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2 イケメンごみカス男には、前世でさんざん懲りたのである

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 ……前世?
 前世だって?

 と、眉をひそめてらっしゃる皆様。
 ええ、ええ。そうですよね。

 あたし、いや、わたくし。ポルトガル王女、イサベル・デ・ポルトガル・イ・アラゴンは。
 なんと。
 21世紀日本を生きたことのある、ニート女の記憶があったりする。

 うん、ニート。
 あのね、あのね。
 だってしょうがないじゃん?

 Fラン大学在学中にさ、過食症になっちゃったの。
 なんでって。
 そりゃ過激なダイエットがきっかけですよ。

 当時おつきあいしていた、顔はめちゃくちゃイケメン、細マッチョのいい体、やたらと女慣れしてしぐさがスマートな先輩に「デブ」って言われちゃって。
 つーか、おつきあいしてるって思ってたのは、あたしだけだったという事実もあったりしたんですけど。
 あっはっは。

 そんな女の敵クズ野郎に惚れてしまったことで、あたしったらバカだから、痩せなくちゃ強迫観念につかまっちゃってさ。
 いつのまにか爆食して吐いて、の繰り返し。

 まあ、そんなことしてたら当然、心も体も壊すわけですよ。
 大学はなんとか卒業したものの、就職なんてできなかった。
 ずーっとアパートにこもって、ちょっと元気なときに、はいつくばって外に出て、どうにか病院通って。

 あっ。
 生活費ですか?

 その点は、今世も前世もめぐまれていまして。
 両親がせっせと送金してくれていました。
 前世のおとうさん、おかあさん、親不孝な娘でごめんなさい。

 そんなわけで。

 欧州一の美貌とほめたたえられた、カルロスさまのご尊父フィリップ美公――自称カスティリヤ王としてはフェリペ1世。
 精神が正常であったころは、神秘的な美しさでフィリップ美公を夢中にさせたこともあった、カルロスさまのご母堂フアナさま――ちなみに今世のあたしの伯母さまである。

 うるわしきご両親の、どちらの美しさも引き継がれなかったカルロスさまだけれど。

 でも美しさなら、あたしが持ってるし、いいかなって。
 えへ。

 イケメンごみカス男には、前世でさんざん懲りたしね。
 むしろカルロスさまが、ご尊父フィリップ美公みたいじゃなくて、マジでよかった。


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