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第15章 親子喧嘩
第337話 決着
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「「はぁ、はぁ、はぁ……………」」
人によっては10分にも30分にも感じ
られる程の時間、シンヤとキョウヤは戦
い続けていた。己の持つ強い信念や想い
を刀と拳に込めて、それを振るう。
「随分と慣れてきたな」
「ああ。だが、まだまだ使いこなせない
スキルが多い。全く……………こんなこと
は初めてだ」
「それは賛辞と受け取ってもいいの
か?」
「ああ。最大限のな」
こんな調子で時折、お互いの気持ちを確
かめ合いながら、ぶつかる2人。それは
まるで長い間、離れ離れだった親子が再
会し、それまでの想いを肉体を通してぶ
つけ合う少し変わった形の"会話"のよ
うに見えた。それが証拠に2人共、笑い
合いながら、技を繰り出している。
「シンヤさん……………とても嬉しそうで
す」
「それはキョウヤ様も一緒じゃな」
邪魔にならないよう、ティア達の近くで
見守ることにしたブロンがティアの発言
に反応する。ティアもブロンもそれぞれ
が同じような目線でシンヤ達を見てい
た。
「おそらく、2人の間には何かがあるん
でしょうね」
「そうじゃな。そして、それはきっとワ
シらには分からないことなんじゃろう。
まぁ、シンヤが気付いておるかは別とし
て………………じゃが、本音を言うととて
も悔しいのぅ」
「ええ……………その気持ちは痛い程、分
かります」
「ワシらは長年、一緒にいてキョウヤ様
を理解したつもりじゃった。キョウヤ様
のことなら、何でも分かる……………そん
な驕りすら、あった」
「………………」
「じゃが、ワシらはあんな表情をするキ
ョウヤ様を知らない……………というより
も見たことすら、ない。あんなに楽しそ
うに心の底から嬉しそうに……………まる
で長年、探し続けていたものにやっと巡
り会えたような、少年のようにキラキラ
とした笑みを浮かべるキョウヤ様を」
「私達もです。今のシンヤ様は間違いな
く、今までで一番の笑顔を浮かべていま
す。今日、知り合ったばかりなの
に………………絶対、私達の方が過ごして
いる時間は多いのに………………何故、あ
んな顔をするんでしょう、何故、あんな
に嬉しそうに戦うんでしょう……………何
故、今更父親だとか言って現れた男にそ
んな反応をするんですか………………」
「……………」
「おそらく、本能なのでしょう。ええ、
分かっています。そんなのどうしようも
ないことです……………ですが、この気持
ちだけはどうしても止めることができな
いんです!!何故、私達ではダメなんで
すか!!その男が一体何だと言うんです
か!!………………もし、もし本当にその
人がシンヤさんの父親だというのなら、
なんで今更、ノコノコと目の前に現れた
んですか!!それだけ再会を喜べる大切
な息子を捨てた癖に!!」
ティアの悲痛な叫びは訓練場の隅から隅
まで届く程、大きくて重いものだった。
その為、誰もが驚いてティアの方へと視
線を向け、そして、それは戦闘中のキョ
ウヤもまた例外ではなかった。
「嬢ちゃん……………っ!?しまっ
た!?」
その結果、たった数秒といえどティアに
気を取られてしまったキョウヤは自身へ
と向かって飛んできていた水弾をモロに
食らい、後ろへとよろけてしまった。す
ると、その隙を見逃すはずもないシンヤ
はキョウヤへと一瞬で近付き、刀を今度
は逆袈裟懸けに斬りつけた。
「"絶栄"!!」
「ぐあっ!?」
「卑怯と言うなよ?」
「ぐっ………はぁ、はぁ、はぁ……………
当たり前だ。単純に俺の実力不足だ」
「……………一発殴るか?もし、俺の仲間
が原因だと…………」
「それ以上は言うな!!」
「っ!?」
突然の怒声に驚くシンヤだが、続くキョ
ウヤの言葉によってそれも納得した。
「彼女は何も悪くない。悪いのはそんな
行いをした俺自身だ。いくら過去のこと
とはいえ、お前に対してしたことに時効
なんてものは存在しない」
床に倒れ、肩で息をしつつ答えるキョウ
ヤを見たシンヤは魔法で傷付いた訓練場
を元通りにしつつ、ついでにキョウヤに
も回復の魔法をかけた。
「……………すまねぇな」
「で?この戦いは?」
「ああ……………俺の負けだ」
その瞬間、沸き立つ観客席。幹部達もホ
ッとしつつ、チラリと横を見るとブロン
達は何とも言えない表情をしていた。そ
して、ティアはまるで大罪を犯してしま
ったとでもいうように俯いて肩を震わせ
ていた。
「もう一度、言うが俺が負けたのは俺自
身の実力不足のせいだ。そこに他者の意
思は介在しない。もちろん、誰かの邪魔
が入ったなんてことはこれっぽっちもな
い」
キョウヤのその言葉に反論しようと顔を
上げたティアだったが、鋭い眼光を向け
るシンヤによってそれも失敗に終わっ
た。
「ティア、男がここまでのことを言って
いるんだ。これ以上、言わせるのなら、
それはコイツの顔に泥を塗ることとな
る………………分かるな?」
「…………はい」
「ブロン達もこの結果に不満はない
な?」
「ああ…………分かっておる」
「よし。じゃあ…………」
そう言って刀を鞘に収めたシンヤはキョ
ウヤを抱き起こした。
「おっと…………悪いな」
「ただ親の面倒を見ているだけだ。変な誤解をするな」
「シンヤ……………」
「そんなことよりも聞かせてくれるんだ
ろ?」
「……………ああ。そうだったな」
キョウヤはシンヤの肩を借りて、ゆっ
くり立ち上がると周囲に向けて聞き取り
やすい声とスピードで語り始めた。
「では俺の正体について教えよう」
人によっては10分にも30分にも感じ
られる程の時間、シンヤとキョウヤは戦
い続けていた。己の持つ強い信念や想い
を刀と拳に込めて、それを振るう。
「随分と慣れてきたな」
「ああ。だが、まだまだ使いこなせない
スキルが多い。全く……………こんなこと
は初めてだ」
「それは賛辞と受け取ってもいいの
か?」
「ああ。最大限のな」
こんな調子で時折、お互いの気持ちを確
かめ合いながら、ぶつかる2人。それは
まるで長い間、離れ離れだった親子が再
会し、それまでの想いを肉体を通してぶ
つけ合う少し変わった形の"会話"のよ
うに見えた。それが証拠に2人共、笑い
合いながら、技を繰り出している。
「シンヤさん……………とても嬉しそうで
す」
「それはキョウヤ様も一緒じゃな」
邪魔にならないよう、ティア達の近くで
見守ることにしたブロンがティアの発言
に反応する。ティアもブロンもそれぞれ
が同じような目線でシンヤ達を見てい
た。
「おそらく、2人の間には何かがあるん
でしょうね」
「そうじゃな。そして、それはきっとワ
シらには分からないことなんじゃろう。
まぁ、シンヤが気付いておるかは別とし
て………………じゃが、本音を言うととて
も悔しいのぅ」
「ええ……………その気持ちは痛い程、分
かります」
「ワシらは長年、一緒にいてキョウヤ様
を理解したつもりじゃった。キョウヤ様
のことなら、何でも分かる……………そん
な驕りすら、あった」
「………………」
「じゃが、ワシらはあんな表情をするキ
ョウヤ様を知らない……………というより
も見たことすら、ない。あんなに楽しそ
うに心の底から嬉しそうに……………まる
で長年、探し続けていたものにやっと巡
り会えたような、少年のようにキラキラ
とした笑みを浮かべるキョウヤ様を」
「私達もです。今のシンヤ様は間違いな
く、今までで一番の笑顔を浮かべていま
す。今日、知り合ったばかりなの
に………………絶対、私達の方が過ごして
いる時間は多いのに………………何故、あ
んな顔をするんでしょう、何故、あんな
に嬉しそうに戦うんでしょう……………何
故、今更父親だとか言って現れた男にそ
んな反応をするんですか………………」
「……………」
「おそらく、本能なのでしょう。ええ、
分かっています。そんなのどうしようも
ないことです……………ですが、この気持
ちだけはどうしても止めることができな
いんです!!何故、私達ではダメなんで
すか!!その男が一体何だと言うんです
か!!………………もし、もし本当にその
人がシンヤさんの父親だというのなら、
なんで今更、ノコノコと目の前に現れた
んですか!!それだけ再会を喜べる大切
な息子を捨てた癖に!!」
ティアの悲痛な叫びは訓練場の隅から隅
まで届く程、大きくて重いものだった。
その為、誰もが驚いてティアの方へと視
線を向け、そして、それは戦闘中のキョ
ウヤもまた例外ではなかった。
「嬢ちゃん……………っ!?しまっ
た!?」
その結果、たった数秒といえどティアに
気を取られてしまったキョウヤは自身へ
と向かって飛んできていた水弾をモロに
食らい、後ろへとよろけてしまった。す
ると、その隙を見逃すはずもないシンヤ
はキョウヤへと一瞬で近付き、刀を今度
は逆袈裟懸けに斬りつけた。
「"絶栄"!!」
「ぐあっ!?」
「卑怯と言うなよ?」
「ぐっ………はぁ、はぁ、はぁ……………
当たり前だ。単純に俺の実力不足だ」
「……………一発殴るか?もし、俺の仲間
が原因だと…………」
「それ以上は言うな!!」
「っ!?」
突然の怒声に驚くシンヤだが、続くキョ
ウヤの言葉によってそれも納得した。
「彼女は何も悪くない。悪いのはそんな
行いをした俺自身だ。いくら過去のこと
とはいえ、お前に対してしたことに時効
なんてものは存在しない」
床に倒れ、肩で息をしつつ答えるキョウ
ヤを見たシンヤは魔法で傷付いた訓練場
を元通りにしつつ、ついでにキョウヤに
も回復の魔法をかけた。
「……………すまねぇな」
「で?この戦いは?」
「ああ……………俺の負けだ」
その瞬間、沸き立つ観客席。幹部達もホ
ッとしつつ、チラリと横を見るとブロン
達は何とも言えない表情をしていた。そ
して、ティアはまるで大罪を犯してしま
ったとでもいうように俯いて肩を震わせ
ていた。
「もう一度、言うが俺が負けたのは俺自
身の実力不足のせいだ。そこに他者の意
思は介在しない。もちろん、誰かの邪魔
が入ったなんてことはこれっぽっちもな
い」
キョウヤのその言葉に反論しようと顔を
上げたティアだったが、鋭い眼光を向け
るシンヤによってそれも失敗に終わっ
た。
「ティア、男がここまでのことを言って
いるんだ。これ以上、言わせるのなら、
それはコイツの顔に泥を塗ることとな
る………………分かるな?」
「…………はい」
「ブロン達もこの結果に不満はない
な?」
「ああ…………分かっておる」
「よし。じゃあ…………」
そう言って刀を鞘に収めたシンヤはキョ
ウヤを抱き起こした。
「おっと…………悪いな」
「ただ親の面倒を見ているだけだ。変な誤解をするな」
「シンヤ……………」
「そんなことよりも聞かせてくれるんだ
ろ?」
「……………ああ。そうだったな」
キョウヤはシンヤの肩を借りて、ゆっ
くり立ち上がると周囲に向けて聞き取り
やすい声とスピードで語り始めた。
「では俺の正体について教えよう」
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