Plasma_Network~プラズマネットワーク(アルファポリス版)

カチコミぱいせん

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Chapter_2:コーズ&エフェクト

Note_48

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 【フェニコプテラス】の上町にある、【第1中央塔】の地下駐機場。サドは下町に逃げようとするが、猛火によって行く手を阻まれていた。

 サドはP-botピーボットと化して、その障害を【ミクロダークホール】に吸引させて除いていく。一歩ずつ、姉のレオを大切に運びながら脱出の手段を模索する。

 敵機【Meteor_Coaster】の残骸から、脱出用の移動用機体が目の前にあった。しかし、コクピットが吹きさらしで安全とは言えない。

 姉弟は限界で危機に陥りかけた。サドが探しているときに、レオがブレインチップを身につけて持ち手のボタンを押す。小型機を起動させて、周囲に円を描くように上で漂わせる。

 サドは炎を避けつつ、関門へと逃げようと試みるも、既に炎で満ち溢れている。別の経路を探る。


「レオ……必ず生き延びよう。」

「……今、助けが来るからな……。」


 サドはあの場所まで歩く。関門へと迎えないなら、なるべく上へと逃げる。エレベーターしかない。そこに向けて歩き出そうとした。

 その時、潜水移動用機体であるはずの【エギル・サーヴァント】が火の海から彼らを迎えに来た。コクピットが開くと、そこには大傷を負った女性が待っていた。


「さっさと来い!」


 レオは小型機を元に戻して、ブレインチップを本体に戻す。

 サドは察した。レオが頼った“助け”は、かつて彼が戦った5人組の頭領であったのだ。彼女はその女性の素性を知らない。


「早く!」


 有無を言っている場合じゃない。サドはレオを抱えながら急いで機体へと走る。大傷の女性の手を掴み、レオを後ろに座らせてからその隣に座る。

 コクピットを閉ざして、女性はエレベーターに機体を入れる。5mメートル以下の機体が入れる空間があり、リアでこすり付けながらも無理矢理入れる。


「別のルートで行くぞ!B地下1だ!」

「別のルート?」


 大傷の女性【スザンナ】は、一旦降りてエレベーターを閉ざした。


_____


 【第1中央塔】の玄関にて、惑星連合諜報員の【カリナ】は全ての仕事を終えて、中央塔から帰還するところであった。

 下町にいるメンバーの【シリウス】とようやく連絡が取れた状態だ。


『そうか……被害者達の今後について、話さなければならない。マルクート家と話をつけたところだ。』

「あれ?一旦、第1人口惑星に移送するんじゃなかったのか?」

『人の話は3つまでは憶えておけ。現状“王”の権利を保有するマルクート家から通達が入って、彼らに引き渡すことになっている。

【セントラルタワープラント】の【電波塔】によって、我々もこの惑星から脱出できないようだ。飛行場にも入場できない。』

「ああ、あのしがない男か。しかしまあ、【電波塔】が使えないとすぐ連絡できねぇのは不便だな。」

『彼はエンダー家と敵対関係にある。一時的に拉致被害者を待機させることに、彼らの助けを借りるつもりだ。』


 カリナは奥の庭園を見ている。シリウスは余所見する彼女に少し苛立つ。


『今度は何だ?』

「奥から何か来る。一旦切るわ。」

『おい!』


 カリナは通話を切る。庭園のシャッターが開く様子が見られた。敵機の増援と見込み、カリナは忠告した。


「テメェら!機体1つでなんとかなるほど、アタシは甘かぁねぇぞ!!」


 機体が話してくる。


『これ……【マニュアル】かよ!?』

『は!?お前パイロットじゃねぇのか?』

『うるせぇ!【オートマ】の経験しかねぇんだよ!文句あっか!?』

『運転代われよ!』


 2人の女性が口喧嘩していた。その内、1人の声を聞いてカリナは理解した。


「あぁ……なるほどな。」


 カリナは取りあえず道端に移動する。


『やってやらぁ!!』


 機体が急発進してきた。どんどん加速していき、真っ直ぐ道を突き進む。スピードが落ちる気配は見られない。

 そのまま街を駆け抜けて、段差が踏切台となって機体が飛んでいく。





『イヤアアアァァァァァァァァ……』

『『アアアアアアァァァァァァ……』』





 突然現れた機体は、そのまま貯水池へと落ちていった。カリナは遠目から見て感じた。


(あいつら……死んだな。)


 カリナは何事もなかったかのように、調査を再開した。


_____


 暗闇の中、何度か壁や物にぶつかりながら、激流に身を任せて進んでいる。機体が動く度に、頭も大きく揺らされる。

 奥に光が見えてくる。


「出口だ!」


 勢いよく脱出する。眩い光がコクピットに差し込んでくる。

 最初に通過した【アクアトンネル】を、今度は下町に向かって潜水している。透明で淡い空色が孤独で美しい空間を彩ってくれる。

 それにも関わらず、レオはグロッキーになっていた。


「レオ!大丈夫?レオ!」

「うぃ……あぅ……」


 サドはレオを楽な体勢にして戻す。熱は引いているが、死ぬほど疲れていたのか、そのまま熟睡してしまう。

 スザンナはサドと話す。


「アブロから聞いたが、奴が投資したエンジニアとやらは……やっぱりお前らか。」

「アブロ議員をご存じなのですか!?」

「私らはあのデブ野郎の“お得意様”だ。色々、助けてもらっているし情報や任務も請け負っているほどの仲だ。

名前は【スザンナ】だ。まさかあの女と一緒にいた奴だったとはな。」


 彼女はレオ達を助けに来た。しかしサドからしてみれば、ライラを無理やり物にしようとした一人でもある。彼は信用していない。


「あの女?一体どの……。」

「とぼけんじゃねぇよ。立入禁止の場所で右腕を奪ったの誰だよ。お前だろうが。ロボットからお前に切り替わる様子ぐらい、端から見ていた。地球人といたのだって知ってんだよ。」


 どうやらバレていたらしい。サドは迂闊な行動だったことを反省する。

 それならば尚更、彼女が助けに来た理由が分からない。サドは新たに浮かんだ疑問をスザンナに聞いてみた。


「助けてくれてありがとうございます。しかし僕は襲ってきたあなたの義手を壊した。それなのになぜ、僕達を助けたのですか?」

「そこでぐっすり寝ている、可愛くて無垢な後輩の頼み事だ。先輩としてビシッと決めなきゃ締まりが悪い。

それに、気付かされちまった。目の前の人を助けねぇつもりなら、好きな人も守れねぇってことにな。

その時点で……私は負けていたんだ。」


 スザンナは悔しかった。サドにあって、自分に無かったその信条が、ライラを惹きつけていったと思い知らされた。


「だから、あんたらを助けた。これからでもいい。そういう生き方で、いつか愛人と巡り会いたい。

あの時の事……“申し訳ない”ってあの女性に伝えておいてくれるか?」


 サドは後ろから頷く。スザンナが了承したときに、サドは更に彼女へ伝える。


「レオを……本当にありがとうございました。」


 感謝の意を述べた。

 レオは丁度、起き上がった。なんとか正気を保っているようだ。しかし、レオは今更ながらある違和感を以て、完全に目を覚ます。


「あれ……そういや、元の機体は?」

「ん?あぁ……事故って爆発したよ。」

「えぇ!?」

「そんでよ。聞きてぇことあるけどさ……この運転で良いんだっけ?」

「はぁ!?」


 レオは驚愕する。サドが説明する。


「この水流は、常に【セカンドステップ】の方に向かって流れているそうだね。最低でも【ファーストステップ】に向かわないように、水が流れているんだ。

だから、運転しなくとも前に進んでいる。」

「でも、なんか……沈んできてねぇか?」


 レオが上を見て気づく。スザンナは左手でどうにかしようと躍起になっていた。


「んじゃあ、こうか?」


 更に潜水した。激流によって流されていく。


「ハズレかよ!」

「いいから運転代わってやれ!サド!」

「はいはい、代わりますから。」

「勝手に来んなクソガキ!いいから見てろ!」


 どんどん深く進んでいくと、機体が回転し始めた。唐突に上に向き始めて、進路が強制的に決められていく。

 もうどうしようもできない。スザンナはハンドルから手を離して、メッセージを送る。


_____


 下町側の地下にある駐機場にて、地球の人達が5人の男衆と、4人のスザンナの仲間が見張っていた。

 ライラはスザンナの部下に粘着されている。


「お前が振ったせいで、リーダーの婚期ま~た長引いちまったじゃねぇかぁ?おん?」

「それはあんた達が……」

「別に怖くないのにぃ。もっと自分に正直に生きろよ~。お堅くならないでさぁ……」

「撃つわよ。」

「ど、どっから持ってきたそれ!?」

「……いいね?」

「は、はい。」


 サドから渡された光線銃が役に立つ。なるべく彼女達から離れる。男衆のリーダー【オスカル】がその一部始終を傍から見ていた。彼の仲間に聞く。


「……ありゃ……セーフか?」

「多分……セーフ。」


 スザンナの部下がオスカルに近寄る。


「おう!お前ら変なこと考えんなよ。」

「「「「「お前らだろ!!!」」」」」

「んだと!?」


 戦闘が始まろうとした途端、スザンナの部下4人の端末からメッセージが送られてきた。


「んだよこんな時に。姉貴!?」

「本当!?」


 ライラが食いついてきた。部下の顔を押さえて内容を見ようとするが、独自の言語で全然読めなかった。


「読んでやるから、押すな!」


 ライラは離れた。


「ええと、

“場所変わった。
下町のフードコートで
合流しよう。”

だとさ。」

「レオの姉貴も無事ってか!?」


 オスカルも食いつくが、素っ気なく反応する。


「それは知らねぇよ。でも、今は姉貴の無事が一番!」

「……どちらにせよ、そこに行かなきゃなんねぇってことだろ?なら行くっきゃないっしょ!」


 皆が喜ぶ。スザンナの帰還に、レオの帰還に喜んでいる。被害者である女性達も喜ぶ。レオ達は無事戻ってくるのだ。そして…


(……レオさん……サド君。)


 ライラは一緒に守ってくれた2人の帰還を、誰よりも強く望んでいた。すぐに仲間の所に走っていく。


「……みんな!!」


 再会を誰よりも望んでいた。ライラは地球の人達を下町へと連れて行く。


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