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1.プロローグ
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バルテル伯爵家の長女ヴァネッサには妹が一人いる。天使のように可愛らしい自慢の妹。
「アデラ、喜んでくれるといいな」
今日は注文してあった妹へのプレゼントを受け取るために店に来ていた。
なんと妹のアデラは学園を優秀な成績で卒業できることが分かったのだ。あの勉強嫌いの妹が、ヴァネッサの知らないところで一生懸命勉強していたのだ!
ヴァネッサは嬉しくて誇らしくて、お祝いを奮発した。無事に受け取り帰宅のために馬車に乗ろうとした。
その時、ヴァネッサがいる通りの向かい側に知っている人の姿を見つけた。彼を久しぶりに見たが相変わらず麗しい容貌で魅入ってしまいそうになる。
その人はウエーバー公爵子息オーディス。彼は学園在学中の友人であり、誰にも言っていないがヴァネッサの初恋の人でもある。
実は学園を卒業してから二年の間、彼とは一度も会うことはなかった。貴族であればどこかの社交場で顔を合わせることくらいあるはずなのに。密かにヴァネッサは残念に思っていた。
だからこそ今日の偶然の再会に浮足立った。ヴァネッサはオーディスに会えた喜びに胸を高鳴らせた。
(声をかけてもいいわよね?)
オーディスは友人なのだから見かければ挨拶くらい当然するだろう。彼のいるところまで少し距離がある。ここから声が届くかしら? ヴァネッサは声をかけようと口を開いた。
その瞬間オーディスは彼の隣に向かって破顔した。彼は一人ではなかったのだ。ヴァネッサは遠目で見落としたのかもしれない。もしくはオーディスに気を取られ気付かなかったのかも。
オーディスの笑顔が向けられた先には女性がいた。
「アデラ?」
ヴァネッサの息が止まる。その女性は自分の妹アデラだった。
アデラは少し拗ねたように頬を膨らませオーディスに笑いかけている。その二人の様子は気安げで……まるで恋人同士のように見えた。ヴァネッサはただ呆然と二人が見えなくなるまでその場所で立ち竦んでいた。
「いつの間に二人は親しくなったの?」
知らない。ヴァネッサは何も知らなかった――――。
「アデラ、喜んでくれるといいな」
今日は注文してあった妹へのプレゼントを受け取るために店に来ていた。
なんと妹のアデラは学園を優秀な成績で卒業できることが分かったのだ。あの勉強嫌いの妹が、ヴァネッサの知らないところで一生懸命勉強していたのだ!
ヴァネッサは嬉しくて誇らしくて、お祝いを奮発した。無事に受け取り帰宅のために馬車に乗ろうとした。
その時、ヴァネッサがいる通りの向かい側に知っている人の姿を見つけた。彼を久しぶりに見たが相変わらず麗しい容貌で魅入ってしまいそうになる。
その人はウエーバー公爵子息オーディス。彼は学園在学中の友人であり、誰にも言っていないがヴァネッサの初恋の人でもある。
実は学園を卒業してから二年の間、彼とは一度も会うことはなかった。貴族であればどこかの社交場で顔を合わせることくらいあるはずなのに。密かにヴァネッサは残念に思っていた。
だからこそ今日の偶然の再会に浮足立った。ヴァネッサはオーディスに会えた喜びに胸を高鳴らせた。
(声をかけてもいいわよね?)
オーディスは友人なのだから見かければ挨拶くらい当然するだろう。彼のいるところまで少し距離がある。ここから声が届くかしら? ヴァネッサは声をかけようと口を開いた。
その瞬間オーディスは彼の隣に向かって破顔した。彼は一人ではなかったのだ。ヴァネッサは遠目で見落としたのかもしれない。もしくはオーディスに気を取られ気付かなかったのかも。
オーディスの笑顔が向けられた先には女性がいた。
「アデラ?」
ヴァネッサの息が止まる。その女性は自分の妹アデラだった。
アデラは少し拗ねたように頬を膨らませオーディスに笑いかけている。その二人の様子は気安げで……まるで恋人同士のように見えた。ヴァネッサはただ呆然と二人が見えなくなるまでその場所で立ち竦んでいた。
「いつの間に二人は親しくなったの?」
知らない。ヴァネッサは何も知らなかった――――。
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