俺は善人にはなれない

気衒い

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第14章 獣人族領

第322話 全面戦争4

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「前へ前へと突き進め~!!俺達に後退

という文字はない!!」

軍団レギオン"戦線騎士団"の副軍団長サブレギオンマスター、オーガニックは仲間達を鼓舞しながら、自身もまた果敢に攻め立てていた。

「くらえっ!!」

「ぬぅん!強いな!……………だが、まだ

まだよ!」

「ぐはっ!?」

目の前にやってきた"黒天の星"の傘下

クランのメンバーを蹴散らしながら、前

へと突き進むオーガニック。彼

は…………というよりも彼の所属する

軍団レギオンは連盟関係にある他2

つの軍団レギオンとは圧倒的に違

うところがあった。それは………………防

御力である。

「ちっ!こいつら、やっぱり硬ぇ

な!!」

「全く……………噂通りの防御力だな」

「中でも副軍団長サブレギオンマスターのオーガニックがやべぇ。"鉄壁"の異名は伊達じゃねぇよ」

"戦線騎士団"は重い甲冑や鎧などに身

を包む重装備の集団である。それによっ

て、今日までどんな敵の攻撃も受け止

め、弾き、捌き、いなしてきた。かくい

う本人達も自身の強みをしっかりと理解

しており、速さを完全に捨てて防御を取

ったのだ。そこに至るまでの葛藤や苦難

は並のものではなく、今の彼らが形成さ

れるまでの道のりは決して簡単なもので

はなかった。しかし、それも乗り越えて

しまえば得るものは非常に大きい。そこ

からは彼らに合った戦術を学ぶ日々だっ

た。強者との幾多もの戦い、世界各地を

回り、彼らの求める装備を作ることので

きる武器・防具職人との専属契約、道中

での数々の出会いを経て新たに増えてい

く仲間達…………………。そして今日、冒

険者であれば誰もが知るような

軍団レギオンへと成長した彼らは他2つのこれまた有名な軍団レギオンと手を組み、連盟を結成した。これ

はその記念すべきデビュー戦である。だ

から、だろうか。彼らからは……………特

に幹部以上の者達からは絶対に負ける訳

にはいかないという意気込みが感じられ

た。

「どうした!もう、かかってくる者はい

ないのか!」

オーガニックは"黒の系譜"の傘下クラ

ン、"守護団ガーディアンシールド"のメンバー達へ向けて言った。今

まで彼のこの迫力に押されてしまい、動

けなくなった者は数知れず、ほとんどの

者達が勝負を挑んで後悔する結果となっ

ていた。ところが、どうやら今回は違っ

たようだ。

「妙だな?俺の迫力にビビっていないだ

と?」

ビビる……………どころか、そこら中で笑

う者が続出しているこの状況にオーガニ

ックは解せないと言いたげな顔で立って

いた。すると、それを見かねた"守護団ガーディアンシールド"のメンバ

ー達は口々にこう言った。

「"鉄壁"、お前の目は節穴か?」

「俺達の親分を一体誰だと思ってるん

だ?」

「ふんっ。お前の威圧感などあの方々に

比べれば屁でもねぇ」

「まさか、こんなに有名な軍団レギオンの幹部を大したことないと思う日がくるとはな」

「それだけシンヤ様達が強いってことだ

よな…………やっぱり凄ぇわ、あの方

達」

オーガニックの威圧感など、どこ吹く

風。彼らは目の前に立つ男を次第に下に

見始めた。だが、決して油断している訳

ではなく、常に敵に対しては警戒心を解

かずにいつでも動けるよう構えている。

これは普段からシンヤが口を酸っぱくし

て言っている"常に油断をするな。強者

でも警戒を解いた瞬間、足元を掬われる

"という言葉が身体に染み付いている為

だ。そのおかげでオーガニックも不用意

に彼らを攻められないでいた。

「……………随分と良い教育を受けている

ようだな」

「それは嫌味か?」

「いや、違う……………って、待て。何故

真横から声が……………っ!?」

オーガニックはいきなりの横からの衝撃

に思わず、たたらを踏んだ。オーガニッ

クは気が付いていなかったのだ。"守護団ガーディアンシールド"のメンバー達に気を取られ、自分にゆっくりと近付いていた者の存在に………………

「ぐっ……………これはまた先程よりも強

い衝撃だ。一体誰が……………っ!?お、

お前は!?」

「何だ?俺を知ってんのか?」

「当たり前だ。冒険者にとって、同業者

の情報は命そのもの。知っていなくてど

うする」

「俺はまだまだ無名だと思っていたんだ

けどな」

「謙遜はよせ。最近、メキメキと力をつ

けている"黒天の星"を支える傘下クラ

ンの者達……………特に10人のクランマ

スター達は"十彗じゅっけい"と

呼ばれる強者揃い………………その1人が

お前だ」

「御大層な紹介、どうもありがとよ」

「"豪傑"オーロス……………いざ尋常に

勝負だ!!」

「望むところよ!」

こうして2人の刃が交わった。

「オーロス!負けても心配するな!そん

時は我が一瞬で片をつけてやる!」

「ありがとよ!だが、そんなこと言われ

ちゃ、尚更負けられねぇぜ!」

そんなオーロスの後ろにはラミュラと蒼

組の組員達という頼りになる仲間達が温

かく見守っていたのだった。
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