俺は善人にはなれない

気衒い

文字の大きさ
上 下
399 / 416
〜After story〜

第41話:神社

しおりを挟む




「………………」

最後の金鎧がある場所は俺が元いた世界にあった神社と瓜二つだった。結界を通り抜けた直後、鳥居を潜り、長い石段を登り切ると目の前には参道が続いていた。その先には本殿があり、そこに辿り着くまでに手水舎・灯籠が脇を固め、他にも社務所や絵馬掛け、狛犬などが俺達を出迎えてくれた。本来の神社ならば、色々と作法があるのだろうが、そんなものは知ったことではない。俺達は他のものには目もくれず、真っ直ぐと本殿を目指した。そうして辿り着いた本殿だが、その目の前には賽銭箱があり、鈴のついた紐までもがぶら下がっていた。どうやら、ご丁寧に本来の神社をここまで忠実に再現してくれているらしい。まぁ、はっきり言って、ありがた迷惑だが。

「そなたらがお客人か……………久しいのぅ」

そんな中、本殿に座禅を組んで座っていた見た目が仙人のような爺さんが開口一番にそう言ってきた。

「カ~ッ!!ワシはまだまだ爺さんと呼ばれる歳ではないわ!!」

「んじゃ、ジジイ」

「余計、酷くなっとるわ!!ってか、悪口じゃろ、それ」

変なジジイはそう言うと"よっこらせっ"と呟きながら、組んでいた足を元に戻そうとした……………その瞬間、

「あだぁ~~~っ!!!ワシとしたことが!!」

「どうしたんだ?」

何故か、辛そうな顔でのたうち回るジジイを冷たい目で見下ろしながら、俺は質問した。

「あ、足が痺れてしもうたんじゃ!!そ、そなたら、誰でもいいから、肩でも貸してくれんかの?」

「「「「「あ、無理」」」」」

「そ、そんなぁ~~~!!!」

こうなるのなら、何故座禅など組んでいたんだ?もしかして、カッコいい登場でもしたかったのか?まぁ、どちらにせよ……………

「あた、あた、あた、いで~~~っ!!!」

変なジジイだ。






―――――――――――――――――――――





「そなたらの狙いは分かっておる……………金鎧じゃろ?」

まるで先程のことなどなかったかのように振る舞うジジイ。生まれ変わってもこいつにだけはなりたくないが、その厚い面の皮だけは少しだけ羨ましいとも思った。

「随分な言われようじゃな」

そして、今更心の中が読まれていることぐらいでは驚かない。このジジイならば、そのぐらいのことはやってのけそうな気がしたからだ。

「分かってて何故、悪口言うの!?」

「おい、ジジイ。とっとと隠してるもん寄越せ」

「まるでやり口がチンピラじゃの」

ジジイは軽くため息をつくとこう言った。

「その前にまずは自己紹介からじゃ。ワシの名は"アカシック"。この本殿に住まう者じゃ」

「俺はシンヤ・モリタニ、冒険者をしている。そんでこいつらは俺の仲間達だ。よろしく」

「おぉ、よろしくのぅ」

「色々と無礼を済まなかったな」

「いいんじゃよ、反省しておれば」

「じゃあ、反省してるから、金鎧をくれ」

「そなた……………相変わらず、凄いのぅ」

初対面なはずなのにこの爺さん……………アカシック相手だとこれだけの冗談が言えてしまう。その理由は単純明快だった。

「凄くないだろ。なんせお前が俺達を受け入れてくれることは分かってた。たとえ俺がどれだけ失礼な態度を取ろうともな」

「ほぅ?」

アカシックは試すような顔で俺を見つめてくる。そんなアカシックへ俺は自信満々にこう言い放った。

「お前だろ?………………俺の夢に出てきた奴は」





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

処理中です...