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14.王女の気持ち
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最後は涙声での懇願だった。はらはらと涙が頬を滑り落ちる。
言いたいだけ言ったらどこか冷静になれた。これ以上泣いたら目が腫れてしまう。
ヴァレリアをじっと見つめて優しい声で静かに切り出した。
「ヴァレリア。わたくしにもずっと慕う方がおりました。やっと婚約までこぎ着けたところで、この国に来るよう王命を受けてその婚約も解消することになりました。わたくしがランベルト殿下を慕っていると言う事実はありませんわ。それでもどうにも出来なかったのです。国益を前に、また人の思惑を前にわたくしは無力でした」
フィオーレの言葉に衝撃を受ける。ランベルトの事は何とも思っていない……。
では、ヴァレリアの怒りはフィオーレにとっては不当な八つ当たりでしかなかったのか。
望んできたわけではないのに孤児院を子供達を助けてくれた。そんな人に怒りをぶつけた自分を恥じる。
「フィオーレ様のお慕いする方はどんな人ですか?」
眉を下げて困った様に微笑む。それはとても儚くてフィオーレらしくなかった。
「優しくて強くて、いつまでもわたくしを子供だと思って……たぶん仕方なく婚約してくれたのでしょう。解消になって喜んでいるのかもしれないわ」
困ったような悲しそうな言葉が信じられなかった。はじめて見る弱気な姿だった。
「そんな、……フィオーレ様を好きにならない人など居るはずがありません!」
強く反論するとフィオーレは目を丸くして口を尖らせる。凛とする姿からは想像できない幼い仕草が可愛く思えた。
「ランベルト殿下はわたくしのこと、ちっともお好きではなさそうよ?」
慰めて下さっているのだろうか?
「ねえ。ヴァレリア。あなたは諦めるの?わたくしは最後まであがなうわ。諦めが悪いのよ。それでもだめだった時は……受け入れようと思います。あなたも悔いを残さないようにね」
フィオーレの強さが羨ましい。いつまでも泣いて羨ましがるだけでは駄目なのだ。
「ありがとうございます。フィオーレ様」
フィオーレが侍女にお茶を入れなおすように指示した。残った焼き菓子に手を伸ばそうとしたら止められた。
「それは食べないほうがいいわ。セラフィーナはあなたにとって大切なお友達なのは知っているけど信用し過ぎないほうがいいと思う」
「あの、先ほどの彼女の態度も言動も失礼だったと思います。けれど、私のことを思ってのことなんです。いつもはあのような言い方をすることはないのです」
あの態度ならフィオーレが不快に思うのは当然だと思う。でもフィオーレは怒って言っている訳ではないと感じると、途端に掴み所のない不安が胸に広がる。
「あなたがわたくしより彼女を信じるのは当然ね。無理強いはしないわ。もう失礼するわ。ゆっくり休んでちょうだい」
ヴァレリアはもうお菓子を食べる気にはなれなかった。部屋を出る前のフィオーレの悲しそうな表情が焼き付いている。
セラフィーナを疑いたくはないが先程の彼女は確かにおかしかった。
王女に対しての異常なまでの敵意もヴァレリアの為だけなのだろうか?
親友にこんな気持ちを抱きたくはないが、払拭できない不信感が心の底に沈んでいった。
言いたいだけ言ったらどこか冷静になれた。これ以上泣いたら目が腫れてしまう。
ヴァレリアをじっと見つめて優しい声で静かに切り出した。
「ヴァレリア。わたくしにもずっと慕う方がおりました。やっと婚約までこぎ着けたところで、この国に来るよう王命を受けてその婚約も解消することになりました。わたくしがランベルト殿下を慕っていると言う事実はありませんわ。それでもどうにも出来なかったのです。国益を前に、また人の思惑を前にわたくしは無力でした」
フィオーレの言葉に衝撃を受ける。ランベルトの事は何とも思っていない……。
では、ヴァレリアの怒りはフィオーレにとっては不当な八つ当たりでしかなかったのか。
望んできたわけではないのに孤児院を子供達を助けてくれた。そんな人に怒りをぶつけた自分を恥じる。
「フィオーレ様のお慕いする方はどんな人ですか?」
眉を下げて困った様に微笑む。それはとても儚くてフィオーレらしくなかった。
「優しくて強くて、いつまでもわたくしを子供だと思って……たぶん仕方なく婚約してくれたのでしょう。解消になって喜んでいるのかもしれないわ」
困ったような悲しそうな言葉が信じられなかった。はじめて見る弱気な姿だった。
「そんな、……フィオーレ様を好きにならない人など居るはずがありません!」
強く反論するとフィオーレは目を丸くして口を尖らせる。凛とする姿からは想像できない幼い仕草が可愛く思えた。
「ランベルト殿下はわたくしのこと、ちっともお好きではなさそうよ?」
慰めて下さっているのだろうか?
「ねえ。ヴァレリア。あなたは諦めるの?わたくしは最後まであがなうわ。諦めが悪いのよ。それでもだめだった時は……受け入れようと思います。あなたも悔いを残さないようにね」
フィオーレの強さが羨ましい。いつまでも泣いて羨ましがるだけでは駄目なのだ。
「ありがとうございます。フィオーレ様」
フィオーレが侍女にお茶を入れなおすように指示した。残った焼き菓子に手を伸ばそうとしたら止められた。
「それは食べないほうがいいわ。セラフィーナはあなたにとって大切なお友達なのは知っているけど信用し過ぎないほうがいいと思う」
「あの、先ほどの彼女の態度も言動も失礼だったと思います。けれど、私のことを思ってのことなんです。いつもはあのような言い方をすることはないのです」
あの態度ならフィオーレが不快に思うのは当然だと思う。でもフィオーレは怒って言っている訳ではないと感じると、途端に掴み所のない不安が胸に広がる。
「あなたがわたくしより彼女を信じるのは当然ね。無理強いはしないわ。もう失礼するわ。ゆっくり休んでちょうだい」
ヴァレリアはもうお菓子を食べる気にはなれなかった。部屋を出る前のフィオーレの悲しそうな表情が焼き付いている。
セラフィーナを疑いたくはないが先程の彼女は確かにおかしかった。
王女に対しての異常なまでの敵意もヴァレリアの為だけなのだろうか?
親友にこんな気持ちを抱きたくはないが、払拭できない不信感が心の底に沈んでいった。
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