君につづく道〜禁断の13〜

第10章 歪んだ愛は狂喜

17

私がはっきりと言うと、久我さんは驚いて私を見つめていた。

「好きな、人？会社の人かい？」

「いいえ…」

「…その人とは、いつ会ってたんですか？」

久我さんは、少し身を乗り出して訊ねてくるけど、私は頭を横に振った。

「出会ったのは、何年も前です。2年前に、一度別れました。でも最近再会して、やっぱり気持ちが、…私の気持ちがどこに向いているのか今更だけど気がついたんです。私、彼のこと、好きなんです。誰に反対されても、貫きたいんです。勝手なことを言ってるって分かっています。久我さん。あなたとは結婚できません。…申し訳ありません」

私は久我さんをまっすぐ見つめて言うと、深く頭を下げた。久我さんは何も言わず、コーヒーをゆっくりと口に流し込んでいる様子が、何となく伝わってくる。何か言葉を探しているのか、無言だ。それが、尚更、何だか少し怖い。私は頭を下げたまま、

「…もう、会えません。本当に申し訳ありません。思わせぶりな態度をして、御免なさい。このこと、お父さんには私から言いますから。

「…渡部さんはそのことを…」

久我さんが言う『渡部さん』とは、お父さんのことだ。私は顔を上げて久我さんを見ると、

「知っています。前に会ってますので。でも、反対されてて…」

と答えると、久我さんはまた驚いて私を見つめた。