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可愛い貴方からのハットトリック(殿下視点)
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率直に言って、彼女はとても可愛い人だ。
彼女と私は、互いが七つの年の頃に婚約を結んだ。
彼女は、隣国との国境を守る国内随一の武力と、資源が豊富なことで知られる辺境伯家のご令嬢で、この婚約は辺境伯の忠と武力と財を王家に留め置くことが目的であった。
私はこの国の第三王子だ。
スペアとしての役割がないとは言わないが、兄二人が健康で優秀な王子であるため、おそらくこのまま辺境伯家へ婿入りすることだろう。
そのように政略的に結ばれた婚約ではあったが、私達は誠実に互いと向き合い、また確実に親愛を育んできた。
とはいえ、初めての顔合わせにおいて、私の彼女への態度は呆れ返るもので、それを咎めることなく受け入れてくれた彼女の寛容さには頭が下がる。
そう。
それだから、私は令嬢らしからぬ少々奇想天外なところを許容している。
いや、違う。
本当のところ、私自身が自由な彼女を愛しているだけなのだ。
「でんか、おたんじょうびおめでとうございます」
婚約を交わしてから迎える、初めての誕生日。
彼女は琥珀色の瞳をキラキラと輝かせ、宝石箱を差し出した。
何にも包まれないその宝石箱は、青い琥珀で飾り立てられた、豪奢というより瀟洒な工芸品であった。
辺境伯領の鉱山から採取された琥珀を、独自の伝統技術によって青く染めたそれは、紛れもなく私の瞳の色を意識したものだ。
私は内心、つまらないな、と思った。
私の瞳の色、辺境伯領の琥珀、そして技術。
ありきたりだ。
「ありがとう」
私の非礼は顔に出ていただろう。
だが彼女は気にも留めず、明るく言った。
「あけてみてください!」
言われるがまま蓋を開ければ、そこにはみっちり詰まったダンゴムシが蠢いていた。
「でんかのために、がんばりました」
上気し紅潮した頬。
前年の誕生日で、絶叫した私の侍従と城内の使用人達、という阿鼻叫喚について、辺境伯に絞られたらしい彼女。
得意げに差し出されたソレは、七色に輝く玉虫であった。
死してからはペーパーウェイトにさせた。
翌年。
私は期待していた。
今年は一体、どんな贈り物なのだろうか、と。
だがしかし、その期待は裏切られた。
何の変哲もないドングリ。それに簡素な加工をした素朴なブローチだった。
「どんぐり虫が這い出るのを楽しみにお待ちくださいまし!」
さて。これで私は、いよいよ胸を撃ち抜かれたのだった。
この後、誕生日を迎える度、イナゴだのカエルだの続くことになるとは、この時の私は、まだ知る由もない。
彼女と私は、互いが七つの年の頃に婚約を結んだ。
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そう。
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「ありがとう」
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「あけてみてください!」
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さて。これで私は、いよいよ胸を撃ち抜かれたのだった。
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