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第15章 親子喧嘩
第341話 はぐれ者の過去4
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「俺をこの世界に召喚したのはとある王
国だった。そして、召喚した者曰く、"
この度、魔王が復活したのでお主を勇者
として召喚した。どうか魔王討伐に力を
貸してくれないか?"とのことだった。
もちろん、魔王討伐には俺1人で向かう
訳ではない。魔法使いの女と戦士風の
男、弓使いの女が俺についてくるとのこ
とだった。俺は早速、3人とコンタクト
を取り、王国が設けた1ヶ月間の戦闘訓
練の後にそこから旅立った」
ブロン達は自分達と出会う前のこの世界
でのキョウヤの様子を知れて、終始興奮
状態だった。それを知ってか知らずか
キョウヤは変わらぬトーンで続きを話し
出す。
「俺達の旅は難航した。魔王のいる地に
辿り着く前に色々とあったからだ。結
局、魔王のいる地に辿り着いたのは俺が
召喚されてから、約10年が経った頃だ
った。苦労の末、辿り着いた場所を見た
瞬間、俺は困惑した。そこは魔王どころ
か、何も存在しない地だったからだ。俺
は振り返り、この感情を仲間達と共有し
ようとした。すると………………そんな俺
を仲間達は一斉攻撃し出した」
「「「「「っ!?」」」」」
まさかの事実にブロン達は驚きを隠せな
かった。一方のシンヤ達はこの部分に関
しては至って冷静に聞いていた。
「端的に言うと俺は王国に騙されてい
た。そもそも魔王は復活なんてしていな
かったんだ。俺は王国が都合よく利用で
きる駒として異世界から召喚されたに過
ぎない………………俺はそんな時になって
初めて気が付いた。そして、薄れゆく意
識の中、俺は思った。何故、人を簡単に
信用してしまったのか、何故、疑うこと
をしなかったのか。"廃棄場"にいた頃
は全てを疑ってかかるのは当然だった。
育ての親も俺をそういう風に育てた。"
たとえ、血を分けた親であっても毎日や
り取りをする相手であってさえも疑
え……………でなければ、ここでは生きて
いけん"と。あそこはそういう場所だっ
た。しかし、俺は外に出てから変わっ
た。人と接する度に人の温かさを知っ
た。世の中はこんなにも素晴らしい人間
達で溢れていることを学んだ……………そ
の延長線上にはいつも十奈がいた」
自嘲の笑みを浮かべながら語るキョウ
ヤ。それをシンヤは黙ったまま、見続け
た。
「俺はあと少しで命が尽きかける中、急
いで"写し鏡"を使った。召喚された時
点で既にそのスキルを所持していてお
り、日頃から使い慣れていた為、どうに
かギリギリのところで発動に成功
し……………俺は一命を取り留めた。その
際の対象は何だったのか、今は思い出せ
ないが俺を襲った3人は俺が死亡したと
勘違いしたまま、血だらけの俺を放って
どこかへと消えてしまった。そして、そ
こから俺はあの"廃棄場"で暮らしてい
た頃の気持ちと感覚を取り戻し、この世
界でやっていく決意をした………………
と、そんな時だった。この世界には"冒
険者"という職業が存在し、勇者を引退
したら、やってみようと思っていたこと
を不意に思い出した。そこでギルドに行
き、冒険者となった俺はブロン達と出会
い、クラン"箱舟"を結成したんだ」
懐かしさに浸りながら語り続けるキョウ
ヤ。だが、それも終盤に差し掛かると真
顔になり、静かに言葉を紡いでいった。
「"箱舟"での活動は10年程続き、ク
ランを解散したのは25年前だった。あ
の日のことは今でもよく覚えている。泣
き叫ぶメンバー達に申し訳ないと思いつ
つも俺は彼らの元を離れ、1人放浪の旅
に出ることにした。そこからだ。俺が"
キョウヤ"ではなく"キョウ"という偽
名を名乗り出したのは」
「い、一体何故…………」
ブロンは思わず、小さく呟いた。する
と、その声が届いたのかキョウヤはブロ
ンの方を向きながら、話を続けた。
「ブロン達には俺のことを意識して欲し
くなかったからだ。俺の幻影を追い続け
ては解散した意味がない」
「そ、そんな……………」
「解散については本当に申し訳ないと思
っている。だが、これは俺達にとって絶
対に必要なことだったんだ………………ブ
ロン、お前もそうは思わないか?」
「………………」
「ちょっといいか?」
「ん?どうした、シンヤ?」
2人の会話に割って入る形になり、一度
断りを入れてから質問をするシンヤ。そ
の表情は合点がいかないといいたげに眉
根を寄せていた。
「今までの話が本当だとすると、お前が
こちらの世界に召喚されてから勇者を務
めた期間が10年、それからクランとし
ての活動が10年、そしてクラン解散後
から今日まで25年……………計45年、
お前はこちらの世界で過ごしたことにな
る」
「ああ、そうだな」
「ところが、お前の今の年齢は40歳お前は30歳の時に召喚され
ているから、そこから10歳しか歳を取
っていないことになる。この矛盾は一体
何だ?」
シンヤは話していく内にまるで喉に小骨
が詰まっているかのような不快な表情に
なっていった。
「……………さっき、お前の"神眼"をも
ってしても名前以外、表示されなかった
スキルがあったな?」
「……………確か、"世界旅行"とかいっ
たか」
「ああ。その固有スキルはそれこそ神の
ような力を持っている者でないと閲覧す
ることさえ、できない。そのようにプロテクトがかけられているんだ」
「は?そんなスキルがこの世に存在する
のか?」
「いや、このスキルだけは特別だ。俺がそうしてくれと頼んだからだ」
「要領を得ないな。お前はさっきから何
を言っている?」
「悪いが、その部分に関してはそうプロ
テクトをかけた張本人に聞いてくれ。俺
が教えられるのは"世界旅行"という固
有スキルの効果についてだけだ」
「……………お前がそう言うのなら、分か
った。で?その"世界旅行"とやらの効
果は?」
「ああ。"世界旅行"……………このスキ
ルは代償を支払うことで異世界の様子を観察することができる」
国だった。そして、召喚した者曰く、"
この度、魔王が復活したのでお主を勇者
として召喚した。どうか魔王討伐に力を
貸してくれないか?"とのことだった。
もちろん、魔王討伐には俺1人で向かう
訳ではない。魔法使いの女と戦士風の
男、弓使いの女が俺についてくるとのこ
とだった。俺は早速、3人とコンタクト
を取り、王国が設けた1ヶ月間の戦闘訓
練の後にそこから旅立った」
ブロン達は自分達と出会う前のこの世界
でのキョウヤの様子を知れて、終始興奮
状態だった。それを知ってか知らずか
キョウヤは変わらぬトーンで続きを話し
出す。
「俺達の旅は難航した。魔王のいる地に
辿り着く前に色々とあったからだ。結
局、魔王のいる地に辿り着いたのは俺が
召喚されてから、約10年が経った頃だ
った。苦労の末、辿り着いた場所を見た
瞬間、俺は困惑した。そこは魔王どころ
か、何も存在しない地だったからだ。俺
は振り返り、この感情を仲間達と共有し
ようとした。すると………………そんな俺
を仲間達は一斉攻撃し出した」
「「「「「っ!?」」」」」
まさかの事実にブロン達は驚きを隠せな
かった。一方のシンヤ達はこの部分に関
しては至って冷静に聞いていた。
「端的に言うと俺は王国に騙されてい
た。そもそも魔王は復活なんてしていな
かったんだ。俺は王国が都合よく利用で
きる駒として異世界から召喚されたに過
ぎない………………俺はそんな時になって
初めて気が付いた。そして、薄れゆく意
識の中、俺は思った。何故、人を簡単に
信用してしまったのか、何故、疑うこと
をしなかったのか。"廃棄場"にいた頃
は全てを疑ってかかるのは当然だった。
育ての親も俺をそういう風に育てた。"
たとえ、血を分けた親であっても毎日や
り取りをする相手であってさえも疑
え……………でなければ、ここでは生きて
いけん"と。あそこはそういう場所だっ
た。しかし、俺は外に出てから変わっ
た。人と接する度に人の温かさを知っ
た。世の中はこんなにも素晴らしい人間
達で溢れていることを学んだ……………そ
の延長線上にはいつも十奈がいた」
自嘲の笑みを浮かべながら語るキョウ
ヤ。それをシンヤは黙ったまま、見続け
た。
「俺はあと少しで命が尽きかける中、急
いで"写し鏡"を使った。召喚された時
点で既にそのスキルを所持していてお
り、日頃から使い慣れていた為、どうに
かギリギリのところで発動に成功
し……………俺は一命を取り留めた。その
際の対象は何だったのか、今は思い出せ
ないが俺を襲った3人は俺が死亡したと
勘違いしたまま、血だらけの俺を放って
どこかへと消えてしまった。そして、そ
こから俺はあの"廃棄場"で暮らしてい
た頃の気持ちと感覚を取り戻し、この世
界でやっていく決意をした………………
と、そんな時だった。この世界には"冒
険者"という職業が存在し、勇者を引退
したら、やってみようと思っていたこと
を不意に思い出した。そこでギルドに行
き、冒険者となった俺はブロン達と出会
い、クラン"箱舟"を結成したんだ」
懐かしさに浸りながら語り続けるキョウ
ヤ。だが、それも終盤に差し掛かると真
顔になり、静かに言葉を紡いでいった。
「"箱舟"での活動は10年程続き、ク
ランを解散したのは25年前だった。あ
の日のことは今でもよく覚えている。泣
き叫ぶメンバー達に申し訳ないと思いつ
つも俺は彼らの元を離れ、1人放浪の旅
に出ることにした。そこからだ。俺が"
キョウヤ"ではなく"キョウ"という偽
名を名乗り出したのは」
「い、一体何故…………」
ブロンは思わず、小さく呟いた。する
と、その声が届いたのかキョウヤはブロ
ンの方を向きながら、話を続けた。
「ブロン達には俺のことを意識して欲し
くなかったからだ。俺の幻影を追い続け
ては解散した意味がない」
「そ、そんな……………」
「解散については本当に申し訳ないと思
っている。だが、これは俺達にとって絶
対に必要なことだったんだ………………ブ
ロン、お前もそうは思わないか?」
「………………」
「ちょっといいか?」
「ん?どうした、シンヤ?」
2人の会話に割って入る形になり、一度
断りを入れてから質問をするシンヤ。そ
の表情は合点がいかないといいたげに眉
根を寄せていた。
「今までの話が本当だとすると、お前が
こちらの世界に召喚されてから勇者を務
めた期間が10年、それからクランとし
ての活動が10年、そしてクラン解散後
から今日まで25年……………計45年、
お前はこちらの世界で過ごしたことにな
る」
「ああ、そうだな」
「ところが、お前の今の年齢は40歳お前は30歳の時に召喚され
ているから、そこから10歳しか歳を取
っていないことになる。この矛盾は一体
何だ?」
シンヤは話していく内にまるで喉に小骨
が詰まっているかのような不快な表情に
なっていった。
「……………さっき、お前の"神眼"をも
ってしても名前以外、表示されなかった
スキルがあったな?」
「……………確か、"世界旅行"とかいっ
たか」
「ああ。その固有スキルはそれこそ神の
ような力を持っている者でないと閲覧す
ることさえ、できない。そのようにプロテクトがかけられているんだ」
「は?そんなスキルがこの世に存在する
のか?」
「いや、このスキルだけは特別だ。俺がそうしてくれと頼んだからだ」
「要領を得ないな。お前はさっきから何
を言っている?」
「悪いが、その部分に関してはそうプロ
テクトをかけた張本人に聞いてくれ。俺
が教えられるのは"世界旅行"という固
有スキルの効果についてだけだ」
「……………お前がそう言うのなら、分か
った。で?その"世界旅行"とやらの効
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「ああ。"世界旅行"……………このスキ
ルは代償を支払うことで異世界の様子を観察することができる」
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