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第5章 奇跡のあと
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「そうなの?祐さん、そんなこと全然言ってなかったのに」
「肺炎、だって。夜になると、熱が更に上がったりして、安定してないそうだ。心配だな」
坂井さんはそう言ってため息をつくと、私は振り向いて坂井さんを見た。
「坂井さんも、萌梨のこと、好きだったもんね」
「それは…」
私の言葉を、坂井さんは否定しない。そう。何処まで好きだったか分からないけど、坂井さんは萌梨のことを大切に思ってた。私は、みんなに愛されていた萌梨が、本当は羨ましかったんだ。『萌梨』なんて、本人の前で呼んだことは、一度もない。呼びたかったのに。
「あいつと、結婚、するの?」
坂井さんがボソッと言うと、私はハッとした。そっか。まだ言ってなかった。別れたこと。結婚なんて、しないこと。私は坂井さんを見つめると、坂井さんは叱られてる子供みたいに、悪そうに俯いて黙り込んでいる。
まったく。
昨日私が言ったこと、忘れちゃったの?
「…もし、結婚するって言ったら?」
「えっ」
私はチラッと坂井さんを見上げると、坂井さんは困ったように右を見て、左を見て、上を見て、また俯いた。私はまたはあっとため息を溢すと、前を向いて歩いていった。
「結局、変わってないじゃん」
ボソッと独り言を言うと、坂井さんは「あっ」と声を上げて、距離が離れたのでまた少し早歩きで私の後ろに近づいて来た。
「肺炎、だって。夜になると、熱が更に上がったりして、安定してないそうだ。心配だな」
坂井さんはそう言ってため息をつくと、私は振り向いて坂井さんを見た。
「坂井さんも、萌梨のこと、好きだったもんね」
「それは…」
私の言葉を、坂井さんは否定しない。そう。何処まで好きだったか分からないけど、坂井さんは萌梨のことを大切に思ってた。私は、みんなに愛されていた萌梨が、本当は羨ましかったんだ。『萌梨』なんて、本人の前で呼んだことは、一度もない。呼びたかったのに。
「あいつと、結婚、するの?」
坂井さんがボソッと言うと、私はハッとした。そっか。まだ言ってなかった。別れたこと。結婚なんて、しないこと。私は坂井さんを見つめると、坂井さんは叱られてる子供みたいに、悪そうに俯いて黙り込んでいる。
まったく。
昨日私が言ったこと、忘れちゃったの?
「…もし、結婚するって言ったら?」
「えっ」
私はチラッと坂井さんを見上げると、坂井さんは困ったように右を見て、左を見て、上を見て、また俯いた。私はまたはあっとため息を溢すと、前を向いて歩いていった。
「結局、変わってないじゃん」
ボソッと独り言を言うと、坂井さんは「あっ」と声を上げて、距離が離れたのでまた少し早歩きで私の後ろに近づいて来た。
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