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第五章 社交シーズン(セラフィーヌ)
さぁ、踊りあかそうⅡ
しおりを挟むディキンソン卿がセラフィーヌ一行と合流したところをちょうどみていた、リヴァヴァルト卿は、そのふたりの仲良さげな様子を見ていたために、うっかりとその場を歩いていた人にぶつかってしまった。
「おっと、失礼しました」
リヴァヴァルトが急いで視線をずらすと、そこには小柄な女の子がいた。清楚な服装をしているが、その服装から一目瞭然、貴族ではないことがわかる。
リヴァヴァルトがその女の子に対して気を遣って声をかけようとした時、その女の子は顔を真っ赤にさせて、すぐさまその場から逃げるように立ち去ってしまった。
「おい、リヴァヴァルト、ディキンソン卿が合流するみたいだ。これで確実にセラフィーヌ嬢は一曲踊るだろうね」
「そのまま何曲も一緒に踊られたら困るんだがな」
リヴァヴァルトのその返しに、ネオは笑みをこぼす。
「去年まで恋多き男の代名詞をものにしていたやつの言っていることとは思えないね。見たところ、本気のようだな」
「そんなことないぞ。交流してつまらん女になったら、こんなのすぐに終わる」
「始めてここまで踏み込む事自体、お前にしては珍しいんだよ。普段なら一夜で虜にしているのに、さては初対面で何もしなかったんだな」
リヴァヴァルトと交流の深いネオはなんでもお見通しのようだった。
***
右、左、右、左。相手をチェンジして、ターン。男女四人組で輪を作り、女性はリードされて、再びものパートナーの腕の中に。
というふうにして、ダンスはスムーズに流れていく。
首が詰まった、七分袖で、両肩にリボンの修飾があるドレスを着たセラフィーヌはくるくると回って、ダンス中人と人との間を行ったり来たりしていた。彼女がきているドレスは、ストンとしたスカートのデザインだが、回るたびに、その裾がベルのように綺麗に広がっている。
「楽しいですか?」
踊りながら聞くディキンソン卿にセラフィーヌは微笑んだ。
「もちろん」
ディキンソン卿のリードはとても上手で、滑らかな動きをして、セラフィーヌをサポートして、支え、踊っている。
曲が終盤に差し掛かった時、ディキンソン卿はセラフィーヌの耳元に口を寄せてささやいた。
「今夜、また踊りましょう」
セラフィーヌがハッとしたようにディキンソン卿を見ると、彼はニコニコとしていた。
拍手喝采と共に曲が止み、立ち止まった令嬢、婦人が一斉に膝を折ってお辞儀をする中、セラフィーヌだけが一瞬取り残されて、ディキンソン卿の笑顔に見惚れていた。
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