君につづく道〜禁断の13〜

第5章 奇跡のあと

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「やだね」

「え？」

「雪子が他の男と結婚なんて…それどころか…」

そう言い及んでしまうと、私は振り向いて坂井さんを見た。

「さ、早くこのエリア、狩っちゃいますよ。日が暮れちゃう」

私はそう言って、熟してそうな甘夏みかんを探して歩き出した。

坂井さんは、もう何も言わなくなってしまった。

私は、もうその先の言葉なんか聞きたくなかった。期待しても、期待している言葉を言ってくれるわけじゃない。そう、分かったから。

坂井さんは、ずるい。いつも、ずるい。スルッと懐に入ってくるくせに、肝心な時に突き放す。逃げてしまう。突き離したら、また近づいてくる。その繰り返しだ。その度に心が揺さぶられて、私は呼吸すら困難になる。私は、少しだけ振り向いて、坂井さんを見た。

でも。これだけは分かる。

私のこと、少しは気にかけてくれてるんだよね。夕べの松林さんの話を聞いて、本当は凄く嬉しかったんだ。いつか、本当の気持ちを口に出せるのかな。私には、その勇気が足りない。
坂井さんのことなんて、ほんとは言えないよね。私は、好きだと言えるだけの勇気が、ないんだから。

翔平のことも、わざと黙ってる。困らせたい。モヤモヤしてるなら、ずっとモヤモヤしてればいいんだ。いい気味だわ。

そう思いながらも、少しだけ笑ってしまった。