俺は善人にはなれない

気衒い

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〜After story〜

第10話:ドルツの実家

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「突然だが、ドルツ……………お前の実家ってどこだ?」

それは幹部会議も終わり、少しまったりとしている時だった。シンヤから、俺に対して斜め上の質問が来たのは。

「本当に突然だな。どうした?」

「いや、色々なことが片付いて、ちょうど時間ができたからな。そんな時に思い出したんだよ。まだお前の実家に行っていないって」

「い、いや、行く必要ないだろ」

「いいや。お前は俺の家族であり、仲間だ。そんなお前をお預かりしている身としてはやっぱり、一言挨拶しておきたい」

「そう言ってくれるのは嬉しいんだが……………ほ、ほら!あれだ!ティアのところだって、まだ行ってないし」

「私のは事情が事情ですから」

「うっ……………そ、そうだ!スィーエルとレオナのところもまだだったよな!?」

「ミーのところは行かなくて大丈夫デスよ?」

「ボクのところも遠いから……………あれ?この話、前もしたの」

「あ、あれっ!?そうだったか!?」

「スィーエルの故郷は天界・下層。天使達が暮らすところだな。それでこの間、お袋を訪ねて俺達が向かった場所が天界・上層。つまり、もう天界には行ったことになってるし、スィーエル達も元々、帰るつもりはないらしいからな」

「そ、そうだったな」

「問題はそんなことよりも……………ドルツ、お前何を慌ててんだ?」

「いや、俺は慌ててなんか」

「そういえば、ドルツの故郷の話はしたことありませんわね」

「本人からもそんな話題出ねぇしな」

「でも、うん…………気になる」

「どんなところなんでしょうか」

「全く……………水臭いったら、ないわ」

「確かに一度は見ておきたいな」

「…………ドルツ、諦めな。この流れになったら、もう止められないよ。それに僕も気になるし」

「アンタだって、私の里に来てくれたんだから。今度は私が行くわ」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。俺は……………」

「ドルツ……………もしも、お前が本当に嫌だと言うのならば、そこは俺達も空気を読んで引き下がる。だが、少しでも故郷に何かしらの想いが……………もしくは俺達に見せたい何かがあるのなら、そこは引き受けてくれると助かる。もちろん、お前の意思が最優先だが、俺としては………………」

そこで一瞬、言葉を切ったシンヤは真っ直ぐと俺の目を見てから、こう言った。

「ドルツは俺達にとって、かけがえのない存在だと……………こちらで元気にやっていると伝えたい」

「シンヤ……………」

おいおいおい。そんな風に言ってもらったら……………俺から出す答えは1つしかねぇじゃんか。






―――――――――――――――――――――







「ここがお前の育った街か?」

「ああ。俺の生まれ育った街は街全体がちょっとアレでな……………簡単に言えば、アルスが生まれ育った場所とさほど変わらない環境なんだ」

「だが、アルスのところは街の闇の部分だ。一方、ここは街全体がそうだろ?」

「ああ。まぁ、その………………ここの領主が色々と悪いことをしていたらしくてな、夜逃げしたんだ」

「は?」

「それは俺が小さかった頃に急にだな。そんでそっから、今日に至るまで領主も管理する者もいないんだ、この街には。だから、当然街を離れる者が後を絶たず、今じゃこんな有様さ」

「……………何故、もっと早く言わなかった?」

「……………迷惑や心配をかけたくなくてさ」

「ふざけんな。俺達が誰かの故郷の話をする時、お前は辛そうな表情をしていた。また、俺達が誰かの故郷を訪れる度、お前はどこか遠くを見つめていた………………俺がそれに気が付かないとでも思ったか?」

「………………」

「俺はお前から故郷の話をされるのをずっと待っていた。無理強いはしたくないし、お前にも何か考えがあるのかもしれないと思ったからだ。だが、もしもお前のそれが今言った理由からだったとしたら………………俺はお前を許さない」

シンヤの言葉に頷くティア達。そこで俺は気付かされた。俺は今までとんだ勘違いをしていたことを………………

「何度も言うが、お前は俺達の家族だ。家族ってのは迷惑だとか心配だとかを考えず、お互いを支え合うもんなんだよ。"無償の愛"。それが家族だ。むしろ、家族が困っていたのなら、積極的に助けたいって思うもんなんだよ」

そして、どれだけ自分が大切にされているのか、愛されているのかを………………

「シンヤ…………みんな……………」

シンヤと彼の言葉に強く頷くみんなを見ていたら、自然と込み上げてくるものがあり、俺はそれを悟られないよう帽子を深く被った。

「よし、お前ら!準備はいいか?悪いが、手伝ってもらうぞ!」

「悪いなんてことはありませんよ。先程、シンヤさんも仰っていたではありませんか………………"家族が困っていたのなら、積極的に助けたい"と」

「あちゃ~こりゃ、ティアに一本取られたな……………そんじゃ、やりますか。とはいっても街全体のクリーン、食料の供給に施設の整備、管理者及び領主の設置、それ以外にも多数……………やることは山積みだぞ」

「「「「「望むところ!!!!!」」」」」

徐に動き出すシンヤ達。これは俺も立ち止まったままではいられないな。

「この街を改革するぞ、相棒!!」

「おう!!」

シンヤが威勢の良い声と共に突き出してきた拳……………そに対して、俺も同じように拳を突き出した。全く、お前って奴は出会った時から………………
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