最強聖剣使いが魔王と手を組むのはダメですか?〜俺は魔王と手を組んで、お前らがしたことを後悔させてやるからな〜

東雲ハヤブサ

文字の大きさ
上 下
18 / 33

18話 終焉の悪魔

しおりを挟む
 「私の兄は魔法を使うのが得意で、生まれつき魔力量が多いんですよ。それに――」
 「私も魔力量多いよ。ほら」

 いつの間にか皿にあったクッキーがすべて消えていて、その代わりにミラノは無詠唱で手のひらサイズの水球を浮かばせていた。
 俺達はこれを見てどう反応すればいいんだか。
 水球なんて水魔法の中でも詠唱も簡単な魔法だし、小さな子供この魔法を使って水をかけ合って遊んでいる光景をたまに見かける。
 だから、水球が作れるからってそんな――。

 直後、浮かんでいた水球がありえない速度で壁に向かって行き、石で作られているのにも関わらず、貫通して破壊してしまった。
 
 「おい何やってんだよっ!」
 「魔力が多いって証明したかったんだよ」
 「だからって人の家の壁を壊すなんてことするかよ!?」
 「大丈夫ですよクリムさん。あれくらいの穴、魔法を使えばすぐに直せますし」

 ラーシェは怒るどころか笑みを浮かべていて、土魔法の詠唱を始めた。

 「緑を生かし、美しい光を吸収する偉大なる大地よ。その命尽きるまで声明を照らせ。大地の癒しレファンドヒーリング

 詠唱が終わると、貫通して外が見えていた壁に細かい砂が集まり始めた。
 それは次第にさっきまで存在していた壁となっていき、何事もなかったかのように修復が完了した。

 「おお……。綺麗に直った」
 「小さいころよく土魔法を使っていたので慣れているんです」 
 「細かいところまで綺麗に……。そういえば、さっき何か言いかけてたよな」
 「えっとなんでしたっけ……。あ、思い出しました。悪魔のことについて話そうとしたんです」
 「悪魔?」
 「はい。悪魔は数えきれないほどいますが、その中でも頂点に立つ悪魔達を知っていますか?」

 悪魔か。
 しばらく聖剣使いとして生きてきたが、悪魔と戦ったこと一回もないんだよな。
 聖剣使いなんだから、悪魔には結構有効だとは思うが、実際のところどうなんだろうか
 そんな俺でも、多少なりとも有名な悪魔なら知っている。

 「《狂炎の悪魔》とか、《鮮血の悪魔》、あとは《漆黒の悪魔》だっけ?」
 「そうです。それ以外にも、《冷酷の悪魔》、《終焉の悪魔》、《破壊の悪魔》がいるんですけど、兄は《終焉の悪魔》と手を組んでいるんです」

 ん、え?
 手を組んでいるってどういうことだ?
 悪魔って普通人間の敵だよな?
 なのに手を組む?
 この兄妹は聖剣使いだったり、笑うピエロのボスだったり、挙句の果てに悪魔と手を組んでいたり。
 どれだけ凄い兄妹なんだ。

 「君のお兄ちゃん、悪魔と手を組んでるの? だったら私たちの仲間になってよ。凄い戦力になるよ」
 「ちょっとそれは話を飛ばしすぎだ。それで、ラーシェ。悪魔と手を組んでいるってどういうことだ?」
 「実は、兄は魔獣に襲われて死んでしまったんです」
 「え。それは……一人で大変だったな」
 「いえ、兄は生きてます」
 「はぁ?」

 死んでしまったのに生きてるって、何。
 もうここまで来たら、人間がどうのこうのって話じゃないだろ。
 学問的な問題だ。

 「混乱してしまうかもしれませんが、どうやら悪魔は死んだ人間にしか入り込むことが出来ないようです。それで、魔獣に襲われて死んでしまった兄ですが《終焉の悪魔》に目をつけられたらしく、兄の体の中で生きる代わりに蘇生させてやると話を持ち掛けられたらしいです」
 「それで承諾したと」
 「迷わなかったって言っていました。でも、悪魔なんて危険すぎると息を吹き返した兄に言ったのですが、その悪魔が結構協力的でして、国を滅ぼすことが出来たんです」

 道理で二人で滅ぼせれるわけだ。
 悪魔に取ったら、小さな国を一つ滅ぼすなんて簡単なことなんだろうな。

 「兄に最近聞いたのですが、《漆黒の悪魔》も誰かの中に入っているらしいですよ。ですが、その悪魔は竜牙の大陸にいるらしいですし、《終焉の悪魔》が味方でいる限り脅威ではないでしょう」

 そんなこと言っていると、案外すぐに現れるもんだぞ。
 言葉ってのは怖いからな。
 ある人を噂すれば、その人がどうしてだか目の前に現れるし。
 誰かを呼びたかったら、その人のことを噂すればいいって聞いたことがある。
 一回本当にやってみたが、実際に呼びたかった人が来てびっくりした。
 感動したが、それに加えて怖かったけどな。

 それにしても悪魔か。
 この目で見たことがないから分からないけど、相当強いんだろうな。
 一度会ってみたい。

 「今から時間空いてますか?」
 「空いてるけど、なんで?」
 「笑うピエロの本部へついて来てもらえませんか? 兄に会ってもらいたいんです」
 
 心の声が漏れているのか、こんな急に会えることになるとはな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。

スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。 地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!? 異世界国家サバイバル、ここに爆誕!

死にかけたら謎のステータスが見える様になった件。

メカ
ファンタジー
大学二回生の青年「掛井 嗣仁」は、ある日事故に合う。 凡そ1か月後、目を覚ました彼の眼には「謎の数字」が見えていた。 そして「ソレ」が次第に、彼の生活を崩壊させていく・・・。 元の生活に戻る為、何も分からないまま歩み続けるしかなかった・・・。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...