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第12部 泡沫の夢
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雪子がそう言うと、仲居は指を揃えて畳に軽く乗せ、頭を下げて部屋を出た。
「雪子。かっこいいな」
「え?なにが?」
雪子は微笑んでご飯茶碗を取って、おひつからご飯を盛り始めた。
「あ、ご飯、麦飯よ。麦飯!私、食べたことない」
「そうなの?カルチャーショック」
「またそれ?マイブーム?」
雪子はクスクス笑っている。
結婚はしない、と豪語したけれど。
こんな風に夫婦扱いされて、奥様と呼ばれて嬉しそうに反応する雪子を見るのは、悪いもんじゃないな。本当に、奥さんみたいだ。
俺は頬杖をついて、少しだけ目を閉じた。
なんか、一瞬だけ、夢を見た。
雪子が、2人の子供に朝食をあげている。
賑やかなダイニングで、俺はあくびしながら食卓に座り、コーヒーを飲んでいて、長女は「髪を2つに結って」と雪子にせがむ。
下の子は男の子か。
スプーンをうまく使えなくて、俺は気付いてスプーンを持つ指を掴み、「これはこっちで、これは、ここ。で、掬う」と言いながら指を直してやる。
「パパ!」
「さすが、理」
眩しい朝の光に包まれる、泡沫の夢、か。
「理、はいご飯」
そう言われて、俺は我に返った。
「雪子。かっこいいな」
「え?なにが?」
雪子は微笑んでご飯茶碗を取って、おひつからご飯を盛り始めた。
「あ、ご飯、麦飯よ。麦飯!私、食べたことない」
「そうなの?カルチャーショック」
「またそれ?マイブーム?」
雪子はクスクス笑っている。
結婚はしない、と豪語したけれど。
こんな風に夫婦扱いされて、奥様と呼ばれて嬉しそうに反応する雪子を見るのは、悪いもんじゃないな。本当に、奥さんみたいだ。
俺は頬杖をついて、少しだけ目を閉じた。
なんか、一瞬だけ、夢を見た。
雪子が、2人の子供に朝食をあげている。
賑やかなダイニングで、俺はあくびしながら食卓に座り、コーヒーを飲んでいて、長女は「髪を2つに結って」と雪子にせがむ。
下の子は男の子か。
スプーンをうまく使えなくて、俺は気付いてスプーンを持つ指を掴み、「これはこっちで、これは、ここ。で、掬う」と言いながら指を直してやる。
「パパ!」
「さすが、理」
眩しい朝の光に包まれる、泡沫の夢、か。
「理、はいご飯」
そう言われて、俺は我に返った。
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