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63話 悪夢再び
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火怒羅、それはミルマとミルマの妹しか使うことのできない技。
それを知っていたカロスは、ヴァミアの攻撃に反応が遅れてしまった。
「止まれ!」
ベルゼルフの力でヴァミアの動きを止めて、ほんの少しだけ時間を稼ぐ。
「何をぼさっとしているのだ! 考え事をしているとこっちが殺されるぞ!」
「っ……! すまない、我としたことが……」
カロスが謝罪をしてすぐさま攻撃を開始するが、どうしてもさっきと同じように攻撃をすることが出来ない。
火怒羅を使うことが出来るということは、ヴァミアがミルマの妹であるという何よりも証拠だ。
なぜ、ミルマの妹が生きていて、そして敵に加わっているのかはわからないが、この場ではヴァミアは紛れもなく敵だ。
それはわかっているのにもかかわらず、どうしても攻撃の手を緩めてしまう。
ヴァミアがミルマの妹だと分かってしまったのもあるが、それよりも、カロスが見たあのヴァミアの悲しげな表情が何よりも攻撃ができない理由だ。
あの顔は、誰かに助けを求めていた……。
だが、あの悲しげな顔の理由を知るまでは、我は何もする事が出来ない。
「私は勝たなくてはいけないのだ」
「こいつ……」
何かを必死に求める目でカロス達を睨むと、黒い炎で作られた大蛇が、鋭い牙を剥き出して攻撃を仕掛けてきた。
「氷桜」
辺り一体に恐ろしいほど細かい氷ばら撒くと、それが次々と連結していき大蛇を囲う。
しかし……
「まさか我の氷桜が効かないとはな……」
連結していった氷が大蛇に触れた途端、捕らえるのではなく逆に溶かされてしまい、すぐさま蒸発していった。
だが、カロスは焦る様子もなく、次の攻撃へと移る。
「氷の剣」
カロスの声と共に、8本の氷剣が作られていき、剣の先を外側に向けた状態でカロスを囲うように空中で止まった。
だが、黒き大蛇はそれでも容赦なく牙を向けてくる。
「この攻撃に耐えられてしまったら……我らに勝ち目はないかもしれないな」
カロスを囲うように空中で止まっていた剣は、カロスが前に踏み込むのと同時に高速で回転を始めた。
そして……
「おお! よくやった!」
大蛇は高速で回転する8本の氷剣のより、首が切り落とされた。
だが、所詮は炎で作られた蛇だ。
その為、どれだけ攻撃を与えようともすぐに回復をしてしまう。
元々生きているわけではないし、大蛇を操るヴァミアをどうにかしなければ、ただこちらが削られていくだけだ。
さて、一体どうするものか……
しかし、ヴァミアは考える時間を与えてはくれない。
先程よりも、数倍火力の増した剣を容赦なく振りかざしてくると、どれだけ氷で防御しようとも、相当な熱が伝わってきてしまう。
「ミルマの事を考えていては我らが負けてしまうな……。クフフ……なら我はあれを使うのみだ。許せ、ミルマよ」
カロスはあることを決意し、獰猛な顔をヴァミアに向けて笑った。
それに危機感を覚えたのか、ヴァミアは急いで攻撃をやめると、地面を蹴って後方に退避した。
「ヴァミアよ。お前は逃げたとしても無駄だ。これを使えば我も、お前も、共に滅びる」
決意をあらわにした恐ろしく、優しき目は、血が溢れるように赤く染まっていき――
「は? なぜだ!? なぜ私の幕が破壊されていくのだ!」
「なに……!」
完全にヴァミアしか捉えていなかったカロスは、幕が破壊されていっているなど気付く事もなかったが、ベルゼルフの悲鳴に近いような声でようやく気付き、上空を見上げた。
「カロス! これお前がやったのか!?」
「我ではない。破壊できない事もないが、する必要が無いだろう?」
「確かに……ならお前か!」
金髪の髪を靡かせながら、少し離れた場所に退避したヴァミアを指さした。
「私じゃない」
「あ……無視されるかと思ってたけど……」
幕が破壊されるというのは、ヴァミア達にとっても予想外の出来事なのか、カロス達を経過しながら辺りを警戒していた。
「誰がやったのか調べ――」
「そんな必要はない。やったのは、俺だ。久しぶりだなぁ。氷結の白狼」
突如、上空から声が聞こえ、もう一度上を見上げるとさっき確認した時はいなかった、見覚えのない二人の姿があった。
二人から溢れ出る異様な雰囲気。
そして戦わずとも感じる圧倒的強者の存在。
だがカロスは、そんな事よりも上空に浮かぶ一人の男が放った言葉に引っかかった。
「久しぶりとはどういう事だ?」
「マジかぁ。俺のこと忘れちまったかぁ。でも仕方がないよな。俺がやったんだからなぁ」
「お前が我に何を――」
「なら改めて自己紹介をしようか。
俺の名前はグラファ・ニックだ。確か前は……ナイトって名乗ったかな」
それを知っていたカロスは、ヴァミアの攻撃に反応が遅れてしまった。
「止まれ!」
ベルゼルフの力でヴァミアの動きを止めて、ほんの少しだけ時間を稼ぐ。
「何をぼさっとしているのだ! 考え事をしているとこっちが殺されるぞ!」
「っ……! すまない、我としたことが……」
カロスが謝罪をしてすぐさま攻撃を開始するが、どうしてもさっきと同じように攻撃をすることが出来ない。
火怒羅を使うことが出来るということは、ヴァミアがミルマの妹であるという何よりも証拠だ。
なぜ、ミルマの妹が生きていて、そして敵に加わっているのかはわからないが、この場ではヴァミアは紛れもなく敵だ。
それはわかっているのにもかかわらず、どうしても攻撃の手を緩めてしまう。
ヴァミアがミルマの妹だと分かってしまったのもあるが、それよりも、カロスが見たあのヴァミアの悲しげな表情が何よりも攻撃ができない理由だ。
あの顔は、誰かに助けを求めていた……。
だが、あの悲しげな顔の理由を知るまでは、我は何もする事が出来ない。
「私は勝たなくてはいけないのだ」
「こいつ……」
何かを必死に求める目でカロス達を睨むと、黒い炎で作られた大蛇が、鋭い牙を剥き出して攻撃を仕掛けてきた。
「氷桜」
辺り一体に恐ろしいほど細かい氷ばら撒くと、それが次々と連結していき大蛇を囲う。
しかし……
「まさか我の氷桜が効かないとはな……」
連結していった氷が大蛇に触れた途端、捕らえるのではなく逆に溶かされてしまい、すぐさま蒸発していった。
だが、カロスは焦る様子もなく、次の攻撃へと移る。
「氷の剣」
カロスの声と共に、8本の氷剣が作られていき、剣の先を外側に向けた状態でカロスを囲うように空中で止まった。
だが、黒き大蛇はそれでも容赦なく牙を向けてくる。
「この攻撃に耐えられてしまったら……我らに勝ち目はないかもしれないな」
カロスを囲うように空中で止まっていた剣は、カロスが前に踏み込むのと同時に高速で回転を始めた。
そして……
「おお! よくやった!」
大蛇は高速で回転する8本の氷剣のより、首が切り落とされた。
だが、所詮は炎で作られた蛇だ。
その為、どれだけ攻撃を与えようともすぐに回復をしてしまう。
元々生きているわけではないし、大蛇を操るヴァミアをどうにかしなければ、ただこちらが削られていくだけだ。
さて、一体どうするものか……
しかし、ヴァミアは考える時間を与えてはくれない。
先程よりも、数倍火力の増した剣を容赦なく振りかざしてくると、どれだけ氷で防御しようとも、相当な熱が伝わってきてしまう。
「ミルマの事を考えていては我らが負けてしまうな……。クフフ……なら我はあれを使うのみだ。許せ、ミルマよ」
カロスはあることを決意し、獰猛な顔をヴァミアに向けて笑った。
それに危機感を覚えたのか、ヴァミアは急いで攻撃をやめると、地面を蹴って後方に退避した。
「ヴァミアよ。お前は逃げたとしても無駄だ。これを使えば我も、お前も、共に滅びる」
決意をあらわにした恐ろしく、優しき目は、血が溢れるように赤く染まっていき――
「は? なぜだ!? なぜ私の幕が破壊されていくのだ!」
「なに……!」
完全にヴァミアしか捉えていなかったカロスは、幕が破壊されていっているなど気付く事もなかったが、ベルゼルフの悲鳴に近いような声でようやく気付き、上空を見上げた。
「カロス! これお前がやったのか!?」
「我ではない。破壊できない事もないが、する必要が無いだろう?」
「確かに……ならお前か!」
金髪の髪を靡かせながら、少し離れた場所に退避したヴァミアを指さした。
「私じゃない」
「あ……無視されるかと思ってたけど……」
幕が破壊されるというのは、ヴァミア達にとっても予想外の出来事なのか、カロス達を経過しながら辺りを警戒していた。
「誰がやったのか調べ――」
「そんな必要はない。やったのは、俺だ。久しぶりだなぁ。氷結の白狼」
突如、上空から声が聞こえ、もう一度上を見上げるとさっき確認した時はいなかった、見覚えのない二人の姿があった。
二人から溢れ出る異様な雰囲気。
そして戦わずとも感じる圧倒的強者の存在。
だがカロスは、そんな事よりも上空に浮かぶ一人の男が放った言葉に引っかかった。
「久しぶりとはどういう事だ?」
「マジかぁ。俺のこと忘れちまったかぁ。でも仕方がないよな。俺がやったんだからなぁ」
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