349 / 416
第15章 親子喧嘩
第349話 奥の手
しおりを挟む
「なんだと?」
フォルトゥーナの発言に対し、静かに言
葉を発するシンヤ。しかし、その静かさ
が逆にシンヤの感情をよく表しており、
並大抵の者では彼から放たれる殺気に耐
えることができなかっただろう。とはい
っても幸いにもここにいるのはシンヤの
仲間達と神である。つまり、並大抵の者
ではない為、失神するようなことにはな
らなかった……………それでも自然と冷や
汗を流してはいたのだが。
「彼らは天界をある程度、荒らし回った
後に自分達の部下を異世界へと送り込
み、そこを第二の拠点にしようと企んで
いるわ。今はまだ暴動が起き始めたばか
りでそこまで天界も被害は受けてないけ
ど、このままいけばおそらく
は……………」
深刻そうに語るフォルトゥーナ。一方の
シンヤは軽く嘆息すると一言、こう言っ
た。
「その神達ってのはどこにいる?」
「え?」
「何を驚いた顔してんだよ。今からそい
つらを潰しにいくんだよ」
「ええっ!?」
「そんな驚くようなことか?異世界には俺の仲間達が沢山いる。だったら、部下達を送り込む前にそいつら全員を叩きのめせば……………」
「そんな簡単に言わないで!!」
これまで聞いた中で最も大きな声での叱
責に今度はシンヤ達が驚く番となった。
見れば、フォルトゥーナは非常に辛そう
な表情で歯を食いしばっていた。
「はっきり言うわ。今のあなた達では彼
らには絶対に勝てない……………それは最
終進化を果たし、"下級神"となったシ
ンヤであってもよ」
「………………」
「それほど"神"というのは特別な存在
なの。そして、その位が上になればなる
ほど、その力も増すわ」
「……………じゃあ、どうすることもでき
ないってことか」
「……………いいえ。1つだけなら、手が
あるわ」
「っ!?それはどんな手だ?」
フォルトゥーナの言葉に身を乗り出さん
ばかりに詰め寄るシンヤ。対して、フォ
ルトゥーナはとても言いづらそうにしな
がら、シンヤへ確認を取った。
「で、でも、これは奥の手として存在す
る手で………………」
「だから、それを教えてくれって言って
んだよ」
「言っておくけど、かなり危険なのよ?
それこそ、命に関わるぐらいに!それも
絶対に成功するとは限らないわ!!」
「命に関わる?だから、何だ……………俺
はこんなところに留まったまま、異世界に残してきた仲間達が殺されて
いくのを黙って見過ごすことなんて、
できない……………もし、そんなことにな
れば、俺は確実に後で死にたくなる」
「シンヤ…………あなた…………」
フォルトゥーナは感激したのか、思わず
目を閉じてシンヤを抱き締めた。
「お、おい。やめろ」
「そう。あなたも命を張れるぐら
い大切なものを見つけたのね」
「……………」
「本当にいいのね?」
「ああ」
シンヤはフォルトゥーナに抱き締められ
ながらも特に不快感を感じることなく、
むしろそこには不思議な安心感があっ
た。そして、チラリとシンヤが横目でフ
ォルトゥーナの顔を見ると彼女もまたシ
ンヤを見つめていた為、少しの間、視線
が交差した。
「どうやら、決意は揺らぎそうもないわ
ね……………よし、分かったわ」
フォルトゥーナはシンヤの表情から大き
な覚悟を感じ取り、しっかりと頷いた。
そして、シンヤから身体を離すと真剣な
表情でこう言った。
「彼らの暴動が本格的になり、部下達を
異世界へと送り込むまでまだまだかかる
わ。その間、あなた達には……………」
ここで突然、フォルトゥーナが右手を横
にかざすとそこにまるで次元の裂け目の
ような黒い穴が開いた。
「この中に入って、修行してもらうわ」
「……………何だ、そこは?」
「私が独自に創り出した空間よ。本当は
シンヤに何かあった時に守ってあげられ
るようにと前々から創っていたのだけ
ど………………まさか、逆に守ってもらう
為に使うとは思わなかったわ」
「俺は仲間達の為に動くんだ。別にお前
の為じゃない」
「…………まぁ、それでもいいわ。でも、
これだけは言わせて………………本当にあ
りがとう」
「…………礼なら、無事に生き残れたら言
うんだな」
「っ!?シンヤちゃん!!」
「うざいから、近寄んな」
その後、黒い穴の中へと入っていくシン
ヤ達を不安と期待が入り混じった顔で見
守るフォルトゥーナ……………と、最後に
なったシンヤが振り返り、こう言った。
「色々とありがとな。それから、お前の
ことを色々と誤解してた………………すま
ん。じゃあ、行ってくる」
フォルトゥーナはそんなシンヤの頼もし
い背中を見送りながら、小さく呟いた。
「キョウヤ……………私達の息子はあんな
に逞しくなりましたよ………………まぁ、
それはあなたの方がよく知っているんで
しょうけど」
フォルトゥーナの発言に対し、静かに言
葉を発するシンヤ。しかし、その静かさ
が逆にシンヤの感情をよく表しており、
並大抵の者では彼から放たれる殺気に耐
えることができなかっただろう。とはい
っても幸いにもここにいるのはシンヤの
仲間達と神である。つまり、並大抵の者
ではない為、失神するようなことにはな
らなかった……………それでも自然と冷や
汗を流してはいたのだが。
「彼らは天界をある程度、荒らし回った
後に自分達の部下を異世界へと送り込
み、そこを第二の拠点にしようと企んで
いるわ。今はまだ暴動が起き始めたばか
りでそこまで天界も被害は受けてないけ
ど、このままいけばおそらく
は……………」
深刻そうに語るフォルトゥーナ。一方の
シンヤは軽く嘆息すると一言、こう言っ
た。
「その神達ってのはどこにいる?」
「え?」
「何を驚いた顔してんだよ。今からそい
つらを潰しにいくんだよ」
「ええっ!?」
「そんな驚くようなことか?異世界には俺の仲間達が沢山いる。だったら、部下達を送り込む前にそいつら全員を叩きのめせば……………」
「そんな簡単に言わないで!!」
これまで聞いた中で最も大きな声での叱
責に今度はシンヤ達が驚く番となった。
見れば、フォルトゥーナは非常に辛そう
な表情で歯を食いしばっていた。
「はっきり言うわ。今のあなた達では彼
らには絶対に勝てない……………それは最
終進化を果たし、"下級神"となったシ
ンヤであってもよ」
「………………」
「それほど"神"というのは特別な存在
なの。そして、その位が上になればなる
ほど、その力も増すわ」
「……………じゃあ、どうすることもでき
ないってことか」
「……………いいえ。1つだけなら、手が
あるわ」
「っ!?それはどんな手だ?」
フォルトゥーナの言葉に身を乗り出さん
ばかりに詰め寄るシンヤ。対して、フォ
ルトゥーナはとても言いづらそうにしな
がら、シンヤへ確認を取った。
「で、でも、これは奥の手として存在す
る手で………………」
「だから、それを教えてくれって言って
んだよ」
「言っておくけど、かなり危険なのよ?
それこそ、命に関わるぐらいに!それも
絶対に成功するとは限らないわ!!」
「命に関わる?だから、何だ……………俺
はこんなところに留まったまま、異世界に残してきた仲間達が殺されて
いくのを黙って見過ごすことなんて、
できない……………もし、そんなことにな
れば、俺は確実に後で死にたくなる」
「シンヤ…………あなた…………」
フォルトゥーナは感激したのか、思わず
目を閉じてシンヤを抱き締めた。
「お、おい。やめろ」
「そう。あなたも命を張れるぐら
い大切なものを見つけたのね」
「……………」
「本当にいいのね?」
「ああ」
シンヤはフォルトゥーナに抱き締められ
ながらも特に不快感を感じることなく、
むしろそこには不思議な安心感があっ
た。そして、チラリとシンヤが横目でフ
ォルトゥーナの顔を見ると彼女もまたシ
ンヤを見つめていた為、少しの間、視線
が交差した。
「どうやら、決意は揺らぎそうもないわ
ね……………よし、分かったわ」
フォルトゥーナはシンヤの表情から大き
な覚悟を感じ取り、しっかりと頷いた。
そして、シンヤから身体を離すと真剣な
表情でこう言った。
「彼らの暴動が本格的になり、部下達を
異世界へと送り込むまでまだまだかかる
わ。その間、あなた達には……………」
ここで突然、フォルトゥーナが右手を横
にかざすとそこにまるで次元の裂け目の
ような黒い穴が開いた。
「この中に入って、修行してもらうわ」
「……………何だ、そこは?」
「私が独自に創り出した空間よ。本当は
シンヤに何かあった時に守ってあげられ
るようにと前々から創っていたのだけ
ど………………まさか、逆に守ってもらう
為に使うとは思わなかったわ」
「俺は仲間達の為に動くんだ。別にお前
の為じゃない」
「…………まぁ、それでもいいわ。でも、
これだけは言わせて………………本当にあ
りがとう」
「…………礼なら、無事に生き残れたら言
うんだな」
「っ!?シンヤちゃん!!」
「うざいから、近寄んな」
その後、黒い穴の中へと入っていくシン
ヤ達を不安と期待が入り混じった顔で見
守るフォルトゥーナ……………と、最後に
なったシンヤが振り返り、こう言った。
「色々とありがとな。それから、お前の
ことを色々と誤解してた………………すま
ん。じゃあ、行ってくる」
フォルトゥーナはそんなシンヤの頼もし
い背中を見送りながら、小さく呟いた。
「キョウヤ……………私達の息子はあんな
に逞しくなりましたよ………………まぁ、
それはあなたの方がよく知っているんで
しょうけど」
0
お気に入りに追加
577
あなたにおすすめの小説
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜
平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。
『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。
この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。
その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。
一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~
霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。
ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。
これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる