27 / 96
閑話 (アラン視点)愛してると何度でも
9 何度だって言う
しおりを挟む
殿下とエインズワースの特訓の成果を見せるときがきた。
バシッと頬を叩き、気合を入れる。それから口角を上げ――吊り上げすぎてはならない、柔らかく――、歯がきらっと光るのをイメージし、馬車から降り立とうとするメアリーに手を差し伸べた。
「やあ、メアリー。今日もまた一段と可愛いな」
メアリーは思い切り眉を顰めて、頭を後ろに引いた。おかしいな。殿下とエインズワースは顔を合わせたら、まず褒めろ、笑顔でいけ、と言っていたのだが。何か間違っているのだろうか。
「……その気色の悪い口調はなんなのです? 何か悪いものでもお口にされました?」
扇をバシッと力強く開き、口元を覆うメアリー。完全に不審者を見る目だ。しかしその怪訝そうな眼差しの中に、どこか明るい色が見える。これが殿下とエインズワースの言っていた『乙女の瞳』だろうか。
嬉しくて、胸の奥から温かな笑いがこみ上げる。
「はは!酷い言われようだな。ただ俺は、メアリーが可愛いと思ったから、それを素直に口にしただけだ」
ああ、本当に。なんて可愛いんだ。それに、正直に気持ちを伝えることの出来る気持ちよさ。もう隠す必要はないんだ。
しかしメアリーは扇で顔を全て覆い隠してしまった。
エインズワースによれば、こういうときの女性は照れているのだから、紳士的に見守り、落ち着くのを待ってエスコートすべきだと言っていたが、判断がつかない。もしかすると具合が悪いのかもしれない。
メアリーの手を取り、扇を顔から下げ、頬に手を当てる。熱は…いや、あるか?顔が赤い。
「どうした? 具合でも悪いのか?」
当惑したメアリーと目が合う。メアリーは目を泳がせて、「ううっ」と小さく呻くと、頬に当てていた手を引き剥がし、後ずさった。残念。メアリーの柔らかな頬にまだ触れていたかったのだが。
とはいえ。これはどうも、手応えを感じる。腿の脇におろした拳をぐっと握る。嫌われては、いない。
メアリーは再び口元を扇で覆うと、か弱い声を絞り出すかのように口にした。
「なんでもございません。ただ、もう少し離れてください。距離が近すぎます」
俺を睨んではいるが、目元は赤く、少し潤んでいる。可愛い。
それにしても距離が近い、か。これまで俺は、メアリーに遠慮して一歩引いていたからな。もう遠慮などするものか。
「なぜ? 俺達は婚約者だろう?」
エインズワースに聞いたように、何も気が付かなかったかのように、無垢を装い目を丸くしてみる。
「そうですわね。時限爆弾付きですけど」
メアリーは悲しそうに細い眉根を寄せ、そっと瞼を閉じた。長い睫毛が影を落とし、震えている。
声はどこか寂し気だ。
これは、いやもしかすると。やはりそうなのか?
あれほど殿下とエインズワースに気づけ!と怒鳴られ続けていたが、二人の言う通り、俺は勘違いしていたのだろうか。
メアリーが俺を疎んじていると。この婚約を一刻も早く解消したいのだろうと。
ただ勉学をするためだけに、学園に入学するためだけに、不本意な婚約関係を甘んじて受け入れているだけで、その必要がなければ、俺の元から解放されたがっているのだと。
それらは全て、俺の自信の無さやあの男への憎悪、そしてそこからくるメアリーへの罪悪感で、俺の目を曇らせていただけなのだろうか。
メアリーも、意地を張っているだけなのだろうか。
だめだ。口元が緩む。
抑えようともどうしても浮かれあがる。
メアリー、素直になれないのなら。俺がそうであったように、二人の未来が許されるのだと信じられないなら。
それならば、ゲームをしよう。
天邪鬼なメアリーが素直に聞き入れる言葉で、少しずつ。
目を細めてニヤリと笑う。
「恋愛の上澄みだけを楽しみたいんだろう?それなら、まずは俺で試してみろ」
俺以外とさせるつもりなんてないけどな。
「それは婚約を解消したあとのお話です」
解消したあとは俺が求婚するけどな。
「婚約解消後に市場に躍り出る前に、俺と恋愛してみろ。いい練習相手になってやる」
「必要ありません」
バッサリだな。だからといって諦めないが。
つん、と顎を反らすメアリーは、こちらを試して翻弄する優雅な猫のよう。飼い慣らされるメアリーじゃないよな。俺も飼い馴らしたいわけじゃない。
商売人なら駆け引きは得意だろう?俺は苦手だが、このゲームに負けるつもりはない。全力でいく。
「何事も市場調査が必要だろ? それに俺にとっては、最後の自由恋愛だ」
「……婚約解消後にいくらでもすればいいでしょう」
誰がするものか。解消したらすぐにでも式を挙げるんだ。
「貴族に自由恋愛など許されるとでも?」
「ご結婚された後で、皆様いくらでも恋愛されているでしょう」
そうだな。それが貴族流の洗練された上等な恋愛ってやつだ。伴侶に恋愛を求めるのはマナー違反。恋愛は外で。不倫こそが崇高な愛。
そんなもの、糞くらえだ。泥臭かろうがなんだろうが、俺はたった一人でいい。メアリー一人がいい。
「あいつらを見て育った俺が、不倫なんかするわけないだろ?俺は伴侶を尊重するし、大事にするつもりだ」
メアリーだけを大事にする。今はまだ、俺が追うだけでいい。メアリーの俺に向ける情が、まだ恋心ではなくてもいいから。
「だからメアリー。俺の最後の恋愛に付き合ってくれ。だめか?」
最初で最後だ。これまでもこれからもずっと。メアリーしかいらない。
じっとメアリーの瞳を見つめる。とろけるように甘く、それでいて幻想的な美しく澄んだ琥珀色の瞳。
メアリーはパチパチと何度か瞬くと、扇で口元を隠し、諦めたように嘆息した。
「……婚姻前の婚約者として、距離を守っていただけるのなら、お付き合いします」
どこか呆れたようで温かい優しさの滲んだ声色に、温かなものがこみ上げる。目頭が熱くなる。笑みが零れる。
寂し気に笑うメアリーの心に今はまだ、諦念があるのだとしても、全部塗り替えてやる。
「ありがとう。勿論、節度は守る。メアリーを傷つけることはしないし、不名誉な噂が流れるようなこともしない。だが、恋人だからな?他の男と遊ぶなよ?」
「何を仰っているの。恋人だろうがなかろうが、婚約者のいる身で、他の男性と遊ぶなどありえません」
「まぁ、そうなんだが……。そういうことじゃなくて……」
どう言えば伝わるだろう。
恋人なんだ。ただの婚約者じゃない。
俺は跪き、メアリーの手を取った。
メアリーがびくりと肩を揺らす。嫌悪を浮かべていないか覗き込むと、水蜜桃のような頬は紅潮し、眦も赤く潤んでいた。
口づけてもいいだろうか? いいよな?
少しでも力を込めれば壊れそうなほど華奢な、白いその手に口付けを落とし、そのまま軽く握った。
見上げると、真っ赤に染まりきった顔のメアリーがいた。こちらを見たかと思うと息を呑み、助けを求めるように目を彷徨わせる。そして俺へとまた視線が戻ってくる。
そこには微かに、『恋人』への期待が覗いて見えた。
自惚れてもいいだろう?
愛しくてたまらない。
「愛してるよ、メアリー。俺には君だけだ。メアリー、君も俺だけを見てくれ」
なあ、メアリー。何度だって言うよ。俺は君を愛してる。
初めて会ったときから、これまでもずっと、君だけを愛してる。
メアリー、君が俺を信じてくれるまで。信じてくれたあともずっと。
何度だって言う。
君を愛してる。
(閑話 「愛してると何度でも」 了)
バシッと頬を叩き、気合を入れる。それから口角を上げ――吊り上げすぎてはならない、柔らかく――、歯がきらっと光るのをイメージし、馬車から降り立とうとするメアリーに手を差し伸べた。
「やあ、メアリー。今日もまた一段と可愛いな」
メアリーは思い切り眉を顰めて、頭を後ろに引いた。おかしいな。殿下とエインズワースは顔を合わせたら、まず褒めろ、笑顔でいけ、と言っていたのだが。何か間違っているのだろうか。
「……その気色の悪い口調はなんなのです? 何か悪いものでもお口にされました?」
扇をバシッと力強く開き、口元を覆うメアリー。完全に不審者を見る目だ。しかしその怪訝そうな眼差しの中に、どこか明るい色が見える。これが殿下とエインズワースの言っていた『乙女の瞳』だろうか。
嬉しくて、胸の奥から温かな笑いがこみ上げる。
「はは!酷い言われようだな。ただ俺は、メアリーが可愛いと思ったから、それを素直に口にしただけだ」
ああ、本当に。なんて可愛いんだ。それに、正直に気持ちを伝えることの出来る気持ちよさ。もう隠す必要はないんだ。
しかしメアリーは扇で顔を全て覆い隠してしまった。
エインズワースによれば、こういうときの女性は照れているのだから、紳士的に見守り、落ち着くのを待ってエスコートすべきだと言っていたが、判断がつかない。もしかすると具合が悪いのかもしれない。
メアリーの手を取り、扇を顔から下げ、頬に手を当てる。熱は…いや、あるか?顔が赤い。
「どうした? 具合でも悪いのか?」
当惑したメアリーと目が合う。メアリーは目を泳がせて、「ううっ」と小さく呻くと、頬に当てていた手を引き剥がし、後ずさった。残念。メアリーの柔らかな頬にまだ触れていたかったのだが。
とはいえ。これはどうも、手応えを感じる。腿の脇におろした拳をぐっと握る。嫌われては、いない。
メアリーは再び口元を扇で覆うと、か弱い声を絞り出すかのように口にした。
「なんでもございません。ただ、もう少し離れてください。距離が近すぎます」
俺を睨んではいるが、目元は赤く、少し潤んでいる。可愛い。
それにしても距離が近い、か。これまで俺は、メアリーに遠慮して一歩引いていたからな。もう遠慮などするものか。
「なぜ? 俺達は婚約者だろう?」
エインズワースに聞いたように、何も気が付かなかったかのように、無垢を装い目を丸くしてみる。
「そうですわね。時限爆弾付きですけど」
メアリーは悲しそうに細い眉根を寄せ、そっと瞼を閉じた。長い睫毛が影を落とし、震えている。
声はどこか寂し気だ。
これは、いやもしかすると。やはりそうなのか?
あれほど殿下とエインズワースに気づけ!と怒鳴られ続けていたが、二人の言う通り、俺は勘違いしていたのだろうか。
メアリーが俺を疎んじていると。この婚約を一刻も早く解消したいのだろうと。
ただ勉学をするためだけに、学園に入学するためだけに、不本意な婚約関係を甘んじて受け入れているだけで、その必要がなければ、俺の元から解放されたがっているのだと。
それらは全て、俺の自信の無さやあの男への憎悪、そしてそこからくるメアリーへの罪悪感で、俺の目を曇らせていただけなのだろうか。
メアリーも、意地を張っているだけなのだろうか。
だめだ。口元が緩む。
抑えようともどうしても浮かれあがる。
メアリー、素直になれないのなら。俺がそうであったように、二人の未来が許されるのだと信じられないなら。
それならば、ゲームをしよう。
天邪鬼なメアリーが素直に聞き入れる言葉で、少しずつ。
目を細めてニヤリと笑う。
「恋愛の上澄みだけを楽しみたいんだろう?それなら、まずは俺で試してみろ」
俺以外とさせるつもりなんてないけどな。
「それは婚約を解消したあとのお話です」
解消したあとは俺が求婚するけどな。
「婚約解消後に市場に躍り出る前に、俺と恋愛してみろ。いい練習相手になってやる」
「必要ありません」
バッサリだな。だからといって諦めないが。
つん、と顎を反らすメアリーは、こちらを試して翻弄する優雅な猫のよう。飼い慣らされるメアリーじゃないよな。俺も飼い馴らしたいわけじゃない。
商売人なら駆け引きは得意だろう?俺は苦手だが、このゲームに負けるつもりはない。全力でいく。
「何事も市場調査が必要だろ? それに俺にとっては、最後の自由恋愛だ」
「……婚約解消後にいくらでもすればいいでしょう」
誰がするものか。解消したらすぐにでも式を挙げるんだ。
「貴族に自由恋愛など許されるとでも?」
「ご結婚された後で、皆様いくらでも恋愛されているでしょう」
そうだな。それが貴族流の洗練された上等な恋愛ってやつだ。伴侶に恋愛を求めるのはマナー違反。恋愛は外で。不倫こそが崇高な愛。
そんなもの、糞くらえだ。泥臭かろうがなんだろうが、俺はたった一人でいい。メアリー一人がいい。
「あいつらを見て育った俺が、不倫なんかするわけないだろ?俺は伴侶を尊重するし、大事にするつもりだ」
メアリーだけを大事にする。今はまだ、俺が追うだけでいい。メアリーの俺に向ける情が、まだ恋心ではなくてもいいから。
「だからメアリー。俺の最後の恋愛に付き合ってくれ。だめか?」
最初で最後だ。これまでもこれからもずっと。メアリーしかいらない。
じっとメアリーの瞳を見つめる。とろけるように甘く、それでいて幻想的な美しく澄んだ琥珀色の瞳。
メアリーはパチパチと何度か瞬くと、扇で口元を隠し、諦めたように嘆息した。
「……婚姻前の婚約者として、距離を守っていただけるのなら、お付き合いします」
どこか呆れたようで温かい優しさの滲んだ声色に、温かなものがこみ上げる。目頭が熱くなる。笑みが零れる。
寂し気に笑うメアリーの心に今はまだ、諦念があるのだとしても、全部塗り替えてやる。
「ありがとう。勿論、節度は守る。メアリーを傷つけることはしないし、不名誉な噂が流れるようなこともしない。だが、恋人だからな?他の男と遊ぶなよ?」
「何を仰っているの。恋人だろうがなかろうが、婚約者のいる身で、他の男性と遊ぶなどありえません」
「まぁ、そうなんだが……。そういうことじゃなくて……」
どう言えば伝わるだろう。
恋人なんだ。ただの婚約者じゃない。
俺は跪き、メアリーの手を取った。
メアリーがびくりと肩を揺らす。嫌悪を浮かべていないか覗き込むと、水蜜桃のような頬は紅潮し、眦も赤く潤んでいた。
口づけてもいいだろうか? いいよな?
少しでも力を込めれば壊れそうなほど華奢な、白いその手に口付けを落とし、そのまま軽く握った。
見上げると、真っ赤に染まりきった顔のメアリーがいた。こちらを見たかと思うと息を呑み、助けを求めるように目を彷徨わせる。そして俺へとまた視線が戻ってくる。
そこには微かに、『恋人』への期待が覗いて見えた。
自惚れてもいいだろう?
愛しくてたまらない。
「愛してるよ、メアリー。俺には君だけだ。メアリー、君も俺だけを見てくれ」
なあ、メアリー。何度だって言うよ。俺は君を愛してる。
初めて会ったときから、これまでもずっと、君だけを愛してる。
メアリー、君が俺を信じてくれるまで。信じてくれたあともずっと。
何度だって言う。
君を愛してる。
(閑話 「愛してると何度でも」 了)
13
お気に入りに追加
1,073
あなたにおすすめの小説
【完結】私の婚約者は、いつも誰かの想い人
キムラましゅろう
恋愛
私の婚約者はとても素敵な人。
だから彼に想いを寄せる女性は沢山いるけど、私はべつに気にしない。
だって婚約者は私なのだから。
いつも通りのご都合主義、ノーリアリティなお話です。
不知の誤字脱字病に罹患しております。ごめんあそばせ。(泣)
小説家になろうさんにも時差投稿します。

【完結】彼を幸せにする十の方法
玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。
フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。
婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。
しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。
婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。
婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。
出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
古代魔法を専門とする魔法研究者のアンヌッカは、家族と研究所を守るために軍人のライオネルと結婚をする。
ライオネルもまた昇進のために結婚をしなければならず、国王からの命令ということもあり結婚を渋々と引き受ける。
しかし、愛のない結婚をした二人は結婚式当日すら顔を合わせることなく、そのまま離れて暮らすこととなった。
ある日、アンヌッカの父が所長を務める魔法研究所に軍から古代文字で書かれた魔導書の解読依頼が届く。
それは禁帯本で持ち出し不可のため、軍施設に研究者を派遣してほしいという依頼だ。
この依頼に対応できるのは研究所のなかでもアンヌッカしかいない。
しかし軍人の妻が軍に派遣されて働くというのは体裁が悪いし何よりも会ったことのない夫が反対するかもしれない。
そう思ったアンヌッカたちは、アンヌッカを親戚の娘のカタリーナとして軍に送り込んだ――。
素性を隠したまま働く妻に、知らぬ間に惹かれていく(恋愛にはぽんこつ)夫とのラブコメディ。

真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬申し上げます、婚約破棄致しましょう
さこの
恋愛
「真実の愛を見つけた」
殿下にそう告げられる
「応援いたします」
だって真実の愛ですのよ?
見つける方が奇跡です!
婚約破棄の書類ご用意いたします。
わたくしはお先にサインをしました、殿下こちらにフルネームでお書き下さいね。
さぁ早く!わたくしは真実の愛の前では霞んでしまうような存在…身を引きます!
なぜ婚約破棄後の元婚約者殿が、こんなに美しく写るのか…
私の真実の愛とは誠の愛であったのか…
気の迷いであったのでは…
葛藤するが、すでに時遅し…

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。

愛のない貴方からの婚約破棄は受け入れますが、その不貞の代償は大きいですよ?
日々埋没。
恋愛
公爵令嬢アズールサは隣国の男爵令嬢による嘘のイジメ被害告発のせいで、婚約者の王太子から婚約破棄を告げられる。
「どうぞご自由に。私なら傲慢な殿下にも王太子妃の地位にも未練はございませんので」
しかし愛のない政略結婚でこれまで冷遇されてきたアズールサは二つ返事で了承し、晴れて邪魔な婚約者を男爵令嬢に押し付けることに成功する。
「――ああそうそう、殿下が入れ込んでいるそちらの彼女って実は〇〇ですよ? まあ独り言ですが」
嘘つき男爵令嬢に騙された王太子は取り返しのつかない最期を迎えることになり……。
※この作品は過去に公開したことのある作品に修正を加えたものです。
またこの作品とは別に、他サイトでも本作を元にしたリメイク作を別のペンネー厶で公開していますがそのことをあらかじめご了承ください。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)

【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。
こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。
彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。
皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。
だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。
何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。
どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。
絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。
聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──……
※在り来りなご都合主義設定です
※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です
※つまりは行き当たりばったり
※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください
4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる