391 / 416
〜After story〜
第33話:火山
しおりを挟む「お~っ!凄いや、これ!!」
「おっほぅ~!!まるで熱さを感じないちゃきよ!!」
結界の効力に驚く2人を伴って、俺達は火山の頂上を目指していた。ふと横を見れば、物凄い勢いで火口から溢れ出たマグマが上から下へと流れていた。
「ここは指定難度SSSクラスの場所だ。ある程度、常識のある冒険者なら、まず近付かない。それは高ランク冒険者であってもだ。だから、お前らも気を付けろよ」
「「うわっ、凄い噴火!!…………って、こっちに向かってくる~~~!!!」」
「ちっ」
「シンヤさん、私が!」
そう言って、2人の前に飛び出たのはなんとサクヤだった。
「"黒一閃"!!」
サクヤが刀を一振りすると2人へと向かってきていた溶岩は瞬く間に真っ二つとなった。
「「ええっ~~~!!!」」
「まだよ」
そう言って、さらに横から飛び出したのはモロクだった。彼女は真っ二つになった溶岩目掛けて、掌底を放った。
「"白打掌"!!」
手を真っ白になるほどの氷魔法で覆った掌底を受けた溶岩は瞬時に凍り、次の瞬間には内部から弾けて、粉々に砕け散った。
「「……………」」
その一連の流れを呆然としながら、見ていた2人。そこに対して、サクヤとモロクが声を掛けた。
「危なかったね。でも、これで分かった?気を抜いちゃいけないってことが」
「そうよ。今度からは油断しちゃ、駄目よ?」
その言葉に大きく頷く2人。全く……………あそこまで大げさに対処しなくてもサクヤとモロクなら、もっと素早く一瞬で何とかできたろうに……………だが、そうしなかったのは2人の為を想ってのことだった。
「新しい土地にワクワクするのは悪いこととは言わないが、俺達の旅は常に危険が隣り合わせだということを肝に命じてくれ。どんな強者でも一瞬の油断が命取りとなることもあるんだ」
「「分かったよ(ちゃき)!!」」
うん。こいつら、意外と素直だから憎めないよな…………ってか、一緒に時間を過ごせば過ごす程、似てくるな。
―――――――――――――――――――――
「お主達か、侵入者は……………我に一体、何の用だ?」
頂上についた俺達の目に最初に飛び込んできた光景……………それは巨大な炎竜がこちらを見下ろすところだった。
「勘違いするな。お前に用はない。俺達の目的はそれだ」
俺は目の前に浮かぶ籠手を指して、そう言った。すると、炎竜は口を大きく開けて笑った。
「フハハハハッ!我にそんな生意気な口を利く人間は何十年……………いや、何百年振りか。まぁ、そもそもここへ来れる人間自体、そう多くはないのだがな」
「で?くれるのか?くれないのか?」
「人間、お前こそ勘違いするなよ?我が友好的な態度を示すのはこれきりだ。そして、ここから先は………………力で示せ!!」
そう言うと炎竜は殺気を放ち、身体中から魔力を溢れさせた。
「……………」
「っ!?」
しかし、炎竜は瞬時に自身の行動を止めた。それ以上、続けていると命が危ないと感じたのだろう……………もちろん、炎竜自身の、だ。
「「「「「……………」」」」」
無言で炎竜と同じ芸当をする仲間達。炎竜がいくら強かろうが関係ない。シャウですら、炎竜のそれを上回ってしまっているのだ。しかし、中でもティアがやばかった。自分のことよりも俺に殺気が向けられたという事実にキレてしまっている。
「落ち着け…………特にティア。悪いのは俺達だろう?なんせ、こいつの住処に土足で踏み込んでしまったのだから」
俺の言葉に殺気と魔力を引っ込めるティア達。ちなみにその間、ビオラとクロガネは2人で抱き合って泣いていた。
「すまない。ほんの冗談のつもりだったんだ」
「こちらこそ、すまない。勝手にお邪魔してしまって」
「い、いや……………大丈夫だ」
炎竜は恐怖からか、ティア達を……………というか、ティアを一切見ずに俺の目を見て話していた。
「…………っ!?」
しかし、それでも怖いもの見たさがあるのか、チラッとティアを見て、彼女がニコッと笑顔を向けると慌てて顔を背けていた……………なんか身体はデカいが反応が可愛いな、こいつ。
「さて、改めて訊こう。その籠手を譲り受けてもいいか?」
俺の言葉に深く頷いた炎竜は次の瞬間、こう言った。
「ああ……………ただし、条件がある」
0
お気に入りに追加
577
あなたにおすすめの小説
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜
平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。
『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。
この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。
その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。
一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~
霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。
ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。
これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる