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21話 光剣の薔薇は咲く

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 飛青竜スリースン、それは空を支配する魔獣だ。
 縄張り意識が高く、そこが飛青竜の縄張りだとは知らずに侵入してしまったものは、逃げることも出来ずに殺される。
 魔獣の中でも知性が高く、罠を仕掛けてもそれに引っ掛かることはまずない。
 それ故、多くの国と冒険者達を困らせて来た。

 そんな相手に、俺達はたった2人で挑むこととなった。

 「なぁ……提案したの俺だが、本当に大丈夫なのか……?」
 「きっと……大丈夫……」

 もうルーレルの頭の中は、卵のことしか考えてないんだろうな。
 
 それにしても今回の相手は厄介かもしれない。
 俺もルーレルも剣を得意とするため、空中でずっと飛ばれたらどうしようもない。
 魔法を使って攻撃することは出来るが、移動速度が速い魔獣に、魔法が当たるかわからない。
 それに、通常の魔法では効かないはずだから、魔力消費の激しい魔法を使用しなければならない。
 
 これは結構やばいかもな……。

 「いた……」
 「どこ?」

 ルーレルが指を指した方向は、巨大な山脈の頂だった。
 確かに何かいるような感じにも見えるが、岩と言われればそう見えなくもない。
 遠くの場所を見えるようになる魔法もあるらしいが、俺は残念ながら使えないため見ることができない。

 「あれって本当に飛青竜か?」
 「間違いない……」
 「じゃああそこまで移動しなくちゃいけないのか……」
 
 はぁ、とついついため息をついてしまった。

 ここから飛青竜がいるところまで、10キロメルほどある。
 あいつと戦う前に、足がやられてしまいそうだ。

 「行くか」
 「大丈夫……」
 「え?」
 「飛青竜をこっちに呼べばいい」

 どうやって呼ぶんだ、と思った直後にルーレルは右腕を上に上げた。

 「光剣の薔薇……」

 ルーレルがそう呟くと、頭上にはいつも俺と戦う時に使うような剣が、100本以上出現して巨大な薔薇の形を作り上げた。
 その剣達は、主の指示を待つ魔獣の如く空中で浮遊していた。

 そして、ルーレルは腕を下げて声を放った。

 「咲け……」

 指示を出された剣達は、空を飛ぶ鳥達を避けて自由に動きながら山脈の頂に向かっていく。
 その姿はまるで、風に靡かれて飛ばされる薔薇の花弁のようだった。

 その金の花弁の集団に気付いたのか、遠くの方から空を揺らすような咆哮が聞こえた。

 あの咆哮は間違いなく飛青竜のものだ。
 ルーレルは本当に見えていたらしい。
 その視力が俺は欲しくてたまらないよ。

 飛青竜は山脈の頂から飛び立つと、己に向かってくる剣達を青い炎で溶かしていった。
 だが、全てを溶かすことが出来ずに、20本以上が硬い鱗を突き破り鮮血を飛び散らせる。

 ルーレルの剣は、あの硬い鱗まで貫いてしまうのか。
 確かあの鱗は、魔生物駆逐砲でも貫くことが出来なかった程の硬さだ。
 魔生物駆逐砲は、国中の科学者を集めて造りあげて失敗に終わったのに、ルーレルは1人で科学者達を超えてしまうとは……流石神だな。

 「ガララァァァァァァァァァァッ!!!」

 今度ははっきりと咆哮が聞こえ、それも俺達の方を向いている。
 わざわざ来てくれるのはありがたいな。

 「本当に来たでしょ……」
 「流石だな。これで足が疲れなくて済む」
 「早く卵欲しい……」

 飛青竜が俺達に向かって来ている今も、ルーレルの頭には卵のことしか頭にないようだ。
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