お嬢様の雇われ人

プノンペン

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三話 雇われ

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 外に出た二人は地面に寝っ転がって空を見ていた。
「やっぱり日本の空と違って星がよく見えるなー」
コブラがそう言うと中村はうなずく。
「なぁコブラ」
「あ?」
「なんでさっきあんなこと言ったの?」
「あんなこと…あぁ雇うとかそんな感じのあれか」
「そう。お前って誰かの下に付くの嫌いじゃん」
コブラは体を起こす。
「理由はま、色々あるけど。あの子はきっと俺らと一緒なんだよ。だから守りたいと思った」
「お前にしてはまともじゃん」
「あとはルナちゃん可愛いから!!」
「やっぱりそっちかよ」
中村はコブラの頭を叩く。
「まあそっちの方がお前らしいか。…なぁコブラ」
「なに」
「お前は多分気づいてないと思うけどおれら若返ってるよ」
「は!?」
コブラは立ち上がると走って館の窓に近づく。
 窓に映ったのは中学生くらいの自分の姿だ。
「おいおい!まじかよ!百歳くらい若返ってるじゃねえか!!」
コブラは思わず大きな声を出してしまう。
中村は慌ててコブラの口を手で塞ぐ。
「バッカ!ルナちゃん寝てんだぞ」
「ごめんごめん」
 二人は再び地面に横になる。
「なあバカ」
「なんだよクソボケ丸」
「おれらは地球で色々あっただろ」
「そうだねー」
「だから今回は仲良く過ごさないか」
「おいおい仲良くって言い方」
コブラは笑って小バカにする。
「だって他に言い方思い付かなかったし…」
コブラは立ち上がると中村に手を伸ばす。
「ん」
中村は手を取り立ち上がる。
「じゃあよろしくねコブ…」
中村が話してる隙にコブラは中村に背負い投げをした。
「チェストォォ!!」
中村は勢いよく地面に叩きつけられる。
「ぐはっ」
「はっはー!引っ掛かったなバカめ!俺がそう簡単に仲良くするわけねぇだろ!!」
中村は立ち上がり服についた土をはたき落とす。中村はコブラを睨むと右腕を掴む。
「喰らえ!十字固め!!」
「いだだだだ!折れる折れる!」
コブラは必死にもがくが完全に十字固めが決まっていて腕が抜けない。
「わかったわかった仲良くするから!その技を解いてくれ!」
中村は技を解きコブラから離れる。
 「ん」
コブラは再び中村に手を伸ばす。そして中村は再び手を握る。
 今回はコブラは何もしなくてちゃんと握手がされる。
「コブラ、手を離していいよ」
中村がそう言うもコブラは手を離さない。それどころか握ってる手にさらに力を加える。
「痛い痛い!離して!」
中村が頼むもコブラは笑顔で手を離す気はないようだ。
 離す気がないようなので中村はそのままぐるぐると回転する。
「あぁぁぁぁぁ目がぁぁぁぁ」
そうして手が緩んだところでコブラを館とは反対方向へと投げ飛ばす。
「あぁぁぁれぇぇぇ」
 走って戻ってきたコブラはまた手を伸ばす。中村はため息をつくと手を取る。


◆◆◆◆◆


 ベッドに入っていたルナは眠れずにいた。
(わたし…これからどうしよう)
その原因はコブラからされた提案だ。
 こんなことを言われるなんて予想外であり、ましてや相手は男だ。今日の賊のように乱暴してこないとは言い切れない。しかもコブラに至っては若干手を出している。
 (もし、あの時中村さんが助けてくれなかったら…)

 何もない部屋でルナを押し倒した状態のコブラはルナのロングスカートの中に手を入れる。
『おいおい、助けてやった礼に少しくらいいいだろ』
『そ、そんなわたしは…』
『うるさい』
コブラはロングスカートをめくり白い下着があらわにある。
『や、やめて…』
ルナは涙目になるもコブラはそんなこと気にせず顔を近づける。
『お前の初めてもらうぞ』
コブラとルナの口が触れ合う。

 「そんなのだめー!」
そこで妄想をやめるルナ。顔を真っ赤にして布団を頭まで被る。
「…わたしはなんてことを」
ルナはそのままベッドで唸り声をあげながら悶えた。
 
 気付いたときには寝ていたらしくルナが目を覚ますと朝日が窓から入り込んでいた。
 ルナは窓を開けて外を眺める。
「今日でこの館ともお別れなんですね…」
寂しそうな顔で外を眺めてると館の近くで砂煙が上がった。しかも一回だけではなく何度も。
 ルナは慌てて外に出ると再び砂煙が上がる。
「な、何事!?」
 砂煙のところに目をやるとそこではコブラと中村が喧嘩していた。
 コブラは中村の顔目掛けて拳を振るうも中村はその拳を避け、腹にカウンターのパンチをお見舞いする。
「はい効かなーい」
コブラは後ずさりすることなく中村の腕を掴む。
「はい!一本背負い!」
中村を地面に叩きつける。そのまま追撃で踏みつけるが中村は転がってうまく避ける。
 「はぁはぁ」
中村が息切れしているのに対しコブラはまだ余裕があるようだ。
「おいおいこの程度か!?あぁ!」
「まだまだ」
中村はコブラに向かって全速力で駆け出す。
 「も、もうやめてくださーい!」
ルナが叫び二人が反応する。
「ルナちゃん」
「まっ、止まれない!」
コブラに駆け寄ってくる中村をひょいっと避け、足をわざと引っ掻けて転ばして止める。
「おっはルナちゃん」
コブラがルナに歩み寄る。
「大分早起きじゃん。どったの?」
「わ、わたしは普段からこの時間に起きています…ので」
「そうだよねぇ」
何故かコブラはため息をつき地面に座る。
「オタクやってたから普通の人が起きる時間がわかんないんだよな~」
「オタクってなんですか」
「あ?」
「ひっ。ご、ごめんなさい」
ルナは涙目になりながら謝る。
「あ?あ~そういう」
なにかわかったコブラは立ち上がる。
「あールナちゃん」
「は、はい」
「ごめんねぇ口悪くて」
「え?」
「俺さ育ち悪いからさまともな言葉使いとかできないんだわ。もし怖がらせてたら悪かったなぁって」
「コブラさん」
「はいはい」
ルナはコブラの手を優しく取る。
「おいおい、こんな土まみれの汚れたものなんて触んなよ」
コブラが注意するもルナは手を離さない。
「お願いがあります」
「おねげぇ?」
「はい」
ルナの手が少し震える。ルナは大きく深呼吸をする。それでも手の震えは治まらない。
「…わたしはお金はあまり持ってません」
「突然どーした?」
「なのでお二人にはあまりお金を払えません」
「?」
コブラは首を横に捻る。ルナが何を言いたいかわからない。
「それでも…」
ルナは突然涙を流し始めた。
「お、おい大丈夫か!?おいボケ!こっち来い!」
コブラに呼ばれ中村は二人のところに向かう。中村が到着したタイミングで
「それでもお二人を雇ってもいいでしょうか!?」
 二人はポカンとした表情を浮かべ顔を見合わせる。そして
「ぷっ、くく」
「ふふふ」
笑った。正確には笑いを堪えてるが吹き出た感じだが。
「え?え?」
戸惑った様子でルナが二人を見る。
「あ、あの」
ルナが声を掛けると二人は突然ルナに対して跪いた。
「え…あの…」
「ルナ様。我ら二人あなた様に雇われること、大変嬉しゅうございます」
「つきましては報酬についてなのですが」
ルナは思わず生唾を飲み込む。ここで体を要求される可能性もあるのだ。その緊張感はハンパないものだ。
「…報酬は」
「私、中村はこの世界についての最低限の知識を」
「私、コブラはこの世界の知識とあなた様の笑顔でお願いいたします」
そう言って二人は優しく微笑む。ルナもそれに対して微笑み返す。
「よろしくおねがいします」
「おうよ」
「まかせてください」
 かくして、仲の悪い二人の異世界人を雇ったルナはこれからどうなってしまうのやら
 「ってかコブラ。お前だけ二個ってずるくないか?」
「あ?誰も一個だけとは言ってねぇだろ」
「け、喧嘩しないでくださーい!」
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