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第14章 獣人族領
第308話 囚われの姫
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「い、一体なんなんだ」
「どうしたの?何か叫んでいたようだけ
ど」
「ああ………………どうやら、奴らが獣人
族領へと足を踏み入れたらしい」
「随分と予想よりも早いわね。一体何を
使って来たのかしら」
「それが馬車や魔法は使ってないらし
い。純粋な"走り"だけでやって来たよ
うだ。一体どんな脚力と持久力をしてい
るんだか」
「何それ」
「いや、そんなのはもほやどうでもいい
んだよ。なんせ、その後の報告の方がと
んでもなかったんだからな」
「どうしたの?」
「いいか?心して聞けよ?それから、こ
れ以上の大声は流石にまずいから冷静に
な」
「あなたには言われたくないけ
ど……………まぁ、いいわ。で、何?」
片目に黒い眼帯をつけ、片耳が千切れた
獣人族の男は意を決してこう言った。
「どうやら、奴らは………………たった3
人でやってきたらしい」
―――――――――――――――――――――
「次から次へと本当にしつこい奴らだ
な。一体何人いるんだ?」
獣人族領へと入り、少し進んだところで
早くも敵の歓迎を受けたシンヤ達。最初
は走りながら対処していたのだが、ある
ことを訊こうと立ち止まって敵を尋問し
ていた。
「ティア、サラ。どうだった?」
「ちゃんと吐いてくれましたよ。いや~
素直で助かりました。ありがとうござい
ます」
「じ、じゃあ俺の命は…………」
「見逃す訳ないでしょう?」
「ひ、ひいぃ~!?や、やめて…………
ぐわああああっ!?」
「全く、ティアは手荒ですわ
ね………………あ、こっちも聞けました
わ」
「そうか。じゃあ、そいつはもう用済み
だな」
「ええ……………あ、ご苦労でしたわ」
「じ、じゃあ俺の命は…………」
「あなた達、同じことしか言えません
の?この状況で助かる訳ないでしょ
う?」
「ひ、ひいぃ~!?」
「諦めてお仲間のところにおゆきなさ
い」
「や、やめ………………ぎやあああ
っ!?」
ティア達が尋問を完了したことが分かっ
たシンヤは今度は自分の番だと目の前の
男へ刀を向けた。
「さて………………では吐いてもらおう
か」
「な、何をでしょうか?」
男の質問に対してシンヤは淡々と答え
た。
「アジトの場所に決まってんだろ」
―――――――――――――――――――――
「ううっ……………父ちゃん、ごめん」
「謝る必要はない。お前は一切悪くない
のだ」
城の地下にある檻の中。罪を犯した者が
収容されるその場所にウィア達は幽閉さ
れていた。ウィアを人質に取り、攻めて
きた"闇獣の血"はまず騎士団や侍従達などの城にいる
者達を全て檻の中へと幽閉した。その
後、ウィアを連れて堂々と王の間に侵入
した彼らは護衛のいなくなった王すらも
ウィアと共に同じ檻の中へと閉じ込めた
のだった。
「それにしても本当に成長したな。随分
と立派になったもんだ」
「アタイは全然立派なんかじゃない」
「いいや。顔つきが強者のそれになって
おる。まぁ、その分苦労も絶えなかった
だろうが」
「……………そうだな。こんなアタイが今
では軍団の長だ。信じら
れないよな。あの"お転婆姫"と言わ
れ、散々みんなを振り回してきたアタイ
がだ」
「……………噂には聞いている。奴のクラ
ンが自然消滅した後、お前は1人で一か
ら冒険者活動を始め、様々な試練を乗り
越えて今の地位にいると」
「…………………」
「ウィア、長い間よく頑張ったな。お疲
れさん」
「父ちゃん…………」
「いや、すまん。今の言い方だとまるで
お前が軍団を抜けてしま
うみたいで縁起が悪いな」
「………………いや、それもありかもしれ
ない」
「それはどういう意味だ?」
「アタイは今回、みんなに迷惑をかけ
た。あるパーティーの帰り道、アタイは
ハーメルンと2人で帰っていた。そこで
いきなり奴らに襲われたんだ。もちろ
ん、応戦しようとした。だが、アタイ
は軍団のみんなを人質に
取られ、動くことができなかった。その
隙に無様にも捕らえられ、アタイを守ろ
うとしたハーメルンは重傷を負ってしま
った」
「………………」
「こんなアタイのどこがリーダーにふさ
わしいのさ……………いや、リーダーでな
くともそもそもアタイは組織に属するの
に向いていないのかもしれないな。はは
っ、笑えるだろ。1人になったあの
日………………アタイは孤独を感じながら
死ぬ気で頑張った。その結果、沢山の仲
間達に恵まれた………………でもさ、結局
アタイは1人が向いているんだよ。それ
にみんなもアタイ1人がいなくなったと
ころで」
「いい加減にしろ!」
「っ!?」
それは地下全体に響き渡る程の声量だっ
た。その為、他の檻に入れられた者達が
何事かとウィア達の方を見ていた。
「冗談でも言ってよいことと駄目なこと
がある。お前は何故こんなところにい
る?それは仲間達を守ろうとしたからで
はないのか?もし、それと同様のことが
仲間達にも起きていたら、どうする」
「えっ………」
「お前が仲間達を人質に取られたように
仲間達もまたお前のことを人質に取られ
ているかもしれないってことだ」
「で、でも"闇獣の血"は獣人族領にいるから………………仲間達は人族領にいるし」
「もしも誰かと組んでいたら、それも可
能だろう」
「っ!?そ、そんな………………」
「よいか?物事のありとあらゆる可能性
を考え、常に最悪を想定しろ。冒険者な
らば、いつ何時何が起こるか分からな
い」
「………………」
「話を戻すとお前の仲間達はこうしてい
る今もなおお前の安否を気遣い、閉ざさ
れた檻の中で必死に戦おうとしている。
そんな中、リーダーであるお前がそんな
ことでどうする。仲間達の想いを踏み躙
る気か。お前にとって仲間とはその程度
の存在なのか」
「っ!?そんな訳ない!アタイにとって
の仲間達はかけがえのない存在だ!」
「だったら、仲間達を信じて今は自分に
何ができるのかを考えろ!後ろ向きにな
どなるな!ウィア・ベンガルという者の
底力を見せてみろ!」
「ああ!見せてやるさ!」
2人はお互いの想いをぶつけ合ったから
か、非常に満足した表情を浮かべてい
た。するとそんな中、別の檻にいる執事
長がおそるおそる手を挙げて、こう言っ
た。
「あの~国王様………………今の声、上に
いる奴らに丸聞こえでは?」
「「…………はっ!?」」
どこか抜けている親子がそこにはいた。
「どうしたの?何か叫んでいたようだけ
ど」
「ああ………………どうやら、奴らが獣人
族領へと足を踏み入れたらしい」
「随分と予想よりも早いわね。一体何を
使って来たのかしら」
「それが馬車や魔法は使ってないらし
い。純粋な"走り"だけでやって来たよ
うだ。一体どんな脚力と持久力をしてい
るんだか」
「何それ」
「いや、そんなのはもほやどうでもいい
んだよ。なんせ、その後の報告の方がと
んでもなかったんだからな」
「どうしたの?」
「いいか?心して聞けよ?それから、こ
れ以上の大声は流石にまずいから冷静に
な」
「あなたには言われたくないけ
ど……………まぁ、いいわ。で、何?」
片目に黒い眼帯をつけ、片耳が千切れた
獣人族の男は意を決してこう言った。
「どうやら、奴らは………………たった3
人でやってきたらしい」
―――――――――――――――――――――
「次から次へと本当にしつこい奴らだ
な。一体何人いるんだ?」
獣人族領へと入り、少し進んだところで
早くも敵の歓迎を受けたシンヤ達。最初
は走りながら対処していたのだが、ある
ことを訊こうと立ち止まって敵を尋問し
ていた。
「ティア、サラ。どうだった?」
「ちゃんと吐いてくれましたよ。いや~
素直で助かりました。ありがとうござい
ます」
「じ、じゃあ俺の命は…………」
「見逃す訳ないでしょう?」
「ひ、ひいぃ~!?や、やめて…………
ぐわああああっ!?」
「全く、ティアは手荒ですわ
ね………………あ、こっちも聞けました
わ」
「そうか。じゃあ、そいつはもう用済み
だな」
「ええ……………あ、ご苦労でしたわ」
「じ、じゃあ俺の命は…………」
「あなた達、同じことしか言えません
の?この状況で助かる訳ないでしょ
う?」
「ひ、ひいぃ~!?」
「諦めてお仲間のところにおゆきなさ
い」
「や、やめ………………ぎやあああ
っ!?」
ティア達が尋問を完了したことが分かっ
たシンヤは今度は自分の番だと目の前の
男へ刀を向けた。
「さて………………では吐いてもらおう
か」
「な、何をでしょうか?」
男の質問に対してシンヤは淡々と答え
た。
「アジトの場所に決まってんだろ」
―――――――――――――――――――――
「ううっ……………父ちゃん、ごめん」
「謝る必要はない。お前は一切悪くない
のだ」
城の地下にある檻の中。罪を犯した者が
収容されるその場所にウィア達は幽閉さ
れていた。ウィアを人質に取り、攻めて
きた"闇獣の血"はまず騎士団や侍従達などの城にいる
者達を全て檻の中へと幽閉した。その
後、ウィアを連れて堂々と王の間に侵入
した彼らは護衛のいなくなった王すらも
ウィアと共に同じ檻の中へと閉じ込めた
のだった。
「それにしても本当に成長したな。随分
と立派になったもんだ」
「アタイは全然立派なんかじゃない」
「いいや。顔つきが強者のそれになって
おる。まぁ、その分苦労も絶えなかった
だろうが」
「……………そうだな。こんなアタイが今
では軍団の長だ。信じら
れないよな。あの"お転婆姫"と言わ
れ、散々みんなを振り回してきたアタイ
がだ」
「……………噂には聞いている。奴のクラ
ンが自然消滅した後、お前は1人で一か
ら冒険者活動を始め、様々な試練を乗り
越えて今の地位にいると」
「…………………」
「ウィア、長い間よく頑張ったな。お疲
れさん」
「父ちゃん…………」
「いや、すまん。今の言い方だとまるで
お前が軍団を抜けてしま
うみたいで縁起が悪いな」
「………………いや、それもありかもしれ
ない」
「それはどういう意味だ?」
「アタイは今回、みんなに迷惑をかけ
た。あるパーティーの帰り道、アタイは
ハーメルンと2人で帰っていた。そこで
いきなり奴らに襲われたんだ。もちろ
ん、応戦しようとした。だが、アタイ
は軍団のみんなを人質に
取られ、動くことができなかった。その
隙に無様にも捕らえられ、アタイを守ろ
うとしたハーメルンは重傷を負ってしま
った」
「………………」
「こんなアタイのどこがリーダーにふさ
わしいのさ……………いや、リーダーでな
くともそもそもアタイは組織に属するの
に向いていないのかもしれないな。はは
っ、笑えるだろ。1人になったあの
日………………アタイは孤独を感じながら
死ぬ気で頑張った。その結果、沢山の仲
間達に恵まれた………………でもさ、結局
アタイは1人が向いているんだよ。それ
にみんなもアタイ1人がいなくなったと
ころで」
「いい加減にしろ!」
「っ!?」
それは地下全体に響き渡る程の声量だっ
た。その為、他の檻に入れられた者達が
何事かとウィア達の方を見ていた。
「冗談でも言ってよいことと駄目なこと
がある。お前は何故こんなところにい
る?それは仲間達を守ろうとしたからで
はないのか?もし、それと同様のことが
仲間達にも起きていたら、どうする」
「えっ………」
「お前が仲間達を人質に取られたように
仲間達もまたお前のことを人質に取られ
ているかもしれないってことだ」
「で、でも"闇獣の血"は獣人族領にいるから………………仲間達は人族領にいるし」
「もしも誰かと組んでいたら、それも可
能だろう」
「っ!?そ、そんな………………」
「よいか?物事のありとあらゆる可能性
を考え、常に最悪を想定しろ。冒険者な
らば、いつ何時何が起こるか分からな
い」
「………………」
「話を戻すとお前の仲間達はこうしてい
る今もなおお前の安否を気遣い、閉ざさ
れた檻の中で必死に戦おうとしている。
そんな中、リーダーであるお前がそんな
ことでどうする。仲間達の想いを踏み躙
る気か。お前にとって仲間とはその程度
の存在なのか」
「っ!?そんな訳ない!アタイにとって
の仲間達はかけがえのない存在だ!」
「だったら、仲間達を信じて今は自分に
何ができるのかを考えろ!後ろ向きにな
どなるな!ウィア・ベンガルという者の
底力を見せてみろ!」
「ああ!見せてやるさ!」
2人はお互いの想いをぶつけ合ったから
か、非常に満足した表情を浮かべてい
た。するとそんな中、別の檻にいる執事
長がおそるおそる手を挙げて、こう言っ
た。
「あの~国王様………………今の声、上に
いる奴らに丸聞こえでは?」
「「…………はっ!?」」
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