上 下
6 / 93

6話 命をかけた戦い

しおりを挟む
 「それでは行きますわよ」

 フェイの声とともに命をかけた戦いが始まった。

 「ハァァァァァァーーー!!!」
 「遅いわよ」

 俺は掛け声とともにフェイに向かって走り出したが俺の目の前から一瞬で姿を消した。

 「どこに...」
 「ここよ」

 そして後ろから激しい衝撃が走った。

 「クッ...!」

 速い……速すぎる……!
 ていうか、どうしたらマジックストーンの力を使えるようになるんだよ!

 「あら? まだその石の力は使わないのかしら? それとも“使わない”んじゃなくて“使えない”のかしらね」

 「さあ、それはどうかグガァッ……!」
 「炎の牙ファイアーファング

 俺は火に包まれながらさらに十メートル後ろに吹き飛ばされた。

 「クゥッ...」
 「もうおしまいかしら?魔獣のお・う・さ・ま」
 「もしかしたらまだ我が主にマジックストーンの力が……魔獣の力が完全に宿っていなかったのか……?」

 「フフフ。もうボロボロね。かわいそうだからこれで終わりにしてあげるわ。炎の槍ファイアーランス

 やばい……このままじゃ負ける……。
 何かいい方法はないのか……。

 フェイの周りに何時十本もの炎の槍が出現した。

 「さようなら。フフフ」

 フェイは笑いながらそう俺に向けて言った。するとフェイの周りにあった複数の炎の槍が俺に向けて一直線に飛んできた。

 「我が主!」

 俺は負けてしまうのだろうか。マジックストーンの力を一切使うことができなかった。

 俺は何をやってもダメなのか?魔法もダメ。剣術もダメ。
 何もかもダメダメダメダメ……。

 今回も結局ダメなのか……。

 いや、ダメでもいい!
 ボロボロになって、カロスにダメなやつだと思われてもいい!

 途中がどんなにカッコ悪くて、どんなにダメダメだったとしても、求めてた結果になれば途中なんてどうでもいい!

 だから俺がどんなにダメでも必ず求める結果にして見せる!

 「俺は絶対に負けない!」

 するとマジックストーンが眩い紫の光を放って俺を包み込んだ。

 「なに!?」
 「これは...!」

 俺が驚いている間に体はどんどん変化していく。

 魔獣に。

 「我が主の体がどんどん変わっていく...。あれがマジックストーンに王と認められた者が得ることができる力、魔獣の力なのか...」
 「こ、これが魔獣の力...」

 俺は光が収まったあとに自分の体を見てみた。腕が太い魔獣の腕になっていた。

 「この腕は雷光虎の...」
 「腕が変わったからなんだっていうのかしら?どうせ私には勝てないのにね」

 俺は思いっきり右腕を前に突き出した。

 すると俺のほうに飛んできていた炎の槍が全て爆発するようにして消えた。

 「なっ...!一体何をして...どこだ!」
 「これはさっきのお返しだ。雷光打撃フラッシュブロー」
 「いつのまに...!」

 俺の右手が大量の電気を帯びながらフェイの顔面に放たれた。

 フェイの身体中にもし人間だったら即死レベルの電気が流れ何十メートルも吹き飛ばしていった。

 炎の槍が爆発した直後に俺は足に力を込めた。すると、魔獣の力のおかげなのか一蹴りだけでフェイの真横に高速で移動し、俺は魔獣の技を放つことができた。

 「フェイ様が……」
 「嘘だろ……」
 「おい! それよりも早く助けに行くぞ!」
 「は、はい!」

 フェイは俺のあの一撃だけですっかり気絶してしまった。

 フェイの配下と思われる者たちはフェイが負けると思っていなかったのか勝負の結果に唖然としながらもフェイを救出に向かった。

 「流石は我が主です」
 「最初から負けそうになっていたけどな。ていうかなんでカロスは俺のことを主って言う……」
 「さっきは悪かったわ」

 おお、もう気絶から目が覚めたのか。早いな。

 「おい、お前はさっき、勝負に負けたら我が主の質問に何にでも答え、口の利き方を変えると言ったな?ならその口の利き方を直したらどうだ?」
 「くぅ……」
 「別に俺への口の利き方なんてなんでもいいって。それよりももう大丈夫なのか?」
 「そんなの大丈夫に決まって……大丈夫でございま、イタッ……」

 全然大丈夫じゃなさそうだな……

 「ちょっと何するのよ」
 「いいから、ちょっと動くな」

 俺はフェイに近づき魔獣の力で傷を癒していった。

 「なんで敵の傷を癒すのかしら? また私と戦いたいのかしら?」
 「敵? もう戦う理由ないんだから敵じゃないだろ」
 「は? 何を言って――」
 「流石は我が主です!」
 「ちょっと待ちな……」
 「じゃあ傷も治ったことだし質問していいか?」
 「え、あ、いいですわよ……」
 「フェイたちはどこで住んでいるんだ?」
 「住んでる場所? 面白いことを聞くのですわね。私たちは森で村を作って暮らしていますわよ」
 「村?」
 「私たちは村で住むときは人間の姿で過ごしていますわ。実際魔獣の姿より人間の姿の方がすごしやすいですからね」

 そうか。ファイアーウルフたちは村で住んでいるのか。

 「そこの村にはすべてのファイアーウルフが住んでいるのか?」
 「いいえ。そんなことはございませんわ。私たちの村に住んでいるのは、ここ付近の地域に生息しているファイアーウルフだけですわ」
 「そうか。わかった」
 「こんな情報を知ってどう致しますの?」
 「いいか、俺がこれから言うことをよく聞け」
 「な、なにかしら」
 「二日以内にここの地域のファイアーウルフたちはすべて殺される」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

リアルフェイスマスク

廣瀬純一
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

アサシンの僕と魔導師のオレが融合した結果〜銀髪美少女の幼馴染と行く異世界漫遊記〜

ティムん
ファンタジー
高校生活を過ごす裏、暗殺稼業をこなすアサシン、奏魔はある日異世界へと転生してしまう。だが転生した体にはもう一つの人格が存在していた。彼の名はソル=ヴィズハイム。世界最高の魔法使いと謳われた『魔導師』その人だ。二人の魂は死を迎えたあと、何故か新しい一つの赤子の体に入ってしまっていた。  一つの体に二つの魂。穏やかで優しいアサシンの奏魔と乱暴で口が悪い魔導師のソルの奇妙な『二心同体』生活が始まった。  彼らの武器は、暗殺術と魔道の融合。 交わるはずの無い二つが交わる時、誰も想像しえないものへと変貌を遂げる。  異世界にて発生したイレギュラーである奏魔とソルは何を成すのか。  幼馴染で驚異的な魔法の才を持つ少女、セリアと共に世界を旅する物語。 ※書き溜めがかなりあるので暫くは一日に複数話投稿します。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

処理中です...