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第四章 大資本の激突

予期せぬ訪問者

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 それから長いこと、ウィルムは充足感に浸っていた。
 もう深夜と言える時間だったが、居間のソファに座ってぐったりと背をもたれ、先ほどの興奮が忘れられず眠れないでいる。
 しかし、これでギルドに一矢報いることができたのかと考えてみると、よく分からない。
 副店主は、ウィルムにとっては因縁の相手ではあったが、ギルドからしてみれば手駒の一つに過ぎないのだ。
 問題はこれから、どうやってギルドと対峙するかだろう。
 ドラチナス金庫、薬屋フローラ、グレイヴ商会、アルビオン商会と強大な敵を前に、なす術はあるのだろうか。
 ウィルムが一人悶々と頭を悩ませていると、突然家の扉がノックされた。
 
「っ!?」

 ウィルムの心臓が飛び上がる。
 まさかこんな時間に来訪者など考えてもなかったのだ。
 ギルドの刺客でないかとも考えるが、とりあえず玄関に立つ。
 緊張で汗ばむ手でドアノブを握り、ゆっくり扉を開けると、そこに立っていたのは三人。
 それぞれが焦げ茶色のフード付マントで全身を覆い、素性を隠していた。
 ウィルムは思わず飛び退き身構える。

「な、何者だっ!?」

「おや、驚かせてしまったようで申し訳ない」

 緊迫感を感じるウィルムとは対照的な、穏やかで低い声が発される。
 声を発した目の前の男がフードを外すと、現れたのは爽やかな面貌の若い男だった。
 その後ろに控えている二人もフードを外す。マントの前面を少し開いて、軽そうな鉄製の防具に長剣を携えている姿をさらした。
 ウィルムは正面の男をどこかで見たような気がしていたが、どうも思い出せない。
 それに、見覚えのない後ろの二人は武装しているが、雰囲気はハンターのような荒々しいものではなく、洗練された騎士然としたものだ。

「あなた方はいったい……」

「私はドラチナス領主補佐官を務めている『ルーク』、後ろの二人は護衛をしてくれている騎士だ。あなたがウィルム・クルセイドで間違いないね?」

 来訪者の正体に驚きを隠せないウィルムは、目を丸くしてあんぐりと口を開けたまま頷いた。
 領主補佐官と言えば、ウィルムとは縁もゆかりもない超大物だ。
 彼らは、領主の代理で政務を進めたり視察に同行したりと、領主の片腕を務める重鎮で、領内政治を担う文官たちの中から二名が選任されている。
 次期領主候補でもあり、しがない鉱石商からすれば雲の上の人だ。
 そういえば最近、補佐官の一人が交代したという情報が流れていたが、こんなに若い男だったとは驚きだ。
 しかし、そんな大物がお忍びでウィルムの自宅を訪れるなど、ただ事ではない。
 ウィルムが額に冷汗を浮かべながら無言で出方を伺っていると、ルークは苦笑しながら弾むような声で告げた。
 
「そんなに警戒しないでくれ。私はただ、伝えに来ただけなんだから。ギルドと戦っているのは、君だけではないのだとね――」
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