最強魔獣使いとなった俺、全ての魔獣の能力を使えるようになる〜最強魔獣使いになったんで元ギルドを潰してやろうと思います〜

東雲ハヤブサ

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50話 ゼーラ

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 俺の視線の先では、さっきまで一緒にいた人物が獣人の国の兵士達に囲まれていた。
 兵士達はゼーラに剣や槍を構えて警戒し、今にも戦闘が始まりそうな雰囲気だった。

 「貴様!こんなことをして許されると思っているのか!」

 ゼーラの周りの建物を激しく損壊し、さっきの爆発に巻き込まれたのか傷だらけで倒れている兵士もいた。

 あいつ何やってんだよ……。
 ただでさえ敵が多い状態なのに、さらに増やしやがったな……。
 あれ?ていうか、なんでゼーラはこんなところにいるんだ?
 様子を見にいったんじゃないのか?

 「おい!なんとか言ったらどうなんだ!」
 「うるさいですね。私が近づいたら門があいて勝手に連行してきたではないですか。そんなことされたら誰だって少しくらい抵抗はするでしょう」
 
 ゼーラは、少し離れた場所から見てもわかるくらい大袈裟にため息をついて、右手を顔に当てた。

 「何が少しくらいだ!こんなに建物を破壊しやがって!」
 「そんなことは知りませんよ。私にしたらこの国の建物が壊れようがどうだっていい。それより、早く私に謝罪したらどうです?でないと、もっと酷い目に遭わせますよ」
 「くっ……!」

 怒鳴り声を上げていた兵士は、ゼーラの強烈な邪悪の笑顔にたじろぎながらも構える剣を下ろすことはしなかった。

 俺もこのまま見てるわけにはいかないな。
 落ち着くのを待っていようと思ったが、そんなことは絶対にないだろうし。
 こうなったら俺が止めに入って――

 「貴様!このような行為をしたことを後悔させてやる!お前たち!あいつを殺せぇ!」
 「結局人頼みですか」

 一人の兵士が指示を出すと、周りで武器を構えて待機していた者達が、一斉にゼーラに向かって襲いかかった。

 「数が多ければいいってわけではありませんよ?」

 邪悪な笑顔を保ったまま左腕を横に軽く振ると、ゼーラに襲いかかった兵士たちは壁や野次馬の方へ吹き飛ばされていった。

 「これで分かったでしょう?貴方達では私をどうにかすることは不可能だと。命を取らなかっただけ感謝してくださいね」
 「ふざけたことを……」
 「それでは私は行きます。随分と待たせてしまったお方がいるので」
 「ならそいつをここに呼んでこい!お前のしたことの責任を取らせてや――」
 「俺だ」

 俺がそう声を上げると、周りにいた獣人達の視線は一斉に俺に集まり、不思議そうに俺を見つめてきた。

 「おお、リウス様」
 「おお、とか言ってる場合じゃないぞ。お前こんなところで何をやってるんだ」
 
 なぜこんなことをしたのか問いただすために、俺はゼーラに詰め寄った。

 「はい、実はこの国が安全か確かめようと門の近くまで行ってみたのですが、門が開いたと思ったら急に連行されてしまったのです。だから少し抵抗してみました」
 「少し抵抗って……」

 建物を破壊した挙句、兵士を大勢吹き飛ばしておいて少しの抵抗っていうところに引っかかるが……今はそんなことを気にしてる場合ではない。

 俺は、さっきまで怒号を飛ばしていた兵士に目線を移して質問をした。

 「なんでお前達はコイツを連行したんだ?」
 「お前か?お前がその悪魔の召喚主か?」
 「俺は召喚主ではない」
 「とぼけるな!召喚主でなかったらそんな悪魔が従うわけがないだろ!一体その悪魔を使ってこの国に何をする気だ!」

 なんでコイツはすぐにキレるのだろうか。
 全く話にならない。

 「俺はコイツの召喚主じゃなくて契約者だ。それに、この国に危害を加えるつもりはない」
 「嘘をつくな!この国に危害を与える者は我が断じて許さん!貴様は地獄に堕ちるがいい!」

 そして俺のことをすごい形相で睨んだ挙句、剣を引き抜き構えてきた。

 なぜ何もしないと言ったのに、まるで俺が罪人みたいになっているんだ。
 本当に頭のおかしいやつだ。

 「なんだ?俺を殺すつもりか?」
 「そんなことを言わずともわかるだろう!さっさと死ねぇ!!!」

 全力疾走で俺に接近してくると、構えていた剣を上に持ち上げ振り下ろしてきた。

 こいつ本気で俺を殺すつもりなんだな。
 なら……

 「俺もお前を殺してもいいってことだよな」

 俺の腕は思うがままに変形していき、宝石のように輝く腕に変化した。
 俺に向かって振り下ろされた剣をかわすと、相手の腹に向かって魔獣の体に変化した腕を打ち込んだ。

 別に人間の体でも魔獣の力を使うことができるようになったけど、やっぱり実際に腕を変化させた方が威力が増すな。

 「がぁっ……!」

 小さな傷がいくつか入っていた兵士の防具は、今の攻撃によって鈍い音を立てながら砕け散り、使用者もろとも吹き飛んでいった。

 兵士はレンガで造られた家の壁に激突し、意識が朦朧としているようだった。

 「キャァァァァーーーーーーー!!!」
 「おい!誰か他の兵士を呼んでこい!」
 「鍛えられた兵士が一瞬で……」
 「あのバケモノ……一体どんな力を持っているんだ」
  
 俺がこいつを攻撃したことで、野次馬がさらに騒がしくなってしまった。
 さらには、俺がこの国を滅ぼしにきた悪魔だ、とか騒ぎ出し始めてしまった。
 
 「どうした?もう終わりか。威勢が良かった割には弱いんだな」

 よろけながら立ち上がる兵士に近寄って、軽く煽ってみた。

 「やはりお前はこの国に危害を加える者――」
 「何言ってんだ。お前が先に攻撃を仕掛けて来たんだろう」
 「そうだな。この国に危害を加える者を排除することが任務だからな。だから貴様を攻撃したまでだ」
 「そうか。それよりこの国の王の場所を教えろ」
 「教えるわけねぇだろ」
 
 残念だったな、と言いたげな表情をしてきた兵士は俺に向かってぺっと唾を吐いてきた。

 「ハハハハッ!」
 「もういい。言わないなら殺す」

 まあ、実際には殺さないがな。怖がって王の居場所を教えてくれたら――

 「やめろ」
 
 兵士が発した声ではなく、また別の方向から聞こえた。
 
 「その兵士から離れろ」

 声がする方向を向くと豪華な服を纏い、ただならぬ気配を発する獣人が立っていた。








その頃、時操の幕が完成されたことにより、幕内では混乱が起こっていた。

 「あと少しで出れたのに!」
 「くそ!なんとかして破れないのか!」
 「さまざまな魔法を使っていますが、幕を破ることができません!」

 完成する前に脱出を試みていた兵士達は、どうにかして幕内から出る方法を探っていた。

 だが、そんな兵士たちを止める者がいた。

 「無駄だよ、君たち。あきらめな」

 幕内に響き渡る声、その正体はこの幕を完成させた者――ベルゼルフのものだった。

 「この幕は君たちみたいな雑魚には破壊できないよ。もしかしたら君には出来るかもしれないけど」

 ベルゼルフは声高々にそう言うと、ヴァミアを片目で見た。

 「この幕に閉ざされた場所は時間の流れが遅くなる。よって幕内で1分は幕外の約1時間になる」
 「ベルゼルフよ、助かったぞ」
 「お礼なんかいらないな。借りを返したまでだ」
 「そうか。でもこれで足止めが十分に出来る」

 そして、ヴァミア達と五大魔獣との戦闘が開始された。

 
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