最強魔獣使いとなった俺、全ての魔獣の能力を使えるようになる〜最強魔獣使いになったんで元ギルドを潰してやろうと思います〜

東雲ハヤブサ

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64話 再会の宴

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 ナイト……なぜ我はこの名前に聞き覚えがあるのだ……。
 一回もナイトという輩とは出会ったこともないのだがな。
 だが何故だろうか。
 あの男の顔を見るだけで、体の奥から今にも溢れそうなほどの怒りが湧いてくる。

 「我は貴様のことなど覚えていない。だが、貴様を殺したくて仕方がない」
 「クフフ、それはいいなぁ。こっちも戦いたくて仕方がないんだよ」
 「それで、貴様の隣にいる奴は誰だ」

 ヘラヘラとした態度をとるグラファとは違い、シワのひとつもないスーツを着用して、短い青髪を靡かせ腰の後ろで手を組む謎の男。

 「黙れ。口の利き方がなってないぞ。五大魔獣如きで……!」
 「なに……」

 五大魔獣であるカロスを見下す発言をした人物に、ヴァミアも驚いたのか、青髪の男に目を見開いた。

 「よく聞け五大魔獣。私は偉大な存在である魔王の一人、エティラ・テンスであるぞ」

 またか。
 なぜ今に限って魔王のような強者が続々と現れるのか。
 いや、今に限ってではなく、今だから、なのだろうけどな。

 「そうか。貴様が偉大な存在であることは十分に分かった。それで、ここに来た目的はなんだ」

 カロスの皮肉を含めた質問に、グラファはクスッと笑いをこぼしながら質問に答えた。

 「そんなの決まってるだろぉ。マジックストーンだ。マジックストーン。ここにあんだろ?」
 「マジックストーンだと……何故貴様がその石のことを知っている」

 カロスはマジックストーンという単語が出たことにより、さらに警戒心を強めて牙を剥いた。

 「はぁ……。それも忘れちまってんのか。まあ、仕方ねぇよなぁ。ていうかそんな事はどうでもいい。ただ、お前らがマジックストーンを潔く出してくれりゃぁ何も問題はない」
 「そうか。我が何を忘れてしまっているのかは分からないが、ここにはないぞ」
 「お前は面白い嘘をつくな。ここに五大魔獣がいて、そして何よりもこの戦場。マジックストーンが関係あるのだろう?」

 酷い。
 奴の勘違いはあまりにも酷すぎる。
 五大魔獣が居ればマジックストーンに関係がある、そんな想像が出来るのか。

 さっきから意味のわからない発言をするグラファを、カロスは内心で馬鹿にした。

 「本当のことを言うなら今のうちだぞ。俺だって荒事はしたく無いんだよ」
 「だから我はさっきから本当の事を言っているのだが?」
 「はぁ……。そうか、なら仕方がないなぁ……」

 グラファは深くため息をつきながら、右手を顔の前まで持ってきた。
 そして……

 パチン!

 指を鳴らして、高い音を奏でた。

 この音、どこかで……

 「反応が遅れているぞ。白狼」
 「なに……!」

 グラファが指を鳴らして、まだ1秒も経っていないのにも関わらずに、カロスの右前方に移動してきていた。
 
 「前もこんな感じで俺にやられなかったかぁ?」

 グラファは空中に浮かんだまま右足を引くと、勢いよくカロスの顔面を蹴り上げ、カロスを後方へ吹き飛ばした。
 
 「がはぁっ……!」
 「カロス!」
 「確かお前も五大魔獣の一角だったな。確か時操の――」
 「止ま――」

 そこまで言いかけ、ベルゼルフは地面に叩きつけられる。
 ただ誰も手を加えていない。
 ベルゼルフは、重力によって叩きつけられているのだ。

 「くぅ……!」
 「お前を最後まで喋らせなければいい。たったそれだけだ」
 「も……ど……」
 「おいおい。喋るなよぉ」

 ニヤッと笑いながら、右腕を前に伸ばして人差し指だけ出して、スッと下に下ろした。

 「く……ぁぁ……!」
 「これでもう喋れないだろう?」
 「氷桜」
 「ん? なんだこれは」

 口内のあらゆる場所が切れて、喋るたびに口から血を流し、そして立ち上がった。

 顎を蹴られたせいで頭がフラフラする……。
 だが……我はこんな事で気絶するわけにはいかない……!

 グラファの周りには、目で捉えることの出来るか出来ないかのサイズの氷が舞っていた。

 「氷桜に囲まれたお前は……ただでは済まないだろうな……」
 「氷桜ねぇ……邪魔」

 グラファは左手を軽く一振りする。
 すると、辺りに浮かんでいた細かな氷は、一瞬にして水となり蒸発していった。

 「こんなちっぽけな攻撃で俺を殺せるとでも思ってんのかぁ? お前はさぁ」

 そう言い放たれた直後、カロスの内臓が抉られるような衝撃が走った。

 「な……に……」

 そして、痛みに耐えることが出来ずにもう一度地面に倒れ込んでしまった。

 「お前は俺には勝てないんだよ。前も今も」

 あぁ……何か我は忘れているような気がする……。
 リウス様に会う前に……何かが起こって……

 「火怒羅」

 後ろの方で攻撃のタイミングを伺っていたヴァミアは、黒き大蛇と共に攻撃を仕掛けた。
 流石はヴァミアと言ったところか。
 グラファも攻撃を躱すのに苦労をしている様子だ。
 
 「なんで? お前に関係ないよね? 俺たちが用があるのは五大魔獣だけなんだけど」
 「貴様を放っておいたら、いつか危険に晒される。だから、ここで殺す」

 ヴァミアが握る剣は、さらに炎の火力を強めて目で捉えることの出来ない速さで斬りかかっていく。

 「だからさぁ……」
 「っ……!」
 
 すぐさま危険を察知して、ヴァミアは素早く後ろに退避する。
 だが……パチン!
 と、音が奏でられる。

 「くそ……!」
 「俺の攻撃からは逃げ切れないよ」

 ヴァミアはグラファから距離をとった、はずなのにすでに退避する後ろで待ち構えていた。

 攻撃をなんとか受け流すために、剣を出すが全く意味がない。
 グラファの打撃は剣を避けて横腹に触れて、体内で大量のエネルギーが暴れ回った。

 「がぁ……!」

 今までに味わったことのない攻撃に、ヴァミアは腹を抱えて膝をついた。

 痛みで声が出ない。
 だけど、絶叫したいほど体が痛い。
 体が動かせない。
 体が動かせない、つまり、死。

 頭の中で勝手に死への道のりが完成してしまう。
 
 どうにかして体を動かさなければ。
 ここで動かずに死んだら……もう二度と会えない……。

 痛みで悲鳴を上げる体を、歯を食いしばることでなんとか黙らせて、近くに落下した剣を持って立ち上がる。

 「フハハ! 本当にか! まだお前は立ち上がるか! 俺はこれほどの強者に囲まれたことがない! 今の俺は今までの人生の中で1番の幸せだ! さあ、再会の宴を続けよう!」

 そうして高々に声を出して、笑った。

 
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