俺は善人にはなれない

気衒い

文字の大きさ
上 下
320 / 416
第14章 獣人族領

第320話 全面戦争2

しおりを挟む
「うん、予定通り……………3分の1程、

削れたね」

遠くを見据えながら、第九部隊部隊長ニ

ーベルは呟いた。彼の視力は両目に掛け

られた魔力の視力強化により、約100

m先までのありとあらゆる事象を見渡せ

るまでになっていた。これは"黒天の星

"の者であれば当然の技術であり、傘下

のクランの者達にも日夜仕込んでいたお

かげで今では軍団レギオンのメン

バー全員が最低でも約50m先まで見渡

せるようになっている。

「ニーベルさん!そろそろオレ達も行き

やすかい?」

傍に控えていただいだい組組長

ヒュージが確認を取り、それに呼応する  

ように組員達も己の武器を構える。橙組

のメンバーは以前、ニーベルとヒュージ

が訪れた都市の闘技場コロッセオ

に出場していた選手達で構成されていた

のだが、それはもう昔の話である。今で

は新たに増えた10人の性別・種族共に

バラバラな者達をヒュージ達が師匠と弟

子のような関係で鍛え上げ、計20名か

らなる以前よりも磨き上げられた少数精

鋭の組にまで成長していた。そもそも初

期の組員達は元々BランクやAランクの

冒険者であり、そこに"黒天の星"での

訓練を経て、彼らは更に強くなってい

る。加えて、新たに増えた組員達に彼ら

がマンツーマンで指導を施すことによっ

て独自の戦闘スタイルが叩き込まれ、奴

隷商にいた戦闘が得意ではない者がほと

んどの新人達はメキメキと強くなってい

った。ちなみに"黒天の星"に加入する

新メンバーはシンヤが自ら選んでおり、

その方法は奴隷商での奴隷購入、直接勧

誘、"黒天の星"への加入希望者の中か

ら………………など多岐に渡る。そして、

橙組に限って言えば、新メンバー達は

皆、奴隷商でシンヤが見つけてきた者達

だった。

「そう……………だね。ちょうどローズ達

も動き出しているところだし………………

よし。行こうか」

「了解!……………じゃあ皆さん、いざ進

軍開始でございやす!」

「「「「「おぉ~~~

っ!!!」」」」」

現場に威勢の良い声が轟く。その中には

傘下クランである"威風堂々"の声も混

じっていたのだった。








―――――――――――――――――――――







「突き進め~!自分達の力を信じるん

だ~!」

「「「「「おぉ~~~

っ!!!!!」」」」」

味方に力強く檄を飛ばすのは軍団レギオン"赤き剣群"の副軍団長サブレギオンマスター、クライである。"赤き剣群"は親クランがほぼ魔法剣士

のメンバーで構成されており、彼らに憧

れて冒険者となり、魔法剣士中心のメン

バーによるクランを構成したところが

次々と傘下になって形成された軍団レギオンだ。その為、傘下から親クランへの信頼は厚く、中でも軍団レギオンの幹部ともなれば、その発言力

はずば抜けて高い。それこそ幹部の言う

ことであれば、無条件に信じて従ってし

まう程に…………………

「俺達があんなぽっと出の連中に負ける

はずがないんだ……………」

クライの呟きは誰にも聞こえることな

く、空に消えた。そして、こうしている

今でさえ、仲間達は次々と敵目がけて突

っ込んでいき、迸る闘気を剣に込めて振

り下ろさんとする。

「くらえ!……………ぎやあああっ!?」

「くそっ!?一体誰が…………っ!?」

「お、お前はっ!?」

ところが、そうそう上手くいかないのが

世の常。彼らは目の前に立ちはだかった

少年によって行く手を阻まれたのだ。

「"黒の後継者"クリス!」

「常時"黒天の星"……………特に"黒締

"に付き従うクラン、"黒椿"……………

そのリーダーか」

「奴こそ、"黒締"の真の後継者と言わ

れる男だ。冒険者ランクもSだ。侮るな

よ、お前ら!」

"赤き剣群"の面々は警戒を崩さず、武

器を構え、敵をしっかりと見据えて出方

を窺う。そこへゆっくりと平常心で近付

いていきながら、クリスはこう言った。

「我々に喧嘩を売ったというのはあなた

達ですか……………さて、シンヤさん達に

剣を向けるというのであれ

ば………………」

クリスは鋭い眼光と共に愛刀を抜き放

ち、それを"赤き剣群"へと向ける。そ

の瞬間、クリスから放たれた殺気に彼ら

は思わず、硬直してしまった。

「生きて返しはしませんよ?」

直後、クリスの振り下ろした軍刀の一撃

は凄い勢いの斬撃となり、大地に亀裂を

走らせながら、そのまま一直線に進んで

いく。

「「「………………」」」

唖然とする面々を尻目にクリスは再び軍

刀を振りかぶる。この時点で既に彼らの

傍らには約100名もの屍が存在してい

たのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

処理中です...