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67話 支配者
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上空を見上げれば、グーレとエティラと呼ばれたやつが轟音を響かせながら激しい戦闘をしている。
そういえばグーレは、私はどうしても行かなくてはいけないとか言っていたけど、もうしかして今戦っているやつが目的だったのか?
それもしても、魔王であるグーレを相手にしてもやつは全く負ける気配がしない。
もしかしたらあいつは……
「リウス様……!」
俺の耳に、ずっと探していた声が聞こえた。
その声が聞こえた方を向けば、血で所々赤く染まってしまっている、銀色の毛を靡かせながら、氷結の白狼であるカロスが俺たちに向かって走ってきていた。
だが、何やら後ろをチラチラと伺っている。
「カロス!」
俺もすぐさまカロスに駆け寄り、大怪我を負っている場所に手を当てて治療を開始した。
「リウス様! これくらいの傷ならどうってことありません!」
「駄目だ。それにこのくらいって言えるほどの傷じゃないぞ?相当な怪我のレベルだ」
魔獣の力により、カロスの体は淡い緑の光を放ちながら傷口が塞がっていった。
そんなカロスを見ながら、その場にいた者は次々に声を上げた。
「あ、本物の五大魔獣じゃん」
「まじ!? 俺初めて見た!」
「カロス様。ご無事で何よりです」
ミルマだけしっかりとしている。
「カロス、今の状況を教えてくれるか?」
「もちろんです」
カロスは頷きながら、俺の隣に立つ5人の人物に目をやった。
「ああ、この5人は獣人の国の最高戦力の、覇獣士だ。それで上で殺りあっているのは魔王のグーレだ」
「魔王……なぜ魔王がいるのかは気になりますが、それは後で聞くとします。それで今の状況なのですが……」
そして俺は手短に説明を聞いた。
グーレと上空で戦闘を行なっているやつも、魔王の1人であるということ。
この場に、ギルドリーダーが多く配置されていて、そこそこ戦闘能力は高いこと。
敵側の魔王の仲間のグラファという奴が、カロス達でも倒せないこと。
「それで今は誰が、そのグラファというやつを相手にしているんだ?」
「それが、ギルド序列1位のリーダーである、ヴァミアという者と我と同じ五大魔獣の一角の時操の金鳥、ベルゼルフが戦っています」
「ヴァミア……」
なぜか隣で突然呆然とし出したミルマを見て、カロスは複雑な表情を浮かべた。
「ミルマよ。そのヴァミアという名前に聞き覚えはないか?」
「はい……あります。俺の……死んだはずの俺の妹の……名前です……」
「やはりな。これで確信を持った。ミルマ、今敵と交戦している人物は、お前の妹だ。そしてヴァミアは、我に向かって火怒羅を使ってきた。あの攻撃はお前と妹しか使えないのだろう?」
「はい……! ヴァミアが……生きてる……」
ミルマは瞳から大粒の涙を溢しながら、地面に座って手をついた。
自分の大切な存在が、この世界から消えてしまったどれだけ悲しいだろうか。
この世界から消えたはずの存在が、まだ消えていなかったと知ったら、どれだけ嬉しいだろうか。
俺は、悲しさしか知らない。
「リウス様」
「なんだ?」
「さっきからずっと気になっていたのですが、フェイは何処に行ったのですか?」
「フェイは……」
何と答えれば良いのだろうか。
もう……俺たちのいない、別の場所の行ったのだと……。
俺たちの表情が一気に暗くなったことで察したのか、カロスは一瞬目を閉じて、その後口を開いた。
「全く。フェイは我に散々偉そうな口を叩いていたクセに。我はそこそこ期待していたのだがな」
「カロス様……?」
「残念だ。散々守りたいと言っていたのに、結局守れずに先に逝くとは……情けない……!」
最初、ミルマもカロスがなぜそんな事を言うのか理解出来ていなかったが、今のカロスの表情を見てようやく理解したらしい。
「これだから口だけは困るのだ」
フェイにではなく、カロスは自分自身に言っているのだと。
そういえばグーレは、私はどうしても行かなくてはいけないとか言っていたけど、もうしかして今戦っているやつが目的だったのか?
それもしても、魔王であるグーレを相手にしてもやつは全く負ける気配がしない。
もしかしたらあいつは……
「リウス様……!」
俺の耳に、ずっと探していた声が聞こえた。
その声が聞こえた方を向けば、血で所々赤く染まってしまっている、銀色の毛を靡かせながら、氷結の白狼であるカロスが俺たちに向かって走ってきていた。
だが、何やら後ろをチラチラと伺っている。
「カロス!」
俺もすぐさまカロスに駆け寄り、大怪我を負っている場所に手を当てて治療を開始した。
「リウス様! これくらいの傷ならどうってことありません!」
「駄目だ。それにこのくらいって言えるほどの傷じゃないぞ?相当な怪我のレベルだ」
魔獣の力により、カロスの体は淡い緑の光を放ちながら傷口が塞がっていった。
そんなカロスを見ながら、その場にいた者は次々に声を上げた。
「あ、本物の五大魔獣じゃん」
「まじ!? 俺初めて見た!」
「カロス様。ご無事で何よりです」
ミルマだけしっかりとしている。
「カロス、今の状況を教えてくれるか?」
「もちろんです」
カロスは頷きながら、俺の隣に立つ5人の人物に目をやった。
「ああ、この5人は獣人の国の最高戦力の、覇獣士だ。それで上で殺りあっているのは魔王のグーレだ」
「魔王……なぜ魔王がいるのかは気になりますが、それは後で聞くとします。それで今の状況なのですが……」
そして俺は手短に説明を聞いた。
グーレと上空で戦闘を行なっているやつも、魔王の1人であるということ。
この場に、ギルドリーダーが多く配置されていて、そこそこ戦闘能力は高いこと。
敵側の魔王の仲間のグラファという奴が、カロス達でも倒せないこと。
「それで今は誰が、そのグラファというやつを相手にしているんだ?」
「それが、ギルド序列1位のリーダーである、ヴァミアという者と我と同じ五大魔獣の一角の時操の金鳥、ベルゼルフが戦っています」
「ヴァミア……」
なぜか隣で突然呆然とし出したミルマを見て、カロスは複雑な表情を浮かべた。
「ミルマよ。そのヴァミアという名前に聞き覚えはないか?」
「はい……あります。俺の……死んだはずの俺の妹の……名前です……」
「やはりな。これで確信を持った。ミルマ、今敵と交戦している人物は、お前の妹だ。そしてヴァミアは、我に向かって火怒羅を使ってきた。あの攻撃はお前と妹しか使えないのだろう?」
「はい……! ヴァミアが……生きてる……」
ミルマは瞳から大粒の涙を溢しながら、地面に座って手をついた。
自分の大切な存在が、この世界から消えてしまったどれだけ悲しいだろうか。
この世界から消えたはずの存在が、まだ消えていなかったと知ったら、どれだけ嬉しいだろうか。
俺は、悲しさしか知らない。
「リウス様」
「なんだ?」
「さっきからずっと気になっていたのですが、フェイは何処に行ったのですか?」
「フェイは……」
何と答えれば良いのだろうか。
もう……俺たちのいない、別の場所の行ったのだと……。
俺たちの表情が一気に暗くなったことで察したのか、カロスは一瞬目を閉じて、その後口を開いた。
「全く。フェイは我に散々偉そうな口を叩いていたクセに。我はそこそこ期待していたのだがな」
「カロス様……?」
「残念だ。散々守りたいと言っていたのに、結局守れずに先に逝くとは……情けない……!」
最初、ミルマもカロスがなぜそんな事を言うのか理解出来ていなかったが、今のカロスの表情を見てようやく理解したらしい。
「これだから口だけは困るのだ」
フェイにではなく、カロスは自分自身に言っているのだと。
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