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後日談3
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クリスティアナの結婚式は王都の大聖堂で行われる。日程が近づいてきたので王都に戻ることになった。もちろん私も家に戻る。彼女のおかげで私の心はすっかりと回復した。もちろん社交界での自分に纏わる噂が消えているとは期待していないがなるようになるだろう。
「お帰りなさい。セリーナ。すっかり元気そうになってお母様は嬉しいわ」
「セリーナ。お帰り。本当だ。顔色もすっかりとよくなったな。アバネシー公爵領はいい所だったようだね」
お母様は私を見るなり抱きしめてくれた。お父様はそれを見て微笑んでいる。
「お父様、お母様、ただいま戻りました。心配かけてごめんなさい。公爵領のお屋敷では本当に良くしてもらいました。なによりティアナと過ごせてとても楽しかったんです」
「それはよかったな。でもファーマー伯爵領にも顔を出してくれても良かったんじゃないか? セリーナは私のことを忘れていただろう?」
両親の後には兄がいた。会うのは久しぶりだった。
「まあ、お兄様。忘れたりなんてしないわ。でも領地に行けなくてごめんなさい。お義姉様はお元気なの?」
兄のダイアンは領地を治めてくれている。3年前に結婚したお義姉様とは仲睦まじい。
「ああ、元気にしている。セリーナに会いたがっていたが今回は我慢させた。体が第一だからな」
今回お義姉様は妊娠が分かり、まだ初期であることから安全のために領地でお留守番をしてくれている。お兄様は自分が不在なのが心配でかなりの人数の護衛を置いてきたそうだ。
「今度は私が会いに行くわ」
「ああ、待っている」
その日は豪華な晩餐を用意してくれていたので、懐かしい実家の味に舌鼓を打った。
数日後、クリスティアナから手紙でお泊りのお誘いが来た。私はもちろん行くと返事をした。
わざわざクリスティアナは迎えの馬車を出してくれた。お邪魔するのに申し訳ないなと思うが甘えさせてもらった。
王都のアバネシー公爵邸は大きくその荘厳さに怖気づきそうになった。さすが筆頭公爵家だ。私がクリスティアナと友人になれたのは奇跡のような気がしてきた。
「セリーナ。待っていたわ。おじい様がセリーナに会いたがっているの」
「えっ、アバネシー公爵様が?」
私は俄かに緊張した。長くアバネシー公爵家を守ってきたご当主様と普通の伯爵令嬢である私が、顔を合わせるどころかご挨拶する機会なんて本来ならあり得ない。失礼のないようにしなければと背筋が伸びる。その様子にクリスティアナはくすくす笑っている。他人事だと思って……。
「おじい様。私の親友のセリーナよ」
「そなたが、そうか。いつもティアナによくしてくれているそうだな。礼を言う」
「初めまして。アバネシー公爵様。ファーマー伯爵家の娘セリーナと申します。私こそ、いつもクリスティアナ様によくして頂いて心よりお礼を申し上げます」
私は緊張に震える足を叱咤しながら精一杯のご挨拶をした。
アバネシー公爵様は厳めしいお顔でその瞳は鋭い。全てを見透かされそうだ。
私が挨拶をすると、公爵様は頷きクリスティアナの方に顔を向けた。そして目を細めて口を綻ばせた。その顔は孫を慈しむただの祖父のものだった。その眼差しだけでクリスティアナがとても愛されていることが分かる。その様子に緊張がわずかに解けて胸が温かくなった。
その後はサロンに向かい二人でお茶を楽しんだ。
「ティアナ。公爵様はお優しそうな方ね」
クリスティアナはきょとんとした後、声を上げて笑った。
「おじい様を優しそうなんて言ったのはセリーナが初めてよ。みんな怖いって恐れるのに」
「確かにすごく威厳を感じるけどティアナを見る目には愛情が溢れていたわ」
「そう。嬉しいな。でも、昔はすごく厳しくて怖かったのよ。子供の頃はおじい様が私のことを愛していないと思っていたくらいだし」
「それほど厳しかったの?」
「セリーナも知っていると思うけど私の両親は私が子供の頃に流行り病で亡くなってしまったの。公爵家直系の後継ぎは私だけで、おじい様は私に厳しい教育をするようになったわ。強い人間になってほしいと思ったそうなの。でも、私は両親がいなくなって寂しくて辛くて毎日泣いてばかりだった。それでも勉強はしなくてはいけなくて。家庭教師が数人ついていたのだけど、その中にすごく厳しい人がいて答えを間違えるたびに腕を定規で叩かれたわ。教師はおじい様の許可を得ているというから私はおじい様に嫌われていると思っていたの」
間違えたからと言って幼い子供を叩くなど酷すぎる。
「お帰りなさい。セリーナ。すっかり元気そうになってお母様は嬉しいわ」
「セリーナ。お帰り。本当だ。顔色もすっかりとよくなったな。アバネシー公爵領はいい所だったようだね」
お母様は私を見るなり抱きしめてくれた。お父様はそれを見て微笑んでいる。
「お父様、お母様、ただいま戻りました。心配かけてごめんなさい。公爵領のお屋敷では本当に良くしてもらいました。なによりティアナと過ごせてとても楽しかったんです」
「それはよかったな。でもファーマー伯爵領にも顔を出してくれても良かったんじゃないか? セリーナは私のことを忘れていただろう?」
両親の後には兄がいた。会うのは久しぶりだった。
「まあ、お兄様。忘れたりなんてしないわ。でも領地に行けなくてごめんなさい。お義姉様はお元気なの?」
兄のダイアンは領地を治めてくれている。3年前に結婚したお義姉様とは仲睦まじい。
「ああ、元気にしている。セリーナに会いたがっていたが今回は我慢させた。体が第一だからな」
今回お義姉様は妊娠が分かり、まだ初期であることから安全のために領地でお留守番をしてくれている。お兄様は自分が不在なのが心配でかなりの人数の護衛を置いてきたそうだ。
「今度は私が会いに行くわ」
「ああ、待っている」
その日は豪華な晩餐を用意してくれていたので、懐かしい実家の味に舌鼓を打った。
数日後、クリスティアナから手紙でお泊りのお誘いが来た。私はもちろん行くと返事をした。
わざわざクリスティアナは迎えの馬車を出してくれた。お邪魔するのに申し訳ないなと思うが甘えさせてもらった。
王都のアバネシー公爵邸は大きくその荘厳さに怖気づきそうになった。さすが筆頭公爵家だ。私がクリスティアナと友人になれたのは奇跡のような気がしてきた。
「セリーナ。待っていたわ。おじい様がセリーナに会いたがっているの」
「えっ、アバネシー公爵様が?」
私は俄かに緊張した。長くアバネシー公爵家を守ってきたご当主様と普通の伯爵令嬢である私が、顔を合わせるどころかご挨拶する機会なんて本来ならあり得ない。失礼のないようにしなければと背筋が伸びる。その様子にクリスティアナはくすくす笑っている。他人事だと思って……。
「おじい様。私の親友のセリーナよ」
「そなたが、そうか。いつもティアナによくしてくれているそうだな。礼を言う」
「初めまして。アバネシー公爵様。ファーマー伯爵家の娘セリーナと申します。私こそ、いつもクリスティアナ様によくして頂いて心よりお礼を申し上げます」
私は緊張に震える足を叱咤しながら精一杯のご挨拶をした。
アバネシー公爵様は厳めしいお顔でその瞳は鋭い。全てを見透かされそうだ。
私が挨拶をすると、公爵様は頷きクリスティアナの方に顔を向けた。そして目を細めて口を綻ばせた。その顔は孫を慈しむただの祖父のものだった。その眼差しだけでクリスティアナがとても愛されていることが分かる。その様子に緊張がわずかに解けて胸が温かくなった。
その後はサロンに向かい二人でお茶を楽しんだ。
「ティアナ。公爵様はお優しそうな方ね」
クリスティアナはきょとんとした後、声を上げて笑った。
「おじい様を優しそうなんて言ったのはセリーナが初めてよ。みんな怖いって恐れるのに」
「確かにすごく威厳を感じるけどティアナを見る目には愛情が溢れていたわ」
「そう。嬉しいな。でも、昔はすごく厳しくて怖かったのよ。子供の頃はおじい様が私のことを愛していないと思っていたくらいだし」
「それほど厳しかったの?」
「セリーナも知っていると思うけど私の両親は私が子供の頃に流行り病で亡くなってしまったの。公爵家直系の後継ぎは私だけで、おじい様は私に厳しい教育をするようになったわ。強い人間になってほしいと思ったそうなの。でも、私は両親がいなくなって寂しくて辛くて毎日泣いてばかりだった。それでも勉強はしなくてはいけなくて。家庭教師が数人ついていたのだけど、その中にすごく厳しい人がいて答えを間違えるたびに腕を定規で叩かれたわ。教師はおじい様の許可を得ているというから私はおじい様に嫌われていると思っていたの」
間違えたからと言って幼い子供を叩くなど酷すぎる。
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