君につづく道〜禁断の13〜

第5章 奇跡のあと

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「雪。おい、雪子。待てよ」

後ろで、坂井さんが話しかけてくる。引き留めているけど、振り返れなかった。エレベーターを通り越して階段を駆け上がり屋上に出ると、白いシーツが沢山干されていて、人はまばらにしかいなかった。私は大股で歩いて端の金網の柵の手前まで行くと、金網に手をかけてギュッと掴んだ。坂井さんも、すぐ後ろについてきていて、

「雪子。こっちを向きなさい」

と言うけど、私は頭を横に振って俯いた。

「なに、これ。坂井さん、これ、夢？」

「雪子…」

「よく聞くよね。人間でも動物でも、死ぬ間際に最後の力を振り絞って奇跡を起こせる力があるって。夕べ萌梨は…奇跡を起こした。話せるなんて、ほんと、奇跡だよね。よっぽど、心残りだったんだよね。祐さんと凜ちゃん…、家族三人で過ごしたんだから。でも、どうせなら、私たちが来るまで、なんで待っててくれなかったのかな。萌梨の奇跡は残酷だよ。こんなの、残酷すぎるでしょ。ひど過ぎるでしょ！！」

私は思わずそう叫んで、金網を拳で叩きつけた。

「雪子！」

坂井さんが急いで私の腕を掴んで、金網を叩く手を止めた。私はポロポロと涙が溢れて止まらなくて、振り向いて坂井さんを見上げた。

「ねえ、そうでしょ、坂井さん。こんなの、酷すぎるでしょ！！」

今度は、坂井さんの胸を拳で思い切り叩いた。坂井さんはそんな私を見つめて、今度は止めずに受け止めてくれた。