5 / 9
5 クソはお前だクソ女!
しおりを挟む
そもそもキャンベル家は昔から王家に不敬だった。
そもそも王家の青い血が途絶えたのはキャンベル家のせい。
あの極悪魔女、姦婦ナタリー・キャンベルが国王を誑かしたせいで、十一代国王が臍を曲げて純血主義を厭い、愚かな男の八つ当たりで他国の血を混ぜるようになって、純然たる王族特有の青い血が発現しなくなった。
もはや王家に青い血が発現しないどころか、臣下である貴族達より薄い始末。
全てはキャンベル家のせい。
ネモフィラがユーフラテスの嫁に素直にならないのも、キャンベル家のせい。
逃げ出したネモフィラ絶対許さん。地の果てまで追いかけてやる!
キャンベル家ぶっ潰して……やりたいけど武力ありすぎてぶっ潰そうとしたら隣国に寝返っちゃうか、もしくは隣国への防壁がなくなっちゃって、ぶっ潰せないから、とりあえず魔女ナタリー・キャンベル探しとこ。そうしとこ。
なんかまだ生きてるって噂あるし。
そういうわけでユーフラテスは約百五十年前の魔女ナタリー・キャンベルの暮らすボロ屋を探し出し、見つけるなり躊躇なく襲撃した。
なんという八つ当たり。これは理不尽。
ナタリーには共に暮らす家族が三人居た。
第十一代国王レオンハルトの生まれ変わりであり、今は医者もどきの平民レオン。
こいつはレオンハルト元国王陛下の生まれ変わりであることを納得していない。ナタリーの恋人ではない。
次にレオンハルト元国王陛下とナタリーの間の子、リナ九歳。
なぜ約百五十年前の子供が今まだ九歳なのかは色々事情があるのだが、ユーフラテスには関係のないことなので、放っておく。
ちなみにこの子がネモフィラの言う、「乙女ゲーム」の「ヒロイン」である。
さてユーフラテスは、九歳のヒロインと、ある意味運命的な出会いを果たしたわけだ。
恋に落ちたか?! ユーフラテス!
――まぁ、落ちない。当然ながら、恋に落ちない。
なんたって相手は九歳だもの。
ユーフラテスは十八歳だもの。
ロリコンじゃないのだもの。
ユーフラテスとヒロインの関係は、シンプルに加害者と被害者の関係。
それからレオンの――第十一代国王陛下ではなく医者もどきの方――血の繋がらない弟、ジャック十歳。
実はこの子もめんどくさい前世絡みの事情があったりするのだが、今のところユーフラテスには関係がないので、これまた捨て置く。
まぁそんな感じで、ちょっぴり複雑な疑似家族として幸せに平和に暮らしていた。
そこを突然わけのわからない理由でわけのわからないやつが襲撃してきたのである。
これはレオンもリナもジャックもめっちゃ怒っていい。
ナタリーはもちろん怒った。大激怒だ。
捕らえられたナタリーは、反撃の機会を虎視眈々と狙っていた。
他三人は子供二人と大人一人に分かれて逃げ、再会を待った。
しかしそんなことは知らないユーフラテスは調子に乗った。
――よっしゃナタリー捕まえた!
王家から奪った青い血の能力吸い取ってやる!
しかし能力の扱い方など、青い血が薄れて久しい王家には遠の昔にその指南書も失われている。
ナタリーを捕らえて三年ほどは、ナタリーの身の内にある青い血の力をどうにか引き出せないかとあれこれ奮闘した。
王侯貴族に従おうとしない自由気ままな魔術師に対し、百五十年前の魔女がいるという彼らの知的好奇心、探究心を擽って収集をかけてみたり。
そうして集まった彼らに、ナタリーの能力の解析を頼み、最終的にはナタリーの全能力を奪い王家に青い血を復興させることを目論んだり。
しかしそれらは一つも叶うことはなかった。
ユーフラテスは考えた。
青い血そのものを抜いてみようか! と。
抜いた血をその後どうするつもりだったのか、それはユーフラテスに尋ねたところで答えは返ってこなかっただろう。
おそらく何も考えていない。
――体から血を抜けばいいか。
あれ、ナタリー・キャンベルの体がみるみる若返っていく……おや?
血を抜いて力を奪うはずが……うおおおおお殺られてしまう!
むしろナタリー・キャンベルさん、戦闘力あがっちゃいましたね。参ったなこりゃハッハッハ。
ユーフラテス完敗である。
奇襲をかけ捕らえたはずのナタリーの反撃を受け、ボコボコにされた。容赦なく。
まあ当然である。
ナタリーにボコボコにされ、好きな女の子には優しくしなさい、意地はってないで素直に愛の告白しなさいと説教され、ユーフラテスは渋々の体でネモフィラを迎えに行った。
説教で済ますなんてナタリー優しい。
ユーフラテスが昔の恋人レオンハルトの子孫で、そのユーフラテスの婚約者がナタリーの子孫だから温情をかけたわけだが。
ちなみに既に自由の身、ナタリーは高見の見物である。
こっそり上空からバカ王子とバカ辺境伯令嬢――ナタリーの子孫である――の様子と、またそんな茶番劇より何より愛おしい子供たちの成長した懐かしい姿を眺めていた。
これはまた別のお話し。
さてそうしてネモフィラを迎えに行ったユーフラテスの前で、ネモフィラは乙女ゲームのヒロインと何やら対話をしていた。
そしたらネモフィラのアホが、ユーフラテスのことクソって言ってる!
クソはお前だクソ女!
そもそも王家の青い血が途絶えたのはキャンベル家のせい。
あの極悪魔女、姦婦ナタリー・キャンベルが国王を誑かしたせいで、十一代国王が臍を曲げて純血主義を厭い、愚かな男の八つ当たりで他国の血を混ぜるようになって、純然たる王族特有の青い血が発現しなくなった。
もはや王家に青い血が発現しないどころか、臣下である貴族達より薄い始末。
全てはキャンベル家のせい。
ネモフィラがユーフラテスの嫁に素直にならないのも、キャンベル家のせい。
逃げ出したネモフィラ絶対許さん。地の果てまで追いかけてやる!
キャンベル家ぶっ潰して……やりたいけど武力ありすぎてぶっ潰そうとしたら隣国に寝返っちゃうか、もしくは隣国への防壁がなくなっちゃって、ぶっ潰せないから、とりあえず魔女ナタリー・キャンベル探しとこ。そうしとこ。
なんかまだ生きてるって噂あるし。
そういうわけでユーフラテスは約百五十年前の魔女ナタリー・キャンベルの暮らすボロ屋を探し出し、見つけるなり躊躇なく襲撃した。
なんという八つ当たり。これは理不尽。
ナタリーには共に暮らす家族が三人居た。
第十一代国王レオンハルトの生まれ変わりであり、今は医者もどきの平民レオン。
こいつはレオンハルト元国王陛下の生まれ変わりであることを納得していない。ナタリーの恋人ではない。
次にレオンハルト元国王陛下とナタリーの間の子、リナ九歳。
なぜ約百五十年前の子供が今まだ九歳なのかは色々事情があるのだが、ユーフラテスには関係のないことなので、放っておく。
ちなみにこの子がネモフィラの言う、「乙女ゲーム」の「ヒロイン」である。
さてユーフラテスは、九歳のヒロインと、ある意味運命的な出会いを果たしたわけだ。
恋に落ちたか?! ユーフラテス!
――まぁ、落ちない。当然ながら、恋に落ちない。
なんたって相手は九歳だもの。
ユーフラテスは十八歳だもの。
ロリコンじゃないのだもの。
ユーフラテスとヒロインの関係は、シンプルに加害者と被害者の関係。
それからレオンの――第十一代国王陛下ではなく医者もどきの方――血の繋がらない弟、ジャック十歳。
実はこの子もめんどくさい前世絡みの事情があったりするのだが、今のところユーフラテスには関係がないので、これまた捨て置く。
まぁそんな感じで、ちょっぴり複雑な疑似家族として幸せに平和に暮らしていた。
そこを突然わけのわからない理由でわけのわからないやつが襲撃してきたのである。
これはレオンもリナもジャックもめっちゃ怒っていい。
ナタリーはもちろん怒った。大激怒だ。
捕らえられたナタリーは、反撃の機会を虎視眈々と狙っていた。
他三人は子供二人と大人一人に分かれて逃げ、再会を待った。
しかしそんなことは知らないユーフラテスは調子に乗った。
――よっしゃナタリー捕まえた!
王家から奪った青い血の能力吸い取ってやる!
しかし能力の扱い方など、青い血が薄れて久しい王家には遠の昔にその指南書も失われている。
ナタリーを捕らえて三年ほどは、ナタリーの身の内にある青い血の力をどうにか引き出せないかとあれこれ奮闘した。
王侯貴族に従おうとしない自由気ままな魔術師に対し、百五十年前の魔女がいるという彼らの知的好奇心、探究心を擽って収集をかけてみたり。
そうして集まった彼らに、ナタリーの能力の解析を頼み、最終的にはナタリーの全能力を奪い王家に青い血を復興させることを目論んだり。
しかしそれらは一つも叶うことはなかった。
ユーフラテスは考えた。
青い血そのものを抜いてみようか! と。
抜いた血をその後どうするつもりだったのか、それはユーフラテスに尋ねたところで答えは返ってこなかっただろう。
おそらく何も考えていない。
――体から血を抜けばいいか。
あれ、ナタリー・キャンベルの体がみるみる若返っていく……おや?
血を抜いて力を奪うはずが……うおおおおお殺られてしまう!
むしろナタリー・キャンベルさん、戦闘力あがっちゃいましたね。参ったなこりゃハッハッハ。
ユーフラテス完敗である。
奇襲をかけ捕らえたはずのナタリーの反撃を受け、ボコボコにされた。容赦なく。
まあ当然である。
ナタリーにボコボコにされ、好きな女の子には優しくしなさい、意地はってないで素直に愛の告白しなさいと説教され、ユーフラテスは渋々の体でネモフィラを迎えに行った。
説教で済ますなんてナタリー優しい。
ユーフラテスが昔の恋人レオンハルトの子孫で、そのユーフラテスの婚約者がナタリーの子孫だから温情をかけたわけだが。
ちなみに既に自由の身、ナタリーは高見の見物である。
こっそり上空からバカ王子とバカ辺境伯令嬢――ナタリーの子孫である――の様子と、またそんな茶番劇より何より愛おしい子供たちの成長した懐かしい姿を眺めていた。
これはまた別のお話し。
さてそうしてネモフィラを迎えに行ったユーフラテスの前で、ネモフィラは乙女ゲームのヒロインと何やら対話をしていた。
そしたらネモフィラのアホが、ユーフラテスのことクソって言ってる!
クソはお前だクソ女!
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
国外追放されたくないので第二王子の胃袋を掴んだら溺愛されました!
和栗かのこ
恋愛
乙女ゲームが趣味の社畜・美咲は、階段から落ちて乙女ゲーム「クレセント・ナイト」の悪役令嬢に転生してしまう。
悪役令嬢セセリアに転生した美咲は、国外追放される展開を変えるため、婚約者である第二王子の胃袋を掴むことを思いつく。
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?
いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、
たまたま付き人と、
「婚約者のことが好きなわけじゃないー
王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」
と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。
私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、
「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」
なんで執着するんてすか??
策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー
基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。

光の王太子殿下は愛したい
葵川真衣
恋愛
王太子アドレーには、婚約者がいる。公爵令嬢のクリスティンだ。
わがままな婚約者に、アドレーは元々関心をもっていなかった。
だが、彼女はあるときを境に変わる。
アドレーはそんなクリスティンに惹かれていくのだった。しかし彼女は変わりはじめたときから、よそよそしい。
どうやら、他の少女にアドレーが惹かれると思い込んでいるようである。
目移りなどしないのに。
果たしてアドレーは、乙女ゲームの悪役令嬢に転生している婚約者を、振り向かせることができるのか……!?
ラブラブを望む王太子と、未来を恐れる悪役令嬢の攻防のラブ(?)コメディ。
☆完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました
かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中!
そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……?
可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです!
そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!?
イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!!
毎日17時と19時に更新します。
全12話完結+番外編
「小説家になろう」でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる