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37話 怪しいピエロ達

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 これは一体……どういう事だ……。
 ハーシュがフネアスの生まれ変わり……?

 「なに驚いた顔してんだよ」

 俺の表情を見て不思議に思ったのか、ジューザラスは顔を覗き込むようにして見てきた。
 
 「もしかして知り合いか?」
 「知り合いもなにも、この人は俺と同じ勇者のハーシュだよ」
 「はぁ!? こいつがさっき話に出てきたハーシュってやつか!?」
 「それは凄い偶然だな」
 「凄い……」

 確かにこれは驚くべき出来事ではあるが、いつまでもそんな事はしていられない。
 ヘルラレンの話が本当だったら、今頃ハーシュは悪魔達に捕らえられているという事だ。
 今すぐ向かわないと!

 「ちょっと待て」

 荷物を急いでまとめて足を動かそうとした瞬間、背後からグラの落ち着いた声に止められた。

 「待つなんてそんな時間はない! もしかしたらハーシュが捕まってるかもしれないのに!」
 「だからこそだ。こういう時こそ焦るな。今はハーシュが本当に攫われたのかを確認しなくてはいけない。ライ、何か良い方法はあるか?」

 俺はそう聞かれて、心臓の鼓動が少しだけ跳ね上がるのを感じた。
 ハーシュがいるかどうかはに行けば判る。
 いずれかは必ず行こうとしていた場所だが、やはり足が重い。
 だが今はそれどころではない。
 今は一刻も早く、ハーシュの無事を確認しないと。

 「俺が昔住んでいた場所、勇者のパーティーハウスに案内するよ」
 


        ◇◆◇◆◇



 俺達は急いで荷物をまとめて緑が広がる草原を後にした。

 今は一刻を争う。
 そのせいからか、俺達は一切会話をすることなく足を進め続けた。
 このまま特に何もなければ、あと少しで着くことが出来る。
 魔獣とかに遭遇しませんように……。

 そう俺が願ったすぐ側から、木の影から出て来た男に声をかけられた。

 「急いでいるところ悪いが、少しばかり止まってもらおうか」

 ああ……こんな時になんだよ……!

 顔はピエロのマスクで覆っていて、男の表情を見ることができない。
 ここは魔獣が出る森にも関わらず、全く装備などを身につけていない。
 だが腰に剣だけは差している。

 いかにも何かありそうな奴だな。
 
 「すいません俺達急いでるんです。なので今は無理――」
 「別にお前がどんな状況であれ構わん。なあ、アングリー」
 「そう。妾は貴様、ライ・サーベルズを排除するのみ。スマイリー、今回は失敗するなよ」

 物音を一切立てることなく太い木の影から現れると、俺達に立ち塞がるピエロ男に向かってそう言った。
 どうやら2人は仲間らしく、仲良くピエロのマスクを顔につけている。
 だがピエロの表情は同じではないようだ。
 アングリーと呼ばれた人物のマスクは怒りを浮かべていて、スマイリーと呼ばれた人物のマスクは笑顔を浮かべている。

 それにしても俺を排除するってどういう事だ……?
 もしかして、これも悪魔達に関係あったりするのか?
 
 「おいてめぇら、さっきから排除だの意味のわかんねぇこと言ってるけどよ、さっさとそこどけよ。俺たちはなぁ、てめぇらみてえな雑魚に構ってる暇はねぇんだよ」

 ジューザラスは一歩前に踏み出ると、首の骨を軽く鳴らしながらピエロ達を睨みつけた。

 どうやら結構お怒りのようだ。
 怒りのオーラが溢れ出している。
 
 「妾達は貴様には用はない。そこをどけ」
 「ああ? てめぇ誰に向かって言ってんのか判ってんのか?」
 「まあいい。邪魔する者は排除するのみ」
 「そうだな。申し訳ないが、お前にも死んでもらおう」
 
 どうやらピエロ達は戦う気満々のようだ。
 だがこの2人はわかっていないだろう。
 今から戦おうとしている相手が、他でもない正真正銘の神だという事を。

 「ライ達は先に行ってろ。俺はこの雑魚共をぶっ殺してやる」
 「やりすぎは……だめ……」
 「そうです。ルーレル様の言う通りです。相手は人間ですから本気でやっては駄目ですよ?」
 
 ルーレルやシェラレイは本気でやらないように言っているが、どうせ元からジューザラスは本気でやるつもりなどないはずだ。
 なんせ、本気でやったらすぐに終わるからな。
 今この瞬間にでも倒せるというのに、それをしないという事はピエロ達をいたぶりたいとか思ってるんじゃないのか? 
 もし本当にそう思ってるんだったら、ピエロ達にはお気の毒にとしか言えない。
 自業自得だが。

 「じゃあここは任せる。俺達が行く場所わからないだろうから、終わったら家に戻っておいてくれ」
 「言われなくてもそうしてらぁ」
 「おいライ・サーベ――」

 俺がこの場から立ち去ろうとするのを見て、ピエロ達は慌てた様子で足を前に出した。
 だが、そこから先へは行かせないというように、ジューザラスはピエロの前に立ち塞がった。

 「てめぇらの相手はこの俺だ」
 「貴様如きで、妾達の相手が務まると思っているのか?」
 「当たり前だろ。目を瞑ってでも勝てる」
 「舐めた事を――」

 少し苛立ったアングリーピエロは、硬く拳を握ってジューザラスに容赦なく放とうとする。
 しかし、それは叶わない。
 なぜなら。

 「ぐぁっ……!」

 アングリーピエロの顔を顔を思い切り掴むと、そのまま地面に向かって叩きつけたからだ。
 その威力は凄まじく、地面に叩きつけられると軽く跳ね上がった。

 あれは痛そうだ。
 あまりやりすぎないと良いんだが、今はピエロ達の心配をしている場合ではない。
 俺には俺にやるべきことがある。
 ハーシュ、頼むから無事でいてくれ。


       ◇◆◇◆◇


 「は……?」

 なんだ?
 何が起きた?
 どうしてこいつは……地面に叩きつけられているんだ……?

 スマイリーピエロの方はジューザラスの動きを追うことができず、頭の中が絶賛混乱中だった。
 
 「何つったってんだよ。次はてめぇの番だぞ」
 
 しかしジューザラスにとって、スマイリーピエロが混乱していようがいまいがどうでもいいのだ。
 ただ殺せればそれでいい。

 「くっ……! 簡単にやられてたまるか! そんなに死にたいなら殺してやろう! 圧縮する魔法クレバロス!」

 圧縮する魔法は、魔法使用者の魔力の大半が持っていかれるかわりに、相手に回復不可能な傷を負わせることが出来る。
 この先何が起こるかわからない状況で、魔力の大半が持っていかれる魔法を使用するのは好ましくはないが、こんな時にそんな事は言っていられない。
 
 今すぎにでもこいつを排除しなければ……!

 スマイリーピエロが使用したクレバロスは、特に失敗することなく発動してジューザラスに襲いかかった。
 襲いかかったのだ。
 襲いかかったはずなのだ。

 「どうして……どうしてお前は立っている!!!」

 魔力が奪われてしまったせいで、足元がおぼつかないスマイリーピエロはなんとか木に寄りかかってそう声を荒げた。

 ジューザラスに向かって。

 「あぁ? 何言ってんだ。俺に何かしたのか? だったら次はこっちの番だなぁ!」

 ジューザラスは顔に狂気の笑みを浮かべながら両手を大きく広げた。
 
 「炎に焼かれて死ねや。クソピエロが」

 すると、ジューザラスを囲うように青い火球が出現し、狂気の笑みをより一層凶悪なものへと変えた。

 
 
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