俺は善人にはなれない

気衒い

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第16章 神々の黄昏

第354話 虹の天橋

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「ぐふっ……………」

「ロキさんっ!!」

神々の軍勢エインヘルヤル"第1

部隊部隊長ロキは口から大量の血を吐き

ながら地面へと倒れ伏した。すると、そ

れを見た副部隊長のガルムは慌てて駆け

寄り、その身体を抱き起こした。

「貴様……………一体何者だ?俺達をこう

も容易く……………」

「…………………」

途切れ途切れではあるがシンヤへと鋭い

眼光を向けて話すその姿勢からはまだ心

では負けていないと訴えかけるようでも

あった。

「けっ、ダンマリかよ………………まぁ、いい。どのみち、お前らは必ず後悔することになる・・・・・・・・・・・

「?」

「俺の名はロキ!!"悪戯の神"、"偽

神"とも呼ばれる者であり……………全て

を終わらせる者だ!!」

ロキがそう言い放った直後、どこかで地

鳴りのような音が聞こえ、多数の気配が

ある場所へと向かっていくのをシンヤは

察知した。

「……………終わらせる者ねぇ」

「ふんっ。その表情は"嘲笑"からくる

ものか、はたまた"焦り"からくるもの

か………………まぁ、そんなのはどっちで

もいいがたった今、起こったことはお前

らの予想だにしないことだろう」

ロキはニヤリとし、いきなり大きな声で

こう言った。

「おい、"虹の天橋ビフレスト

よ!!聞こえるか?聞こえたら、返事を

しろ!!」

「は、はい!!こちら"虹の天橋ビフレスト"。聴こえております」

「よし。ではまず最初の質問だ。たった

今、地上へと降り立った・・・・・・・・・お前達の目の前

には何が見えている?美しい山か?それ

とも澄んだ湖か?はたまた堅牢な要塞

か?いずれにしても俺達が生活の基盤を

築くには事足りる……………」

「そ、それが大変申し上げにくいのです

が」

「ん?何だ?言ってみろ。ちょうど目の

前に調子に乗って俺達に奇襲をかけてき

た馬鹿がいてな。そいつに一泡吹かせて

やろうぜ」

「……………それではご報告致します。現

在、我々は武装した未知の敵に周辺を囲

まれており、予期せぬ奇襲に遭っていま

す」

「………………は?」

「このまま我々の行動を妨害されますと

今後の動きに支障が……………ぎゃ~

っ!?」

「お、おい!!どうした!!無事か!?

無事なら、報告を!!」

ロキの声掛けも虚しく、その後の反応が

返ってくることはなかった。そして、あ

まりに想定外なことにしばし呆然として

いるとニヤリとした笑みを浮かべている

シンヤが目に入り、ロキは思わず問いた

だした。

「どういうことだ!?ま、まさかお前は

このことを」

「ああ。知っていた。お前ら"神々の軍勢エインヘルヤル"は天界殲滅班、

そして"虹の天橋ビフレスト"は地

上殲滅班というように軍を2つに分け

て、効率的に動こうとしていた。こうす

ることで仮にどちらかが失敗したとして

も悲願が達成できるようにしたんだ」

「ちっ、何故バレた!?まさか、俺達の

中に裏切り者が」

「いいや。お前らはとてつもない執念で

以って動いている。たとえ拷問を受け身

体の部位をもがれようが、おそらく裏切

ることはないだろう」

「で、では一体何故……………」

「安心しろよ。お前らに落ち度はない。

本来、お前らの作戦は未来でも見えてい

なければ破られることはないんだから

な」

「っ!?ま、まさかお前っ!?」

「そういうことだ。相手が悪かったな"

神"」








―――――――――――――――――――――








時は遡り、修行を終えてフォルトゥーナ

に別れを告げた直後、シンヤ達は一箇所

に集まり、これからあるところへ通信を

試みようとしていた。そのあるところと

は…………………

「あ~……………聞こえるか?俺はシン

ヤ・モリタニ。冒険者だ」

シンヤ達が天界に来る直前までいた場

所…………つまり異世界の地上へ向けて

だった。

「まずは急にこんな形で通信してしまっ

ていることを詫びたいと思う。すまな

い」

突如、聞こえてきた声とその声の主に驚

きを隠せない地上の者達。そんな彼らに

対して、シンヤは次々と驚くべき内容を

告げていった。

「今、俺の声は世界中に届いている。も

ちろん、これは悪戯でやった訳ではな

い。ある目的があって、こんなことをし

ている」

「目的?」

「一体何なのかしら?」

人々はシンヤの言葉によく耳を傾けた。

最高ランクの冒険者、それも英雄が伊達

や酔狂でこんなことをするはずがないと

分かっていたからだ。

「心して聞いてくれ……………今から約2

時間後にとある集団が世界中に現れ、世

界を滅茶苦茶にしようと暴れ回る。そこ

で出る被害は"邪神災害"や"聖義事変

"の比ではない」

「っ!?」

「な、何だと!?」

人々は突然告げられた内容に慌てふため

いた。しかし、続くシンヤの言葉によっ

て、それはだいぶ緩和された。

「もちろん、それは何も知らなかったら

の話だ………………今から敵の出現ポイン

トとそのおおよその数を言う。戦える

者、それも覚悟のある者は向かってく

れ。一般人は余計なことをせず、安全な

場所まで逃げてくれ………………それと」

そこでシンヤの声のトーンが変わり、労

わるような口調になった。

「留守番させといて、最初の報告がこれ

で悪いな。本当はもっと連絡したかった

が、余計な心配を掛けたくなかった。ま

ぁ、結果的にした方が良かったかもしれ

ないが………………」

一部の者はシンヤのこの言葉にくすりと

笑い、それに対して顔を真っ赤にさせる  

者もいた。ところが、その表情も次の言

葉で引き締まった。

「ともあれ……………お前らが先頭に立っ

て敵を殲滅してくれ。まぁ、とはいって

も今までの敵とは明らかにレベルが違

う。だが、ここ一週間で感じたはず

だ。意図しない急激な成長・・・・・・・・・・を………………

そして、それに加えて今から力を贈

る………………ああ、ちなみにその力は敵

との戦いに挑む者全てに贈るつもりだ。

しかし、勘違いしないで欲しいのはその

力は戦いが終われば消えてしまう。だか

ら、己の欲を優先せず、純粋に世界の為

に動いてくれ………………まぁ、そうしな

いとどのみち世界は終わるんだけどな」

さらっと告げられた真実に驚愕する

人々。一方の戦える者達はやる気に満ち

溢れ、武器を握る手が自然と強くなって

いた。

「じゃあ、今から出現ポイントを言う

ぞ。まずは……………」










「おりゃ!!」

「消えろ、侵略者共!!」

「凄ぇ!!力が溢れてくる!!」

冒険者を中心とした戦える者達は地上を

明け渡すまいと敵に向かって、意気揚々

と突っ込んでいった。すると、その勢い

にやられた敵は次から次へと倒れてい

き、その軍配は冒険者達に上がりそうだ

った。

「ふふふ。シンヤも言うね。前まであん

なことしなかったのに」

「この変化が良いものか、そうでないか

はさておき……………随分と嬉しそうです

ね」

そして、ここにもシンヤからの言葉と力

を貰い、動き出した者達がいた。リース

達、"黒天の星"の従魔部隊だった。

「まぁね………………おっ、あんなところ  

に敵がいたよ!後ろ姿しか見えないけど

も……………ん?たった1人?しかもあそ

こは出現ポイントじゃないはず。妙だ

ね、セバス」

「ええ。一体どういうことで………………

っ!?」

「……………えっ」

平和な会話をしていた直後に訪れた恐

慌。リース達の視線の先にいたはずの不

気味な者はいつのまにか、リース達のそ

ばまで近付き…………………その者の腕が

リースの腹を貫いていた。


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