613 / 652
第36部 June bride
4
しおりを挟む
俺は思い出して、微かに笑って俯いた。
「その時に、思ったんだよ。雪子の初めてを知らない奴に奪われた。そう思って、これじゃ梶原と変わらないな、って情けなくなった。悔しいけど、あいつの気持ちが分かった。男なんて、結局そんな生き物だよ。女よりも弱っちくて、勝手な生き物だ。それでも、あんな鬼畜と違うとこが一つだけあるとしたら、やっぱり、気持ちだけだ。あいつのいう『愛』とは明らかに違うもの。大切にしたいと思う気持ち、とかね。照れくさいけど、そこは間違いなんかじゃないんだよ。滋。そこだけは、履き違えちゃダメだ。そんでもって、俺はそれをこれから先も、守っていくんだ」
「オッサン…」
「雪子と結婚するまで、散々周りに言われた言葉を、お前にも言ってやる」
「え?」
「誰かに奪われる前に、もらってやれよ」
俺はそう言ってニッコリ笑ってみせると、滋はさらに驚いて言葉を失っていた。
「俺も、そんなことは無理だ、と思ってたけど、手に入れてしまえば、これで良かったと思ってる。むしろ、もっと早く気づくべきだった。なによりも、雪子が喜んでくれることが、嬉しいんだ。こんな何年も一緒に住んでんのにな」
「その時に、思ったんだよ。雪子の初めてを知らない奴に奪われた。そう思って、これじゃ梶原と変わらないな、って情けなくなった。悔しいけど、あいつの気持ちが分かった。男なんて、結局そんな生き物だよ。女よりも弱っちくて、勝手な生き物だ。それでも、あんな鬼畜と違うとこが一つだけあるとしたら、やっぱり、気持ちだけだ。あいつのいう『愛』とは明らかに違うもの。大切にしたいと思う気持ち、とかね。照れくさいけど、そこは間違いなんかじゃないんだよ。滋。そこだけは、履き違えちゃダメだ。そんでもって、俺はそれをこれから先も、守っていくんだ」
「オッサン…」
「雪子と結婚するまで、散々周りに言われた言葉を、お前にも言ってやる」
「え?」
「誰かに奪われる前に、もらってやれよ」
俺はそう言ってニッコリ笑ってみせると、滋はさらに驚いて言葉を失っていた。
「俺も、そんなことは無理だ、と思ってたけど、手に入れてしまえば、これで良かったと思ってる。むしろ、もっと早く気づくべきだった。なによりも、雪子が喜んでくれることが、嬉しいんだ。こんな何年も一緒に住んでんのにな」
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

物置小屋
黒蝶
大衆娯楽
言葉にはきっと色んな力があるのだと証明したい。
けれど、もうやりたかった仕事を目指せない…。
そもそも、もう自分じゃただ読みあげることすら叶わない。
どうせ眠ってしまうなら、誰かに使ってもらおう。
──ここは、そんな作者が希望や絶望をこめた台詞や台本の物置小屋。
1人向けから演劇向けまで、色々な種類のものを書いていきます。
時々、書くかどうか迷っている物語もあげるかもしれません。
使いたいものがあれば声をかけてください。
リクエスト、常時受け付けます。
お断りさせていただく場合もありますが、できるだけやってみますので読みたい話を教えていただけると嬉しいです。
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる