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4 フランス王フワンソワ1世とイングランド王ヘンリー8世は、我が夫カルロスさまのライバルである
しおりを挟む「しかしイザベル。きみはやはり賢い女だな」
えっ。
あたし、むしろバカなんですけど?
「美しく、賢く。ローマ皇妃かつスペイン王妃として、きみほどふさわしい女はおるまい」
いやいやいやいや。
それはないぞ!
マジでないぞ!
まあ、美しいってのは合ってるけどね?
今世のおとうさまとおかあさまに感謝だけどね?
「もったいなきお言葉にございます」
「謙遜するな。きみであればこそ、私の不在時にスペインを任せられるというものだ。宰相のガッティナラによく相談するとよい」
どっしぇええええええー!
無理ー!
マジで無理ー!
いや、この時代に女が政治を任せてもらえるのって、めっちゃくちゃ名誉なことはわかってるよ?
わかってるけどさぁ。
「まぁ。カルロスさまったら、買い被りすぎですわ」
おそろしくなって、あたしはカルロスさまの手をぎゅっとにぎりしめた。
「それに、わたくし、カルロスさまといっときでも離れるだなんて、とてもとても……」
よよよ、と泣き真似をしてみせると、カルロスさまはあわてて立ち上がった。
「おお! イザベル!」
カルロスさまに抱きしめられ、ぷよぷよと肉感的であたたかなカルロスさまのおっぱいに、あたしの顔が埋まる。
あー、カルロスさまのおっぱい、やわらかいー。
気持ちいいー。
「私もきみと離れるのは、とてもつらい」
あたしの頭の上に、カルロスさまの、ちょっと舌ったらずな声が降り注ぐ。
「しかし、マドリードに捕えたフランス王フランソワを送り出して間もない。彼には祖母マリーの地、ブルゴーニュを我がハプスブルク家へと返してもらわねば」
ああ、フランソワ1世ね。
なんかこう、むかーし、勉強したような。
レオナルド・ダ・ヴィンチのパトロンになった王さまじゃなかったっけ?
ていうか、マドリードでのフランス王の捕虜生活……マドリード、マドリード……なんかあった気がするけど。
あー!
わっかんないなー!
前世の学生時代に、ぜんっぜん勉強してこなかったことだったり、記憶力の悪さをうらめしく思いながら、カルロスさまのあったかい背中に手を回す。
「私もきみと睦み合っていたいのだが」
カルロスさまがあたしを抱きしめる腕に力をこめた。
ていうか、む、睦み合ってって。
やだぁー!
カルロスさまったら積極的!
大好きっ!
「フランス王フランソワだけでなく、対フランスのための同盟を結んだイングランド王ヘンリーもまた、信頼のおけぬ男であり。キリスト教においては、ルターによるプロテスタント布教が、まさしく憂慮すべきことだ。
そのため私はローマ皇帝として、どうしても各地を旅して回らねばならぬのだ」
イングランド王ヘンリー8世!
うわー。
無理やり離婚したくせ、そのあとに迎えたアン・ブーリンを冤罪で処刑しやがったりした、最低最悪の好色残虐王じゃんか。
いやもう、敬虔なカトリック信者で。
彼岸のローマ教皇に対し、此岸のローマ皇帝としてキリスト教の護り手を自認するカルロスさま。
そらもう、ヘンリー8世とは、めっちゃくちゃ相性悪いよね。
ああ、そっか。
今世のカタリナ叔母さまって、そういえばヘンリー8世の1番目の奥さんだった。
まだ離縁されていないけど。
うわー。
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