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58話 魔王
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「ま、裏切り者も殺せたことだし、お前達もここで死んでもらうぜ」
「えー、何言ってんの。死ぬのは君たちだよ?」
「そうですよ。あなた達に負けるほど僕たちは弱くはありませんが」
マッドの煽りに頭にきたのか、不満そうな顔をしていたシェビーとクッカが反論をした。
「黙れ雑魚どもが。お前達は何千人という敵に数に囲まれているんだぞ。さらに、今は問題が発生して本陣と合流することができないが、向こうには万を超える仲間がいる。だから、お前たち雑魚はどうせ死ぬ――」
「おい……」
「あぁ?」
これはまずい。冗談抜きでまずい。
ある人物の一言で、一気に空気に圧がかかり、敵兵士は怯える様子を見せた。
だが、マッドだけは全く怯える様子はない。
それだけ、自分の力に自信を持っているのだろうか。
「なんだ貴様。お前みたいな雑魚が俺を殺せると思ってんのか?」
「なぁ……お前は誰に向かって雑魚と言っているのかわかっているのか?」
「はぁ?何言ってんだよ。雑魚に向かって雑魚って言ってるんだろうが。ガハハハハ……は……?」
マッドはさらに俺たちを煽って、どこまでも響くような声で大笑いをした途端、俺達を囲んでいた兵士達の首が全て吹き飛び、辺り一面に赤き液体を飛び散らかした。
「お前……なにを……」
「さて、もう一度聞こうか。お前は誰に向かって雑魚と言ったんだ?」
「雑魚……雑魚……」
「そうか。私の質問に答えないのか。なら死ね」
怯えきって全く動かなくなってしまった弓を握る兵士に、血を浴びて赤く染まった顔を不気味な笑顔で飾りながら、ゆっくりとグーレは近づいていった。
しかし、あれだけ強気でいた者を一瞬で黙らせるとは。さすが魔王だ。
それにしても、魔王の力をこんなに側で見るのは初めてだったな。
一瞬で敵を葬り去る斬撃。
一体どのようにしてあの斬撃を繰り出しているのか、俺には全く理解が出来なかった。
「お前に利用価値はない。さらばだ」
全く反抗をしない頭に、グーレは優しく手を乗せると、跡形も残らずに四方八方へと吹き飛んでいった。
「さて、早く行くとしよう。ファイアーウルフ達の救出に」
顔はさらに赤く染まり、緑の髪さえも、大量に浴びた血のせいでよくわからない色に変色してしまっていた。
どちらかと言えば汚い色になってしまった方だ。
だが、俺はそんな魔王をなぜか美しいと感じてしまった。
「どけどけゴミどもーー!!!」
「さっさと消えていなくなれー!」
そんな物騒な言葉を吐きながら暴れまくっているのは、やはりシェビーとカイザの2人だ。
ちなみに他の仲間達は、特に暴れることもなく俺の後ろをついて歩いてきていた。
「私たちの出番はないようですね。獣人のあの御二方で十分なようです」
「そうみたいだな。リウス様に火怒羅を見ていただきたかったのに」
ミルマ達はどうやら少し不満のようだが、どうせ後で嫌でも戦うことになるのだし、ここは我慢してもらおう。
それにしても、獣人の選ばれし者というだけあり、敵の兵士が身に纏う鎧でさえもたった一撃で粉砕してしまい、そのまま腕が体を貫通してしまったりもしていた。
最初の方は、俺たちを殺そうと剣を構えて走ってきていた敵兵士達だったが、今では逆の立場になってしまっていた。
適当に、逃げている敵を捕まえては情報を聞き出して、その後はゼーラが、「お腹が空いてしまいまして」なんてことを言って、敵兵士の魂を吸い取っていた。
「や、やめてくれぇ~!」
「黙れカスが!お前らはたった2人の獣人に負けているんだぞ!よくもまぁそんな戦力で俺たちの獣人の国に戦争を仕掛けようと思ったもんだな!」
「あぁ!あいつを助けに行かないと――ギャァッ!」
「はいまた1人~さあ!私はまだ戦い足りないぞ!」
それにしても、覇獣士は本当に頼もしいな。
俺が思っていた以上の覇獣士の活躍をしてくれるおかげで、力を余してカロスの元へ行けそうだ。
でも、今の現状を知らない人に見せたら……どっちが悪なのかわからないな……。
とは言っても戦争というものはそういうものだから仕方がないな。
どちらも正義でどちらも悪。
どちらも正解ではないが、どちらとも不正解でもない。
だから戦争は今も昔もなくならないのだ。
「ここか?」
怯える兵士を捕まえて、情報を聞き出した結果、今にも崩れてしまいそうな洞窟に到着した。
「暗くて何も見えないな。もっと奥に――あれ?」
なんで体が前に進まないんだ?
どれだけ力を入れても体が跳ね返されてしまう。
もしかして結界か?
「何をやっているのだ。そこをどけ」
グーレは俺を後ろに下がらせると、手に赤く丸い物体を出現させると、洞窟に向かって撃ち込んだ。
「ちょっ――」
「安心しろ。ただ結界を破壊しただけだ。しかし案外まともな結界だったな。恐らくあの弓使いが張ったのだろう」
まともな結界を張れるってことは、そこそこの実力者だったってことだろ。
そんなやつを一瞬で倒してしまう魔王は……やっぱり恐れるべき者だな。
「何をしている。さっさと行くぞ」
結界を一瞬で破壊してしまうグーレに、魔王だと分かりながらも呆然としてしまっていた俺たちに、早く進むように促すような声をかけてきた。
「あ、あぁ、早く行かないとな」
そして俺達は、星の明かりも届かない洞窟の中を進んでいくのだった。
「えー、何言ってんの。死ぬのは君たちだよ?」
「そうですよ。あなた達に負けるほど僕たちは弱くはありませんが」
マッドの煽りに頭にきたのか、不満そうな顔をしていたシェビーとクッカが反論をした。
「黙れ雑魚どもが。お前達は何千人という敵に数に囲まれているんだぞ。さらに、今は問題が発生して本陣と合流することができないが、向こうには万を超える仲間がいる。だから、お前たち雑魚はどうせ死ぬ――」
「おい……」
「あぁ?」
これはまずい。冗談抜きでまずい。
ある人物の一言で、一気に空気に圧がかかり、敵兵士は怯える様子を見せた。
だが、マッドだけは全く怯える様子はない。
それだけ、自分の力に自信を持っているのだろうか。
「なんだ貴様。お前みたいな雑魚が俺を殺せると思ってんのか?」
「なぁ……お前は誰に向かって雑魚と言っているのかわかっているのか?」
「はぁ?何言ってんだよ。雑魚に向かって雑魚って言ってるんだろうが。ガハハハハ……は……?」
マッドはさらに俺たちを煽って、どこまでも響くような声で大笑いをした途端、俺達を囲んでいた兵士達の首が全て吹き飛び、辺り一面に赤き液体を飛び散らかした。
「お前……なにを……」
「さて、もう一度聞こうか。お前は誰に向かって雑魚と言ったんだ?」
「雑魚……雑魚……」
「そうか。私の質問に答えないのか。なら死ね」
怯えきって全く動かなくなってしまった弓を握る兵士に、血を浴びて赤く染まった顔を不気味な笑顔で飾りながら、ゆっくりとグーレは近づいていった。
しかし、あれだけ強気でいた者を一瞬で黙らせるとは。さすが魔王だ。
それにしても、魔王の力をこんなに側で見るのは初めてだったな。
一瞬で敵を葬り去る斬撃。
一体どのようにしてあの斬撃を繰り出しているのか、俺には全く理解が出来なかった。
「お前に利用価値はない。さらばだ」
全く反抗をしない頭に、グーレは優しく手を乗せると、跡形も残らずに四方八方へと吹き飛んでいった。
「さて、早く行くとしよう。ファイアーウルフ達の救出に」
顔はさらに赤く染まり、緑の髪さえも、大量に浴びた血のせいでよくわからない色に変色してしまっていた。
どちらかと言えば汚い色になってしまった方だ。
だが、俺はそんな魔王をなぜか美しいと感じてしまった。
「どけどけゴミどもーー!!!」
「さっさと消えていなくなれー!」
そんな物騒な言葉を吐きながら暴れまくっているのは、やはりシェビーとカイザの2人だ。
ちなみに他の仲間達は、特に暴れることもなく俺の後ろをついて歩いてきていた。
「私たちの出番はないようですね。獣人のあの御二方で十分なようです」
「そうみたいだな。リウス様に火怒羅を見ていただきたかったのに」
ミルマ達はどうやら少し不満のようだが、どうせ後で嫌でも戦うことになるのだし、ここは我慢してもらおう。
それにしても、獣人の選ばれし者というだけあり、敵の兵士が身に纏う鎧でさえもたった一撃で粉砕してしまい、そのまま腕が体を貫通してしまったりもしていた。
最初の方は、俺たちを殺そうと剣を構えて走ってきていた敵兵士達だったが、今では逆の立場になってしまっていた。
適当に、逃げている敵を捕まえては情報を聞き出して、その後はゼーラが、「お腹が空いてしまいまして」なんてことを言って、敵兵士の魂を吸い取っていた。
「や、やめてくれぇ~!」
「黙れカスが!お前らはたった2人の獣人に負けているんだぞ!よくもまぁそんな戦力で俺たちの獣人の国に戦争を仕掛けようと思ったもんだな!」
「あぁ!あいつを助けに行かないと――ギャァッ!」
「はいまた1人~さあ!私はまだ戦い足りないぞ!」
それにしても、覇獣士は本当に頼もしいな。
俺が思っていた以上の覇獣士の活躍をしてくれるおかげで、力を余してカロスの元へ行けそうだ。
でも、今の現状を知らない人に見せたら……どっちが悪なのかわからないな……。
とは言っても戦争というものはそういうものだから仕方がないな。
どちらも正義でどちらも悪。
どちらも正解ではないが、どちらとも不正解でもない。
だから戦争は今も昔もなくならないのだ。
「ここか?」
怯える兵士を捕まえて、情報を聞き出した結果、今にも崩れてしまいそうな洞窟に到着した。
「暗くて何も見えないな。もっと奥に――あれ?」
なんで体が前に進まないんだ?
どれだけ力を入れても体が跳ね返されてしまう。
もしかして結界か?
「何をやっているのだ。そこをどけ」
グーレは俺を後ろに下がらせると、手に赤く丸い物体を出現させると、洞窟に向かって撃ち込んだ。
「ちょっ――」
「安心しろ。ただ結界を破壊しただけだ。しかし案外まともな結界だったな。恐らくあの弓使いが張ったのだろう」
まともな結界を張れるってことは、そこそこの実力者だったってことだろ。
そんなやつを一瞬で倒してしまう魔王は……やっぱり恐れるべき者だな。
「何をしている。さっさと行くぞ」
結界を一瞬で破壊してしまうグーレに、魔王だと分かりながらも呆然としてしまっていた俺たちに、早く進むように促すような声をかけてきた。
「あ、あぁ、早く行かないとな」
そして俺達は、星の明かりも届かない洞窟の中を進んでいくのだった。
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