
『バッチリ!以前通った場所とは逆から出たね。』
レオは引き続き、タイタン号を乗りこなす。彼女は振り返らない。ひたすら前を目指す。
やり切った気持ちをそのままに、この青い空の世界に彼らは挑む。やり残したことを成し遂げるため、守りたいものを守るために、彼らは舞い戻った。
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これらの異常な生物を研究することは単にその生物への対処方法を確立するのみならず、諸々の根源的な問いに新たな視点を与える。本図録が、虚界生物の研究に携わる者、または未知の存在に興味を持つ者にとっての一助となることを願う。
※※図や文章の一部はAIを用いて作成されている。
※※すべての内容はフィクションであり、実在の生命、科学、人物、出来事、団体、書籍とは関係ありません。
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