俺は善人にはなれない

気衒い

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第13章 魔族領

第272話 帰省

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「準備はいいか?」

「「「「「はい!!!!!」」」」」

ネームが俺達の元を訪れてから3日が経

った。その間、色々と仕事を終わらせた

り、傘下のクランメンバーやブロンに会

って話をしていたら時間はあっという間

に過ぎていった。そして、今日…………

俺達はとある場所へと向かう為にクラン

ハウスの玄関先に集まっていた。

「最終確認を取るが……………ネーム、本

当にいいんだな?」

「…………私に拒否する権利はないし、

そんな立場でもない。むしろ、どうなろ

うともシンヤ達が動いてくれるというだ

けでありがたい。改めて……………よろし

く頼む」

「勘違いをするなよ?俺達はお前に同情

したから動く訳じゃないし、お前を信頼

できる者として扱っている訳でもない。

仮に何かがあったとしても・・・・・・・・・・知らんからな」

「重々承知している。それでもやっぱ

り、こうして腰を上げてくれただけでも

ありがたい。聞けば、シンヤ達は相当有

名な冒険者達だそうじゃないか。であれ

ば、私など門前払いされていてもおかし

くはなかった筈だ」

「イヴに感謝するんだな。こいつの知り

合いでもなければ話すら聞いてないから

な」

「イヴ様、ありがとうございます。そし

て、改めて謝罪をさせて下さい。貴方が

辛く苦しい思いをしている時、力になれ

なかったこと、またイヤーシィ様の暴挙

を止めることができなかったこ

と……………誠に申し訳ございませんでし

た!!」

「謝罪などこの3日間で沢山もらってお

る。それに本当に謝らなければならない

人物はお主の他におるじゃろ?だから、

気に病むでない」

「は、はい!!と、ということは私のこ

とを信頼して頂けたということ

で…………」

「それとこれとは話が別じゃ。第一、深

まった溝がたったの3日間で埋まるはず

なかろうて」

「そ、そうですよね……………はぁ」

あからさまに落ち込んだ様子を見せるネ

ーム。そんな出発ムードには似つかわし

くない雰囲気が漂ったのを見かねて俺は

会話に割って入った。

「シケた面してんなよ。3日で無理なら

もっと時間をかけて信頼を勝ち取ってみ

せろ。幸いにもお前にはまだ時間がある

だろ?」

「シンヤ……………」

顔を上げたネームは潤んだ瞳で俺を見上

げてきた。そうやってしおらしくしてい

たら可愛いらしいのだが……………

「そ、そうだよな!クヨクヨしてたって

仕方ない!よ~し!頑張るぞ!」

口を開けば少しやかましいのが玉に瑕だ

った。







――――――――――――――――――







魔族領で暮らす者はそのほとんどが魔族

で構成されている。別に排他主義を掲げ

ている訳ではないし、他種族に対して差

別や偏見がある訳でもない。では何故魔

族ばかりが暮らしているのか。その答え

は単純明快で魔族領のほとんどの土地が

危険な魔物や厳しい天候に左右されてい

るからである。よって数多ある種族の中

で先天的に武技・魔法共に最も優れてい

る魔族でしか生き残ることが難しいとい

うのが実情であった。その為、冒険者と

いう職業ではない一般人の魔族であって

も最低限の戦闘能力を有している者が多

く、有事の際は己が身1つで切り抜ける

といったことも珍しくはなかった。そん

な猛者達が暮らしている土地に悠々と足

を踏み入れようとしているのが……………

「シンヤ達という訳さ」

何故かネームが胸を張って主張する。そ

の顔はどことなく誇らしげに見えた。

「何故、お前が誇らしげなんだ?」

「まぁまぁ、そんな細かいことは別にい

いじゃないか」

現在、フリーダムを出発して人族領から

魔族領へと向かっている最中である。今

まで俺達が訪れたところは全て人族領内

の場所であり、そこを超えて別の領へと

向かうのは今回が初めてとなる。当然、

今までよりも時間がかかるのは予測され

るがそれを見越して改良された車に乗っ

て移動する為、俺達にとっては苦でもな

んでもなかった。むしろ、同行者のほと

んどが運転を楽しんでおり、常にハンド

ルの取り合いとなっていた。ちなみに今

回、魔族領へと向かうメンバーは俺・テ

ィア・サラ・カグヤ・イヴ・ラミュラ・

ドルツ・ローズとモール・リーム・リー

ゼ・ヒュージ・アゲハ・バイラの組長

達……………そこに案内役としてネームを

加えた計15名となっている。そして、

今回の旅は以前とは少し違う部分があっ

た。それはあまり自分の意見を強く主張

してこないラミュラが珍しく今回だけは

どうしても同行したいと言い出したの

だ。さらにはそこにモールも同調し、頭

を下げてお願いまでされてしまった。不

思議に思った俺が理由を聞くとどうやら

魔族領へと向かう途中、それも人族領と

魔族領の境目付近に彼女達の故郷がある

そうなのだ。

「っと、ラミュラ。ここがお前の生まれ

育った里か?」

運転を止めてもらい、車を静止した状態

で俺は訊く。すると懐かしさを感じてい

るのかしばらく遠い目をしていたラミュ

ラがハッと我に返り、嬉しそうな表情で

こう言った。

「ああ。我とモールの故郷、"ドラゴー

ラ"だ。寄ってくれてありがとう。そし

て、ようこそ。我々はシンヤ達を歓迎す

るぞ」

トーテムポールのようなものが2本立

ち、その傍らに門番が2人……………いわ

ゆる里の入り口がそこにはあった。
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