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Chapter_1:旅の心得
Note_11
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タイミングが悪いと死ぬ。技術が発達した今の時代でも同じである。特に移動に関しては、AIが施された惑星による不安定な気候も考慮した上で、天運に任せて動かなければならない。
レオとサドは時間を気にしつつ、【タイタン号】がある格納場に入ってきた。左足の非常口が開いており、彼らを待っていた。
『7分遅刻だ。急いで入れ。』
二人はタイタン号の中に入った。サドが非常口を閉ざす。
中を見ると、多くのロボットがコンパクトに格納されており、落ちてこないようにしっかりと支えられている。
「中身が…すごいな…」
「1万年も前なのに…技術だけでここまでのロボットを…まるで空母…どうりで政府が恐れているわけだ。」
「これをオンボロだからと、タカを括った政府か…もったいないな…」
「でも大丈夫?整備がちゃんと行き届かないと脱出すら無理だと思うけど。」
「そこら辺は、先輩達に任せてる。アンタも一緒にやってみるか…?」
「手伝えるなら。」
二人はエレベーターの前に来て、レオがボタンを押すも、何も反応がない。何度押しても、光ることがなかった。
「「?」」
「おかしいな…。長押しも、連打もいかねぇ…」
二人は理由を探る。他にエレベーターもない。サドが察してしまい、脱力する。
「どうした?」
「……多分、エンジンかかったら上にあがれないやつかもしれない。」
「はぁ!?んじゃあどうすんだよ!こんな場所で脚とか動かされたら、少なくとも私は一発で終わりだろ!」
「多分…
“遅刻したら安全な脱出は見込めない”
ってこういうこと!?」
「地上に出すまで10分だろ!?安全な場所を見つけろ!」
「ええと…」
サドは上を向いて探した。すると制御室らしき場所が上に置かれていた。階段で登ることができる。
「あそこ!あの四角い部屋が天井低いし安全だと思う!底も上もしっかりしているし!」
「本当か?…信じるぞ。」
「それ言われると、こっちも心配になってくるんだけど…」
「本当に!いいな!?」
「……先輩達を信じよう!」
「決まりだ…っ!?」
突然、レオは体のバランスを崩された。どうやら地上に向かっているようだ。
「……マジで勘弁してくれよ…。」
「無断で出ていった上に、30分前集合破ったから…まあ酷いことになるとは知ってたけども!」
姉弟は上の部屋を目指し、階段をのぼる。
_____
エリウス中尉は集中していた。遠方の様子、【団子虫型】機械霊の様子を観測していた。このままならば、無事いけると考え、機を狙う。
一方でケンリー少将は深く、悩んでいた。
『少将!警官用ロボットの火災により目的地へ迎えません!このままでは私達の部隊が!』
「少将!偵察隊が巨大ロボットの出現を確認いたしました!」
少将は恐れていた。
「まさか、エンダー家の者がいたとはな…儂らが先に目をつけたところを姑息な…。そこにエンダー家がいる以上、退避するしかないようだな…。
捕らえたレジスタンスを拘束して検挙せよ。あくまでレジスタンスは反乱軍。それを尊ぶものは内乱陰謀および共同正犯に当たるからの…。
エンダー家とは難しい関係ではあるが…星の平和を乱すものを止めるのが先決じゃろう。」
エンダー家の介入に恐れ、部下を一旦退かせる。ただし、表のレジスタンス部隊を逃すことはなかった。
タイタン号が起動する以上、軍部が彼らを止められる手段は、もはや1つしなかった。
「エリウス中尉よ。」
「……少将、お呼びでしょうか。」
「おう。今この軍には、あのロボットに相対するロボットは持ちえない。だが、止められる手段は1つだけある。」
「まさか…【雷光砲】とおっしゃられるわけではありませんよね…?」
「そのまさかだ。」
「いけません、少将。雷光砲は一発のみの猶予。巨大ロボに使えば、機械霊に対抗する手段はありません。」
「だから、“余裕があれば”の話だ。危険な距離に来る前に、丁度巨大ロボと機械霊の照準を合わせることはできるかの…?
敵の度量にもよるが、お主に見極めることができたら2階級以上の昇進は間違いない。危ない場合は機械霊のみをやるとよい。
射程から危険範囲を除き、我々の方向からその更に約3分の2の距離差し引いた部分を猶予としよう。それなら即断できるだろう。…健闘を祈る。」
「…了解いたしました。」
「偵察班、巨大ロボはどれぐらい顔を出している?」
「ただいま午前3時57分現在、間もなく100%表出します。」
「来たか…」
中尉は持ち場につく。
_____
コーヴァスは【タイタン号】のパイロットである。【EDSキャンプ】において、唯一の“戦闘員”であり、かつ300メートル級の巨大ロボの【臨時ハンドル】を扱える唯一で貴重な人材でもある。
彼がなぜリーダーなのか、それは彼が唯一“本部”から来たメンバーであるからだ。
「……サド君。君達の技術、しかと受け止めた。
【プラズマネットワーク】、オン。」
スイッチをオンにすると、電子マップが目的地の位置を探り出す。その間にある天候状況や風速、更には遠方にいる機械霊の情報も探り当てた。
第2人工惑星は現在、他の惑星との送受信ができなくなっており、原因は連合の調査でも未だ不明である。本技術はこの惑星のAIを経由して、情報調達が可能なレジスタンスの技術である。
コーヴァスは機体内、および他の場所に対してもアナウンスする。
「現在、午前3時58分。定刻より早いが、これよりEDSキャンプより、【タイタン号】を発進する。
搭乗者およびサブキャンプ陣営に告ぐ。
本来、午前9時サブキャンプ到着予定だが、政府軍の進行、機械霊との相対、脚部に2名のメンバーがいることから、安全確認次第、途中で停止し、直ちに救出、そして再度発進する。そのため予定時刻より数十分の遅れが出る。
繰り返す…」
コーヴァスは丁寧に報告し、その音声はその“2人”にも届いていた。
『リーダー!アンタ大概に…』
「おう!元気だったか?コントロールパネルまで来たらもう安全だぞ♪」
『コーヴァスさん!ここだとまだ完全には…』
「そこの設備はある程度の傾きならまっすぐ保ってくれる。真っ逆さまになったらごめんだが、いい加減、二人とも俺の腕を信じてくれよ~!頼むから!
二人で仲良く下に隠れな!」
コーヴァスは半ば笑いながら対応する。
「……丁度、午前4時…行くぞ!」
目つきを変え、アナウンスを終了する。
タイタン号は、背中からジェットを噴射し、足裏にも若干の熱を出すホバー型の機構を10万年前から採用している。
街にジェットが当たらないよう、街にロボットが走らないよう十分注意した上で、発進した。どうやら発進はうまく行ったそうだ。
機会霊が見えてくる。既に丸まっており、突進を始めたところであった。
再びアナウンスを行う。
「皆々、今日の【タイタン号】は、レジスタンスの科学技術、エンジニア達の巧みな腕前、パイロット達の資源調達により、蘇った。
そしてその中には、今は亡きレジスタンスの科学者達が遺した技術も含まれている。その証人として、【サド・キャンソン】も生きている!
我々、レジスタンス全メンバーは科学者達への弔いと、我々の名誉向上のため!政府を打倒する!!目指すは中枢【CTP】!!レジスタンスに栄光あれ!」
機体内に歓声が響きわたる。目指すは中枢、旅の第一歩が始まる。
しかし、コーヴァスとしてはこの機会霊を倒さずには旅の一歩を踏み出せない。
「かかってこい!街の仲間に傷ひとつ、つけさせはしない。」
機械霊に挑発する。挑発せずとも、機械霊は獲物の大きさに目がくらみ、こちらに来てくれる。
政府は巨大ロボに機械霊が突っ込む状況に備えて、兵器を構える。
「射程圏内にて重なります!」
「射程外付近だ!狙いはあくまで機械霊に定めろ!」
政府としても機械霊の大打撃を受けるのは避けたい。しかし機械霊だけでは、レジスタンスが外で暴れる可能性がある。両方討ち取りたいのが本音だが、猶予は一回。外すことは許されない。
「チャンスを逃すなよ!」
「雷光砲チャージ完了!発射できます!」
あとは中尉が発射を要請するのみ。タイミングは早くても遅くてもダメ。一回のミスが政府の滅亡につながる。中尉の責任は重いものであった。
しかし、中尉は雷光砲に関する腕は確かであり、少将も信頼においている。慌てず、落ち着いて、狙いを定める。
機械霊が突っ込み、タイタン号は押されながら受け止める。地に足をつけ、強引に止めようとする。砂塵が宙に舞い、大型機体達の動きが止まった。
「上等だ…。」
タイタン号は丸まった機械霊に対して、隙間に指を入れてこじ開けていく。そして、腕を中に入れる。
「手始めだ…光線銃を試させてもらうぞ。」
タイタン号の掌から光線が放たれる。機械霊は、殻の中で爆発した。
タイタン号は頑丈にコーティングされており、無論平気である。機械霊は街の方向に吹き飛ぶ。ここで、コーヴァスはあることに気づく。
「…やべ。」
コーヴァスは直ちに反応して街を去る。
政府は狙いを“一直線”に定めた。この瞬間を逃すことはない。機械霊と巨大ロボ、一発で倒す…それが任務である。
「……撃て!!!」
雷光砲は一直線に、存在するものすべてを一息に吹き飛ばした。タイタン号は横にジェット噴射させ、間一髪のところを避けきった。
光が徐々に消えていく中、政府は遠方を確認する。機械霊は倒した。しかし、タイタン号は立っている。右手でサインを出し、射程範囲外へと出た。
「機械霊の破壊…任務達成…。
レジスタンスの殲滅…任務失敗…。
結果…レジスタンスを先に行かせてしまいました…。」
エリウス中尉はやりきれない気持ちでいっぱいであった。少将はそれを聞いて、これからの話をする。
「……そうか。そうか。
儂には向こうのパイロットが、咄嗟の判断で操縦を行ったように見える…。奴らのほうがほんの一歩、上手だった。
機械霊の破壊、ご苦労。素晴らしい指示と精度、君の部隊にはいつも感服させられる。
…レジスタンスに関しては保険をかけている。この街から逃げ出したときのために、3年ほど煮詰めておいたスパイがいる…。
……ここからは儂が直接出よう。機械霊討伐任務は達成…ご苦労であった。あとは任せたまえ…。以上だ…。」
ケンリー少将はこの場を去る。中尉は敬礼を忘れず、少将を心配しつつ、勇姿を見届けた。
_____
タイタン号は、一時停止している。岩陰に座り込むように止まっていた。
キャンソン姉弟が球状コロニーに入場するための時間である。エレベーターで、球状コロニー1階のメインホールに着いた。サドがレオの肩を組んでいた。レオは気落ちしながら言う。
「遅刻…やっぱダメだな。さっきのスライドで完璧にいったと思った。マジでありえねぇ…」
「おまけにエレベーターというか、ゴンドラというか…あれでもう一度やりかけたの、本当にびびったんだよ…。」
「左手ぶつけたけど大丈夫か?…なんかついてるけど…」
「これは…リリアのときの…」
痣ひとつ付いていない。よく見ると、燃料が引っ付いて汚れていただけだった。
「……平気。今日はもう、寝よう…。」
「ロボットも寝るもんなのか?電源とか切るタイプなのか…?」
「多分、“僕”が寝る。P-botとしての【スリープモード】みたいな感じ。」
「……まあいい。早く部屋に行こうぜ…」
姉弟がメインホールを出ようとしたところに、コーヴァスとグロリアがやってきた。
「おう!無事だったようだな!」
「リーダー…これを無事とでも言うんですか?うぅ…」
「わりっ!敵も精確に撃ってくるもんだから、ターボ使っちゃった。結果的に全員生きてキャンプを…」
グロリアが姉弟を一緒に抱く。
「……本当っ、人騒がせなんだから…!あなた達が巻き込まれていたら…
戦争なんか…そうそう上手く行かないわよ!今、生きているのは本当に…奇跡なのよ…」
グロリアはより強く二人を抱き締めた。コーヴァスは、二人に激励の言葉をかける。
「よく…生きてここに来てくれた。
レオは機械霊との戦いで、腕を上げてきた。その技術は幹部以上の実力も備わっている。
サド君も知識も腕も、ちゃんと本部で磨いてきたかいがあるな。それに何より…よく戦った。これからも、頼りにしてるぞ。」
二人は気を引き締めた。戦争を知らない者と、戦争から逃げた者。彼らはともに旅の心得を旨に秘め、戦場へと赴く。
レオとサドは時間を気にしつつ、【タイタン号】がある格納場に入ってきた。左足の非常口が開いており、彼らを待っていた。
『7分遅刻だ。急いで入れ。』
二人はタイタン号の中に入った。サドが非常口を閉ざす。
中を見ると、多くのロボットがコンパクトに格納されており、落ちてこないようにしっかりと支えられている。
「中身が…すごいな…」
「1万年も前なのに…技術だけでここまでのロボットを…まるで空母…どうりで政府が恐れているわけだ。」
「これをオンボロだからと、タカを括った政府か…もったいないな…」
「でも大丈夫?整備がちゃんと行き届かないと脱出すら無理だと思うけど。」
「そこら辺は、先輩達に任せてる。アンタも一緒にやってみるか…?」
「手伝えるなら。」
二人はエレベーターの前に来て、レオがボタンを押すも、何も反応がない。何度押しても、光ることがなかった。
「「?」」
「おかしいな…。長押しも、連打もいかねぇ…」
二人は理由を探る。他にエレベーターもない。サドが察してしまい、脱力する。
「どうした?」
「……多分、エンジンかかったら上にあがれないやつかもしれない。」
「はぁ!?んじゃあどうすんだよ!こんな場所で脚とか動かされたら、少なくとも私は一発で終わりだろ!」
「多分…
“遅刻したら安全な脱出は見込めない”
ってこういうこと!?」
「地上に出すまで10分だろ!?安全な場所を見つけろ!」
「ええと…」
サドは上を向いて探した。すると制御室らしき場所が上に置かれていた。階段で登ることができる。
「あそこ!あの四角い部屋が天井低いし安全だと思う!底も上もしっかりしているし!」
「本当か?…信じるぞ。」
「それ言われると、こっちも心配になってくるんだけど…」
「本当に!いいな!?」
「……先輩達を信じよう!」
「決まりだ…っ!?」
突然、レオは体のバランスを崩された。どうやら地上に向かっているようだ。
「……マジで勘弁してくれよ…。」
「無断で出ていった上に、30分前集合破ったから…まあ酷いことになるとは知ってたけども!」
姉弟は上の部屋を目指し、階段をのぼる。
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エリウス中尉は集中していた。遠方の様子、【団子虫型】機械霊の様子を観測していた。このままならば、無事いけると考え、機を狙う。
一方でケンリー少将は深く、悩んでいた。
『少将!警官用ロボットの火災により目的地へ迎えません!このままでは私達の部隊が!』
「少将!偵察隊が巨大ロボットの出現を確認いたしました!」
少将は恐れていた。
「まさか、エンダー家の者がいたとはな…儂らが先に目をつけたところを姑息な…。そこにエンダー家がいる以上、退避するしかないようだな…。
捕らえたレジスタンスを拘束して検挙せよ。あくまでレジスタンスは反乱軍。それを尊ぶものは内乱陰謀および共同正犯に当たるからの…。
エンダー家とは難しい関係ではあるが…星の平和を乱すものを止めるのが先決じゃろう。」
エンダー家の介入に恐れ、部下を一旦退かせる。ただし、表のレジスタンス部隊を逃すことはなかった。
タイタン号が起動する以上、軍部が彼らを止められる手段は、もはや1つしなかった。
「エリウス中尉よ。」
「……少将、お呼びでしょうか。」
「おう。今この軍には、あのロボットに相対するロボットは持ちえない。だが、止められる手段は1つだけある。」
「まさか…【雷光砲】とおっしゃられるわけではありませんよね…?」
「そのまさかだ。」
「いけません、少将。雷光砲は一発のみの猶予。巨大ロボに使えば、機械霊に対抗する手段はありません。」
「だから、“余裕があれば”の話だ。危険な距離に来る前に、丁度巨大ロボと機械霊の照準を合わせることはできるかの…?
敵の度量にもよるが、お主に見極めることができたら2階級以上の昇進は間違いない。危ない場合は機械霊のみをやるとよい。
射程から危険範囲を除き、我々の方向からその更に約3分の2の距離差し引いた部分を猶予としよう。それなら即断できるだろう。…健闘を祈る。」
「…了解いたしました。」
「偵察班、巨大ロボはどれぐらい顔を出している?」
「ただいま午前3時57分現在、間もなく100%表出します。」
「来たか…」
中尉は持ち場につく。
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コーヴァスは【タイタン号】のパイロットである。【EDSキャンプ】において、唯一の“戦闘員”であり、かつ300メートル級の巨大ロボの【臨時ハンドル】を扱える唯一で貴重な人材でもある。
彼がなぜリーダーなのか、それは彼が唯一“本部”から来たメンバーであるからだ。
「……サド君。君達の技術、しかと受け止めた。
【プラズマネットワーク】、オン。」
スイッチをオンにすると、電子マップが目的地の位置を探り出す。その間にある天候状況や風速、更には遠方にいる機械霊の情報も探り当てた。
第2人工惑星は現在、他の惑星との送受信ができなくなっており、原因は連合の調査でも未だ不明である。本技術はこの惑星のAIを経由して、情報調達が可能なレジスタンスの技術である。
コーヴァスは機体内、および他の場所に対してもアナウンスする。
「現在、午前3時58分。定刻より早いが、これよりEDSキャンプより、【タイタン号】を発進する。
搭乗者およびサブキャンプ陣営に告ぐ。
本来、午前9時サブキャンプ到着予定だが、政府軍の進行、機械霊との相対、脚部に2名のメンバーがいることから、安全確認次第、途中で停止し、直ちに救出、そして再度発進する。そのため予定時刻より数十分の遅れが出る。
繰り返す…」
コーヴァスは丁寧に報告し、その音声はその“2人”にも届いていた。
『リーダー!アンタ大概に…』
「おう!元気だったか?コントロールパネルまで来たらもう安全だぞ♪」
『コーヴァスさん!ここだとまだ完全には…』
「そこの設備はある程度の傾きならまっすぐ保ってくれる。真っ逆さまになったらごめんだが、いい加減、二人とも俺の腕を信じてくれよ~!頼むから!
二人で仲良く下に隠れな!」
コーヴァスは半ば笑いながら対応する。
「……丁度、午前4時…行くぞ!」
目つきを変え、アナウンスを終了する。
タイタン号は、背中からジェットを噴射し、足裏にも若干の熱を出すホバー型の機構を10万年前から採用している。
街にジェットが当たらないよう、街にロボットが走らないよう十分注意した上で、発進した。どうやら発進はうまく行ったそうだ。
機会霊が見えてくる。既に丸まっており、突進を始めたところであった。
再びアナウンスを行う。
「皆々、今日の【タイタン号】は、レジスタンスの科学技術、エンジニア達の巧みな腕前、パイロット達の資源調達により、蘇った。
そしてその中には、今は亡きレジスタンスの科学者達が遺した技術も含まれている。その証人として、【サド・キャンソン】も生きている!
我々、レジスタンス全メンバーは科学者達への弔いと、我々の名誉向上のため!政府を打倒する!!目指すは中枢【CTP】!!レジスタンスに栄光あれ!」
機体内に歓声が響きわたる。目指すは中枢、旅の第一歩が始まる。
しかし、コーヴァスとしてはこの機会霊を倒さずには旅の一歩を踏み出せない。
「かかってこい!街の仲間に傷ひとつ、つけさせはしない。」
機械霊に挑発する。挑発せずとも、機械霊は獲物の大きさに目がくらみ、こちらに来てくれる。
政府は巨大ロボに機械霊が突っ込む状況に備えて、兵器を構える。
「射程圏内にて重なります!」
「射程外付近だ!狙いはあくまで機械霊に定めろ!」
政府としても機械霊の大打撃を受けるのは避けたい。しかし機械霊だけでは、レジスタンスが外で暴れる可能性がある。両方討ち取りたいのが本音だが、猶予は一回。外すことは許されない。
「チャンスを逃すなよ!」
「雷光砲チャージ完了!発射できます!」
あとは中尉が発射を要請するのみ。タイミングは早くても遅くてもダメ。一回のミスが政府の滅亡につながる。中尉の責任は重いものであった。
しかし、中尉は雷光砲に関する腕は確かであり、少将も信頼においている。慌てず、落ち着いて、狙いを定める。
機械霊が突っ込み、タイタン号は押されながら受け止める。地に足をつけ、強引に止めようとする。砂塵が宙に舞い、大型機体達の動きが止まった。
「上等だ…。」
タイタン号は丸まった機械霊に対して、隙間に指を入れてこじ開けていく。そして、腕を中に入れる。
「手始めだ…光線銃を試させてもらうぞ。」
タイタン号の掌から光線が放たれる。機械霊は、殻の中で爆発した。
タイタン号は頑丈にコーティングされており、無論平気である。機械霊は街の方向に吹き飛ぶ。ここで、コーヴァスはあることに気づく。
「…やべ。」
コーヴァスは直ちに反応して街を去る。
政府は狙いを“一直線”に定めた。この瞬間を逃すことはない。機械霊と巨大ロボ、一発で倒す…それが任務である。
「……撃て!!!」
雷光砲は一直線に、存在するものすべてを一息に吹き飛ばした。タイタン号は横にジェット噴射させ、間一髪のところを避けきった。
光が徐々に消えていく中、政府は遠方を確認する。機械霊は倒した。しかし、タイタン号は立っている。右手でサインを出し、射程範囲外へと出た。
「機械霊の破壊…任務達成…。
レジスタンスの殲滅…任務失敗…。
結果…レジスタンスを先に行かせてしまいました…。」
エリウス中尉はやりきれない気持ちでいっぱいであった。少将はそれを聞いて、これからの話をする。
「……そうか。そうか。
儂には向こうのパイロットが、咄嗟の判断で操縦を行ったように見える…。奴らのほうがほんの一歩、上手だった。
機械霊の破壊、ご苦労。素晴らしい指示と精度、君の部隊にはいつも感服させられる。
…レジスタンスに関しては保険をかけている。この街から逃げ出したときのために、3年ほど煮詰めておいたスパイがいる…。
……ここからは儂が直接出よう。機械霊討伐任務は達成…ご苦労であった。あとは任せたまえ…。以上だ…。」
ケンリー少将はこの場を去る。中尉は敬礼を忘れず、少将を心配しつつ、勇姿を見届けた。
_____
タイタン号は、一時停止している。岩陰に座り込むように止まっていた。
キャンソン姉弟が球状コロニーに入場するための時間である。エレベーターで、球状コロニー1階のメインホールに着いた。サドがレオの肩を組んでいた。レオは気落ちしながら言う。
「遅刻…やっぱダメだな。さっきのスライドで完璧にいったと思った。マジでありえねぇ…」
「おまけにエレベーターというか、ゴンドラというか…あれでもう一度やりかけたの、本当にびびったんだよ…。」
「左手ぶつけたけど大丈夫か?…なんかついてるけど…」
「これは…リリアのときの…」
痣ひとつ付いていない。よく見ると、燃料が引っ付いて汚れていただけだった。
「……平気。今日はもう、寝よう…。」
「ロボットも寝るもんなのか?電源とか切るタイプなのか…?」
「多分、“僕”が寝る。P-botとしての【スリープモード】みたいな感じ。」
「……まあいい。早く部屋に行こうぜ…」
姉弟がメインホールを出ようとしたところに、コーヴァスとグロリアがやってきた。
「おう!無事だったようだな!」
「リーダー…これを無事とでも言うんですか?うぅ…」
「わりっ!敵も精確に撃ってくるもんだから、ターボ使っちゃった。結果的に全員生きてキャンプを…」
グロリアが姉弟を一緒に抱く。
「……本当っ、人騒がせなんだから…!あなた達が巻き込まれていたら…
戦争なんか…そうそう上手く行かないわよ!今、生きているのは本当に…奇跡なのよ…」
グロリアはより強く二人を抱き締めた。コーヴァスは、二人に激励の言葉をかける。
「よく…生きてここに来てくれた。
レオは機械霊との戦いで、腕を上げてきた。その技術は幹部以上の実力も備わっている。
サド君も知識も腕も、ちゃんと本部で磨いてきたかいがあるな。それに何より…よく戦った。これからも、頼りにしてるぞ。」
二人は気を引き締めた。戦争を知らない者と、戦争から逃げた者。彼らはともに旅の心得を旨に秘め、戦場へと赴く。
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この宇宙が生まれてから『六十七億年』――ある朝、世界が滅ぶ夢を見た。
軍用に開発された戦闘型アンドロイド、μ(ミュウ)。彼女はその日いつも通り訓練をして過ごすはずが、統率個体のMOTHERから、自分たちを設計した天才科学者エメレオの護衛を突如として命じられる。渋々エメレオを襲いくる刺客ドローンや傭兵から守るμだが、すべては自身の世界が滅ぶ、そのほんの始まりにしか過ぎなかった――!
――まずはひとつ、宇宙が滅ぶ。
すべては最後の宇宙、六度目の果て、『地球』を目指して。
なぜ、ここまで世界は繰り返し滅び続けるのか?
超発展した科学文明の落とし子がゆく、神と悪魔、光と闇、五つの世界の滅亡と輪廻転生をめぐる旅路を描く、大長編SFファンタジーの〝プロローグ〟。
2024.06.24. 完。
8月の次回作公開に向けて執筆進めてます。
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