76 / 93
75話 再会
しおりを挟む
「ヴァミア生きていてくれたんだなぁ……」
膝をついてボロボロと涙を流すヴァミアを、そっとミルマは抱きしめた。
「兄さんに……会えた……!」
長い髪を乱したまま、さらに涙を流して抱き返す。
だがここは戦場。
いつまでもそうしていることは出来ない。
ミルマは手を離してヴァミアを立ち上がらせると、手を顔に当てて戦闘で付いた泥を取った。
「ヴァミア強くなったんだな」
「兄さんに教えてもらったから」
「いや、教えてもらってたの俺だから……」
その反応を見たヴァミアは、戦場では一度も見せなかった暖かい笑顔を浮かべた。
「やっぱり兄さんは変わってない」
「そんなの当たり前だろ。どれだけ時が経ったって俺は変わらない。あ、でも少しだけ強くなったけど」
「私も少しだけ強くなった」
「ヴァミアは少しどころじゃないだろ……」
戦場にいるとは思えない会話をしながら、2人は笑顔を向け合う。
しかし、後方で鳴り響く戦闘音で幸せな時間から戦場に引き戻される。
「カロス様が押してる! このままいけば――」
連続で行われる攻撃に体勢を崩したグラファを見て声を上げるが、それをヴァミアは希望もろとも切り裂く。
「いや違うよ。あれは遅てるわけじゃない。ただ力を使い過ぎてるだけ。だからもう時期」
「黒水ノ虎」
ヴァミアが全て言葉にする前に、黒い水の体を持つ虎が出現してカロスの横腹に牙を突き刺した。
「カロスが負ける」
「嘘だろ……そんなわけ……」
“負ける“この言葉にミルマの頭は真っ白になった。
「だってカロス様は五大魔獣なんだ! だからそう簡単に負けるわけが――」
「それでも負ける。私と五大魔獣の2体でも歯が立たなかった。あの男が……強すぎる」
ヴァミアの目線は、カロスからグラファに移る。
だが、目線の先には既に誰もいなかった。
「いない! 一体どこに――」
「そんな俺のことを探してくれるなんてぇ、嬉しいな。だから殺してやるよ」
いつのまに!?
「水剣」
手から透明な水が流れ出し、わずか数秒で一本の剣を作り上げていった。
「死ね」
咄嗟の出来事で動くことの出来ないミルマに剣が振われる。
せっかくヴァミアに会えたのに……!
俺はまた力がないせいで何も出来ないのかよ……!
「じゃあな。ヴァミアの兄さん」
止まることのない美しく、残酷な剣がミルマの頭に振り下ろされて――
「私の兄さんに手を出すな」
頭を切断される寸前で、また別の剣がグラファの剣を受け止めた。
俺は誰かに助けられないと生きていけないのか。
ヴァミアは今も昔も、俺達を守るために戦っているというのに……!
「まだ動くか。まぁいい。どうせお前1人じゃ俺に勝てない」
ニヤリと笑う。
グラファは片手で剣を握っている。
それに対してヴァミアは両手で剣を握って攻撃を受け止めている。
つまりどちらが不利かと問われれば、答えは明確だ。
「水剣」
剣を握っていない、もう片方の手から水が流れ出し1本の剣を作り上げる。
「クッ……!」
「先にこの男を攻撃しといて良かった。これでお前に隙ができたからなぁ。兄弟の前で死――」
「ちょっと失礼しますね」
この場の空気に合わない声が聞こえる。
その声の発生場所は、グラファの真後ろだ。
グラファでさえ全く気付かず、驚いて背後を向こうとした時首に大きな衝撃を受けた。
突然のことに受け身を取れず、地面を小さな石のように転がって行く。
「誰だ貴様はぁ!!!」
切った唇から流れる血を拭きながら立ち上がり、突然現れた者に怒号を浴びせた。
「私ですか? 怒鳴る程教えて欲しいなら仕方がありませんね。私はリウス様に使える、そこら辺の悪魔です」
膝をついてボロボロと涙を流すヴァミアを、そっとミルマは抱きしめた。
「兄さんに……会えた……!」
長い髪を乱したまま、さらに涙を流して抱き返す。
だがここは戦場。
いつまでもそうしていることは出来ない。
ミルマは手を離してヴァミアを立ち上がらせると、手を顔に当てて戦闘で付いた泥を取った。
「ヴァミア強くなったんだな」
「兄さんに教えてもらったから」
「いや、教えてもらってたの俺だから……」
その反応を見たヴァミアは、戦場では一度も見せなかった暖かい笑顔を浮かべた。
「やっぱり兄さんは変わってない」
「そんなの当たり前だろ。どれだけ時が経ったって俺は変わらない。あ、でも少しだけ強くなったけど」
「私も少しだけ強くなった」
「ヴァミアは少しどころじゃないだろ……」
戦場にいるとは思えない会話をしながら、2人は笑顔を向け合う。
しかし、後方で鳴り響く戦闘音で幸せな時間から戦場に引き戻される。
「カロス様が押してる! このままいけば――」
連続で行われる攻撃に体勢を崩したグラファを見て声を上げるが、それをヴァミアは希望もろとも切り裂く。
「いや違うよ。あれは遅てるわけじゃない。ただ力を使い過ぎてるだけ。だからもう時期」
「黒水ノ虎」
ヴァミアが全て言葉にする前に、黒い水の体を持つ虎が出現してカロスの横腹に牙を突き刺した。
「カロスが負ける」
「嘘だろ……そんなわけ……」
“負ける“この言葉にミルマの頭は真っ白になった。
「だってカロス様は五大魔獣なんだ! だからそう簡単に負けるわけが――」
「それでも負ける。私と五大魔獣の2体でも歯が立たなかった。あの男が……強すぎる」
ヴァミアの目線は、カロスからグラファに移る。
だが、目線の先には既に誰もいなかった。
「いない! 一体どこに――」
「そんな俺のことを探してくれるなんてぇ、嬉しいな。だから殺してやるよ」
いつのまに!?
「水剣」
手から透明な水が流れ出し、わずか数秒で一本の剣を作り上げていった。
「死ね」
咄嗟の出来事で動くことの出来ないミルマに剣が振われる。
せっかくヴァミアに会えたのに……!
俺はまた力がないせいで何も出来ないのかよ……!
「じゃあな。ヴァミアの兄さん」
止まることのない美しく、残酷な剣がミルマの頭に振り下ろされて――
「私の兄さんに手を出すな」
頭を切断される寸前で、また別の剣がグラファの剣を受け止めた。
俺は誰かに助けられないと生きていけないのか。
ヴァミアは今も昔も、俺達を守るために戦っているというのに……!
「まだ動くか。まぁいい。どうせお前1人じゃ俺に勝てない」
ニヤリと笑う。
グラファは片手で剣を握っている。
それに対してヴァミアは両手で剣を握って攻撃を受け止めている。
つまりどちらが不利かと問われれば、答えは明確だ。
「水剣」
剣を握っていない、もう片方の手から水が流れ出し1本の剣を作り上げる。
「クッ……!」
「先にこの男を攻撃しといて良かった。これでお前に隙ができたからなぁ。兄弟の前で死――」
「ちょっと失礼しますね」
この場の空気に合わない声が聞こえる。
その声の発生場所は、グラファの真後ろだ。
グラファでさえ全く気付かず、驚いて背後を向こうとした時首に大きな衝撃を受けた。
突然のことに受け身を取れず、地面を小さな石のように転がって行く。
「誰だ貴様はぁ!!!」
切った唇から流れる血を拭きながら立ち上がり、突然現れた者に怒号を浴びせた。
「私ですか? 怒鳴る程教えて欲しいなら仕方がありませんね。私はリウス様に使える、そこら辺の悪魔です」
0
お気に入りに追加
1,087
あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。


Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる