俺は善人にはなれない

気衒い

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〜After story〜

第35話:バカンス

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3つ目の金鎧を求めて、俺達がやってきたのはとある海岸だった。押し寄せる波の音と海独特の匂いが俺達を歓迎してくれている、そんな気がした。

「「うわ~い!!」」

早速、ビオラとクロガネは楽しそうな声を上げながら、はしゃぎ回っている。はぁ、仕方ない。

「よし。今日は金鎧探しをせず、ここで遊ぶか」

「「「「「っ!?」」」」」

俺の言葉に驚く仲間達。まぁ、俺達はただ目的もなく休憩とか遊んだりはしないからな。

「ほい。この中から、遊びたいものを選んでくれ」

だが、俺は見逃さなかった。ビオラとクロガネの様子を羨ましそうに見る面々を。現にあの冷静沈着なドルツですら、ソワソワしているぐらいだ。それほど俺達は今まで海に縁がなかったのだ。

「うわっ、凄い!!」

「沢山あるちゃき!!」

そう。俺は暇さえあれば、クランハウスで色んなものを作って、それを空間魔法でしまっていたのだ。その中にはもちろん、ビーチで遊べるようなものも含まれていた。

「じゃあ、お言葉に甘えさせて頂きますね」

「私、お家の関係で向こうの世界でも海で遊んだことなかったんですよね~」

「しゃあない。ここの調査も必要だからな…………探偵として」

「ウチ、ビーチパラソルを立てたいアル」

「海かぁ……………いつぶりだろ」

「私、校外学習の前に学院を卒業しちゃいましたから、ありがたいです!!」

「ぼ、僕、こういうとこ初めてで緊張します……………」

「アツい!アツいわ!!上からは太陽が、下からは砂浜が私を責め立ててくるの!!誰か、私を砂で埋めて!!」

約1名、変なテンションの奴がいるが、その後のみんなは思い思いに楽しんでいた。

「あはははっ!!」

「ティアさん!このボート、凄い揺れますね!!」

「おらっ、お前ら!!もっとスピード上げるぞ!!」

「ん~アメイジング!!」

小型のクルーザーを巧みに運転するドルツとそのクルーザーに紐をくくりつけたバナナボートに乗るティアとアスカ。ティアは久しぶりに年相応のはしゃぎっぷりを見せ、そんな彼女の腰に後ろからしがみつくアスカは驚きと楽しさから、とても上機嫌だった。それは仲の良い姉妹にも見え、側からはとても良い画になっていた。そして、そんな中、クルーザーのデッキ部分では優雅に椅子に座りながら、カシスジュースを飲むサクヤの姿があった。

「こ、こうですか?」

「そうそう!やっぱり、シャウ君は筋がいいね!!」

「ビオラ!見るちゃき!余も泳げるようになったちゃき!!」

「なるほど。これでこうやる…………っと!」

「おおっ、凄いなセーラ!何だ、その泳ぎ方は!!そんなのぼくでもできないぞ!!君達は本当に凄いな」

「ビオラ、ビオラ!余もできたから、見て欲しいちゃき!!」

「ん?クロガネ……………果たして、それは泳いでいると言えるのか?」

ふと浅瀬の方に目をやるとそこではビオラがシャウ・セーラ・クロガネへ泳ぎを教えていた。ビオラは色んなところを旅して回っていた関係で当然、海にも行ったことがあり、泳ぎに慣れていたからだった。そこで急遽ではあるものの、ミニ水泳教室が行われていたのだ。

「……………」

「あふっ…………これが私に対する罰なのね」

一方、砂浜ではビーチパラソルの下で静かに読書をするバイラと砂に埋められて気持ち良さそうなモロクがいた。バイラは元々勉強家であり読書家である。外であっても暇さえあれば、本を読んでいることが多い。今回も例に漏れず、"みんなの楽しそうな声と波の音をBGMにいい読書ができそうアル"と言っていた。モロクは……………埋めて欲しいと懇願されたから、埋めてやった。今は"自分が罪を犯して砂に埋められている"という妄想をしながら、悦に浸っていた。お楽しみのところを邪魔しちゃ悪いと俺は彼女の埋めた直後、その場を離れた。近くにいたら、巻き込まれそうでもあったしな。ちなみにみんな、俺の用意した更衣室で着替えて今は水着となっている。水着自体はこれまでに訪れた店で各々が買っていた為、俺の自作ではない。

「さてと……………みんな!これ、やらないか?」

その後、俺はみんなが一通り、今の遊びをやり尽くしたところを見計らって、新たな遊びを提案した。スイカ割りやビーチバレーなど様々な遊びがまだ残っており、幸い周りには俺達以外誰もいない。その為、迷惑をかけることもなく思う存分、羽を伸ばすことができるのだ。

「「「「「は~い!!!!!」」」」」

束の間のバカンスはまだ始まったばかりだった。

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