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Chapter_2:コーズ&エフェクト
Note_43
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【フェニコプテラス】の下町にある【第2中央塔】にて、下院議員の【アブロ・ホルミウス】が次の取引相手と談話していた。
今回の取引相手は、女性のみで形成されている5人組のチームであった。リーダーの隣で立っている1人が、テーブルを強く叩き、アブロに怒鳴り散らす。
「おい!この変態クソカマキモジジイ!
……姉貴にエロい目してたの知ってんだよ!それで上げねぇんなら、覚悟しておけよ!」
「ムッフフ……そう顔を赤くしないでくれたまえお嬢さん方、それとエロい目で悪かったね。
……でも、【サファイア】1つで取引しろって言われてもなぁ……純度も悪いし……装飾にしたって、貴族に鼻で笑われるっつーの。
上げるわけには、い か な い の。」
「……んだとゴルァ!!」
「やめろ!」
リーダーが部下を諫める。そこに居合わせているのは、右腕の義手を破壊された大傷の女性であった。
「……礼儀を欠いて交渉なんざできねぇよ。それはお互い様だ。“お得意様”相手にこの体たらくじゃ、文句も言えねぇ。」
「ムッフフ~ン!チミも分かってきたようで、何よりだよぉ……【スザンナ】さん。」
「だがクソデブ……次ぃ胸を見たら政府関係者だろうが、三枚におろす。こういう時代に生まれてきたんだ。ヘマは許さん。」
アブロ議員は電子タバコを吸おうとする。姉貴分のスザンナは脚でテーブルを叩き、議員を黙らせる。
「……そのタバコすぐ捨てろ。それ以上、使う素振り見せたら砂漠に埋めるぞ。」
「……タバコ1つでそんな……」
「いいな?」
「……ひん。」
アブロ議員は渋々、電子タバコを部下に手渡した。だがビジネスは別であった。
「……でも、でかけりゃいいってもんじゃないのよ!せいぜい、Bランクの2150Uドルってとこじゃないの?
スザンナさんとは、何度も交渉した仲だけど……流石に、何か理由があるんじゃないの?もしくはど~しても聞きたいことがあるとか……。」
「………。」
スザンナはひと呼吸置いてから、事情について話し始める。
「お前の耳にも届いているだろうが、上町の地球人の噂……何か手がかりとかあるか?」
アブロ議員はしばらく考えてから答える。
「……無いよ。噂だけは聞いているけどね。地球人がこっちに来たとか、他にもいるとか……
もしそれが明らかになったら、ボクなら部下を潜入させて突き止めてやりたいけどね。」
「男子禁制だったんだろ。くだらねぇ……できなきゃ私達に任せてもいい。いつも通り報酬はいただくがな。」
「姉貴がいるなら、百人力だな!」
メンバーが意気揚々とスザンナを持ち上げる。しかしアブロ議員の答えは、彼女達の望んだものではなかった。
「……流石に、噂を聞いてからじゃあ遅すぎるのよ。どんなに腕っぷしが良くてもね。」
「……何だと?」
アブロ議員は、サファイアを入れた箱を閉ざして彼女達に返す。
「それに、ボクは既に……投資したのよ。」
_____
姉弟は上町にある【第1中央塔】の地下の駐機場にて、地球の人達と一時的な退避を試みようとしている。エレベーターから降りた場所はB3階にあたり、下には広大な空間が見られる。
レオは端末に表示されたマップを頼りに、先頭に立って集団を導く。真正面から外の光が漏れ出ている。
(入り口がでかいな……50m以上の大型機体を格納してんのか?一応、警護的な口実で入れてるんだろうな。
道もやけに広い。貴族の機体となると、こうもデカブツを並べられると厄介だな。)
レオは走り出す。皆も付いていく。目指すは地下のエレベーター。階段など存在しない。
サドは次の行動をレオに伝える。
「僕1人で、B1階にある管制室に行ってここの機体を調達する。レオはみんなを連れてB4階で待ってて。」
「……1人で大丈夫か?」
「できる。その代わり、みんなをよろしくね。」
「分かったよ。」
一旦サドと離れることになる。先にサドがエレベーターを使って扉を閉めた。ライラが心配していた。
「1人で向かわせて、大丈夫……?」
「静かだしな。みんな上に行って、人もいないと思う。でも、ここに敵が来るのも時間の問題だな。さっさと出ていくのが身のためだ。」
レオ達はエレベーターを使って下に降りる。B4階は最下層ではなく、先ほど見たような広い空間でもない。その魂胆について、ライラが疑問に思う。
「あれ、もう1つ下じゃないの?」
「……事故らねぇようにするためだろ。安全確認次第、サドと下に向かう。」
「そっか……こっち側は結構暗いし……あんまり離れられないと思うけど……。」
「まあ、何かあったら端末で知らせるだろ。」
「………。」
ライラは心配しながらも律儀に待つ。しばらく暇なので、レオに話しかける。
「レオさんって……サド君以外に仲間がいないんですか?」
「元々は大きなグループの1人だけど、他の人達が逃げ出したり、亡くなったりして……今は2人でやりくりしている。」
「2人で頑張って……偉いなぁ。結構大変じゃない?戦いとかもだけど、生活とか、資金繰りとか、こそ泥とか。」
レオがため息をついて、ライラに答える。
「……あいつ、知識は持っているからな。今回ここに来たのも、サドから言ってきたことだったからな。
それにネットに繋がってるだろうから、生活知識とかも持っているようなもんだな。
泥棒とかも心配していたけど、でかい敵を倒したから一定期間は大丈夫とか……結構助かってるな。」
「んじゃあ、サド君がリーダーみたいな……」
「無いな。あいつは弱そうだからな。マークⅢにも舐められてるし、あいつ自身も自覚している。今回でもすぐ私を頼りにしてたし。」
「んじゃあ、あなたは?」
「集団が残した機体を受け継いで、そのパイロットを今やってる。大体の場所なり、決めてるのは私だけど、面倒くさい時はサドに全部任せてる。」
「……ここに来たのも、サド君に行き先を任せた感じ?」
「私は最初、行く気なかったんだけど。」
レオは気軽に話しながら、待っていた。
下から何かが来ている音がする。レオはその元を辿る。すると、1機の敵機体【Meteor_Coaster】が自動操縦によって近くにやってくる。
レジスタンス機はまだ来ないようだ。エレベーターがやってくる。サドが戻ってきた。
「……少し時間かかっちゃった。レジスタンス機はまだだけど、今のうちに下でみんなを居住コンテナに入れる。」
「コンテナで大丈夫なのか?」
「四角の球状緩衝型だから、咄嗟の移送には丁度いい代物さ。人も安心して入れる。」
エレベーターに乗って下へと向かう。B4階からB5階までの距離が長く、若干退屈に感じた。
扉が開くと機体とコンテナがあった。ライラはこのコンテナに見覚えがある。
「……はぁ……またこれに乗るなんてね。」
「でも、これで最後になるはず。」
「向こうに行って、後はしばらく匿うだけか。んじゃ、ちゃっちゃと終わらせてアニメでも見るか。」
サドがコンテナを開けて、地球の人達を誘導する。このコンテナは後ろに付けて引っ張るタイプだ。下に球型キャスターが付いている。
「皆さん!このコンテナを使って移動します。走らず前から順番にお乗りください!」
女性達はそれぞれ前から順番に乗る。ライラとオルガはサドに近づく。
「サド君。」
「サドお兄ちゃん。」
「構わず行ってください。レオを守ってくださったこと、とても感謝しています。後はお任せください。」
「こっちなんか……」
「ここを出てからにしましょう。まだ、終わっていないので。」
「………。」
ライラは手を強く握りしめて、オルガを置いてコンテナに入る。
「お兄ちゃん……」
オルガは俯く。サドは彼女を説得する。
「……僕は、地球のみんなとレオを守りたい。だからあのロボに乗って、みんなを後ろから守るのさ。
もし守りたいなら、さっきの様にお姉さん達を守るんだね。……また会いましょう。」
サドの顔が向く方向に、オルガも自身の顔を向けた。コンテナの入り口である。彼の顔をもう一度見てから、オルガは早歩きで入っていった。
最後に残ったのは、年長のテリーサであった。テリーサはレオに対して伝えたいことがいくつかある。
「あなたには、何とお礼を申せば……」
「まだ終わってねぇよ。」
「同じ地球の被害者であるライラを、救ってくれたのも、大事にしてくれたのも、あなた方がやったことなんでしょう……。
地球の者として、深く感謝申し上げます。お礼はどうすれば……」
「いいよ、別に。」
「いえ……」
テリーサは彼女のために、何をすれば良いか分からなかった。何をプレゼントするべきか、何をしてあげるべきか、悩んでいた。
レオがきっぱりと言う。
「……一番の礼は……“生き延びろ”。あんたらが本当に地球に帰りたいって思うなら、執着してでもこの場を切り抜けるんだ。」
「しかし!」
レオは横にあるコンテナに親指を指した。
「あのコンテナは安全らしい。それはあんたらも知ってんだろ。
安全な場所にいてくれ。後は守る。あんたらが生きていてくれたら、また楽しく話もできるだろ。」
レオは真面目な表情で、テリーサを見送る。彼女は一言だけレオに言う。
「レオさん!」
「………。」
「逃げ切れたらまた!」
テリーサもコンテナに入っていった。サドが補助階段をしまい、コンテナを閉ざす。
姉弟はレジスタンス機を待つ。壁を背にしてじっと待っていた。レオから話しかける。
「……あとどれぐらいだ?」
「そろそろだね。機体が侵入してから、警報が鳴り響くはず。レオはレジスタンス機に乗ってコンテナのみんなを運んでほしい。
僕は後方を見張る。もし、相手が強敵ならあの機体が呼べるはずさ。」
「あの機体って……何だよ。」
サドはレオの顔を見て言う。
「……【ラグナロク】。端末で呼び出せるようにしている。」
「あいつか。大事な場面で使うよ。向こうにも“リソース”という概念があるらしいし。」
「相手も大型機体、生半可な攻撃が通じるとは思えない。敵がみんなに危害を加えるようなら存分に使ってもいいよ。レオのものだから。」
「……上等だよ。」
レオも覚悟を決める。
突然サイレンが駐機場に鳴り響き、場内が赤く染まっていく。アナウンスも同時に行われた。
『駐機場に侵入。機体は50mの大型。直ちに阻止せよ。繰り返す……』
「レジスタンス機が来るまで待っていて!」
サドが走る。【Meteor_Coaster】のコクピットも梯子のような側面から登って中に入る。カードが必要なドアだが、P-botの力で無理やり認証して開ける。
機体は【オートマ】であり、ブレインチップを頭部に付けるだけで良いらしい。機体を起動させてコンテナを運ぼうとする。
『……そのコンテナで何を運んでいる。』
その時、多くの機体がこの駐機場に姿を現す。それはまさしく、政府の機体に間違いなかった。【Polaris5G】、憎きロキが乗っていた機体だ。彼女の一言でサドは確信した。
(ロキの……側近だな?)
【Polaris5G】に乗っているのは、【リネア・フューニス】……かつてロキに仕えていた側近である。事情を尋ねる。
『お前は誰だ。』
『……なるほどな。君が彼らを逃がそうと……なら好都合だな。』
隣から【Polaris4G】が現れ、そこから男性の声が聞こえてくる。【ボレアリス】であった。背後にはサドと同様の【Meteor_Coaster】が4機あった。
ボレアリスはサドに近寄る。
『……我々のために、尽くしてくれれば……褒美の一つや二つは与えてやろう。』
サドは無言を通す。返事もしない。ボレアリスは更に話を進める。しかし、彼が透過技術によってコンテナ内の物を見破ってきた。
『………ッ!地球人だと!』
『逃がすつもりか?それとも献上するつもりか?譲ろうが譲るまいが、お前の存在は死に値する。逃がすと思うなよ。』
フューニスが脅しをかける。
サドは無言で待っていた。そんな彼にボレアリスは痺れを切らした。
『……いい加減、失せろ!』
ボレアリスは武装の1つである、【フレアゲート】の銃口を向ける。その火力をサドは見ていた。すぐに腕を払って弾き飛ばす。
炎が上に上がる。天井に届くはずもなくそのまま消えていく。その行為に、フューニスは許さなかった。
『まさか、手を出すとはな。そこまでして、死にたいようだな!』
ボレアリスもまた彼を許さなかった。
『“楽園”の邪魔しやがって……醜く溶けろ!クソ野郎がッ!!』
トリガーを引こうとした時、ボレアリスの機体に勢いよく別の機体が衝突してきた。
…レジスタンス機であった。サドは伝える。
『レオ!構わずコンテナを運んで!早く!』
「……分かった!」
レオはすぐにレジスタンス機に乗り込む。それをフューニスの機体に搭載された武装、【合体剣】の小型機が光線で狙い撃つ。
それをサドが自身の機体を張って守る。レオは急ぐ。機体を起動してレジスタンス機を動かす。コンテナの下から緊急用の頑丈な紐を引っ張り出して、下町の駐機場への道へ向かう。
『奴を追え!』
フューニスは部下に指示を出す。サドはすぐにコンテナの背後を守る。全員が追いかけた。
駐機場の門が開いている。レオは真っ直ぐそちらへ向かった。
フューニスは容赦無く、小型機から光線を撃ち込む。サドは武装で火炎を放つも、敵の機体には耐性があった。
『逃がすかあアアァァァッッッ!!』
フューニスは光線をサドの機体に命中する。サドの機体が爆ぜて、関門が爆炎で閉ざされた。
敵は焼失物を確かめに近づく。フューニスは連絡を取る。
『関門を突破された。これから皆で向かう。絶対に奴らを取り逃がすな!』
6機が総出でレオ達を追おうとするが、機体の燃料が炎を更に激しくさせ、門ごと包む大火事となっていた。
根性でも通ろうとした瞬間に、ボレアリスが機体のカメラで1機の反応を受ける。
『なんだあれは……小さな機械……だと?』
彼らの前に立ち塞がったのは、白黒で人並みに小さな機体、【P-bot_mk.Ⅲ】。無論、その存在を彼らは知らない。
マークⅢは両翼にエネルギーの3枚羽を生み出して、本気でフューニス達との戦闘に挑む。
今回の取引相手は、女性のみで形成されている5人組のチームであった。リーダーの隣で立っている1人が、テーブルを強く叩き、アブロに怒鳴り散らす。
「おい!この変態クソカマキモジジイ!
……姉貴にエロい目してたの知ってんだよ!それで上げねぇんなら、覚悟しておけよ!」
「ムッフフ……そう顔を赤くしないでくれたまえお嬢さん方、それとエロい目で悪かったね。
……でも、【サファイア】1つで取引しろって言われてもなぁ……純度も悪いし……装飾にしたって、貴族に鼻で笑われるっつーの。
上げるわけには、い か な い の。」
「……んだとゴルァ!!」
「やめろ!」
リーダーが部下を諫める。そこに居合わせているのは、右腕の義手を破壊された大傷の女性であった。
「……礼儀を欠いて交渉なんざできねぇよ。それはお互い様だ。“お得意様”相手にこの体たらくじゃ、文句も言えねぇ。」
「ムッフフ~ン!チミも分かってきたようで、何よりだよぉ……【スザンナ】さん。」
「だがクソデブ……次ぃ胸を見たら政府関係者だろうが、三枚におろす。こういう時代に生まれてきたんだ。ヘマは許さん。」
アブロ議員は電子タバコを吸おうとする。姉貴分のスザンナは脚でテーブルを叩き、議員を黙らせる。
「……そのタバコすぐ捨てろ。それ以上、使う素振り見せたら砂漠に埋めるぞ。」
「……タバコ1つでそんな……」
「いいな?」
「……ひん。」
アブロ議員は渋々、電子タバコを部下に手渡した。だがビジネスは別であった。
「……でも、でかけりゃいいってもんじゃないのよ!せいぜい、Bランクの2150Uドルってとこじゃないの?
スザンナさんとは、何度も交渉した仲だけど……流石に、何か理由があるんじゃないの?もしくはど~しても聞きたいことがあるとか……。」
「………。」
スザンナはひと呼吸置いてから、事情について話し始める。
「お前の耳にも届いているだろうが、上町の地球人の噂……何か手がかりとかあるか?」
アブロ議員はしばらく考えてから答える。
「……無いよ。噂だけは聞いているけどね。地球人がこっちに来たとか、他にもいるとか……
もしそれが明らかになったら、ボクなら部下を潜入させて突き止めてやりたいけどね。」
「男子禁制だったんだろ。くだらねぇ……できなきゃ私達に任せてもいい。いつも通り報酬はいただくがな。」
「姉貴がいるなら、百人力だな!」
メンバーが意気揚々とスザンナを持ち上げる。しかしアブロ議員の答えは、彼女達の望んだものではなかった。
「……流石に、噂を聞いてからじゃあ遅すぎるのよ。どんなに腕っぷしが良くてもね。」
「……何だと?」
アブロ議員は、サファイアを入れた箱を閉ざして彼女達に返す。
「それに、ボクは既に……投資したのよ。」
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姉弟は上町にある【第1中央塔】の地下の駐機場にて、地球の人達と一時的な退避を試みようとしている。エレベーターから降りた場所はB3階にあたり、下には広大な空間が見られる。
レオは端末に表示されたマップを頼りに、先頭に立って集団を導く。真正面から外の光が漏れ出ている。
(入り口がでかいな……50m以上の大型機体を格納してんのか?一応、警護的な口実で入れてるんだろうな。
道もやけに広い。貴族の機体となると、こうもデカブツを並べられると厄介だな。)
レオは走り出す。皆も付いていく。目指すは地下のエレベーター。階段など存在しない。
サドは次の行動をレオに伝える。
「僕1人で、B1階にある管制室に行ってここの機体を調達する。レオはみんなを連れてB4階で待ってて。」
「……1人で大丈夫か?」
「できる。その代わり、みんなをよろしくね。」
「分かったよ。」
一旦サドと離れることになる。先にサドがエレベーターを使って扉を閉めた。ライラが心配していた。
「1人で向かわせて、大丈夫……?」
「静かだしな。みんな上に行って、人もいないと思う。でも、ここに敵が来るのも時間の問題だな。さっさと出ていくのが身のためだ。」
レオ達はエレベーターを使って下に降りる。B4階は最下層ではなく、先ほど見たような広い空間でもない。その魂胆について、ライラが疑問に思う。
「あれ、もう1つ下じゃないの?」
「……事故らねぇようにするためだろ。安全確認次第、サドと下に向かう。」
「そっか……こっち側は結構暗いし……あんまり離れられないと思うけど……。」
「まあ、何かあったら端末で知らせるだろ。」
「………。」
ライラは心配しながらも律儀に待つ。しばらく暇なので、レオに話しかける。
「レオさんって……サド君以外に仲間がいないんですか?」
「元々は大きなグループの1人だけど、他の人達が逃げ出したり、亡くなったりして……今は2人でやりくりしている。」
「2人で頑張って……偉いなぁ。結構大変じゃない?戦いとかもだけど、生活とか、資金繰りとか、こそ泥とか。」
レオがため息をついて、ライラに答える。
「……あいつ、知識は持っているからな。今回ここに来たのも、サドから言ってきたことだったからな。
それにネットに繋がってるだろうから、生活知識とかも持っているようなもんだな。
泥棒とかも心配していたけど、でかい敵を倒したから一定期間は大丈夫とか……結構助かってるな。」
「んじゃあ、サド君がリーダーみたいな……」
「無いな。あいつは弱そうだからな。マークⅢにも舐められてるし、あいつ自身も自覚している。今回でもすぐ私を頼りにしてたし。」
「んじゃあ、あなたは?」
「集団が残した機体を受け継いで、そのパイロットを今やってる。大体の場所なり、決めてるのは私だけど、面倒くさい時はサドに全部任せてる。」
「……ここに来たのも、サド君に行き先を任せた感じ?」
「私は最初、行く気なかったんだけど。」
レオは気軽に話しながら、待っていた。
下から何かが来ている音がする。レオはその元を辿る。すると、1機の敵機体【Meteor_Coaster】が自動操縦によって近くにやってくる。
レジスタンス機はまだ来ないようだ。エレベーターがやってくる。サドが戻ってきた。
「……少し時間かかっちゃった。レジスタンス機はまだだけど、今のうちに下でみんなを居住コンテナに入れる。」
「コンテナで大丈夫なのか?」
「四角の球状緩衝型だから、咄嗟の移送には丁度いい代物さ。人も安心して入れる。」
エレベーターに乗って下へと向かう。B4階からB5階までの距離が長く、若干退屈に感じた。
扉が開くと機体とコンテナがあった。ライラはこのコンテナに見覚えがある。
「……はぁ……またこれに乗るなんてね。」
「でも、これで最後になるはず。」
「向こうに行って、後はしばらく匿うだけか。んじゃ、ちゃっちゃと終わらせてアニメでも見るか。」
サドがコンテナを開けて、地球の人達を誘導する。このコンテナは後ろに付けて引っ張るタイプだ。下に球型キャスターが付いている。
「皆さん!このコンテナを使って移動します。走らず前から順番にお乗りください!」
女性達はそれぞれ前から順番に乗る。ライラとオルガはサドに近づく。
「サド君。」
「サドお兄ちゃん。」
「構わず行ってください。レオを守ってくださったこと、とても感謝しています。後はお任せください。」
「こっちなんか……」
「ここを出てからにしましょう。まだ、終わっていないので。」
「………。」
ライラは手を強く握りしめて、オルガを置いてコンテナに入る。
「お兄ちゃん……」
オルガは俯く。サドは彼女を説得する。
「……僕は、地球のみんなとレオを守りたい。だからあのロボに乗って、みんなを後ろから守るのさ。
もし守りたいなら、さっきの様にお姉さん達を守るんだね。……また会いましょう。」
サドの顔が向く方向に、オルガも自身の顔を向けた。コンテナの入り口である。彼の顔をもう一度見てから、オルガは早歩きで入っていった。
最後に残ったのは、年長のテリーサであった。テリーサはレオに対して伝えたいことがいくつかある。
「あなたには、何とお礼を申せば……」
「まだ終わってねぇよ。」
「同じ地球の被害者であるライラを、救ってくれたのも、大事にしてくれたのも、あなた方がやったことなんでしょう……。
地球の者として、深く感謝申し上げます。お礼はどうすれば……」
「いいよ、別に。」
「いえ……」
テリーサは彼女のために、何をすれば良いか分からなかった。何をプレゼントするべきか、何をしてあげるべきか、悩んでいた。
レオがきっぱりと言う。
「……一番の礼は……“生き延びろ”。あんたらが本当に地球に帰りたいって思うなら、執着してでもこの場を切り抜けるんだ。」
「しかし!」
レオは横にあるコンテナに親指を指した。
「あのコンテナは安全らしい。それはあんたらも知ってんだろ。
安全な場所にいてくれ。後は守る。あんたらが生きていてくれたら、また楽しく話もできるだろ。」
レオは真面目な表情で、テリーサを見送る。彼女は一言だけレオに言う。
「レオさん!」
「………。」
「逃げ切れたらまた!」
テリーサもコンテナに入っていった。サドが補助階段をしまい、コンテナを閉ざす。
姉弟はレジスタンス機を待つ。壁を背にしてじっと待っていた。レオから話しかける。
「……あとどれぐらいだ?」
「そろそろだね。機体が侵入してから、警報が鳴り響くはず。レオはレジスタンス機に乗ってコンテナのみんなを運んでほしい。
僕は後方を見張る。もし、相手が強敵ならあの機体が呼べるはずさ。」
「あの機体って……何だよ。」
サドはレオの顔を見て言う。
「……【ラグナロク】。端末で呼び出せるようにしている。」
「あいつか。大事な場面で使うよ。向こうにも“リソース”という概念があるらしいし。」
「相手も大型機体、生半可な攻撃が通じるとは思えない。敵がみんなに危害を加えるようなら存分に使ってもいいよ。レオのものだから。」
「……上等だよ。」
レオも覚悟を決める。
突然サイレンが駐機場に鳴り響き、場内が赤く染まっていく。アナウンスも同時に行われた。
『駐機場に侵入。機体は50mの大型。直ちに阻止せよ。繰り返す……』
「レジスタンス機が来るまで待っていて!」
サドが走る。【Meteor_Coaster】のコクピットも梯子のような側面から登って中に入る。カードが必要なドアだが、P-botの力で無理やり認証して開ける。
機体は【オートマ】であり、ブレインチップを頭部に付けるだけで良いらしい。機体を起動させてコンテナを運ぼうとする。
『……そのコンテナで何を運んでいる。』
その時、多くの機体がこの駐機場に姿を現す。それはまさしく、政府の機体に間違いなかった。【Polaris5G】、憎きロキが乗っていた機体だ。彼女の一言でサドは確信した。
(ロキの……側近だな?)
【Polaris5G】に乗っているのは、【リネア・フューニス】……かつてロキに仕えていた側近である。事情を尋ねる。
『お前は誰だ。』
『……なるほどな。君が彼らを逃がそうと……なら好都合だな。』
隣から【Polaris4G】が現れ、そこから男性の声が聞こえてくる。【ボレアリス】であった。背後にはサドと同様の【Meteor_Coaster】が4機あった。
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『……我々のために、尽くしてくれれば……褒美の一つや二つは与えてやろう。』
サドは無言を通す。返事もしない。ボレアリスは更に話を進める。しかし、彼が透過技術によってコンテナ内の物を見破ってきた。
『………ッ!地球人だと!』
『逃がすつもりか?それとも献上するつもりか?譲ろうが譲るまいが、お前の存在は死に値する。逃がすと思うなよ。』
フューニスが脅しをかける。
サドは無言で待っていた。そんな彼にボレアリスは痺れを切らした。
『……いい加減、失せろ!』
ボレアリスは武装の1つである、【フレアゲート】の銃口を向ける。その火力をサドは見ていた。すぐに腕を払って弾き飛ばす。
炎が上に上がる。天井に届くはずもなくそのまま消えていく。その行為に、フューニスは許さなかった。
『まさか、手を出すとはな。そこまでして、死にたいようだな!』
ボレアリスもまた彼を許さなかった。
『“楽園”の邪魔しやがって……醜く溶けろ!クソ野郎がッ!!』
トリガーを引こうとした時、ボレアリスの機体に勢いよく別の機体が衝突してきた。
…レジスタンス機であった。サドは伝える。
『レオ!構わずコンテナを運んで!早く!』
「……分かった!」
レオはすぐにレジスタンス機に乗り込む。それをフューニスの機体に搭載された武装、【合体剣】の小型機が光線で狙い撃つ。
それをサドが自身の機体を張って守る。レオは急ぐ。機体を起動してレジスタンス機を動かす。コンテナの下から緊急用の頑丈な紐を引っ張り出して、下町の駐機場への道へ向かう。
『奴を追え!』
フューニスは部下に指示を出す。サドはすぐにコンテナの背後を守る。全員が追いかけた。
駐機場の門が開いている。レオは真っ直ぐそちらへ向かった。
フューニスは容赦無く、小型機から光線を撃ち込む。サドは武装で火炎を放つも、敵の機体には耐性があった。
『逃がすかあアアァァァッッッ!!』
フューニスは光線をサドの機体に命中する。サドの機体が爆ぜて、関門が爆炎で閉ざされた。
敵は焼失物を確かめに近づく。フューニスは連絡を取る。
『関門を突破された。これから皆で向かう。絶対に奴らを取り逃がすな!』
6機が総出でレオ達を追おうとするが、機体の燃料が炎を更に激しくさせ、門ごと包む大火事となっていた。
根性でも通ろうとした瞬間に、ボレアリスが機体のカメラで1機の反応を受ける。
『なんだあれは……小さな機械……だと?』
彼らの前に立ち塞がったのは、白黒で人並みに小さな機体、【P-bot_mk.Ⅲ】。無論、その存在を彼らは知らない。
マークⅢは両翼にエネルギーの3枚羽を生み出して、本気でフューニス達との戦闘に挑む。
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日本国の戦闘団、護衛隊群、そして戦闘機と飛行場基地。続々異世界へ――
とある別の歴史を歩んだ世界。
その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。
第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる――
大規模な演習の最中に異常現象に巻き込まれ、未知なる世界へと飛ばされてしまった、日本国陸隊の有事官〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟と、各職種混成の約1個中隊。
そこは、剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する世界であった。
そんな世界で手探りでの調査に乗り出した日本国隊。時に異世界の人々と交流し、時に救い、時には脅威となる存在と苛烈な戦いを繰り広げ、潜り抜けて来た。
そんな彼らの元へ、陸隊の戦闘団。海隊の護衛艦船。航空隊の戦闘機から果ては航空基地までもが、続々と転移合流して来る。
そしてそれを狙い図ったかのように、異世界の各地で不穏な動きが見え始める。
果たして日本国隊は、そして異世界はいかなる道をたどるのか。
未知なる地で、日本国隊と、未知なる力が激突する――
注意事項(1 当お話は第2部となります。ですがここから読み始めても差して支障は無いかと思います、きっと、たぶん、メイビー。
注意事項(2 このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。
注意事項(3 部隊単位で続々転移して来る形式の転移物となります。
注意事項(4 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。かなりなんでも有りです。
注意事項(5 小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。
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※この作品はカクヨムでも掲載しています。
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