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25話 戦闘準備
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カロスに特訓され、気絶していたファイアーウルフ達が目が覚め出した頃、男が慌てて走ってきた。
「緊急事態!戦えるものは直ちに陣形を組み戦闘準備にかかれ!」
男の緊迫した声を聞き、まだ回復もしていないまま戦闘準備が始められた。
「なんだ!一体なにが起きたんだ!」
「敵の数はどのくらいなんだ!?」
他のファイアーウルフ達が準備をしながらも戦闘準備を促した男に質問攻めをしていた。
「恐らく敵はリウス様が仰っていたギルドだと思われる」
「それで、敵の数は!?」
男は質問されると、大きく息を吸い、重い口を開いた。
「敵の数は……約五万……」
その言葉を聞いた瞬間、準備をしていた者の体が固まった。
少し離れた場所で特訓をしていたカロス達は、騒ぎを聞きつけて急いで男の元に駆けつけた。
「状況を伺ってもいいかしら?」
異様な雰囲気に心臓の鼓動が高鳴り、少し早口になるフェイに男は状況を説明した。
「五万の敵……相手は20位から11位のギルドだけではなかったのかしら?」
その問いに、男は答えず、代わりにカロスが答えた。
「どうやら違うようだな。五万ともなれば軍を動かしたに違いない。それにいくらなんでも進行が早すぎる。本来ならあと2日はあったはずだ。これは……国で何かあったのかもしれないな……。こっちの戦力はどのくらいだ?」
「約二百くらいよ」
カロスはこの状況をどう解決しようか脳をフル回転させ考えていた。
こっちの戦力は二百……。どう考えても少なすぎる。五万の数をどうにかできるわけがない。だが逃げてもどうせ追いつかれる。だから、今何とか戦えない者を逃すために時間を稼がなければならない。だができるだけ被害は最小限に抑えたい。今ここで出せる一番の策は……
「我はここに残りあいつらの足止めをする。そのうちにフェイ達は逃げろ」
「は!?なにを馬鹿なことを……!」
「俺だって戦えます!だから……」
フェイに続き、ミルマも戦うことを宣言したがすぐにカロスによって遮られた。
「ダメだ。五万相手に二百。どう考えても数が違いすぎる」
「でも人型の姿で戦えば人数の差はあっても戦うことはできるわ」
カロスの言葉にフェイは一歩も引かず、一緒に戦う意思を示した。
「それでもダメだ。確かに戦力の差は縮まるがそれでも死人が出る。それでもいいのか?」
「それは……」
仲間を誰一人として死なせたくないフェイにとって、カロスの問いに黙ることしかできなかった。
「我は広範囲に氷で攻撃をする。だからお前たちは我にとって足手纏いだ」
「そんな言い方……!」
「この村には避難を優先するべき者が大勢いる。二百以上もな。お前はその者達をどうするつもりだ?」
カロスの問いにしばらく黙り込み、反対の方向を向いた。
「はいはい。わかりましたわ。足手纏いの私達は避難すればいいのね」
フェイは服についた汚れを手で払うと、村で待つ者達へと足を進めた。
「フェイ様……」
「だけど……」
フェイは足を止め、カロスを見ず言葉を発した。
「死ぬのは許さないですわよ。氷結の白狼」
「勿論だ。我の死ぬために行くのではない」
そう言葉を交わすと、二人は反対の方向に歩を進めた。
「緊急事態!戦えるものは直ちに陣形を組み戦闘準備にかかれ!」
男の緊迫した声を聞き、まだ回復もしていないまま戦闘準備が始められた。
「なんだ!一体なにが起きたんだ!」
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他のファイアーウルフ達が準備をしながらも戦闘準備を促した男に質問攻めをしていた。
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「それで、敵の数は!?」
男は質問されると、大きく息を吸い、重い口を開いた。
「敵の数は……約五万……」
その言葉を聞いた瞬間、準備をしていた者の体が固まった。
少し離れた場所で特訓をしていたカロス達は、騒ぎを聞きつけて急いで男の元に駆けつけた。
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異様な雰囲気に心臓の鼓動が高鳴り、少し早口になるフェイに男は状況を説明した。
「五万の敵……相手は20位から11位のギルドだけではなかったのかしら?」
その問いに、男は答えず、代わりにカロスが答えた。
「どうやら違うようだな。五万ともなれば軍を動かしたに違いない。それにいくらなんでも進行が早すぎる。本来ならあと2日はあったはずだ。これは……国で何かあったのかもしれないな……。こっちの戦力はどのくらいだ?」
「約二百くらいよ」
カロスはこの状況をどう解決しようか脳をフル回転させ考えていた。
こっちの戦力は二百……。どう考えても少なすぎる。五万の数をどうにかできるわけがない。だが逃げてもどうせ追いつかれる。だから、今何とか戦えない者を逃すために時間を稼がなければならない。だができるだけ被害は最小限に抑えたい。今ここで出せる一番の策は……
「我はここに残りあいつらの足止めをする。そのうちにフェイ達は逃げろ」
「は!?なにを馬鹿なことを……!」
「俺だって戦えます!だから……」
フェイに続き、ミルマも戦うことを宣言したがすぐにカロスによって遮られた。
「ダメだ。五万相手に二百。どう考えても数が違いすぎる」
「でも人型の姿で戦えば人数の差はあっても戦うことはできるわ」
カロスの言葉にフェイは一歩も引かず、一緒に戦う意思を示した。
「それでもダメだ。確かに戦力の差は縮まるがそれでも死人が出る。それでもいいのか?」
「それは……」
仲間を誰一人として死なせたくないフェイにとって、カロスの問いに黙ることしかできなかった。
「我は広範囲に氷で攻撃をする。だからお前たちは我にとって足手纏いだ」
「そんな言い方……!」
「この村には避難を優先するべき者が大勢いる。二百以上もな。お前はその者達をどうするつもりだ?」
カロスの問いにしばらく黙り込み、反対の方向を向いた。
「はいはい。わかりましたわ。足手纏いの私達は避難すればいいのね」
フェイは服についた汚れを手で払うと、村で待つ者達へと足を進めた。
「フェイ様……」
「だけど……」
フェイは足を止め、カロスを見ず言葉を発した。
「死ぬのは許さないですわよ。氷結の白狼」
「勿論だ。我の死ぬために行くのではない」
そう言葉を交わすと、二人は反対の方向に歩を進めた。
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