俺は善人にはなれない

気衒い

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〜After story〜

第56話:解呪

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「私を始末するだと?自惚れるなよ、人間」

俺が刀を向けた瞬間、やつから膨大な神気が放たれた。これには高ランク冒険者であってもたとえ下級神であってもまともに浴びてしまえば、ひとたまりもないだろう。しかし、それはあくまでもそのレベルであっての話だ。

「塵となれぇ!!」

超高速で放たれる神の槍。神気も纏っている為、その威力は相当なものだろう。それをただの人間だと思い込んでいる者に放つのだから、こいつは相当イカれていた。

「っ!?」

だが、当たらなければどうということもない。俺は紙一重で神の一撃を躱すと後ろへ回り込んだ。

「い、いつの間に!?」

「お前、分かってんの?外した時点で塵となるのはお前の方なんだぞ。もっと覚悟を持ってやれよ」

「なっ!?に、人間風情が何…………ぐはっ!?」

俺はまだウダウダ言ってくる神にボディブローを決めた。

「お前、馬鹿なの?中級神であるお前の攻撃をただの人間が躱せる訳ないじゃん」

「ぐっ…………うぐあっ!?」

腹を抱えてうずくまった神が再び立ち上がるのを見た俺は今度はただの蹴りを背中にお見舞いした。

「だから、覚悟を持ってやれって言ってんだよ。まさか、自分がこうなるとは思いもしなかったのか?」

「ぐうっ……………何て力だ………………はっ!?まさか、最近になって上級神の方々を倒した者というのは……………」

「何ブツブツ言ってんだよ。言っておくが、お前がしたことの償いはこんなもんじゃ果たせないからな?」

「償い?」

「忘れたとは言わせねぇぞ。クニミツとリョウマの強制転移、パンドラに対する制裁、アカシックへの呪い……………他にも過去、あの世界の多くの者達にしてきたこと」

「………………」

「まぁ、最後の部分は俺にとって、どうでもいい。俺は俺の大切な者達を守れれば、それでいいからな」

「しかし、前者に挙げた者達もお前にとってはそれほど大切ではないはずだろう?なんせ、出会ってそれほど経っていない、ほぼ他人のようなものなのだからな」

「そうだ。そのはずなんだ……………でもな、彼らと接してお前の話を聞いているうちに」

俺は気が付けば、右手に持った刀を強く握り締めて、神の眼前へと突きつけていた。

「なんか、ムカついてきたんだよ」

「……………人間とは不可解な生き物だな………………いや、お前は…………お前達はもう人間ではないのか」

「無駄話はいいから、とっとと俺に掛けた呪いを解け」

「私が生きているうちは無理だ。お前に掛けた呪いもあの世界への悪影響も私が死なない限り、続いていく。だから、私を殺………」

「はい、さよなら」

俺は神が言い終わらない内にその首を刀で落とした。あまりにも一瞬のことだったからか、痛みすらも感じず叫び声も上げなかった。

「……………」

「どうです?何か変わった感じしますか?」

「そうだな……………何かが身体の中から抜けていったような感じがあるな」

「でも、わざわざ神を殺さずとも自分で解呪できたのではありませんこと?なんせ、今のシンヤさんは最高神ですもの」

サラの質問は単なる疑問というよりも確認の為に一応訊いているというものだった。俺はそんなサラの軽口に不敵な笑みを見せるとこう言った。

「言っただろ?こいつにはムカついてるって」

その直後、神の身体は淡く光りながら消滅していったのだった。

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