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Chapter_2:コーズ&エフェクト

Note_29

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 【HFRハロフリートランド】研究棟の番人たるレジスタンス機。その集団は病棟を除く他のエリアから次々とやってくる。ロキの軍勢による、夜襲が始まる。

 レジスタンス情報チームの研究棟前にて、熾烈な戦いが繰り広げられている。敵の機種は、ロキが大株主となっている【Starスター_Gardenガーデン社】の特注品オーダーメイドである。

 側近を除く部下は【Meteorメテオ_Corsterコースター】。側近は【Polarisポラリス4G】、ロキは最新型の【Polaris5G】に搭乗している。

 レジスタンス機を2機ほど打ち破り、研究棟へ悠々と向かった。レジスタンスが劣勢である。

 ロキは側近の女性と通信している。


『……他愛もない。レジスタンス機の性能は7年前に開発された【Majinメイジーン社】のロボットの派生……最新型にはついていけまい。』

『機体性能は我々の方が当然、上ですね。』

『猿真似まね程度で我々を出し抜けると思うな……畜生共。』


 このまま2人で研究棟に手を出す…その時であった。背後から突如として、レジスタンス機がビームソードで斬りかかる。

 ロキは付属の小型機を発動し、瞬時にダイヤ型のバリアを展開させた。光がバリアを境に寸断される。レジスタンス機が2機、敵機体の背後から通り過ぎ、参上する。

 2人の正体は…


『……博士。頼みました。』

『……すぐ死ぬなよ。』


 サドとカプリコ博士であった。カプリコ博士は先に研究棟へ向かう。

 側近が即座に回り込もうとするが、サドが撃った光線銃に当たる。


『……!』

「2人とも、私が相手します。」


 サドがこの場を請け負う。カプリコ博士は救助に向かった。

 ロボットで坂を駆け抜ける。敷地を走り、駐機場へと向かう。


_____


 子供達は避難所に再び戻っていた。子供達以外は既に病棟、もしくは道中でやられているかもしれない。

 皆は談話していた。


「……私達は……やれることをやったんだよね?みんなを誘導する役割を……。」


 ベルはディアドラに尋ねる。彼らはボランティアとして、機体への誘導を行っていた。サドが来た時のように、早い者勝ちの競争で搭乗する人を決めるのは危険である。

 よって自分達より先に、他の人を優先させて案内を行うことで、トラブル無く円滑に進めていたのだ。

 彼ら自身もまだ大人ではないが、彼ら以外にも子供はいた。


「“サド君の助けになりたい”って、あんたもちゃんと言ってたでしょ?」

「……僕達……!」


 アークトゥルスが話し始める前に、メルが彼の肩を掴んで止めた。そして彼の話をうまく繋げる。


「大丈夫。みんなでまた過ごせるはずよ。」


 マルコは提案する。


「みんな、辛いときにみんなでやったこと、初めて合ったときにやったこと、覚えてる?」


 カンタは覚えている。彼は今までリーダーとしてみんなを引っ張ってきた。その事は、彼自身の誘いで行ったことである。


「なるほどな……

もしみんなが覚えてるなら、サドはいないんだが……もう一度やってみないか?」


 皆々が、答える。


「……やる!」
「やるに決まってるじゃない!」
「懐しいな……。」
「ええっ、はい!やります!」
「やるよ!カンタ兄さん!」
「……恥ずかしい……でもやればいいんでしょ!サド君がいないのに……。」
「……元々のリーダーは僕だからな。」
「分かった!僕もみんなとやりたい!」
「そうだな!
「そうだね!」
「そのとおり!」
……合わせんな!ったく……。」
「……僕も!」


 カンタは、最後の一人の答えを聞く。


「アトリアは……どうだ?」

「……次は、リンとサドも一緒に!」

「決まりだな!んじゃあやるぜ!」


 みんなで立ち上がり、手を重ね合って、エールを唱える。後からフロラン、メル、カンタの順に手を乗せていく。


「厳しいときこそ!」

「勇気に変えて!」

「みんなの力で乗り越える!

俺たちは無敵だ!なぜなら“超一番”の……」

「「「「「「「「「「「「「「「



とも”だから!!!



」」」」」」」」」」」」」」」


 皆が上に向けて、人差し指を一点に合わせた。身長差なんて関係ない。年齢なんて関係ない。皆がなるのは“超一番”。不自由なんてものは無い。

 皆々が励まし合い、笑顔を絶やさなかった。その中でカプリコ博士が息を荒くしながら、避難所にいる彼らを見つけた。

 カンタが声をかけた。

「カプリコ博士!」

「……ボランティアのご褒美……特等席をくれてやる。ついて来い!3mメートルなんてもんじゃないぞ。」


 みんなが博士について行く。もう辛くなんかない。みんなはそう考えていた。


_____


…辛いどころか、サドは感情すら持っていない。淡々と冷静に、敵の攻撃を捌く。


『……貴様、【サド・キャンソン】だな?』

『……そうじゃないと言ったら?』

『どちらにせよ、楽には死なさん。第1・2班が得たデータは民を惑わし、世を乱す“組織的犯罪”に値する!一生かけて苦しんでもらおうか……。

我が名は【ロキ・エンダー】!キャンソン一族の邪悪な野望を打ち崩す……“正義の鉄槌”を下そうではないか!』


 【Polaris5G】に搭載されている【合体剣】。小型機にAIが搭載されており、時にバリアを張る盾となり、周囲を漂う小型機となり、光線銃となり、万能である。ロキはその合体剣の真の姿を解放する。

 剣にくっついている小型機の口が開き、光を溜めていく。

 サドはブーストで自らぶつかることで妨害した。研究棟を守ることができた。


『……させません!』

『フッ……』


 ロキはあざ笑う。側近が既に研究棟に向けて、てのひらから炎を生み出し、火の海にしていく。火炎放射器であった。


『やめろ!!!』

『ぐああっ!!』


 サドは必死の形相で、光線銃をロキの側近に当てる。機体の右腕が無くなり、火炎を放てなくなった。

 サドは更に撃ち込もうとするが、ロキに合体剣を振られ回避する。バリアが出ない内に、ビームソードを合わせることで、合体剣の破壊に成功した…


『……我々の特注品はすべて【オートマチック】!意のままにものを動かすことができる!よく覚えておけ。』


…即座に分離した小型機がサドを狙う。サドの背後から光線を撃ち込む。そして、エネルギーが切れて役割を終える。

 サドは同時に側近の方に撃ち込んだ。外してしまう。

…小型機の光線が弾かれた。レジスタンス機から付属された小型機が、ダイヤ型にバリアを張ってくる。しかし、使い切りだ。ロキは察する。


(……同じ小型機……レジスタンスの科学力は、本部付近となると侮れなくなるな。)

(カプリコ博士の小型機による防御……1回分しか使えないけど……我慢だ!)


 サドはそのまま、光剣で止めを刺しに行く。ロキはブーストを用いて加速する。ロキの側近は研究棟へ、最後の左腕を持って、火の海の中を駆り出す。



 間一髪、ロキがサドに追いついた。レジスタンス機を突き倒す。その反動で脚の油線が外れてしまい、立てなくなった。

 反対方向には側近の機体が間近にいた。今は研究棟前の敷地にいる。


『貴様には生きていてもらう。レジスタンスを滅ぼすために一芝居、打ってもらうぞ。』

『……誰が……やるもんですか。』

『ロキ様の温情を受け入れられぬのなら……ここで燃やされて無様に焼けるのも一興だと思うが……?』

『………。』


 サドは黙った。

 そして、もう1つの機械音に彼女らは気づく。


『……生き残りか?』

『ロキ様、いかがなされますか。』

『……燃やせ。塵も残すな。』


 側近は左腕を研究棟に向けた。

 しかし、急に足腰が崩れる。


『……な!』

『……貴様アァァッッ!往生際が悪いぞ!』


 サドは2つの機体の脚を、光剣で横に、一気に斬った。ロキ達は共に落下する。

 なんとか両膝状態で立てるものの、ブーストはもはや意味をなさない。

 ロキ達は激昂していた。


『どうやら死にたいようだな!ロキ様の作戦の邪魔をしやがって……』

『……死んでも許されんぞ……この屈辱……無様な体になって苦しめ!』


 レジスタンス機の頭を掴んで、体ごと地面に叩きつけた。整備された硬い地面に、サドは何度も叩きつけられる。



…両腕ももぎ取られた。もう見るだけしかできない。数回叩きつけられた後に、カプリコ博士から通信が入ってきた。通信に出たのはカンタであった。


『……サド!生きてるか!?すぐに助けてやるからな!!』

『カンタ兄さん!駄目!ここはすぐに逃げなきゃ!』

『サド君!!答えて!返事をしてよ!』


 サドには周囲がぼんやりと見える。耳鳴りもする。連絡を取るか否かのボタンを色でしか判別できなくなっている。声だけを流した。カンタが答える。


『サド!生きてるか!?サド!!』

『……今……どこ……?』

『駐機場だ!もうみんな乗っている!』

『……なら……逃げて……みんなに……生きてて……ほしいから……。』

『俺だってパイロットを目指してたんだ!お前を守るためになるんだって決めたんだ!

なのにお前がパイロットもこなせるようになって……無理ばっかしてんじゃねぇか!!見捨てるわけにはいかねぇんだよ!』

『カンタ!』


 カプリコ博士が一喝する。


『……お前達を守るための時間稼ぎだ。さっさと逃げるぞ!』

『!?』

『サドく……』


 通話が途切れた。もう話すことはない。

 子供達が乗っているレジスタンス機が駐機場から出てくる。そして裏道に向かい、彼らから離れていく。サドは安堵した…



…しかしサドの横から機体が通り過ぎ、そのまま博士の機体へ突っ込んできた。



『諦めろって……言ってんだろうが、【エンドラ】アァァァァァッッッ!!!』



 豪快に、研究棟の方にぶっ飛ばした。彼女の名前は【シア】…ロキの配下である。


『お前は、【エンドラ】なんだよ。たまたまレジスタンスに拾われたってだけで、いい気になりやがって……。』

(……やめろ……。)

『エンダー家に戻りたがってたから恩情で任務を与えたのに……この体たらくが!』

(やめろ……。)

『この場所ごと消し炭になってろ!!』


 【Meteor_Coaster】の掌を博士のレジスタンス機に向けた。





『やめろオォォォォォォッッッ!!!』





 50mの大型機体から発せられる火炎放射。上までは届かないが、下にはどんどん燃え広がる。1階は消し炭にされる。2階、3階……どんどん上へ炎に丸呑みにされていく。

 サドは連絡が聞こえないところからでも、心から響いてくる彼らの悲鳴が聞こえてくる。レジスタンス機は火達磨になっていた。

 炎が上へ、上へと向けて次々と包んでいく。もはや、サドが手を伸ばしても届かないほどに…。



 シアはサドを下に見るように近づく。


『……んで?このクソガキはどうしますか?』

『口が悪いぞシア。“どうなされますか”だ。』

『シアは引き続きここを燃やせ。フューニス、私達は此奴から情報を引き抜いてから、“いつもの場所”で消す。』

『なら“舞台裏”ですね……かしこまりました。』


 フューニスは機体から姿を現す。まだフルフェイスヘルメットを被り、真の姿までは分からない。



 機体に降りようかと考えた時であった。突如として、巨大で黒い影がこの場を包む。


「ん?……ッ!」


 その場で上を見上げた。そこにはレジスタンス機や敵機を遥かに凌駕する巨大機体の姿があった。


『何だ?……ぐあっ!』


 シアを機体ごと鷲掴みにして、地面に思い切り投げ捨てた。


『うおおおおおっ!!』


 無惨に爆散した。巨大機体はどす黒く、不気味で、かの【タイタン号】より細身な機体であった。その機体の中から更にロボットが出てきて、研究棟の消火を始めた。


『本部の奴らが来たのか!……撤退だ……

……何ィッ!!』


 巨大機体は、今度はロキを鷲掴みにしていく。巨大な掌に握りやすくぴったり収まっている。巨大機体は小娘に話す。


『……お前がやったのか……?』

『離せ!この不届き者が……!』


 ドスの利いた女性の声であり、それはサドにも聞き覚えのある声であった。


「……ボ……ス……?」


 レジスタンスのトップ、ボスが直々にHFRキャンプの防衛に援護してきたのだ。

 更に強く握りしめる。


『……お前がしたのか!!!』

『うおおおっ!!やめろ!!離ッせ……』


 ロキはコクピットに両脇から押し込まれるていく。


『……貴様ァッ!!痛いぞッ!!……ッ!』

『ロキ様!!!脱出を!!!』


 巨大機体は掌から光を溜めていく。ロキは予感を察知して緊急脱出ボタンを押す。

 コクピットと機体が分離し、羽を伸ばし、一直線に空を飛んで逃げた。側近のフューニスも同様、空を飛んで逃げた。

 逃げたところに、握りつぶした【Polaris5G】の残骸を投げつける。間一髪のところを躱された。逃してしまったのだ。



 他の敵も戦火に散ったか、敗走したか、降伏したかのいずれかであった。この場をもって、HFRキャンプの防衛は終了したことになる。

 闇夜の中、水の音が響きサドはまた目の前で仲間を救えなかった。レオを見捨てて6年、何も成長していなかった。子供達と博士を見捨てて、この戦いを生き延びたのであった…。


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